ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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補給をするのでインターミッションです。


第199話 日ノ本最終決戦~インターミッション~

 

 隈本(くまもと)

 先の福丘戦区にて、隈本に縁深い軍神“加藤寅之助(かとうとらのすけ)”様との“神懸かり”を用いて柱をぶち折ったまでは良かったものの、素の傷はそのままだった木口君を連れて、俺は隈本市街区に跳んだ。

 場所は隈本城二の丸公園の一角、作戦書に記載されていた転移用スペースだ。

 

「あとはこちらでお任せください!」

「お願いします」

 

 夜空の星が見えなくなるくらいに明るいこの場所で、すぐ近くに待機していた救護班に木口君を預け、俺も自分の精霊殻と契約鎧の簡易メンテを頼むべく整備班のもとに移動する。

 

 移り変わる戦局の情報は、すでに届いていたのだろう。

 呼朝のためにドックが1つ用意されていて、そして……。

 

「終夜っ!」

「Hi! 終夜!」

「黒木!」

 

 ……天2の仲間たちが、そこで待っていてくれた。

 

 

「みんな!」

 

 呼朝をドックに預け、コックピットから飛び降りる。

 駆け寄ってくる複数の足音を聞きながら、ゆっくりと俺は立ち上がり――。

 

 

「――こんの大たわけがぁああああ!!!」

「へぶわぁぁぁああああああ!?!?!?!?!?」

 

 いの一番に突っ込んできた大親友から、腰の入った見事な全力パンチを喰らい。

 

「へぶっ! へべっ! ぶべぁっ!」

 

 数回のバウンド。

 地面を滑り、倒れ伏す。

 

 

「な、なぜ……?」

 

 身を起こし、俺はこぶしを振り抜き残心を決めている唯一無二の友人を見る。

 

「なぜ、だと?」

 

 小柄な体に青い短髪。ぱっと見、どこぞの王子様。

 

「それはこっちのセリフだ、黒木! またお前はこのボクに断りもなく勝手な行動ばかりして! いちいち心配させられる身にもなってみろ!! 恥を知れ!」

「ひぇっ。ごめんなさい!」

 

 我が友、佐々千代麿(さっさちよまろ)は、肥後もっこす激おこぷんぷん丸の姿であった。

 

 

「まぁ、あなたが悪いわよ。全面的に」

「This is 愛の鞭、だね?」

「それよりだぁりんは? だぁりんは来てないの?」

 

 頼れる仲間は、みんな佐々君の味方(約一名無関心)だった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 二の丸公園。

 天常さんの歌声が大音量で響き渡る中、会議用に作られた休憩室を兼ねる簡易プレハブ小屋にて。

 

「……なるほどな」

「あの子。あなたが言ってたヒーローと、繋がっていたのね」

 

 俺は仲間たちに、脱走してから分かった事実をかいつまんで説明した。

 

 …………正座で。

 

「はぁーい、動かないでねぇ?」

 

 ついでにその状態で、竜胆さんに契約鎧を整備されながら。

 

 

「チヨマロ様。軽くメモにまとめたから。タマちゃんに送っとくね」

「わかった。頼んだぞオリヴィア」

 

 話したのはおおよその情報。

 神子島戦線のあと、めばえちゃんが真白君と共闘関係になったこと。

 めばえちゃんの凶行は、彼女の後援者であった明日葉怜王氏が白衣の男になりかわられた結果起こった悲劇だったこと(一部嘘)。

 めばえちゃんは今、真白君とともに奥分戦区で戦っていること。

 

 ……彼女に告ってフラれたことは、割愛した。

 

「………」

 

 何人かには、もうバレてる気がするけど。

 あのほら、ここで恥の上塗りっていうか痴情のもつれみたいな話をするのは、な? ね?

 

 だからその、早くゲロれみたいな視線は向けないでくれるかなパイセン?!

 

 

「……っていうか、だ。真白君味方になってるの。あれって」

「予想はしてるだろうが建岩の策だ。おかげで今回の黒川の行動を罪に問う流れも、まぁ、うやむやにできるだろう」

「そうかっ! よかった!」

「被害者のあなたが一番嬉しそうにするの、理解はできても頭が混乱するわね」

「そこはもう、黒木だからな」

 

 さすがの俺への理解力を発揮してくれる、佐々君たち。

 ただ、だからこそ……。

 

 

「……ごめん」

 

 ちゃんと謝らないといけないと思って、頭を下げる。

 細かいこと一つ一つを謝ってたら何時間でもかかりそうだったから、全部まとめてこの一言に込める。

 

「まったくね。心配する身にもなって欲しいものだわ」

「I agree! 本当にねっ!」

「はい、はい」

 

 口々に返ってくる仲間たちの言葉を、粛々と受け止める。

 みんなワザとらしく明るめに振舞ってくれてるが、その奥にくすぶるものがあるのを飲み込んでくれているのをなんとなく察せられて、申し訳ない。

 

「だぁりんが“黒木先輩がそんなんでやられるはずがねぇ!”って言ってたから、死にはしないでしょって思ってたけど……ねぇ?」

「そうだな。竜胆の言うとおりだ。だが、だとしても、だとしてもだぞ黒木」

 

 そんな流れの中、みんなを代表するように佐々君が俺の前で屈み、目を合わせて。

 

「黒木」

 

 真っ直ぐに、俺の真正面に向き合って、口を開く。

 

「お前が建岩と同じように、いろいろな情報を秘匿しているのはもうわかってる。それをおいそれと伝えられないことも理解している。そして何より、お前が一番に味方したい存在が誰なのかも、ボクたちはみんなわかっているつもりだ。だとしても、あのとき安易にボクたちを切り捨てようとしたって事実は、根に持つからな?」

 

 それは静かに、そして深い怒りのこもった、対等な親友からの真摯な愛の忠言だった。

 

 

「……ごめん」

「よろしい」

 

 もう一度謝罪の言葉を口にした俺に、佐々君は表情を柔らかくして微笑めば、軽く2,3度、俺の肩を叩いて立ち上がる。

 

「さ、今のでボクは彼を許したぞ。ボクは仕事に戻るから、あとは個々人でこいつにお灸をすえてやってくれ」

 

 そこからの、佐々君の動きは速かった。

 

「20分貰う。それで呼朝の最低限の応急処置は、終わらせてやるよ」

 

 天才整備士の宣言に、ちょうど戻ってきたオリーが口をへの字に曲げた。

 

 

「終夜。これ、渡しとくね!」

 

 彼に連れていかれる前、オリーが俺に小瓶を一つ、投げよこす。

 

 って、これは!

 

「完成してたのか!?」

「Yes! 作れたのはそれ1つだけだから、使うタイミングは気をつけてね!」

 

 そう言ってウィンクして去るハピハピハッピーギャル錬金術師。

 俺の手に残された小瓶。それは異界技術に手を触れた、技能レベル4の領域のアイテム。

 

 作れそうなら作ってくれと頼んでおいた、俺の切り札のひとつだった。

 

 

(ありがとう、オリー!)

 

 俺はもういないオリーに向かって、心からの感謝を――。

 

「――何をもういい話風にして、次へ行こうと思っているのかしら?」

「………」

 

 俺の背後に、静かに、けれど佐々君以上の圧を持った存在がいる。

 っていうかゆっくりと、俺の体を羽衣が絡め取り、動きを拘束し始めている。

 

「あ、九條先輩。そのまま固定しといてくださぁい。整備しやすくなるんでぇ」

「任せて」

 

 真横でゴスロリがふわふわ揺れている。

 背後からゆっくり、ゆっくり、圧が近づいてきている。

 

 

「ねぇ、終夜?」

「……はい」

 

 俺の首筋に、細くて小さい白い指が、そっと宛がわれて。

 

「あのとき、私も部屋に踏み込んでたのよ」

「はい」

「あなたがあの子とゲートを越えていくのも、見てたのよ」

「はい」

「大怪我してるあなたが消えて、追跡もできなくなって……その瞬間の私の気持ち、わかる?」

「………」

「帆乃花もいたのよ。ねぇ、わかる?」

「………」

 

 耳元に淡々と囁かれる声からは、怒りよりも……心細さのような悲嘆が伝わってきた。

 

「……怪我は、治ってるみたいでよかったけど。ほんと、ほんっとうに……心臓に悪かったわ」

「……ごめん」

 

 謝ることしか、できない。

 

 

「ごめん、パイセン」

「バカ。今くらい名前で呼びなさいよ」

 

 コツンッと、頭を小突かれる。

 

「……黒木先輩ってぇー、将来、奥さんの尻に敷かれてそうですねぇ?」

「………」

 

 何も言い返せなかった。

 

「ふふっ」

 

 パイセンは笑っていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「キミが暴れてくれたおかげで、戦局は大きく僕たち側に傾いているよ」

「そりゃよかった」

 

 精霊殻と契約鎧の整備が終わり、ついでに軽く補給もした俺は、コックピットで上天久佐の六牧司令と通話していた。

 

「宮咲の柱はついさっき撃破報告があったよ。奥分も柱への攻撃が始まって撃破は秒読み段階。永崎が大型の処理にちょっと手こずってるみたいだから、最後の一押しお願いできる?」

「了解。大体予想通りって感じだ」

 

 呼朝を起動し、ヨシノたちと一緒に各部をチェック。

 

『さすがは佐々様。限界突破駆動(システムオーバード)による負荷の偏りを完全に把握して補修しておられますね』

『ん。ぜんりょく、いっぱいだせる』

 

 我が天才整備士殿の手腕は、応急処置という名の修繕を見事に終わらせていた。

 ここは絶対に直すべきって場所の取捨選択が、完璧を超えた完璧だった。

 

 

「それとそこの区画の柱だけど……」

「あぁ、それも相談済みだ」

 

 隈本戦区の柱は未だ健在。

 攻略が遅れた理由は、どこよりも多かった住民の安全を最優先していたから。

 

 おかげで天2が到着するまで、その人的被害は奇跡のゼロ人。

 住民たちも対災レベルが上がってたおかげで、混乱こそあったがキッチリ避難したそうだ。

 

 だから。

 

「永崎に跳ぶ前に、ついでにぶっ壊していくぜ」

「うん。よろしくねぇ」

 

 その奇跡、しっかりと完遂させてやる!

 

 

「敵襲! 敵襲ー! ドラゴン2! ワイバーン6! 狙いは響輝です!」

 

 突如として響く警報。

 それを越えた声量で届く、怪物たちの咆哮。

 

『終夜』

「大丈夫。俺たちは作戦通りだ」

 

 思わず助けに行きたくなる……なんて気持ちすら、湧きはしない。

 なぜならば。

 

 

「響輝の護衛は、兵器ちゃんだぜ?」

 

 

 彼女があの程度の雑魚、対処できないはずがない。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「シャグアアアッ?!」

「グルギャオォォォォーーーーーーーーン!!!」

 

 二の丸公園に響く砲音と、断末魔を上げる化物たち。

 

「おーっほっほっほ! 天常輝等羅、ここにありですわー!」

 

 それに続いて天常さんの高笑い。

 

 

(わたくし)の響輝を討ちたいのなら、まずは一二三さんの無頼をなんとかなさいましー!」

「ぎゃあっ、地味にヘイトをこっちに向けさせないで欲しいッス!!」

「タンクとしては本望では?」

「そっちのお嬢を狙ってくる奴の横っ腹を撃った方が効率がいいんスよ! もー!」

 

 オンマイクで轟く、どこか気の抜けたやり取り。

 近くで戦士の笑う声すら聞こえてくる。絶対の信頼からくる余裕だ。

 

 そうしている間に敵の空襲部隊は一匹、また一匹と堕とされて。

 淀みなく遂行される、戦士たれと生まれ育った戦士の当然によって。

 

「ふひー! 黒木先輩! 空、開けたッスよ!」

 

 勝利への道は、正しく整えられた。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

『愚問でしたね』

「だろ? そんじゃ、しゅっぱーつ!」

 

 飛燕(ひえん)を呼び出し大ジャンプ。取っ手を掴んで空中で、ひょいっと呼朝をひるがえして上に乗り。

 

「レッツ、ブースト!」

 

 燐光噴かしてロケットスタート!

 夜の市街をひとっ飛び。

 

 

「終夜!」

「あいよ、パイセン!」

 

 そこにゲートを抜けて跳んでくる、プレーンカラーな白羽衣の巡パイセン。

 

「飛ばすぜ」

「お願い!」

 

 呼朝の肩に掴まらせ、シャラリと変わった紫差し色バフを貰えば、一緒になって加速する。

 

 

「俺が先に仕掛けるから、トドメはパイセンがよろしくな!」

「花を持たせてもらうわね……これも、妹たちの未来のために!」

 

 よりよい未来のために打つべき一手。

 より早く、そしてより多く、みんなの功績が見せつけられるように。

 

 ただ勝つだけじゃ、足りないからな!

 

 

「ヨシノ! 限界突破駆動!」

『了解。出力最大で展開します』

「よっしゃ! 行くぜパイセン! 3,2,1……テイクオフ!」

 

 飛燕から離れ、大ジャンプ!

 オート飛行で飛んでいくそれを見送って、俺は手早くコマンド入力、姿勢制御&予備動作!

 

「コマンドS・O・K・K! (せい)(れい)(きゃく)!!」

 

 緑の流星となった呼朝で、必殺技発動!

 整備で直して全力全開! バフをもらって頂上疾走! 限界突破は起動済み!

 

 

「ちえぇぇぇぇりゃああああああああっっ!!」

 

 上斜め45度の見栄え重視で叩き込む、必殺の脚技!

 

 ガッ!!

 

 柱に衝突!

 

「だぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

 ボゴォッ!!

 

 そのまま柱を貫通し、燐光噴射! 道路に着地!!

 ぐるぐる回って横滑り、衝撃緩和!

 

「パイセン!!」

 

 柱、未だ健在!

 俺の叫びに夜天を舞う、長黒髪(ながくろかみ)の天女が応える。

 

 

「一つ! 赤の衣、力の色!」

 

 白い羽衣に、赤色が差す。

 

「二つ! 紫の衣、加護の色!」

 

 加えて一つ、紫色が差す。

 

「三つ! 黄の衣、守護の色!」

 

 さらに加えて、黄色が差す。

 

「四つ! 五つ! 六つ!」

 

 黒、緑、青。次々と色が加えられ、パイセンの羽衣がカラフルに染まる!

 

 

「七つ! (くう)の衣、破魔の色!」

 

 最後に、聞いたことのない七色目の宣言。

 直後、パイセンの身を包むように、白い光が散り始め。

 

 

「今、七つの色を一つに! ……(てん)(しん)っ!!」

 

 光が爆ぜた、その中に。

 

「……おあっ!?」

 

 俺の想像を超えた光景が、現出していた。

 

 

「……転神完了! “七つ色纏い(ななついろまとい)”!」

「田鶴原様じゃん!?」

 

 田鶴原様の正装とほぼ同じデザインの衣装をまとった、パイセンがいた。

 そのあまりの神々しさに、戦場が昼になったかのように煌めいて。

 

 誰もがその輝きに目を奪われる、そんな中。

 

「大阿蘇様の代行として、一刀、舞い奉ります!」

 

 宣言。

 そして天へと伸びた羽衣が、一本の長く巨大な刀へと変じれば。

 

 

「食らいなさい! “重ね:七色(しちしき)”――“肥後六華(ひごろっか)”っ!」

 

 美しい所作で踊るがごとく、刀を横に振るい薙ぐ。

 (くう)を除いた六色が、刃の軌道に花を咲かせるかのように色彩を足していく。

 

「……(くう)へ、還りなさいっ!」

 

 振り返り、血糊を払うようにその刃が振られれば。

 

 

 ――キンッ!

 

 

 一閃。

 柱に一本、綺麗な線が刻まれて。そこからずるりと滑り、崩れた。

 

 

「……神意代行、これにて完遂」

 

 散り消える柱を背に、元の白羽衣へと戻っていく巡パイセン。

 未だ戦場に敵は残っているが、どうしてだかこの瞬間、世界に音が消えたみたいで。

 

「……ぱねぇ」

 

 まじかるーぷの最終フォームは。

 

「「「うおおおおおおお!!」」」

 

 この場の誰しもを魅了する、ガチでカッコいい最強フォームだった。

 

 

「……行きなさい、終夜! やることが、まだあるんでしょう!?」

「! 応っ!!」

 

 そんなカッコいいパイセンに見送られ、俺は次の戦場へと向かう。

 

 九洲を、日ノ本を守る戦いも、もう終盤。

 迫る最終決戦を前に、俺の心は否応なく沸き上がっていた。




一般戦士I「えっ。まじか☆るーぷって戦えるの!?」
一般戦士J「バッカあなた、アレは本物の現人神よ。戦えるに決まってんでしょ」
一般戦士K「あたしたち、ガチの現人神様に広報で躍らせたり歌わせたりしてんの……?」
一般戦士L「……バチ、当たりませんように!」

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