ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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気づく。


第181話 捜査線上のサスペクト

 

 上位存在なにするものぞ。

 そんな気概で始まって、なんかラブでコメなノリもありつつ進められた大捜査。

 

 多少おふざけはあったものの、捜査自体は真剣真面目。

 俺たちは持てる限りの力を使い、協力し合い、最大限に調査を重ねた……のだが。

 

 あー、結論から言いますと。

 

 何の成果も……得られませんでしたっっっ!!

 

 相手は腐っても上位存在。

 それも偶然たまたま見つけられただけの痕跡(隠滅済)を発端に始まった調査が、そう簡単に進展するはずもなく。

 最終的には上位存在のことを知る、天2小隊全員に周知しての活動にまでなったのだが……。

 

 

「うーん……パイセン、そっちはどうだ?」

「ダメね。命たちから教えて貰った情報に田鶴原様のお力も借りてみてるけど、サッパリだわ」

「帆乃花はどうだー?」

「こっちもダメー。豪風のサザンカちゃんにも探知してもらってるけど……」

『申シ訳アリマセン。さっぱりッテ奴デス』

「そうかー。となると……」

『私たちが会話に使っている回線とも違うチャンネルのようですね』

『……見つからない』

「だよなー」

 

 神様パワーや精霊殻、精霊パワーも借りながらの探知でも、望んだ結果は得られないまま。

 

「……これで調べ始めて一週間、か」

「これはもう、痕跡を求めて探し回るのは不可能かもしれないわね」

「だねぇー」

 

 無情にも、時間だけが過ぎてしまっていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「珠喜の発見したモノだから、その存在は疑ってはいないけど……さすがに相手が悪いかしら」

「これだけ調べて見つからないんだから、他の痕跡が発生してても全部修正されちゃったって考えるのがいいのかもね」

「それを踏まえて姫様が結界張り直して網を張ってたんだが……それも成果なし、と。お手上げだな」

「異界技術が使われた通信ってことは、もしかしたら、それ専用の端末とかあったりするのかな?」

「そうね。そういうのが見つかれば、一番手っ取り早いと思うのだけど……」

「それっぽいの、見たことあるか?」

「「………」」

「だよなぁ……」

 

 最初の意気込みと勢いでどうにかなるかもと思ってたが、見通しが甘かったな。

 成果の出ない調査が続いたからかどんどん身が入らなくなってきたし、姫様に至っては今朝、気になることがあるからって結界張るだけ張って実家に帰っちゃったからな。観測頼まれたタマちゃんが「もう飽きてたのにぃ!」ってジタバタしてた。

 

(とはいえ、謎の霊子通信がこの基地内で行われていた事実はあるんだ。いずれまた、何らかの形で発見される可能性だってなきにしもあらずのはず)

 

 ようやく見つけた糸口だ。根気よくやっていこう。

 

 

「………」

「ん? パイセン、どうした?」

 

 ふと気づいたら、パイセンが何やら考え込んでるみたいだったので、声をかける。

 傍に行けば無意識なのか手が伸びてきて、俺の服の裾を掴む。そういうとこだぞ巡パイセン。

 

「……これはあまり考えたくないことだったのだけれど」

「うん」

「通信が行われたということは、通信を行なった誰かがいたってことよね?」

「そうだな」

 

 当然のことだと思う。

 基地内で誰かと誰かがやり取りしたから、霊子回線が開かれたワケで。

 

「片方が件の上位存在だとして、よ」

「うん」

「じゃあ、()()()()()()()()?」

「え……」

 

 言われて、気づいた。

 俺はそれを、()()()()()()()()()()()()()()()って事実に。

 

「通信は双方向なのだから、上位存在とやり取りした人物が、確実にいるのよ。この、天2基地に」

「それは……」

 

 答えられない。

 知らず知らず、俺は自分が天2小隊を、ここをどれだけ好きになっていたのかを自覚する。

 

「いや、でも……」

「そしてその誰かは、おそらく……私たち天2小隊所属の、誰かよ」

「っ!」

 

 ハッキリと口に出されて、いよいよ言葉に詰まる。息を呑む。

 パイセンが告げたその事実は、つまるところ――。

 

「――天2小隊の中に、相手側に与する裏切り者がいるって、そういうことだよね?」

 

 言えずにいた俺の代わりに、豪風から降りた帆乃花が口にした。

 パイセンがそれに頷くのを、俺はただ見つめていた。

 

 

「……考えたくはないわね」

「うん。でも、小隊外の人がわざわざ基地内でそんな回線を使う理由はないもんね」

「そう、だな……」

 

 否定する要素が潰されていく。

 代わりに信じたくない現実が、その存在感を増していく。

 

(今日まで一緒に戦ってきた仲間の中に、裏切り者がいる……)

 

 いざ疑おうと思ったら、きっと誰にでも疑いをかけることができる。

 それくらい、天2に集まったメンバーは特異で、スペシャルな連中ばかりだから。

 

 なんなら笑顔の裏に殺意を隠してるような奴だって、確かに存在してたのだから。

 原作からしてこの世界は、そんな厳しさをハナから隠しもしない、絶望と悪意に満ちた場所だったのだから。

 

 

「裏切り者、か」

「終夜君が裏切り者だったら、とっくに人類は負けて滅んでると思うよ」

「そうね。あなたがもしも裏切る気なら、私を救ったりなんかしなかったはずよ」

 

 二人から向けられる信頼の目が、今は少し……痛い。

 味方になった上位存在……新姫様から聞かされているが、俺はラスボス候補なのだ。

 

(ワンチャンまかり間違ったら、ここからでも俺はみんなの敵になる可能性だって、ある)

 

 そんな見えない厄ネタが、天2隊員の内に未だ燻っている可能性を、俺は否定しきれない。

 そして何よりも今、俺の胸をざわつかせ、イラつかせ、苦しめているのは……。

 

(疑う相手として一番に上がるのが……順当に考えて、あの子になるからだ)

 

 ほかでもない俺が一番に信じて、疑ってはいけない少女。

 今日も真面目に保健衛生管理室で、己の職責をしっかりと果している俺の推し。

 

 黒川めばえ。

 もう一人のラスボス候補。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

(……いや、いや。そんなワケない。めばえちゃんがそうなる理由がない。ここに来てからの彼女のことを、誰よりも俺が見てきたはずだろ?)

 

 俺は静かに、頭に浮かぶ不快感を払うべく首を振る。

 

(彼女に不審な点なんてない。ただ普通に天2にやって来て、ただ普通に頑張って、頑張った分だけみんなに認められて、仲間になって。今じゃ誰かと一緒にお出かけしたり、女子会に参加したりしてる、普通の女の子なんだから)

 

 言い知れぬ不安がずっと胸の中にある。

 疑念の種が、確かに自分の中にあることがわかるたび、俺は自分が嫌いになる。

 

 心が否定している。でも頭が疑っている。

 ありえないと思う。でも、ありえないかどうか検証が終わっていない。

 検証なんてしたくない。でも、検証しないと疑いは晴らせない。

 疑いたくなんてない。でも、疑わないと無実を証明することなんてできない。

 

 俺の中で心と頭がせめぎあい、どうするべきかへ辿り着けない。

 

 

「今日はもう、捜査も終わりね」

「だね……」

 

 夏の夕暮れが、今日も空を茜に染めている。

 徒労に終わった調査に、ほんの少しの疲労の色を滲ませながら語る、二人の横で。 

 

「俺は、もう少し探してから休むよ」

 

 俺は一人、居残り調査をすると決める。

 否、正しくは……一人になりたかった。

 

「そう、それじゃ私たちは先に休むわね」

「無理しないでね、終夜君」

「あぁ、ありがとう。二人ともお疲れ様だ」

 

 こちらを心配そうに見ていた二人に手を振り、送り出す。

 俺の気持ちを察してか、最近何度も繰り返していたような問答も、今日はなかった。

 

 

「……ふぅ」

 

 一人になって、俺は改めて空を見上げる。

 いつもなら綺麗なもんだと見惚れる夕焼けも、今だけは逢魔ヶ時を思わせる。

 

「裏切り者、か」

 

 まず真っ先に浮かぶめばえちゃんを消す。でも、それ以外の天2の仲間の顔も思い浮かべたくなくて。

 いっそ自分がそういう密命を帯びる立場だったならどれだけ楽だったろうかなんて、考えたりもして。

 

(そうだったら今この瞬間即行で全部ゲロッて上位存在裏切って、下剋上かますんだけどなぁ)

 

 頭に浮かんだ妄想で、嫌な気持ちを振り払っていく。

 

 

(そう。もしも俺が裏切り者なら、この世界にないような知識を使って情報網を構築し、それを使って裏で手を引きあれやこれやと暗躍するワケよ)

 

 例えば情報端末。

 手首に取りつける霊子ネットリンカーじゃなく、外部でそれを代用できるモノ……それこそスマホみたいなのを作れば、自分の情報を紐づけしないで他者と連絡取れたりしてさ。

 

「スマホ……」

 

 ………。

 ………………。

 …………………………………。

 

「……くはっ」

 

 浅く、息を吐いた。

 

「くはっ、ははっ、ははははっ」

 

 引き攣るような笑いが、とめどなく溢れてくる。

 

 

「はははっ、ははっ、はっ、はっ、ははははははっ!!」

 

 気づけば額に手を当てて、背中を反って大笑いしてしまっていた。

 

「はははははははははははははははっっ!!!」

 

 ひとしきり笑って、笑ってしまって、背中が痛くなるまで笑って、それから。

 

「……ふぅーーー」

 

 俺は深く、深く、息を吐く。

 

 

「………」

 

 静かに端末を起動して、超常能力を使い、確認作業を終える。

 

「……すぅ、ふぅー」

 

 もう一度息を整えてから、目的地に向けてゆっくりと歩きだす。

 

「………」

 

 心はもう、決まっていた。




大事な人のことだから、ちゃんと覚えていたから、気づいてしまった事実。

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