ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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日ノ本最終決戦シリーズ、タイトル決めが楽しいです。


第197話 日ノ本最終決戦~鋭弾が踊り、赤刀が舞う~

 

 宮咲(みやざき)市街。

 天常の歌声が響く中、防衛隊の行軍は緩やかに、しかして一歩一歩を確実に。

 確かな足取りで行われる安定感のある前進によって、堅実に敵陣を攻略していた。

 

 その理由は明白で。

 

「ど、ドラゴンだ!」

「はぁーい、おっ任せー♪ バァンッ!」

 

 ドンッ!

 

「イフリートが二体同時に!?」

「あそこと、そこ! 狙い撃つよっ☆」

 

 ドンッ! ドンッ!

 

「す、すごい……」

「あれが天2の、人類最強のスナイパー……鏑木翼!」

 

 巨大な難敵が現れる度。

 それらを迅速かつ確実に狩る、狙撃手が存在したからである。

 

 

「みんなー! 今がチャーンス! GOGO!」

「「うおおおおお!」」

 

 個々に人手を割く必要がある大型の敵が、この戦場ではほぼ完封されている。

 その現実は兵たちを大いに盛り上げ、士気を高める。

 

「ふぅー……“精霊纏い”で次弾装填っと」

 

 立役者たる天2の機動歩兵、鏑木翼もまた、気分を高揚させている。

 

(うへへ。みんな素直に大物譲ってくれるから、1キル5Pでコスパ最強っ!)

 

 通常の職務給与に加えて天常家、建岩家からの追加報酬を約束させている彼女は、今まさにノリにノッていた。

 

 

「……でも、そろそろ潮時かな?」

 

 間違いなく人類優勢に進む戦局を櫓から見下ろしつつ、翼は目を細め一人ごちる。

 日ノ本軍の勝利を疑ってこそいないが、ここで自分にできることが減ってきたのを、ハーベストハーベスターを獲得するまでに戦い抜いた彼女の勘が察知する。

 

(明らかに、小物の密度が上がってきてる)

 

 柱が呼び出す敵の種類が変わった。

 大物を出しても役に立たないのだから、その分小物の数を増やす。

 

 至極真っ当な戦略で、かつこの状況下では効果覿面の一手だ。

 

「くっ! 押せ押せー!」

「頭数ならあたいたちだってあるんだ! いっけぇー!!」

 

 結果、宮咲防衛隊の進軍速度が明らかに落ちてくる。

 押し負けることはないだろうが、柱を攻略するまでにはまだ、時間がかかりそうだった。

 

 普通なら、だ。

 

 

「いぃぃやっはぁぁーーーーー!!」

「あ、来た来た」

 

 その瞬間。

 夜の空から一条の、緑の流星が流れ落ちてきた。

 

 つい一時間ほど前まで行方不明だった男の登場を、彼女は待ってましたと歓迎する。

 

「ジャストタイミング!」

 

 櫓から飛び降り、しなやかに着地を決めながら、翼は戦場へ飛び込む緑の流星を追いかける。

 本丸を撃つには弾数がいりそうな場所から、より近く敵の中枢をぶち抜ける位置へ。

 

 

「ぶち抜け呼朝!」

限界突破駆動(システムオーバード)。問題なく継続可能です』

 

 オープンチャットで堂々と響く、彼らのやり取りを聞きながら。

 

(この安心感は、アタシじゃ出せないよねぇ……)

 

 同じ英雄(ハベベ)でありながらも、確かに感じる断絶級の力量差に。

 

「うんうん。やっぱりアタシは、普通だね!」

 

 翼は、自分がまだまだ一般の側に立っているのだと安堵した。

 共に駆ける宮咲防衛隊の面々からの「この人も絶対ヤバい」という視線を、それはもう華麗にスルーして。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 宮咲の戦場にワラワラと湧き出していた小物のハーベストたちを、実質MAP兵器的なSONB(ひっさつわざ)でぶち抜いて。

 

「あとは大丈夫か?」

「ダイジョブー! じゅーぶんじゅーぶん!」

 

 追いかけてきた鏑木さんとかるーく通話でやり取りしながら、ヨシノと一緒に各地の戦局を確認する。

 

「次は福丘か……佐我になるか?」

『優先順位が高いのは福丘だと思われます。が、奥分の戦局がやや不安定です』

「え、真白君が手こずってる?」

彼女(ハンデ)がありますので』

彼女(バフ)だろそれは」

 

 意見の相違を感じながらも、実際不利が出てるんなら行く必要はあるかと考える。

 思考時間、5秒。

 

「……いや、行かなくていいだろ」

『そうですか?』

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『……知ってはいますが、貴方も大概厄介なファンですね?』

「それだけ俺の推しは凄いってことだ」

 

 巡回する選択肢から奥分を排除。

 めばえちゃんを助けるのも、守るのも、今は彼の……真白君の使命だ。

 

 俺は俺で、俺が推す人たちのための最善手を探し、打ち続けるだけだ。

 

 

 ヴンッ!

 

「ねーねー、だったら神子島行ってくんない?」

「そりゃまたなんで?」

 

 鏑木さんから意外な提案。

 

「いやね、うちのお嬢が今歌ってるじゃん? 神子島にもそれ飛ばそうとしたんだけど、拒否られたらしくてさ。気にしてんの」

「あー……」

 

 さもありなん。

 神子島は今、実質的に上位存在の領分になっている。

 

(姫様からシークレットで届いた情報によれば、今、あそこにはRRと新姫様がいるらしい)

 

 この状況は予想されていたのか、それとも新姫様が手を回したのか、神子島を守る防衛隊はすべて建岩の息がかかった隊員に配置換えされている。姫様が表立って天2の面々に伝えたのも、この辺りの情報までだろう。

 戦場すべてを掌握したかった天常さんからすると、情報が遮断されてる状態はちょっと、座りが悪い状態なワケで。

 

 

「……わかった。大丈夫だとは思うが、ちょいと見てくるよ」

「ホント!? ありがとー!」

 

 このタイミングで行く予定はなかったが、チラッと見てくるくらいはいいか。

 合奏の支援効果を十全に発揮するためにも、天常さんのテンションは高い方がいい。

 

「んじゃここは任せたぜ。天2最強のスナイパー様?」

「そっちこそ、みんなを心配させた分は、きっちり働いて返してよね!」

「はい」

 

 不意に正論パンチのカウンターを喰らい、神妙な顔になる俺。

 それを見た鏑木さんに、いつものようにケラケラと、明るくて楽しげな笑顔を向けられながら。

 

「それじゃまた!」

「行ってらっしゃい、うちのエースオブエース!」

 

 俺たちは次の戦場へ“ゲートドライブ”するのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 神子島。

 柱は桜花島ではなく、本土の市街地に建ち、その猛威を振るっていた。

 

「神子島防衛隊、前方機動歩兵を援護! ってぇー!」

「うおおおお!」

 

 機体に建岩の紋をプリントされた“無頼”を駆る、建岩家由来のパイロットたち。

 数こそ少ないが精鋭揃いである彼らは、最前線で戦う得体の知れない謎の存在……RRを、それでも疑うことなく支援し続ける。

 そしてRRもまた、支援を行なう彼らを一切疑うことなく、己の戦いを続けていた。それはまるで、彼らの動きを長きに渡り見てきたかのような、迷いのない戦いぶりだった。

 

 

「動きを抑えます! はぁー!」

 

 そんな戦場を桜花島から見下ろし、新姫は自ら白の一族の秘伝を用いて彼らを手助けしていた。

“下位世界の戦場において直接的な支援行為は行なってはいけない”という禁を破ってのそれは、彼女自身がもう、この世界の一員として振る舞うと決めた、覚悟の行為だった。

 

「白縛術式展開! 動きよ、とまれぇー!」

 

 小さな体を大きく動かし、発動した術式は何十mにも及ぶ光の文様を空に描き、その下にいるハーベストたちを空間の内に束縛する。

 

「今だ! 撃て撃て撃てーー!!」

 

 タイミングを合わせた兵たちの決死の銃撃が、束縛された多数のハーベストたちを打ち抜いて、塵へと還した。

 

 

「はぁ、はぁ、ふぐぅ」

 

 術式を発動したあと、強い疲労感に新姫の膝が折れ、地面に手をつく。

 

『ちょっとちょっとぉ、ペース早すぎだってぇ!』

 

 それをすぐ隣の中空モニター越しに、横井クスノキが心配する。

 だが。

 

「いえ、いえ……!」

 

 新姫は自らの膝を叩き、無理矢理に立ち上がり構えを取る。

 

「今は、一分一秒が惜しいんです。一刻も早く柱をすべて打ち倒し、アレを打倒しなければ……!」

 

 再び顔を上げた彼女の瞳には、強い覚悟が宿っていた。

 

 

『……アンプル、いります?』

「ください!」

 

 短いやり取りの直後、新姫のもとに転送されたアンプルを、彼女は迷わず首へと打ち込み己の力を回復させる。

 

「術式再装填! まだ、まだ! いきます!」

 

 白の一族の中でも戦いに向いていない彼女の、それでも全力の支援行動。

 それは最前線で戦う彼女の……RRも含めたいとし子たちへの、まごうことなき愛だった。

 

 

『――RRちゃん! 新姫様、そろそろ限界だよ!』

「っ! そうですか……!」

 

 一方、クスノキからの連絡を受け、最前線で赤い刀“写し・蛍丸”を振るうRRは静かに歯噛みする。

 この瞬間も脅威を切り捨てながら、彼女は今、思い悩んでいた。

 

(この戦いに、私のあがきに、もはや……何の意味があるのでしょう)

 

 空虚だった。

 何もかもが上手くいかなった。

 

 最初から詰んでいた。

 

 

(想定していた時間に転移できず、転移した時間では既に手遅れなほど世界は変わっていた。その上本来ならばとうに潰えたはずのラスボス候補(くろきしゅうや)が幅を利かせ、それを利用した白衣の男(ルピタ)にここまで、ここまで好き勝手させてしまった……!)

 

 もう。

 自分の知っている歴史に戻ることは、ない。

 

 もう。

 自分の愛する人と再会することは、ない。

 

 もう。

 自分の帰るべき場所は、ない。

 

(愚か。なんたる愚かか。あがいて、あがいて、この程度とは……!)

 

 虹の姫君とまで称された己の能力に自信はあった。

 十全の用意をして事に当たった確信もあった。

 

 だというのにこの結果。

 歴史は塗り替えられ、自分たちの歩んだ道が、一切合切否定されようとしている。

 

 

「一人……」

 

 愛する人の名を呟く。

 それすらもリスクがあるとわかっていながら、呟かずにはいられない。

 

(貴方に会いたい。貴方にもう一度会いたい。私に心をくださった貴方に、叶うなら……!)

 

 刀を振るう。

 敵を切り捨て、前へと進む。

 

 その行為にもはや意味などなく。

 彼女にとってはただただ空虚で。

 

 けれど。

 

 

(あぁ、でも……私には今、それに縋るしかない……!)

 

 彼女は戦うことをやめない。

 絶望しきった彼女を、それでもまだ前に進ませる、呪いのような言葉を見てしまった。

 

 ほかでもない、自分自身から送られた、メッセージの中に。

 

 

『黒木終夜を信じなさい。貴方の愛する人と、再び会って触れたいのなら』

 

 

 それは、確かに希望だった。

 およそ信じようがない荒唐無稽な、それでいて何の脈絡も感じないこの不可解な文が。

 

 だが、わかる。わかってしまった。

 

 

(これは、私の言葉だ)

 

 誰でもない自分自身だからこそ、その言葉に込められた意志を理解する。

 

(これは、確信している私の言葉だ)

 

 一体何をどう確信しているのか、その内実にはさっぱり見当もつかないが、それでも確信しているのなら“建岩命”はそこに正しさを見出すことができる。

 それこそが彼女の天才性であり、世界の贄たる彼女が得たアイデンティティなのだから。

 

 

(……ですが現状、黒木終夜は私に強い恨みを抱いている。なぜなら、彼の最も大切なモノを、私は殺すと言ってしまったのだから)

 

 後悔先に立たず、とはこのことか。

 いまさら自分の行動を間違っていたとは思わないが、それでも下手を打ったと反省する。

 

(出会い頭に殺されても、文句は言えませんね……)

 

 こればかりは、自分ではどうすることもできない。

 きっと、あちらの私も想定していないだろう。

 

 むしろ私が切られたならそれはそれでどうでもいいとすら思っていると予想できる。

 

 

(けれど、貴女は……そんな彼をこそ、選んだのですね)

 

 歴史が変わればこうも変わるものなのかと、感嘆する。

 あんな狂気じみた乱暴者のどこがいいのかと。趣味が悪いにもほどがあると。

 

(……生き残れたら、土産話には事欠かないですね。本当に)

 

 小さな希望。

 暗い暗い闇の奥にぽつりと浮かぶ小さな星のような、そんなか弱い光。

 

 今はただ、その輝きに手を伸ばし、祈るよりほかに――。

 

 

「――っしゃあおらぁぁぁ!! RRぅぅぅぅ!!」

「!?!?!?」

 

 RRの目の前に、それは突然舞い降りた。

 細くしなやかなフォルムの精霊殻“呼朝”と、それを駆るパイロット……黒木終夜。

 

 その手には大太刀。振るわれたらそれで終わり。

 唐突な、死の顕現。

 

 

「お前のことよく知らないしマジわからんしぶっちゃけ今すぐ殺したいが、あとにする!」

「!?!?!?」

「様子見て来いって言われたから来ただけだし、真白君と明星も、もやは俺たちの手中にある!」

「!?!?!?」

「お前が何考えてようが知ったことじゃないから返事は不要! 聞け!」

「!?!?!?」

 

 

「今、俺の敵じゃないのなら、あそこで戦ってる俺の仲間たちを守れ! 新姫ちゃんを守れ! この世界を守れ!」

「!?!?!?」

「ちゃんと守ってそこの柱もぶっ壊したら! お前の話、聞いてやる!!」

「!?!?!?」

 

 

 それは、言いたいことだけ言い切ると。

 

「次っ!」

 

 当たり前のように、彼女が駆けたこの世界での闘いの日々にはなかった技術を使い、戦場から跳び去った。

 ついでとばかりに振るわれた剣の一撃が、戦場に、一息つけるほどの空白を作っていた。

 

 

「……はっ。なんですか、アレは」

 

 生き残った。

 見逃された。

 

 RRは……正史世界の建岩命は、その規格外っぷりに乾いた笑いを零す。

 

「本当に……趣味が悪いですね、こっちの私は!」

 

 動く。

 これまでとは比べ物にならないくらい、四肢に力が入る。

 

「やりますよ、やればいいのでしょう? 信じますよ……私!」

 

 再び先陣を切り柱へ向かって駆け出すRR。

 彼女のその胸に、迷いや虚無は、もはや一点として存在しなかった。




一般戦士C「鏑木の嬢ちゃん。あれで自分を普通だって言い張ってんだぜ」
一般戦士D「ハベベとってる時点で人外だよな。まぁ、話しやすくて常識あるけど」
一般戦士E「緑の風や総司令なんかと比べたらまぁ、普通か?」
C&D「「あー……」」

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