ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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ここまでが前フリ。


第204話 手札とルールは使い様

 

 種明かしをしよう。

 と言っても、ことはそう難しいものでもない。

 

 今、更地になった神子島市街に顕現している亜神級“夜を呼ぶ者”ナイトメア。

 あれは俺とユメを呼び水として現世に具現化したモノであり。

 

「ォ、オオオオオオーーーーーーーーーー!?!?」

 

 ()()()()()()

 俺とユメではなく白衣の男、ルピタ・オ・レオル・ユビを使用したモノだ。

 

 今頃あいつ、たとえ意識があったとしても、魂を絡め取る闇の檻に身動きは取れまい。

 なんたってあれ、臭くてキモくて最悪だからな!

 

 

「―――!」

「来たか、呼朝!」

 

 “精霊纏い”で呼び出された呼朝、見えてるところから短距離転移でやってきて、傍に跪く。

 それに手を掛けたところで、新姫様がとてとてと、慌てた様子で駆けてきた。

 

「どどどど、どういうことですか、終夜さんっ!?」

「どうもこうも、見たまんまだぜ新姫様。あそこに突っ立ってる化け物は俺の姿もしていなければ、夜闇の精霊であるユメの姿もしていない」

「むむむ。た、確かにっ!」

 

 俺の言葉にすぐさまナイトメアの容姿を確かめて、新姫様は合点がいったように頷いた。

 そこからすぐに、ピコンと何かを閃いた顔をして。

 

「……あ、そういうことですか!」

「お、さすが新姫様。わかりましたか」

「えぇ、えぇ! これでも長く生きて参りましたので。それなりに知識は蓄えてあるのですから!」

 

 小さい胸をむんと張り、しれっと呼朝で遮蔽を取りつつ新姫様が。

 

「あれは――」

「――精霊の一部を切り離し分霊として、そちらを素体に使ったのですね」

 

 答えを言おうとしたその瞬間を、虹姫様が持ってった。

 

「ちょ、みこ」

「ご明察。さすがは天才、虹の姫君!」

「しゅ」

「カラクリはすぐにわかりました。ですが、わからないことがあります」

「ちょっ」

「わからないこと?」

「はい」

 

 ぴょんぴょんしてる新姫様を横目に、話を促す。

 虹姫様は俺と、俺に憑いてるユメを幻視技能で確かめてから、真剣な顔で口を開いた。

 

 

「どうしてそれを、成せたのですか?」

 

 赤い瞳が俺を見る。

 純粋な疑問。そして、答え方によっては俺への警戒度を“倒すべき敵”にまで上げる必要を感じているような、強い用心を宿して。

 

 だが、それは杞憂ってもんだ。

 なぜならば。

 

「あー、それは」

「それは?」

 

 俺の答えは、至極明快。

 

「……練習、したのさ」

「れん、しゅう?」

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 それはある日の、夜のこと。

 場所は、俺の夢の中。

 

 つまりは――『久遠の闇』の中。

 

 

『なるほど。ここで終夜とユメは夜毎に訓練をしていたのですね』

『ん。まいにちエクササイズ』

 

 いつもは俺とユメの二人で過ごす領域に、新たなゲストがやってきた。

 

『……少々、いえ、かなりこれは、悔しいですね』

「まぁまぁ。今日からは一緒に過ごせるわけだから。問題はないだろ?」

 

 俺の腰にくっついてるユメが見上げるその先に、着物の女性。

 ほんのりと桃色混じりの長い白髪をサラリと流す、推定魅力EX越えの美人さん。

 

「改めて、こっちでもよろしくな。ヨシノ」

『はい。こちらでも、私の舞踏は貴方と共に』

 

 精霊としての格を準神級まで高めたことで、とうとう自身の形を持った、俺の相棒精霊だ。

 

 

『イメージが力を貸してくれるというのは、ありがたいですね。この場のおかげで、私の形もこの姿で安定させることができます』

「その姿、現世じゃまだ作れないのか? アマビエ姐さんみたいに」

『難しい……でしょうね。あの方はまず姿ありきの存在ですし。……ですので、今この時を喜ばしく思います。本当に』

 

 心の底から嬉しそうな様子でヨシノが微笑む。

 元が形のない小精霊だった彼女にとって、形を得るのは容易ではない。

 

 ちょくちょく日々の雑談でも聞いていたが、いつか叶うなら、なんて彼女が望んでいたのは知っていたため、俺としても感慨深かった。

 

 

『あとはもう少し成長し能力を安定させられれば、いずれは現世に単独で顕現することも可能になるかと』

「だったらここで、さらなる鍛錬だな」

 

 言い切ると同時、周囲の闇を使って自分の中のイメージを具現化する。

 想像するのは神子島戦線桜花島決戦。そこに“青の氷狼”を足したハードモードの戦場だ。守るべき他者がいない代わりに数ターン後にオーベロンが出てくる仕様である。

 先にトウテツ&ホウキョウを倒しに行くか、群れて面倒くさい青の氷狼を倒すか悩ましい。

 

『なるほど。高度なシミュレーター……と言ってよいのですね』

「実際にダメージ喰らうとガチで痛いし泣きたくなるし、最悪心が侵食されて鬱になって絶望する」

『なるほど。それでこの敵勢力……控えめに言っておバカのやることですね?』

「それが俺の強さの秘訣だ」

『知っています』

 

 軽口を叩きながら、イメージした呼朝に乗り込み訓練開始。

 並みいる敵を、同期したヨシノと一緒にバッタバッタと薙ぎ倒し、無双ゲーしつつ雑談も継続する。

 

 

『ここでは、イメージできれば何でもできるのですか?』

「もやもやの闇がある分は、何でもできると思うぞ。武器も作れるし敵も作れる。戦場も、天候も自由自在だ。俺を追い込み、絶望させるためなら何でも用意してくれる」

『……もしや、私を作ったこともあるのでは?』

「お。あるある。ユメと契約するまでは、ヨシノのコピーを作って同期をアババババ」

 

 突然の理不尽。

 謎ペナルティのおかげで氷狼のブレスをギリ回避する羽目になる。

 

「Why?」

『本当にシミュレーターなのですね。思い描ければなんであれ再現できる、と……ユメ』

『ん?』

 

 待機中だったユメがひょっこり顔を出す。

 久遠の闇にいるあいだは、彼女もラスボスのビジュ素になった愛らしい姿を形にしている。

 

『交代?』

『いいえ。ここは貴女の領域である夜闇の世界、常世・幽世の中でも生と死を司る特殊な場……冥府の境とも繋がっていると聞きます。であれば、実質的に貴女はこの地において万能と呼べる力を振るえるのではないでしょうか?』

「おー」

 

 ヨシノの挙げた疑問に、感嘆の声が出た。

 確かにこの中なら、ユメのイメージこそが一番力強く反映されそうな気がする。

 

 

『んー……だいたい、できると思う』

「おー!」

 

 ユメご本人からも力強いお言葉をいただいた。

 これはもしかすると、もっと戦闘の難易度を上げてステ上げできるかもしれない。

 

 もうちょっとで、上げてこなかった魅力以外、OWコンプできそうなのだ。

 自然と気分が高揚してくる。

 

『では、ユメ』

『んっ』

『ラスボスは作れますか?』

「!?!?」

 

 ちょま……!?

 

『ん? ラス』

「うおおおお! 今のなし! なしだ! ユメは知らなくていい!」

『ん? んう?』

 

 首を傾げるユメを背に、俺は慌ててヨシノの肩を掴む。

 俺よりちょっとだけ背が高いの、意図的だよな?! お姉さんぶりたい意志を感じる。

 

 

「ヨシノ!」

『シミュレーション的には必要では?』

「いやいやいや、ラスボスを顕現させるとか絶対許さないぞ俺は!」

 

 そうだ。

 ラスボスと戦うってことは、つまりはめばえちゃんと戦うってこと。

 

「そんな状況にさせないために、俺はずっと戦って」

『終夜。ここはほぼほぼ万能のシミュレーターなのですよ』

「あ?」

 

 見上げる俺の視線の先に、ヨシノの真っ直ぐな、そして桜模様を宿した瞳が映る。

 

 

『であれば、それを逆手にとり、ラスボスというものの研究をしましょう』

「!?」

『万が一、いえ、億が一、兆が一。貴方の大切な人がラスボスとなってしまったとき、この研究が助ける手立てになるやもしれません』

「!?!?!?」

 

 目から鱗、だった。

 

(ラスボスを、研究……! そんな発想、全くなかった……!)

 

 驚いた俺の反応に満足したのか、ヨシノがまた、微笑んだ。

 

『やれることは何でもやりましょう。それこそが、人事を尽くすということですから』

「……そう、だな」

『ん?』

 

 こうして俺は、久遠の闇でラスボス“夜を呼ぶ者”ナイトメアの研究を始めた。

 当然の如くそれは、困難を極める道だった。

 

 

『がーん……ユメが、世界を、ほろぼす……ぼぼぼぼ』

「あばばばばば、めばえちゃんがラスボスに、あばばばば」

『あれはイメージです、終夜。実際の人物とは関係ありません』

 

 ユメに真実を告げて闇が暴走したり、実際にラスボスをイメージしてみたら俺のトラウマが発症したり。

 

「うおおおお、ヤバいヤバいヤバい! 俺が消える俺が消える!」

『精霊羽織りを併用すれば一時的にラスボス化を遅らせることができるようです、クッ……!』

 

 試しに、俺を素体としたラスボスってのを作ろうとしてみたらガチでラスボス化して取り込まれそうになったり。

 

「うおおおおお!! やべぇぇぇぇ!!」

『これは想定外……え、そうなるのですか!?』

『おおおおおお? おお?』

 

 毎晩毎晩どったんばったん大騒ぎ。

 

 だが、それらを乗り越えた先。

 

『ん、ラスボスになるのは、ここと、ここ』

『であればそれを切り分けられれば……』

「準神級の精霊って確か、複数のキャラと同時に同期できるとか公式設定資料集にあったな。それって……」

『……こう?』

「『あ!』」

 

 発見された分霊システムや、ラスボス化するプロセスや構造の解析。

 様々な情報を俺たちは突き止め、積み上げ、とうとうその解決策を講じられる段階にまで至る。

 

 元が、赤の一族が用意したシステムだったからこそ、答えは確かにあったんだ。

 そして、ラスボス対策ができたなら、それはもう……俺たちにとっては新たな攻撃の手札になる。

 

 

「オオオオオオオオ!!」

「なるほど、()()()()ワケか」

『……成功、してしまいましたね』

『ん。なせば、なる……!』

 

 そうして編み出した、俺たちの切り札――()()()()()()()()()()

 切り分けたユメの分霊を俺のラスボス因子と同期させ、発生したラスボス化現象に対してヨシノが精霊羽織りで俺を守り、そのあいだにユメの分霊を切除。俺という核を失ったラスボス化中の分霊は、近くの()()()()()()()を取り込み無理矢理にラスボス化する。

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

「……そうして生まれたのがあちらです。お二方」

「オオオオオオオーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「なるほど」

「はぇー……ってぇ!! 一歩間違ったら終夜さんがラスボス化してた奴じゃないですか! 何をしているのですかあなたはぁーっっ!!?」

「HAHAHA」

 

 時は戻って神子島元市街。

 モニター越しに萌えキャラ様から想定した通りの反応をもらえて、内心嬉しい。

 

『終夜。ここまでは想定通りです。ですが実際の攻撃手段などについては実戦で把握していく必要があります』

「そうだな。ナイトメアは取り込んだ核によって攻撃手段がある程度変化する。あいつ相手の訓練もしたが、実際どこまで俺たちのイメージと合致するかは未知数だ」

『ん。よく見て、よく倒す』

「頼りにしてるぜ、二人とも!」

 

 呼朝を、ナイトメアの交戦圏内へと向かわせる。

 

 

 ヴンッ!

 

「黒木終夜。あれがラスボスだというのなら……!」

「ああ。わかってる!」

 

 言わなくても新姫様の守りに就いてくれた、虹姫様からの通信。

 切羽詰まった表情から、彼女の言いたいことはすぐにわかった。

 

「あれがラスボスだってんなら、ヒーローじゃなきゃ倒せないってんだろ?」

 

 ラスボスとはヒーローと戦い決着をつける存在。

 この世界における当然の真理だ。

 

 だが。

 

「はい! ですので今すぐに」

「それな。間違いなんだぜ」

 

 俺はそれを、笑って否定する。

 

 

()()()()()()……()()()()()()()()()()()んだわ」

「!?」

「ええーーーーーっ!?!?」

 

 ラスボスシミュレーションを繰り返す中で知った、新事実。

 おそらくは、ラスボス&ヒーローシステムの、バグみたいなもの。

 

「対ラスボス用のヒーロー補正はない。ヒロインの支援も得られない。でも……削り殺せる! 扱い的には、自死って奴だ!」

「じゃあ……じゃあ!」

「そう! この戦い……HVV戦役に、決着がつく! 人類側の、勝利として!」

「オオオオオオオオオオーーーー!!!」

 

 交戦圏内へと入ったことで、ナイトメアが動き出す。

 周囲を雑魚で固めてやがるが、その程度、物の数じゃあない。

 

 

「さぁ、お望み通り最高の舞台で戦ってやるぜ! ルピタ!!」

 

 叫びつつ、手にした突撃銃を挨拶代わりにお見舞いしながら考える。

 

(お前っていうラスボスをぶちのめしルール上の戦いが決すれば、ここから先の未来に対して、上位存在の奴らは干渉する大義を失う!)

 

 史実小説版HVVじゃ、新姫様が白の一族陣営にしてHVV世界の味方って立ち位置で、そりゃもう上手に立ち回ってくれる。

 そのおかげで真白君たち虹勢力に、ハーベストの残党狩りと、上位世界へ反旗を翻す時間的余裕が生まれる展開は熱かった!

 

 特異点だなんだって問題はあるっぽいが、ひとまず余計な邪魔が入るのを大々的に潰せるようになるのはデカい!

 

 

(とっと上位存在同士の争いなんて終わらせて、この世界を、めばえちゃんを、利用できなくさせてやる! こいつはルピタを潰し、同時に上位存在たちの雑な横槍が入る可能性も潰す……俺にしかできない、一石二鳥の神の一手だ!)

 

 そのためのラスボス戦。そのためのラスボス役の押し付け!

 

(気合を入れろ黒木終夜! ここに、すべての舞台は整った……!)

 

 ここからが本当の、そして最後の決戦だ!!




新姫「最近、私の扱いに敬いが足りない気がします」
虹姫(未来命)「愛されてはいますよ」
新姫「歪んでいます! 何かが歪んでいます!!」

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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