ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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過去一むさくるしい回です。


第198話 日ノ本最終決戦~ワッショイ! 日ノ本漢祭り!

 

 佐我(さが)

 

「イオャァーーッッ!! 決めるぜユメ!」

『んっ、ばく、はつ……!』

「グルギャオオオーーーーーーンッ!!」

 

 乃木坂(のぎさか)君が撹乱しまくって一塊になってた敵を、呼朝のSONB(ナイブレ)でぶっ飛ばし、まとめて蹴散らす。

 今の呼朝で出せる過剰火力気味な精霊技の前には、フェアリーだろうがドラゴンだろうが等しくワンパンだった。

 

「いやぁ、助かったよ。さすがに工作してるのバレて、近づけなくされててさぁ」

「それで逆に自分がデコイになって狙いを集めるとか、機動歩兵がやっていい動きじゃなくないか?」

 

 信じられない話だが、乃木坂君は無傷だった。

 他の地域に比べ殲滅力に乏しい戦力配置となった佐我市街戦で、溢れに溢れた敵ハーベストたちの、なんと8割近くにターゲッティングされた状態でそれなのだから、素直に超人である。

 

「あっはっは。カケルちゃんってば生存特化ビルドだから、正面からの攻撃ならまず当たらないよ」

「死角から飛んできたイフリートの火球避けてたの、見逃してないぜ?」

 

 乃木坂駆(のぎさかかける)

 ハーベストハーベスターこそ獲ってないが、それは撃墜数を稼いでいないというだけ。

 彼は天2において、独自の役割をもって常々戦場を駆けていた。

 

 “探索者勲章(ギャラハット)”と“救済の手勲章(イズールト)”。

 彼の活躍を評する二つの勲章が示すのは、彼が誰よりも多くマーキングに対処し、数多の人々を戦場から救い出したという事実。

 

 本来なら機動歩兵として最も評価されるべきは、木口君みたいな戦果を挙げるタイプではなく、彼のような活躍の仕方をする人物であると、俺は思う。

 

 

「それじゃ、ラストアタックしてくるねぇ」

「気をつけて!」

 

 すでに見た目にわかるほどボロボロな柱にトドメを刺すべく、乃木坂君が駆けていく。

 びっくり仰天だが、どうやら佐我が、柱の破壊一番乗りのようだった。

 

「……息抜きついでに見ていくか」

『BOXに佐々様お手製のやきそばパンが補充してあります。大阿蘇ミネラルウォーターと一緒にどうぞ』

『ん、きゅーけー』

 

 片手間に敵を狩りつつ体力・気力を軽く回復させながら、俺はその瞬間を待つ。

 

 

「それじゃあみんな、ご一緒に! 5! 4!」

「「3! 2! 1!」」

「「「ゼロ!」」」

 

 ボボボンッ!

 

 派手な爆発音とともに、柱がポッキリとへし折れる。

 それは赤い輝きを舞い散らせながらゆっくりと地上へ落下して――落ち切る前に粒となって消え失せた。

 

 へし折れた瞬間からすでに現への干渉力を失っていたのだろう。

 柱の立っていた場所には、まるで元から、何もなかったかのように元の街並みが戻っていた。

 

「「うおおおおおお!!」」

 

 誰知らず上がる鬨の声。

 敵の御旗を打ち破ったという事実が、残敵掃討に向かう兵たちを強く強く鼓舞していく。

 絶えず響き渡る天常さんの歌声とも相まって、今や彼らはみんながみんな、一騎当千の猛者だった。

 

 

「たっだいまー」

「おっかえりー。カケルちゃんグッジョブ!」

 

 戻ってきた乃木坂君と、モニター越しにサムズアップし合う。

 こっちの予定を先読みしてか、彼は迷うことなく呼朝の肩に乗ってきた。

 

「ここはもう大丈夫でしょ。デカブツは終夜ちゃんがぶちってるしさ」

「だな」

「で、次は?」

「あー、次は……」

 

 尋ねられて考える。

 永崎の詰めか、補給込みでいったん隈本に戻るか、それとも……と。

 

 その時だった。

 

 

 ビーッビーッ!

 

「「!?」」

 

 突如鳴り響く俺のネットリンカー。

 緊急連絡を告げるそれを確かめると、その発信者は――。

 

「――どうした、鹿苑寺(ろくおんじ)君?」

「大変だっ! 黒木先輩!」

 

 原作におけるゴッドスピード特攻番長こと、鹿苑寺桂馬(ろくおんじけいま)君。

 切羽詰まった様子の彼の口から、思いもしなかった言葉が届く。

 

 

「たけポン……いや、木口(きぐち)隊長が()()()()!!」

「なんだって!?!?」

 

 青天の霹靂のような衝撃。

 と、同時に、俺たちが次に向かうべき戦場が決定する。

 

 

「カケルちゃんっ! 木口君に異常事態! 福丘に行く!」

「たけポンが!? わかった行こう!」

 

 了解を得て“ゲートドライブ”を起動!

 俺たちは超特急で佐我から福丘へと転移した。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 福丘(ふくおか)

 それは不幸に不幸が重なった、最悪の悲劇だった。

 

 

「全体! 進めー!!」

 

 天2の木口猛(きぐちたけし)を先頭に続く、福丘防衛隊の行軍。

 凄烈とした進行は淀みなく、迫り来る脅威を跳ね除け前へ前へと止まらない。

 

「残弾ゼロ! 弾倉交換!」

 

 そんな中、機動歩兵の一人がリロードを開始した。

 意識を自らの銃へと向け、マニュアル通りに手早く弾倉交換を行なう。

 

 都合にしてほんの数秒。

 この行軍中に幾度として繰り返された、ほんの一瞬の隙。

 

 常ならばそのあいだ、仲間がそれをカバーし、滞りなく終える小さな作業。

 

 だが。

 不幸なことにその瞬間、誰もがその兵士から意識を逸らしていた。

 

 そして、不幸は重なってしまう。

 

 

「オオオオオォォーーーー!!」

 

 咆哮。

 それは精霊級ハーベスト“イフリート”のウォークライ。

 

 今まさに柱から呼び出されたばかりのそれが放つ、挨拶代わりの一撃。

 

 カッ!!

 

 熱線!

 小手調べの火球連打ではなく、初手から必殺の一撃。

 

 だが。

 

「熱線回避!」

 

 それすらも想定内の木口は、敵の予備動作から即座に対応、仲間たちを左右へ散らせる。

 本来であれば、それで終いだった。

 

 

「へ?」

「なっ!!」

 

 不幸に不幸が重なった。

 ちょうどその瞬間に弾倉交換中だった、一人の戦士が取り残されていた。

 周囲の仲間も彼から意識が逸れていたせいで、すでにフォローできる距離になく。

 

 

「ひっ」

「――っ!!」

 

 放たれる熱線。

 精霊殻すら焼き尽くす、決して食らってはならないキルスコア1位の一撃。

 味方のハーベストすら構わずに焼き裂いて迫る、殺意の塊。

 

 それを。

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 猛は、真正面から受け止めた。

 

「ぐおおおおおおおおああああああああああ!!!」

 

 開新のボディが赤熱し、触れた先から猛の体を焼き焦がす。

 

「た、たけポーーーーーーーーーーン!!!」

「「木口隊長ーーーー!!」」

 

 思わず叫ぶ桂馬や隊員たちの声は、彼に聞こえていただろうか。

 熱線が駆け抜けたあと、そこには……。

 

 

「………」

 

 契約鎧の上半分を焼き溶かし、ブスブス煙を吐きながら。

 

「たいちょおおおおーーーーーーーーーーー!!!」

 

 真っ赤に焦げた裸体を晒す、木口猛が立っていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「木口君無事か!?」

「たけポン! ちょっと! 生きてるかい!?」

 

 ゲートドライブで福丘まですっとんできた俺と乃木坂君の目に入るのは。

 

「………」

「黒木先輩! 乃木坂先輩!」

 

 部隊後方で治療を受ける木口君の姿だった。

 おそらく鹿苑寺君の手で“手当て”済みのようだったが、未だ一目で重傷とわかるくらいには、傷が深そうだった。

 

 とりあえず、オリー印のポーションを取り出し、傷口にぶちまける。

 俺の傷を治した異界技術の救急スプレーとは比べるべくもないが、それでも十分チートである。

 

「イフリートか?」

「ああ、不意打ちの熱線を食らいそうになった仲間をかばって……!」

「たけポン……」

 

 あまりにも彼らしい被弾理由に、思わず男三人、表情が緩む。

 木口君は隊の中でも大人びていて、いつだって筋肉推しの兄貴分だった。

 

 この傷は本当に彼らしい、名誉の負傷だった。

 

 

「柱は?」

「何度か近くまで行けたが、削り始めると敵が一気に増えて」

「なるほどな」

 

 機動歩兵は一対一が続くなら無双できるが、数押しされるとやっつけ負けする。

 いかなハベベの木口君とはいえ、攻めあぐねていたんだろう。

 

「だったらさぁ、これはもう、ね?」

「あぁ……行こう」

「オレも行くぜ。たけポンがやられた分……何倍にだってぶち返してやる!」

 

 前線を見れば、今は数と装備に優れた福丘防衛隊が奮戦してくれている。

 精神的支柱を欠いた状態でも、彼らは意気高く戦場に立っていた。

 

 そんな彼らを、一人として欠けさせてはならない。

 

 

「天2の参加した戦場には……戦死者は出ない」

「いいよね、その伝説」

「オレもそれ聞いたとき、超シビれたぜ」

 

 三人とも思いは同じ。

 怒りと闘志が、頭のてっぺんから足の先から満ちている。

 

 力強く踏み出した足で戦場へと向かう――その時。

 

 

「…………っ」

「「!?」」

 

 背後から聞こえた、男の声。

 それに振り向いた俺たちは驚き、そして、目を見開いた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「うおおおおお!! よくも隊長をーーーー!!」

「俺たちの英雄の仇だ! ぶちかませぇぇーーーーー!!」

「こんなところで! こんなところで諦められないのよぉぉーーーー!!」

 

 福丘防衛隊は、決死の戦いを続けていた。

 一歩も引かず、その勢いで押し進め、猛が欠けたあとも攻めの姿勢を忘れなかった。

 

「GAOOOOON!!」

「しゃらくせぇぇ!!」

 

 中型以上が出れば精霊殻が前に立ち、機動歩兵たちは遮蔽を使って支援する。

 

「小さいのの群れだ!」

「任せろ!」

 

 その脇を抜けようとする小型がいれば、機動歩兵が割り込んで、一匹残らず駆逐する。

 惚れ惚れするような連携で敵の猛攻を打ち砕き、前へ前へと進んでいく。

 

 

「ぐっ、また圧力をかけてきた!」

「柱まであと少しなのに!」

 

 だがその行軍も、柱が近づくと鈍り、停滞する。

 密度を上げる敵の反撃に、あと一手が足りないのだ。

 

「くっそぉーーー!!」

「諦めて、たまるかぁぁー!」

 

 攻めきれない焦りが、兵士たちに無茶を強いる。

 ほんの少しの動揺が、彼らの命を軽くする。

 

 そこに。

 

「グバォォォンッ!」

「しまっ!」

 

 大型の陰に隠れていたキメラのブレスが、そのわずかな隙を狙い撃つ。

 

 直撃、死。

 ブレスの範囲に巻き込まれる兵士たちの頭がそれ一色に染まる。

 

 だが。

 その瞬間が訪れることは、終ぞない。

 

 

「っしゃおらぁ!」

 

 彼らの前に突如として舞い降りた一機の精霊殻が、緑の燐光を放ってそれを受け止めていた。

 

「はぁーい。天2小隊黒ワンコ出張サービスでーす」

 

 キメラの口が、閉じられる前に弾丸を飲み込んで弾け飛んだ。

 

「おらっ! 一気に押し切るぞ!!」

 

 直後、隊長の脇を固めていた少年兵が舞い戻り、再び先陣を切り始めた。

 

「天2小隊の……援軍!?」

 

 希望が、戦場に帰ってきた。

 

 

「福丘防衛隊、勇敢なる同志諸君に告ぐ!!!」

「!?!?」

 

 そして、この場の誰もが惜しみ、悲しんだ、声の主が戻ってきた。

 

 

「天2小隊所属! 木口猛万剣長! ご覧の通り、オレは無事だっっ!」

「隊長!!」

 

 誰もが喜びに声のした方を見て。

 

「……隊長?!?!?!?」

 

 ()()()()()()()()、その姿を見て大困惑した。

 

「隊長、それは!?」

「問題ない! これは……オレの新たなる力だ!」

 

 燃え盛る炎は、ポージングを決める猛を一切傷つけていない。

 それどころか彼の傷をなかった風に扱わせ、その身を十二分に動かせるようにしている。

 彼の鍛え抜かれた逞しい筋肉が、炎に照らされ輝いている。

 

 一見して奇怪な、神秘めいた状況。

 

 

「え? ……あれって!?」

 

 そして、ある者は気づく。

 揺らめく青い炎のその内に、ちらりと見える武者の姿を。

 

「蛇の目の鎧に……桔梗の家紋……まさか!」

「応とも!」

 

 察した者の声に応えて、猛が叫ぶ。

 

 

「彼こそは隈本に祀られし英傑が一人! 隈本城築城の主にして富国安民の隈本藩初代藩主! その果敢な魂が神霊へと成られた、その名も……加藤寅之助(カトウトラノスケ)様なり!!」

 

 

 夜天を衝くほど炎が燃え上がる。

 

 

「この身、この肉、この魂! 今は“神懸かり”! 誰にも止められは……せんっっ!!」

 

 

 咆哮。

 先のイフリートの何倍もの音を響かせ漢が吼える。

 

 戦場が震え、一瞬。

 敵も味方もその声に、戦うことすら忘れ去る。

 

 そして。

 

 

「天常ぉ!!」

『なんですの!?』

「リクエストだ! アレを頼む!!」

『アレ? ああ、わかりましたわっ! 行きますわよ!!』

 

 その一瞬の間に行われたのは、戦場に響く歌声の、その曲目変更。

 

『次の曲は、天2小隊前線部隊の隊長、木口猛万剣長から! 曲名は――!!』

 

 そして戦場に響き渡る、新たな歌声が紡ぐのは。

 

 

『“ダイスキスキスキ! 隈本ブレイズ!!”ですわぁぁぁーーーー!!』

 

 超超超超、地元のローカル曲だった。

 それは天2のカラオケで、いつも猛が熱唱している十八番だった。

 

 

『ブレーイズ! ブレーイズ! く・ま・も・とブレーイズ!』

「いざ、参る!! うおおおおおお!!」

 

 青い炎が揺らめいて、誰よりも真っ直ぐに戦場を突き進む。

 上半身は丸裸、下半身も天2の隊服という、あまりにも無謀で心もとない姿で。

 

 だが。

 

「うおおおおおおおお!! っせぇい!」

 

 彼は止まらない。

 敵は彼を止められない。

 

 軍神の青い炎に包まれた戦士には、その鍛えた体一つで十分だった。

 

 

「隊長に続けーーー!!」

「うわぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

 猛の後に道があり、誰もがそれを追いかけた。

 

「よっしゃ! 俺たちも続くぞ!」

「こうなるともう、過剰戦力じゃない?」

「いいじゃねぇか! 蹂躙してやろうぜ!」

 

 そこに天2の漢たちまで加われば、もはや進軍は蹂躙となり、戦いにすらならない。

 

 

「隊長! 柱です!」

「任せろ! ふんぬぅぅぅぅ!!」

 

 時を置かず、日ノ本軍は街を害する諸悪の根源へと辿り着く。

 

「やれ! たけポン!」

「やっちゃえ、たけポン!」

「かませぇぇ! 木口くぅぅぅん!!」

 

 仲間たちの、英傑の、魂の声援をその背に受けて。

 

 

「うおおおおおおおおお! がまだせっ! ワッショーーーーーーーーイッ!!」

 

 漢のこぶしが、柱を穿つ。

 

「ワッショーイ! ワッショーイ! ワッショーイ! ワッショーイ!」

「ワッショーイ! ワッショーイ! ワッショーイ! ワッショーイ!」

 

 ドーンッ! ドーンッ!

 

 それはさながら祭囃子の、打ち鳴らされる太鼓のように響き渡って。

 

「ワッショーーーーイ!!」

 

 10撃目のこぶしが柱を殴った、その瞬間。

 

 ゴゴゴゴッ!

 

 柱は砕け、へし折れて。光となって消え散った。

 

 

「ううううおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!」

 

 燃える男の筋肉の躍動が、勝利の雄たけびとともに打ち震える!

 

「筋肉に! 不可能なし!!!」

 

 それはまた、一つの推し活が未来を切り拓いた瞬間であった。




一般戦士F「……ふっつーに、木口万剣長ってバケモンだよな」
一般戦士G「ちなみにがまだせは隈本弁で“気を張れ”とか“がんばるぞ”って意味だぜ」
一般戦士H「あの人本土から来た人じゃなかったっけ? すっかり染まってんなぁ……」

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