ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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くそ面倒臭い推し活男VSくそ面倒臭い推し活男 ファイッ!


第206話 ラスボス討伐戦~上位存在の力~

 

 第一形態。

 確かに奴はそう言った。

 

「ってことは敵は第二形態……どころじゃねぇんだろうなぁ!?」

『終夜!!』

『んんーっ!!』

 

 呼朝、全力疾走。

 戦場を右へ左へ、前へ後ろへ駆け巡る。

 

 ピシュンッ! ピシュンッ!

 

 鳥の鳴き声にも似た短い音は、敵の攻撃。

 小さな光弾の射出音だ。

 

 弾速も早く、そして……。

 

(……すまない、俺の突撃銃!)

 

 当たってしまうと一発で、俺の装備をぶっ壊すほどの威力のな!

 

 

「うおおおーーー!!」

「あははははははははーーーー!!」

 

 逃げ回る俺たちを、ルピタの野郎が嗤う。

 第一形態より一回りサイズアップしたそれは、巨大化した白衣の男その物な形で。

 

「大丈夫、大丈夫! この射撃攻撃はそう何度も連発できないクールタイムが必要な武装さ! 逃げ回れば勝機はあるとも!」

 

 星空柄した巨体に対して不思議とちゃんと聞こえる声で、俺たちを煽ってきた。

 

 

「バーロー! ただ逃げてるだけで終わらせるかよ! ヨシノ!」

『問題ありません! 来ます!』

「おやおやぁ?」

 

 夜空を切り裂き、遠隔操縦モードの飛燕がやって来る。

 移動コマンドに全力入力してる俺の代わりに、ヨシノが引っ張ってくれたものだ。

 

「飛びますかぁ?!」

「飛ぶさ!」

 

 跳び上がり、飛燕に乗る。

 さらなる加速を得た俺は、一旦飛燕の勢いに任せ距離をと――。

 

 

「――はぁい♪」

「っ! 転移!?」

 

 読まれていた。

 飛燕の軌道上、翻されて広がった、星屑柄の巨人の白衣に真っ正面から突っ込む。

 

 虚実の存在であるそれは、俺たちを受け止めることなく透過させ……。

 

「……うっ、おぷっ」

『終夜!?』

 

 突然に沸き上がる、内臓を鷲掴みされてもみもみされまくったかのような不快感。

 続けて起こる、全身から気力をごっそりと奪われたような、強い脱力。

 

 寒気と吐き気、一瞬で心が冷え込む。

 

 

『気力現在値……1026?! 2000近くがたった今の接触で消失したのですか!?』

「ぶ、マジか……!?」

 

 一撃で気力を2000削ぐ攻撃って。

 ゲームじゃ絶対耐えられない奴じゃねぇか!

 

(っていうか、俺ももう一発食らったら死ぬ? ヤバすぎだろ!?)

 

 あまりにも常軌を逸した一撃。

 だがそれは、さらに俺の想像の上を行く。

 

『うぇぇ……』

『ユメ!』

 

 俺と同期してたおかげかヨシノは無事だったんだが、傍で待機状態だったユメは、俺と同じように気力を消耗させられてしまったようで。

 

『む、り……ねむ……』

「ユメ?! おい、ユメ!」

『無事です、終夜。休眠状態に入っただけです』

 

 ユメ、気絶(ダウン)

 状況によっては予備タンクとして活躍してくれるはずだった彼女があっさりと脱落した。

 

 

「おやぁ? 何やら動きが鈍っていませんかねぇ? まだまだ、始まったばかりですよ?」

「くっ!」

 

 再び飛んでくる小さな光弾の連打。

 さっき食べたパン吐きそうなくらいの気持ち悪さを無理矢理抑え込み、俺はコマンドを打ち続ける。

 

(さすがに、未知ってのは……キッツイな!)

 

 ここまでなんだかんだ前世知識を有効活用してきたが。

 まったくの初見、それもラスボス級の存在ってのは、いかんともしがたかった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 第二形態が顕現してから、5合打ち合った。

 

「……あの星屑柄の白衣(?)が厄介だな」

『ですね。次の一撃を私が請け負ったとしても、2発は耐えられません』

 

 ヨシノの言葉に頷きを返す。

 息を整え、どうにかこうにか回避に全力を注ぎこみ、俺たちは今、生き延びている。

 

「フッフッフ! 自ら手を下すというのも、最後の舞台には実にふさわしい所作かもしれませんねぇ!」

 

 俺たちの注視の先。

 ナイトメアの自分を完全に制御してしまったのだろう、でかい図体になったルピタの野郎はといえば。

 

「あぁ! ()き! ()き! ()き! 素晴らしぃぃぃぃ!!」

 

 愉しげに白衣をはためかせ、くねくねと気持ちの悪いポーズをとっている。

 雑にふわふわさせられている、はためくアレが、俺たちを殺すキルウェポンだ。

 

 

「初動が見えない動きは健在、ある程度先読みしながら動かして、アレの体力を削る……か」

 

 それは想像するだに気が遠くなる作業に思えて。

 

「ヒーローでもない俺には、ちょーっと荷が重いかぁ?」

 

 我ながら、ちょっと泣き言が漏れる。

 

『端から無理をおしての突撃行でしたよ?』

「……そうだな」

『はい』

 

 幸いにして相棒は、いつもの調子を保ってくれている。

 おかげで今も体中を這い回る不快感から、意識を逸らすことができた。

 

 

「さて、実際問題。どうするかなぁ?」

 

 手札は、ないことはない。

 だが、それをここで切っていいのかどうか、悩ましいところだった。

 

 と、そのとき。

 

 ヴンッ!

 

 強制的に繋げられる近距離霊子通信。

 通信相手は……新姫様だ。

 

 

「終夜さん! 苦戦していらっしゃるのですか!?」

「新姫様。ご覧の通り、攻め手に回れていませんね」

「……それは、逃げの一手を打たされているからですか?」

「……そうですね」

 

 お?

 

「でしたら……私に手があります!」

「本当ですか?」

「はい!」

 

 おお!

 

「お願いできますか!?」

「お任せください!」

 

 ヴンッ!

 

「……あの自信ありげな声、期待、できるか?」

 

 今、新姫様は後退し、建岩の親衛隊と合流している。

 そこからでも何かしらの援護ができるってんなら、ワンチャンあるかも知れない。

 

 なんて、思っていたら――。

 

 

「お? おおおおおお!!!!????」

 

 突如。

 ルピタが叫びを上げて両膝を地面につけた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 天上に展開する、巨大な術式の陣。

 

 伝わってくるのは振動。

 激しく小刻みに揺れて、見えない何かが強烈な力でルピタの巨躯を抑え込んでいる。

 

「ぐおおおおお! 一族による、直接、干渉おおお……!? これは、流石に、ルール違反では、ないの、ですかかかかかか!?」

 

 予想外の展開だったのか、ルピタから非難の言葉が飛び出した。

 

「いいえ、いいえ! ルール違反では、ありません!」

 

 その言葉に返される、涼やかで、そして力強い少女の声。

 

「なぜならば……私は! 大阿蘇十二神が一柱、八宮たる新姫神(にいひめのかみ)なのですから! 愛する子らを守るため、力を振るうは当然です!」

「詭、弁をぉぉおおおお!!!」

 

 抗おうとするルピタを、新姫様の術式が、確かに凌駕し封じていた。

 

 

「マジか、マジか……!」

 

 期待していた数段上のものが来た!

 超一級の援護に、萎れかけていた心が沸き立つ。

 

 味方になった上位存在、そのすさまじさを目の当たりにする。

 

 

 ヴンッ!

 

「新姫様の術式は強力です。ですが、長くはもちません」

「虹姫様!」

「つまりは今が好機です。私も援護いたします……!」

 

 通信を繋げるや否や。

 呼朝の横を小さな影がとてつもないスピードで駆け抜けていく。

 

「はあああああっ!!」

 

 赤い刃が線を引き、巨人の脇をすり抜ける。

 

「うおおおおおえっ!?!?」

 

 瞬間。

 叫びを上げる巨人の腰に大きな切れ込みが入れば、その内側から大量の黒い泥を噴き出させる。

 それはナイトメアへと初めて与えた、明確な大ダメージだった。

 

 

「……って、そうか!!」

 

 そこで俺は、気づく。

 

「蛍丸の防御貫通攻撃なら、相手の防御が抜ける! だったら!」

 

 即座に“精霊纏い”で武器を呼び出す。

 現れるのは大太刀……の柄。

 

 それを呼朝に握らせて。

 

「ヨシノ!」

『超過駆動武装集中! トツカノツルギ、起動!』

 

 剣に精霊の力を籠めれば、発現するのは緑の刀身!

 

(蛍丸を模して開発したDO-TANUKI・Mk-Ⅲの擬似霊刀化技術。それを精霊殻用に転用した一振り……! 雑魚散らしには過剰火力な上に、毎ターン気力消費で燃費も悪い代物だったが、使いどころはここっきゃない!!)

 

 頭の片隅、帆乃花の母さんがサムズアップする。

 普段から面白がっていろいろ作ってくれる開発陣に、今こそ言おう、ありがとう!

 

 

「おかげで……ちったぁマシに、戦える!!」

 

 突っ込む!

 そして勢いそのままに巨大な敵を掻っ捌く!!

 

「おおおおおあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

 巨体が仰け反り、咆哮を上げる。

 振るった刃は、巨人の左肩を切り裂いた。

 

 削り、の領分を超えたダメージを、俺は確かに与えることに成功した。

 

 

「っしゃあ! 限界突破駆動抜きでもまだ、やれる!」

 

 切る。切る。切って切って切りまくる!

 

「おおおおおおお!!」

「まだまだまだまだーーーーー!!」

 

 暴れる白衣を掻い潜り、一心不乱に切りまくる!

 傷は確実に積み重なって、敵の自動修復を上回る!

 

「っしゃあ! この調子で……!」

 

 戦える。

 まだいける。

 

 しかし。

 そういう時は得てして、引くべき時である。

 

 

「……おめでとぅございまぁす」

「!?」

 

 更なる追撃を入れようとした、その瞬間。

 

「ただ今より、()()()()へと移行します♪」

「しまっ」

 

 バヅンッッッ!!

 

 巨人の全身が突如風船のように膨らんだかと思えば、破裂。

 その内側から大量の黒い泥が噴き出し俺たちへとぶち撒けられ、そのすべてを呑み込んでいった。




新姫「ふふんっ! 褒めてくださってもいいんですよ!」

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