ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

収束が始まる。


第27章 終わりの始まり
第179話 謎の霊子回線


 

 オリーの錬金技能レベル4発覚に始まり“紫の思慕(パープルロマンシア)”騒動と帆乃花とパイセン……巡からの告白事案。

 ある意味神子島戦線での大立ち回りよりも派手で忙しい濃密な2日間を過ごした、その翌日。

 

「……謎の霊子回線の使用痕、ですか?」

「そう。これは誰よりもまず、姫様と終夜ちゃんに教えとこうって思って」

 

 朝っぱらからタマちゃんに、通信室へと緊急で呼びつけられて。

 同じく呼ばれた姫様と一緒に、こんな突拍子もない妙な話を聞かされて、俺は。

 

「はぁー、マジかよ……」

 

 息つく暇もないってのはこういうもんかと、深いため息を零した。

 

 

「朝からごめんねぇ? 姫様はともかく、終夜ちゃんは忙しかったもんねぇ?」

 

 果たしてどこから情報が流れたのか。

 ニヨニヨと笑いながら言うタマちゃんは、おそらく昨日の俺周りの諸々について、もう知っているのだろう。

 

「何か進展させようってときは、ぜひぜひわたしにも一枚噛ませてねぇ?」

 

 面白いこと好きの彼女からしてみれば、ゴシップは生きるための水みたいなもんだ。

 これもいつも通りの彼女らしい振る舞いといえたが、けれども今日の表情は、いつもより精彩を欠いているように思えた。

 

 

「タマちゃん。そういうのはいいから、とっとと本題を進めてくれ」

「……はーい」

 

 普段ならもうちょっと粘ってきそうなところで、タマちゃんが折れる。

 その様子にいつもなら止めに入る役割だった姫様も、ほんの僅かに表情を変えた。

 

 元より侮るつもりはなかったが、自然と居住まいを正して気を引き締める。

 

 

「……あれ?」

 

 据え置きPCを操作していたタマちゃんから突然、素っ頓狂な声が漏れた。

 それからしきりにあれこれ動かして、その度に首をかしげて?マークを浮かべ始める。

 

 思うに、何か異変が起こったらしい。

 

「タマちゃ」

「タマちゃん様」

「!?」

 

 話しかけようとした俺を遮って、姫様が口を開く。

 その表情はいつも通りに無感情で、けれど瞳には強い確信の色を浮かべて。

 

「……使用された痕跡が、なくなっているのですね?」

「……うん。なくなってる」

 

 俺より一歩先の問いかけをした姫様に、タマちゃんは緊張の面持ちで頷く。

 

「……なるほどな」

 

 姫様が俺を見たので、俺もわかってましたって顔で、厳かに頷いておいた。

 天才たちの会話ってすげぇなって、改めて思った。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……なるほど」

 

 タマちゃんの代わりに姫様がPCの前に座り、それを確かめる。

 

「……確かに、何かがあったような気配があります」

 

 曖昧な表現。

 

「終夜様、ここを注視していただけますか?」

「あいあい」

 

 姫様が指さしたところを、幻視技能も活用して見つめる。

 俺の目には正常な霊子波長が表示されているように見えてるが、同時にそこが、思ったよりも整っているような印象を受けた。

 

 

「……綺麗だな」

「はい、綺麗すぎます。乱れた部分を正したのでしょう。腕がいいからこそ、ですね」

「ひぇっ」

 

 俺たちの会話に、タマちゃんが後ろで震え上がる。

 無理もない。昨日の今日、どころか数時間前にチラッと気づいた異常が、綺麗さっぱり消されていたのだから。

 

「これってやっぱり……」

「あぁ、むしろこうやって消されてるってのが何よりの証拠だな」

「間違いなく……何かしらの異界技術を使っての非常に高度な……特殊な通信技術を使っての連絡が行われたものと考えられます。こんなことができるのは……」

「上位存在……おそらくは白衣の男かRR、か」

「み゛ゃー!!」

 

 タマちゃんが布団に飛んでって隠れてしまった。

 頭隠して尻隠さずなので、なんというかちょっとアレな感じになってしまっているが、ツッコまないだけの情けが俺にもあった。

 

 

「終夜様」

「あぁ、わかってる」

 

 基地内で起こった異常事態。

 であれば、もしかしたらまだ、この基地の中に手がかりが残っているかもしれない。

 

「とりあえず、司令には連絡しとかないとな。あとは……」

「輝等羅様と佐々様にも伝えておくべきかと思います。巡様の神通力と、帆乃花の行動力も役に立つかと」

「わかった。それじゃひとまずそこくらいまで話しておこう」

 

 頑張ってくれたタマちゃんの代わりに、手早く次の行動の指針を立てる。

 

「しらみつぶしになるか?」

「わかりませんが、おそらくは。結界の残滓と触れてノイズが出たということですし……贄はそちら側から仕掛けてみようと思います」

「わかった」

 

 

 こうして話はまとまった。

 俺はさっそく司令室へと向かい、朝のルーティーンをこなす六牧司令に事の次第を説明する。

 

「…………わかった」

 

 上位存在が絡む案件ともなれば、司令も昼行燈な面倒臭そうな顔をキリリとさせる。

 やり取りを終えて司令室を出れば、基地内にどこか、緊張した雰囲気が漂い始めていた。

 

 

(これは、何か大きなことが起こりそうな予感がするぜ)

 

 胸のざわめきが止まらない。

 ゲーム終盤の大きな嵐の前の静けさのような、そんな不穏な気配がする。

 

「……気張っていこうぜ、黒木終夜!」

 

 俺は自分に発破をかけて、意識して力強く一歩を踏み出す。

 現れた謎を解決する糸口を求めて、基地内の調査を開始する。

 

(ここで尻尾を掴んでぶちのめせたら、いよいよマイエターナルグレートオンリーラブヒロイン黒川めばえちゃんの幸せな未来が、見えてくるんだからな!)

 

 シリアスに行こう。

 すべては、我が愛する推しのために!!

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 と、まぁ。

 なんというかシリアスな空気……だったはず、なのだが。

 

 

「えへへぇ、さ、いろいろ見て回ろうー!」

「えぇ。注意して、小さなことも見逃さないようにしましょう」

 

 左腕に、帆乃花。

 右腕に、巡パイセン。

 

「……Oh」

 

 気がつけば、俺の左右の腕にはそれぞれ、昨日告白してきたガールズが抱き着いていて。

 

 

「終夜君、任務だよ! 気張っていこう!」

「気を抜いてはダメよ? 事は慎重に、けれど時には大胆に動きましょう」

 

 さもそれが当然みたいな態度で、作戦開始を告げられる。

 

「……どうしてこうなった?」

 

 明らかに意識して引っ付かれてるのを感じながら、俺は首を傾げるしかないのだった。




恋する少女は、強い。

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
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