ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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想いに区切りを。


第192話 ここまで推し活、ここからも推し活

 

「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるの」

「はい」

 

 推しにフラれた。

 物の見事に、フラれた。

 

「あー、えっと。めばえちゃんが好きな人ってのはやっぱり、真白君?」

 

 こくこく。

 小さく愛らしく、けれどハッキリとした意思を示すように頷きを返されて。

 

「おも……こほっこほっ。ん、んん。熱烈な告白。ありがとう。でも、私、気づいたの」

 

 続けて、何か覚悟の決まった瞳で俺を見つめる最愛の推しこと黒川めばえちゃんに。

 

 

「釣り合いが取れなければ、愛し合うことはできないんだ……って」

「………」

「ただ一方的に受け取るだけじゃなく、ただ一方的に与えるだけじゃなく、互いの器を埋め合えるような愛が、私の求める愛だって、気づいた……から!」

「………」

「私の器には重すぎ……こほん、あなたの愛を受け止めるのはぶっちゃけムリ……えふんっ、器が足りないと思ったから。ごめんなさい。私は、私の想う人に向かって、前に、進みます」

 

 

 これまで見たことのない、まるで悟りでも得たような真摯な顔でそう言われてしまったら。

 

「……………………」

 

 もう、何も言うことはない。

 そんな風にして、ストンッ、と。心の深い部分が納得してしまった。

 

 っていうか、重いって、めっちゃ言うの我慢されてる! 気遣われてる!

 察するに余りある!

 

 

(フラれた……フラれたなぁ……)

 

 思ったよりもショックはない。

 全身全霊を振り絞ってぶつけた俺の想いのすべてが、確かにめばえちゃんに伝わった手応えがあったからだろうか。

 

 伝えたい言葉はまだたくさんあるけれど。

 伝えたかった想いは、きっともう……十分に届いてる。

 

 十分以上に、受け止めてもらった。

 

 

「……めばえちゃん」

「っ、な、なに?」

「そういうことなら……俺は」

 

 だったら、あとは――。

 

 

「めばえちゃんのその恋が成就するよう、全力で応援させてもらうぜ!」

 

 

 ――――推し活、あるのみッッッ!!!!!!

 

 

「え、え、いい、の? 私、あなたをフッた、のに……」

「もちろん! 俺の最推しは変わらずめばえちゃんだ。だったら、めばえちゃんが幸せになるために応援するのなんて、当たり前のことだぜ」

 

 しかもそれが、自ら幸せを掴み取りに行こうってんなら、なおのこと。

 

「でも……」

「大丈夫! 俺の告白を断れるくらいの勇気がもう、めばえちゃんにはあるんだ。だったらきっと、真白君に……好きな人に想いを伝える勇気だって、そこにあるはずだ!」

「!」

 

 俺は揺らがない。

 結ばれなかったくらいで揺らぐような、そんなヤワな好きを積み重ねちゃいない。

 

 推しを推すってことは……推しを愛するってことだ!

 

 

「俺でよければいくらでも手を貸すぜ。世界を救うヒーロー様を、めばえちゃんのヒーローにしちまおう! ……あ、もちろん。めばえちゃんがOKしてくれるなら、だけど」

 

 ここで断られるなら、全力でもって見守ろう。

 彼女にとって不利益たり得る重すぎる感情は、相変わらず俺の中にあるから。

 

「だい……じょうぶっ!」

 

 けれど、差し伸べた手を、めばえちゃんは掴んでくれた。

 白く柔らかな手触りのそれを全神経で味わいながら、俺は力強く頷く。

 

「行こう、めばえちゃん。まずは……天2のみんなに謝るところから、だな」

「うん……」

 

 天2の名前を出したところでめばえちゃんの手に力がこもるが、大丈夫。

 確かにやらかしの度合い的にはかなりアレなレベルのやらかしをやってるが、まだ内々に処理できる道は残ってる。最悪からは程遠い。

 たとえ最悪に最悪が重なったとしても、何が起きたとしても、俺は彼女を裏切らない。

 

 そして。

 そんな想いと同じくらいに……俺は天2のみんなを信じてる。

 

 

「しっかりごめんなさいして、許してもらおうな!」

 

 だから迷いなく笑顔を向けて、俺は端末を起動し――。

 

『――まず謝るべきは貴方ですよ、終夜?』

「へぇあ? あばばばばばばっ!!!」

 

 直後。

 解放されたヨシノから、容赦のないお仕置きをぶち込まれるのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……いや、いや、ヨシノさんや。現世干渉力上がってない?」

『最近はユメさんと共闘することが多いので、やれることがまた増えてきましたね』

『ん、準神級上位。くらい、ある』

 

 知らんところで強くなってたらしいヨシノからのお仕置きが終わり、ぷすぷすと煙を吐きながらも俺は、彼女から話を聞く。

 

「えぇ? そこらじゅうから敵の気配がする?」

『今、端末から情報を抜き取って裏が取れました。現在、九洲全土に新たなマーキングが出現し、一触即発の状態となっているそうです』

「マジかよ……うわ、マジだよ」

 

 霊子ネットを軽く洗うだけでも、出るわ出るわ大ピンチ情報。

 九洲の主要都市に(ポール)が設置され、赤い霧がばら撒かれている様子がリアルタイムでも確認できた。

 

 ってか柱とか初めて見たわ。公式設定資料集でしか見たことなかったし。

 あれ、赤い霧が一定量出たらそっからは柱壊れるまでハーベスト無限沸きするんだよな。しかも沸き出すまでは攻撃しても、現と幻が不安定で通じないっていう実質無敵仕様。クソでち。

 

 

「なるほどなるほど。天久佐方面の“空泳ぐクジラ”とタイミング合わせて仕掛ける感じね。今は恐怖を煽って士気削るターンっと」

『……わかるのですか?』

「あ? あー、んー」

 

 なんつーか。

 ここまでもう露骨になってくると、考えることも減ってくるよな。

 

(多分だが、元々この世界に攻め込んでた赤の一族は、もう全員殺されてんじゃねぇかなぁ?)

 

 切り札なはずの亜神級たちの扱われ方とか、派手さ重視の仕掛け方とか。

 これもう完全に白衣の男が主導権を握ってるとしか思えねぇし、他の赤の一族がそれを許すとは到底思えない。

 

 ……あいつ、()ったな?

 

 

「ま、わかるっちゃわかるな。それにこれなら、いよいよこっちもやり返せそうだ」

「? え、と?」

『大丈夫ですよ、黒川めばえ。私たちにも終夜が何を言っているのかわかりませんので』

「ひゃあっ!?」

 

 もはや普通にそこらの人と意思疎通できるようになってるヨシノに驚きつつも、かわいく驚くめばえちゃんが見れたので俺にヨシ!

 やる気ゲージもいい感じに溜まってきたし、撃たれた傷の痛みもない。

 

「よーし。まぁまぁまぁまぁ、大体わかった」

 

 軽く準備運動を始める。

 こっからしばらく、俺は忙しくなりそうだって理解したから。

 

 

「めばえちゃん。事情が変わった。みんなに謝りに行くのは、もうちょいあとになりそうだ」

「え、それってどういう……?」

「それと、“精霊纏い”……できる? できるならそれで、契約鎧着といてくれ」

「え、え? わ、わかった、わ?」

「よーしっ」

 

 グッと体を伸ばしてほぐし、俺は……()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(もしも、もしも俺とめばえちゃんのやり取りを、お前が覗いていたとするなら。そいつはきっと、お前にとっちゃさぞかし楽しい見世物だったろうよ)

 

 考えるのは、今日までさんざん俺たちをコケにしてきたクソ野郎のこと。

 

(でもな……)

 

 そいつを想い、自然と、口元に笑みが浮かぶ。

 

 

(そのせいで、きっと、()()()()()()

 

 だって、そうだろ?

 

(お前はきっと、見たい物しか見ないから。そういう奴だってのはもう、理解してんだよ)

 

 ここから、これから、始まるのは。

 

 

「……いいぜ。面白れぇもの、見せてやるよ」

 

 ()()()()……()()()()()だからだ。 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 九洲、金峯山(きぼうさん)

 

「……さぁ、時間ですね」

 

 推しの告白失敗という大活躍を見終えたところで、白衣の男は腕時計を確かめる。

 かの“おじさま”になりすますときに奪ったこれは、なかなかのお気に入りだ。

 

 

「ふふふ、最後の時の、その始まり。そこへ至る幕は楽しんでいただけたかな?」

 

 九洲各地の人々の、恐怖を煽った。煽りに煽った。

 いつ弾けるともわからない風船を恐れるように、それは人の心の奥底に伝播しただろう。

 

 一人一人には毛ほどの興味も湧かないが、群衆(エキストラ)として使えるように、無視はしない。

 真なる主役たちを活躍させるために、ここからも存分に泣き喚いてもらいたい。

 

 

「さぁ! さぁ! さぁ! 世界よ、決戦だ!」

 

 己で演出する最後の舞台。

 この先に待つのはただの結果。つまらないつまらない、歴史が変わるという結果のみ。

 

 ならば精々今をこそ楽しもう。

 自らの手で掻き乱し、どこまでも混沌に染めた世界の、変革へ至る断末魔を。

 

「さぁさぁさぁさぁ、最後まで君の立ち回りを見せてくれたまえ、黒木終夜!」

 

 推しと定めた男の、足掻く姿を。

 

 

「はははは、はははは! はーっはっはっは!!」

 

 今がまさに、喜悦の時。

 ゆえに……白衣の男は気づかない。

 

 すでに自分が、いくつもの見落としをしてしまっているという、そんな事実に。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 奥分(おおいた)

 

「!? 隊長! 柱が!!」

「動き出したか!!」

 

 周囲を赤に染め抜いた柱から、いよいよもって怪異たちが姿を現す。

 

「ピギィィッ!」

「GAOOOOM!!」

「シャギャアアアアッ!」

「グルオォォォォーーーーンッ!!!」

 

 おびただしい数の絶望が、辺りに破滅を撒き散らさんと湧いてくる!

 

 その刹那!

 

 

「隊長!」

「今度はなんだ!?」

「黒い、精霊殻です!!」

「なぁにぃ!?」

 

 誰よりも早く、最前線へと飛び込む一機の精霊殻。

 軍上層部から特級警戒対象として指定されていたそれは、しかし。

 

「たいちょぉぉ!!」

「なんだ!?」

「黒い精霊殻の、識別が!」

「ああ?! ……あああ!?!?!?」

 

 日ノ本軍と敵対することは、なかった。

 

 なぜならば。

 

 

「黒い精霊殻! 個体名“明星(あけぼし)”! パイロット“特務隊員”真白一人百剣長! 所属……上天久佐第2独立機動小隊です!!」

「そういうことかよぉ!!」

 

 今まさに敵を切り刻む驚異の怪物は。

 しかしてその識別信号により、もはや“新たな人類の希望”として受け入れられたのだから!

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 天2基地。

 

「いいの!? ねぇこれいいのぉ!?」

「問題ありません、タマちゃん様。むしろお好みの展開では?」

「正直ちょーテンション上がるにゃぁぁぁぁ!」

 

 現れた黒い精霊殻の情報を()()()()()手果伸珠喜の言葉に、それを指示した建岩命は満足げに頷いてみせる。

 それはここに集った天2隊員全員がドン引きする無法だったが、しかし同時に誰一人としてそれを咎める様子を見せなかった。

 

「本当に、即座に現れたな」

「黒い精霊殻、明星、真白一人……本当に、ヒーロー気質なんですわね」

 

 この状況は、命の想定通り。

 むしろ、彼の登場を待つように指示をしたからこそ、天2は今まで……()()()()()()()()()

 

 

「さぁ、対象が現れたのは奥分(おおいた)でした。神子島(かごしま)……それと兵力十分な永崎(ながさき)は問題ありませんので、向かう場所は福丘(ふくおか)隈本(くまもと)市街、佐我(さが)宮咲(みやざき)となります。あとは、皆様手筈通りに」

「「………」」

 

 すでに臨戦準備を整えていた隊員たちが、強く頷く。

 そして全員の視線が、この場の統括である天2の、そして九洲の総司令である六牧百乃介へと集まれば――。

 

 

「――機は熟した。天2小隊、オペレーション『天下布武』……開始!」

 

 号令一発。

 重なる了解の言葉に続き、巫装束の命が舞って、次々に(ゲート)が開かれる。

 

 それは、彼ら天2小隊メンバーが華々しく活躍する戦場へと続く、花道。

 

「よし、行くぞ鹿苑寺十剣長。オレたちの筋肉の見せ所だ!」

「筋肉は知らねぇけど、気合は億倍キマってるぜ! ブッチギリだ!」

「一二三さん、細川! 私たちはステージへ向かいますわよ! 巡さん、お先に失礼っ!」

「はぁい。護衛頑張るッスよ」

「もちろんです、お嬢様」

「活躍、期待しているわ」

「それじゃ、駆ちゃんもいってきま~す」

「キル数で歩合制、特別報酬忘れないでよね~?」

「ボクたちも行くぞ!」

「OK!」

「……はぁ、関係各所にまた連絡地獄だぁ」

 

 誰しもが、迷うことなくそれぞれの戦場へと飛び込んでいく。

 

 

「……姫様ぁ! 明星から通信! 柱とかいろいろなデータがまとまったパックが来たよ!」

「了解です。タマちゃん様はそれらの情報を精査後、情報レベルを調整し天2外にも共有してください……帆乃花」

「うん!」

 

 次々と小隊メンバーが出発する中、残る清白帆乃花と命は頷き合う。

 

「できますね?」

「もちろん!」

「二人とも、くれぐれも気をつけなさいよ?」

 

 時間をおいて現地へ向かう予定の九條巡からの呼びかけに、頷きを返して。

 タッグパートナーである二人は同じゲートへと飛び込む。

 

 その先は――。

 

「さぁ、覚悟はいい? 命ちゃん!」

「はい。一切の問題はございません、帆乃花」

 

 ――『天久佐の壁』。その直上。

 

 

「来て! 豪風!!」

「アレに、天久佐の地は二度(ふたど)と踏ませません……!」

 

 

 海に面して反り立つ壁に、ゆっくりと迫り来る巨大な怪物。

 

 

「ヴォオオオオオオオーーーーーー…………!!」

 

 

 亜神級“空泳ぐクジラ”ケートスとの相対。

 

 

「やりますよ、帆乃花」

「うん、やろう! 亜神級“空泳ぐクジラ”の……豪風()()討伐!!」

 

 

 無理、無茶、無謀。

 しかして天2の“いつも通り”の決戦が、今回もまた、始まる……っ!

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 ビーッ、ビーッ!

 

『終夜!』

『ん!』

「はいよ」

 

 軍との回線をONにした端末から、警報が鳴り響く。

 エマージェンシーコールは天2から。

 

 何通もの同じ文言が並ぶ履歴と違い、最新のコールに添えられた言葉はシンプルだった。

 

 

『奥分です。ご自由に』

 

 

 それだけで、もう十分だった。

 

 

「よし、それじゃ行こうか。めばえちゃん」

「え?」

「大丈夫、行けばわかるさ!」

 

 ユナイトセルでゲートを開く。

 この門をくぐった先はもう、新たな戦場だ。

 

「はー、どっこいしょっと!」

「え、え?」

 

 契約鎧姿のめばえちゃんを脇に抱えて、勢いづけてゲートに飛び込む。

 薄暗かった洞窟の景色が一瞬で塗り変わり、夕と夜との堺の空が、俺たちを出迎える。

 

 

「ひぁぁぁぁ……!」

「っしゃあ! ヒーローさん! ヒロイン一丁! お届けに上がりましたぜぇーー!!」

 

 ゲートを越え、弾丸、咆哮、飛び交う戦場ど真ん中。

 俺は迷うことなく最前線で戦う、我らがヒーロー真白君の元へと突っ走る。

 

“日ノ本最終決戦”

 

 その開幕の出来事だった。




次回新章、日ノ本最終決戦編!

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