ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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黒川めばえの、大切な物。


第187話 運命の宣告

 

 俺は、どうやらやらかしてしまったらしい。

 

「なん、で、そんなこと……言うの……っ!」

 

 俺の最推しが、俺の大好きな人が。

 

「わたしは、あなたに……いき、て……!」

 

 俺のせいで泣いている。

 

 ポタ、ポタ。

 

 滴り落ちてくるのは鍾乳洞の水滴ではなく、めばえちゃんの温かな涙だ。

 だが俺は、そんな涙を拭ってやることすらできない。

 

 

『あなた、は……わたしの……大事な人……なのに……!』

 

 ほんの数秒前に聞いた言葉が、頭の中でリフレインする。

 その言葉の真意が知りたくて、その言葉をどう解釈したらいいのかばかり考えてしまって。

 

「ぁ、ぁ……」

 

 ただただ、目の前で涙をこぼすめばえちゃんの言葉の続きを、オロオロと待つことしかできない。

 

  

「聞い、て……黒木、終夜。あなたは……」

 

 そんな俺の想いを知ってか知らずか、望む続きがめばえちゃんの口から紡がれる。

 

「ううん……あなたが、いなかったら……私は、ここまで、頑張れなかった……の!」

 

 嗚咽交じりに吐き出される言葉。

 それはほかでもないめばえちゃんが、俺をどう思ってくれてるかの答えだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「最初は……怖かった、の。知らないはずなのに、あなたは、私を知っていた、から。倒すべき人が、もう、私を知っていた……から」

「あー、うん」

 

 初手、めばえちゃんリアリティショックで気絶した分を差っ引いても、酷い出会い方をしたと思う。

 あの時はパイセンに背中を押してもらって、なんとか勢いづけられた感じだった。

 

「敵のはず、なのに、ずっと親切なのも……怖かった。推しって言葉の意味も、わからない、から……全然、どうしたらいいのかわからない、から。……でも、倒すべき人だから、見てなきゃいけないって、頑張って見てたの……」

 

 出会ってしばらくは、完全にやらかしの連続だった。

 歓迎会で精霊殻の全力ダンスを披露したのも、今思えばやりすぎだったってわかる。

 

 それでもめばえちゃんが俺との交流をやめないでいてくれたのは、あの頃は俺を倒すべき相手だと思って見てたからってワケだ。

 

 

「私は……あなたを知っていた。緑の、風。日ノ本軍の英雄……エースオブ、エース……」

 

 そう、あの日。

 アーケード街に買い出しに行ったとき、盗み聞きだったが確かに俺は、めばえちゃんが戦士の俺を認知してくれてたのを聞いている。

 

「世界を救う英雄が、本当は、世界を滅ぼすラスボスだったなんて……どうしようって、思ってた。けど……」

「けど……?」

「間近で見た……英雄は、言うほど、絵本に出てくるような英雄じゃ……なかった、わ」

「Oh……」

 

 それについては返す言葉もない。

 どちらかといえばヒーローってよりバーサーカーの自覚はまぁ、あります。

 

 

「強くて、怖くて、恐ろしくて、変で……よくわからない、人だと思った」

「………」

 

 割とディスられてる気がしないでもないが、それ以上に彼女の本心を聞けることが嬉しい。

 頭の中でさっきからヨシノがうるさいが、ここは素直にシャットダウンだ。

 

「うん……人、だったの」

 

 今は全身全霊で、めばえちゃんの話を聞いていたい。

 

 

「黒木終夜、あなたは……何度失敗しても、どれだけ拒絶しても、私と交流して、くれた。今なら、わかる……あなたは、とても丁寧に、私に対してコミュニケーションをとろうとして、くれていたって」

 

 俺を見下ろすめばえちゃんの唇が、ゆる~く微笑みを浮かべる。

 そこから伝わってくる感情は、感謝だ。

 

「あなたは突拍子もなく、て。無茶苦茶で。でも、私が本当に嫌いなことは、絶対にしなくて……嫌なことされたって思っても、気づいたら、本当はして欲しかったこと……だったりもして」

 

 彼女の手が、そっと俺の髪を撫でる。

 

 

「あなたは、私の知らない私を知っていて、気づかせてくれて、導いてくれた、の……」

「……っ」

 

 胸が、締め付けられる。

 自然と頬が、熱くなるのを感じた。

 

「あなたから私を守るために、みんな、仲良くしてくれた。私の性格が、気づいたらみんなに知れ渡っていて、私の過ごしやすい空間が、いつの間にかできていた。それも、これも、きっかけを、流れを作ってくれたのは……あなた、ね?」

「………」

 

 黙秘したのは、恥ずかしかったから。

 そしてその何倍も、嬉しかったから。

 

 

(めばえちゃんが、俺のこと、ここまで考えてくれてたなんて……あばばば嬉しすぎる!)

 

 わかってくれてる。考えてくれてる。

 そこに費やされた一分一秒が、その先に出た答えのすべてが、俺にとっては至高の報酬。

 

 ただの認知なんかとはワケが違う。

 彼女の中に、ちゃんと俺という個人カテゴリーが存在する確信が、全身を震わせる。

 

 

「私……一人君と初めて会ったとき、言葉が出てこなかった……でも」

 

 でも、と彼女はもう一度だけ繰り返し。

 また俺に微笑みを向けて、感謝を向けて、言葉を続ける。

 

「あなたの言葉が、私に勇気をくれたから……私、一人君の話を聞けて、大事なことを確かめられて……自分がヒロインだって、彼に、伝えられたの……!」

 

 さっきまで泣いてためばえちゃんが、笑った。

 

「あなたのおかげで、私は私の運命を……切り拓けたの」

 

 綺麗で。

 愛らしくて。

 極上で。

 最高で。

 

 とびっきり魅力的な笑顔を俺へと向けて、笑ってくれた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「聞いてる、わ。あなたがラスボスだって自覚してるって……そんな運命相手に、一人で孤独に戦ってきたんだろうって。だから、私たちは……あなたを救うって決めたの」

 

 彼女の中に、俺は確かに存在していた。

 

「あなたは、ラスボスなんかじゃない。ラスボスになんてさせないって、そのために戦うんだって、決めてた……のに……」

 

 だから、再び溢れ出した彼女の涙を、今度は拭ってやれる。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。めばえちゃん」

 

 まだ、自分から触れられる。

 

 

「う、ぅぅ……ごめん、なさい。あなたを、傷つけた……」

「平気平気。俺は耐えきったし、めばえちゃんは俺を救ってくれた。セーフだ」

「……うん」

 

 すんっ、と一度、鼻をすすって。

 めばえちゃんの潤んだ瞳が、再び俺を覗き込む。

 

「なら、もう……死んでもよかったみたいなこと、言わない、で……」

「はい。ごめんなさい」

 

 素直に謝ってみせたら。

 彼女の口元に微笑が浮かんで。

 

「……許す、わ。でも」

 

 そんな彼女の口元が、不意に咎めるようにすぼまって。

 

 

「また、同じことをしたら……()()()()()()()()()()()、わ、よ?」

「………」 

 

 めっ、て立てた人差し指を押しつけられて、叱られた。

 

 

「……ん?」

「………」

「え、と? 黒木終夜?」

「…………………………ぷふっ」

「!?」

 

 これは、無理。

 

「ふははははっ! うっそだろ! ここで!? ここでかぁーーー!」

「? ??? え、え? なに?」

「あははっ、あはっ! あははははははっ!!」

「え? えぇ?」

 

 なるほど、脅し文句!

 こういう形で原作セリフがお出しされるのかぁーー!!

 

 なるほどなぁーーーーーー!!

 

 

(あー、そっかー! めばえちゃんはやっぱり、ここでもめばえちゃんなんだなぁー!)

 

 そっかそっかー! なるほどなー!

 これはなー! 本当になー! マジでなー! どうしようもなくなー!

 

 

(ああーーーーーーー!!! ………………大好きだよ畜生っっ!!!!!!)

 

 好き。大好き。

 マジでどうしようもないくらい好きだ。

 

 今すぐめばえちゃんのこと抱きしめて、その顔中にキスしまくりたいくらい好き。

 それじゃ足りないからもう生涯かけてめばえちゃんの何がいいかって語り続けたい。聞かせてやりたい。自覚させてやりたい。自分がどれだけ魅力的で、どれだけ愛される存在なのかって、俺の全部を尽くしてわからせたい。ぐちゃぐちゃにしたい。でろでろのぐずぐずになるまで蕩かして、頭の中幸せいっぱいにして他に何も考えられないくらいにしてやりたい。頭のてっぺんから足の先まで全部が全部素晴らしいって教えてやりたい。五感すべてで感じ取れるキミの全部が俺にとっての幸福だって叫びたい。

 

(っていうか、全部。全部だ。全部が好きだ。何もかもが好き)

 

 ダメだってこれ。抑えきれないって。

 え、帆乃花や巡ってこんな気持ちを抱えて俺にぶつかってきたの? 英雄じゃん。

 

 改めて尊敬するわ。恋の先輩に感謝。 

 

 

「はぁー、はぁー、はひ、はひひっ、はははっ」

「か、からかってるのなら……怒る、わ」

「あー、ちが、ちがう、ごめ、ごめん……本当、ふふっ」

「む……」

 

 どうにか、こうにか。息を整える。

 それでも笑ってないと、正直今にも思いをぶちまけそうでヤバい。

 

(俺は確かに、めばえちゃんにとって大事な人って言われるくらい、影響を与えることができていた)

 

 嬉しい。嬉しい。

 でも、でもだ。

 

(それでも、彼女が信じる運命の人は……俺じゃない。俺じゃあないんだ……!)

 

 だから、この想いは。

 こんな、叶わない恋なんてのは、ここで――。

 

 

「――私、本当に……あなたの導きは、あの導きの星(ポラリス)にだって負けてないって、思ってるの」

「え?」

 

 ここにきて、めばえちゃんから知らない言葉が出てきた。

 なに? ポラリス? 北極星?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……あの温かさがあったから、一人君の光があったから、私は最悪の夜を、越えられた、の」

「………」

 

 ……何か。

 考えに至るより、先に。

 

 腹の奥底から冷え切るような何かを、感じた。 

 

 

「毎晩、毎晩、大丈夫だよ、ここにいるよって……私を励ましてくれたあの温かな星、私の導きの星……あなたが私にしてくれたこと、は、それと同じくらい、救いだった、の」

「……え、ぁ?」

 

 くいっ。くいっ。

 

『ん』

 

 ユメが、呼んでもないのに俺の頭の中に、声を届けてきた。

 

『……あのね』

 

 あの場にいた、当事者が語る。

 

 

 

 

『あのね。あそこには……()()()()()()()()()()()()()()()()




精霊は、嘘をつかない。

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