ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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戦いは数だよ! ただし……。


第207話 ラスボス討伐戦~数には数を~

 

 パチパチ、と。

 何かが小さく爆ぜる音がする。

 

「!?」

 

 次の瞬間。

 薄ボンヤリとしていた意識を強制覚醒!

 

 ぎょろりと目玉を動かして、周囲の状況を確認し――。

 

「――うおおおおおおっ!!」

 

 俺は全力で、途切れていたコマンドを入力する。

 

 

「っ!!」

 

 急な動きに全身が軋むのを感じながらも、歯を食いしばって堪える。

 だがそれもほんの僅かな時間のこと。

 

 ギギッ!!

 

「おぁっ!?」

 

 即座に掛かる揺り戻しの衝撃。

 動きたくても動けない。そんな、呼朝からのメッセージを受け取った。

 

 

「ヨシノ! 無事か!?」

 

 次に相棒の名を呼ぶ。

 同時にコックピットを見回して、機体が受けたダメージを確かめていく。

 

(ひび割れとか見た目にわかるダメージはなし。じゃあこの動けなさは……)

 

 頭の中で推察するその途中で、返事があった。

 

『……終夜』

「ヨシノ! 無事だったか!」

『ダメージは大きいですが、無事です。私は、ですが……』

「ヨシノは? ってことは……」

 

 予測するのを察してか、新たに表示されたモニターには。

 

「……なっ!? こいつは!?」

 

 全身を、黒い何かに絡め取られた呼朝の姿が表示されていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 黒い泥。

 俺はこれに、見覚えがある。

 

(……ぶっちゃけ、これ。久遠の闇に満ちてたアレじゃね?)

 

 臭くてキモくて気が抜ける、アレ。

 散々玩具にしてリソースとして使いまくって利用しまくった、アレ。

 

「ヨシノ」

『解析済です。確かに久遠の闇で観測されたエネルギー体と同質のものだと思われます』

 

 やはりか。

 

『ですが、久遠の闇にあったものとは違い、すでに黒い泥として実体を持っており、私たちからの干渉でこれまでのように扱えるかは……難しいと思います』

「なるほど……」

 

 似て非なるもの。

 おそらくだが、ルピタが弄って、あるいはあいつの意志が込められて現実世界に姿を現わしたってところか。

 

 ある意味、こっちが本来の使用法ってことかもしれない。

 

 

『終夜、こちらを』

「ん。……げっ」

 

 続けて見せられた別のモニターに表示された映像……そのおぞましさに舌を出す。

 

「なんだこりゃ……?」

 

 それは、黒い泥に捕らわれている呼朝から、100mほど離れた場所にあった。

 

 

 ドグンッ、ドグンッ。

 ゴボッ。ゴボッ。

 

 心臓が鼓動するような音と、都度重い水が噴き上がるような音。

 それを生み出しているのは、黒い小山のような塊と、そこから湧き上がる黒い泥だ。

 

 それが油田であれば歓喜だが、これは見るだけで生理的嫌悪感を生み出してくる。

 そんな、汚らわしいオブジェみたいな存在が、そこにはあった。

 

 

「……これが、あいつの言う第三形態か」

『おそらく』

「で、第三形態の主な障害は……アレなんだな?」

 

 溢れ出る黒い泥。

 のそり、と。何かが泥を被ったまま、ゆっくりと起き上がる。

 

 全身に被っていた泥が剥がれ落ちると、それは――ゴブリンの姿を取った。

 否、ゴブリンだけではない。

 

 フェアリー、ゴーレム、キマイラといった他の妖精級。

 ユニコーン、ワイバーンといった精霊級などが、次々と湧き上がってくる。

 

 そして当然――。

 

「オオオオオォォーーーー!!」

「グルオォォォォーーーーンッ!!!」

 

 ――イフリートやドラゴンといった、超サイズの精霊級も、次々と姿を見せてくる。

 

 みんなみんな、星屑柄に染まり切った、常ならぬ姿で。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 現れたのは、星屑の軍勢。

 対してこちらは、泥の拘束。

 

「強化された大量の雑魚相手、か。厄介だな」

『はい。正直に言って、このままでは対応しきれないかと』

 

 今こうしてるあいだにも、何度も脱出するべく呼朝を動かしているが、ダメ。

 絡みつく黒い泥は、超過駆動の燐光すら喰らって身動きを封じてくる。

 心なしか、端末を通じて呼朝の不快感が伝わってくるようだ。

 

 

「これは……」

『……そうですね。そうするしかないかと』

「呼朝も……それでいいか?」

 

 ヨシノと示し合わせて、呼朝の意思も確かめる。

 なんとなく、さっき伝わってきた感覚から、声に出して聞いてみた。

 

「……――」

「……ありがとう、呼朝」

 

 ハッキリと聞こえたワケじゃないが。

 彼からも、それでいいと言われた気がした。

 

 だから俺は、迷わずに動き出す。

 

 

「……よし! 脱出!」

 

 コックピットオープン!

 呼朝との同期を解除して、俺とヨシノは外へと飛び出す。

 

「ピギィィッ!!」

「だりゃぁ!!」

 

 出会い頭に襲ってきたフェアリーにパンチ一発!

 

「!? マジか!?」

 

 殴った手応えにまたあの不快感と脱力を感じれば、俺は即座に機動歩兵用のハンドガンを呼び出し、続けて襲ってきたゴブリンの眉間をぶち抜いた。

 

 

「この雑魚、直接触れるとアウトな奴だ!」

『精霊羽織りを!』

 

 理解するや否や、ヨシノが俺をフォローする。

 主体である俺の気絶は、そのままゲームオーバーを意味するゆえの即断即決だ。

 

(周りも全部黒い泥。足場にできるのはぶっちゃけ、この呼朝だけか……!)

 

 “ゲートドライブ”で距離を取ることも視野に入れつつ、装備変更!

 呼び出したそれはズッシリと俺の両手に重さを伝え、足腰を踏ん張らせる。

 

「ぶち抜け!」

 

 放つ。

 機動歩兵が扱うシンプルな兵器の中でも最大威力の必殺武器――ロケットランチャー!!

 

 放たれた4連装のロケットが、100m先の敵の本体に殺到し――!

 

「オオオオオ!?!?」

 

 ドドドドォンッ!!

 

「……チッ!」

 

 ――明らかな庇う動きで、星屑柄のイフリートへと吸い込まれた。

 

 

(はいはいね。星屑ハーベスト共は、しっかりと司令官補正を受けてるってか!)

 

 大丈夫。もちろん強化(バフ)済みだよ! なんて。

 その辺本当に抜かりがねぇな、ルピタの野郎よぉ!!

 

「シンプルな物量作戦! シンプルだからこそくっそ面倒臭いな!?」

『同感です』

 

 DO-TANUKIを、アサルトライフルを、精霊纏った拳や脚を、駆使して駆使して迎撃を続ける。

 こちらが駆逐する速度と、あちらが増える速度の勝負。

 

 

「はぁぁぁーーー!!」

 

 虹姫様が遠くの方で、泥ごと真っ二つにしたり曲芸を披露しているが、焼け石に水。

 さっきの大技で疲労困憊の新姫様は、大事な御身と親衛隊が、安全圏に引っ込めている。

 

「このままじゃ押し潰されちまう……!」

 

 撤退の二文字が頭を過ぎる。

 だがそれは、白衣の男への敗北を意味し、あいつの逃走を許すことに繋がる。

 

(くそっ! あいつは絶対にぶん殴るって、誓ってんのに!!)

 

 再び取り出したハンドガンで星屑ドラゴンの瞳を撃ち抜きながら、悔しさに歯噛みする。

 

 俺の最推し黒川めばえちゃんの過去を弄び、今なお未来への道を邪魔しようとする最大の障害。

 何としてでもここで、この場所で、この時に! 討ち取りたい!!

 

 

「俺に……俺にもっと! 力を!! 力をくれーーーーッッ!!!」

 

 叫んだ。

 叫んで何かが変わるとは思わないが、それでも叫んだ。

 

 遠くで戦う虹姫様にも聞こえるくらいに……いや。その向こうにも、いっそ世界すべてに響けとばかりに、叫んだ。

 

 今に打ち勝つ力を求めた。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「終夜様。力ならここに!」

「!?」

 

 求める声に、応じる声があった。

 それと同時に何か、決定的な空気の変化……みたいなものを、俺は感じ取った。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「レッツゴー! 豪風!」

『ブチカマシマス!』

 

 直後。

 大量のミサイルが雨あられと降り注ぎ、黒い泥を爆破する。

 

 

「お……!」

 

 巨大なゲートを潜り抜け。

 

「おおお!!」

 

 勇壮と歩み寄ってくる巨大なシルエット。

 

「すっげぇぇ!」

 

 それは。

 拡張弾倉をフルに開放し、百を超えるミサイルをぶっ放した――限界突破駆動の“豪風”!

 

「姫様! 帆乃花!」

「はい」

「助けに来たよ! 終夜くん!」

『サザンカモ居マス!』

 

 最強の援軍が、到着した!

 

 

「私もいるわよっ!」

 

 戦場を、燃え盛る火の鳥が舞い踊った。

 

「シャグアアアッ!」

「グルギャオォォォーーーーーーーンッ!!」

 

 ワイバーンを、ドラゴンを。

 空を我が物にしていた星屑の怪物を、火の鳥が呑み込み翼を焼き、大地へ叩き落とす。

 

「さすがに隈本から神子島まで()()のは初めてだったけど、何とかなるものね!」

「パイセン!!」

「巡って呼びなさい!!」

「はい」

 

 火の鳥が夜空に溶け消え、そこから白い衣が神々しいパイセン……巡が姿を見せる。

 すでに七色を操る彼女にとって、もはや“火ノ國朱雀(ひのくにすざく)”は基本技のようだった。

 

 

「終夜! 空は任せなさい! だから……!」

「わかった!」

 

 巡の要請に応え、俺は呼朝から飛び降りる。

 帆乃花たちが泥を吹っ飛ばしてくれた場所を全力で駆け抜け、狙うは泥の発生源!

 

 ミサイルが何発か当たっていたのか、ヒビが入るなど見るからにダメージ有り!

 

「“同心”簡易超過駆動! 唸れDO-TANUKI・Mk-Ⅲ!」

 

 呼び出した刀を両手持ち。

 契約鎧の駆動で擬似霊刀化し、大上段に振り上げる!

 

「死にさらせっ! クソ白衣野郎ーーーーー!!」

 

 100万倍の怨嗟と共に、巨大な泥の塊を一刀両断!!

 

「ぢぇいやっ!!」

 

 即離脱!

 同じ轍を踏む愚は犯さない!

 

 

 ゴ、ゴボボッ!

 

 渾身の一撃を受けた泥の塊が、その内側で何かを詰まらせたようなくぐもった音を出したあと。

 

 ドゥンッ!!!

 

 それは火山の噴火のように、大量の泥を天へと噴き出し縮んでいく。

 次第に地上の泥は固まって白くなっていき、最後にはひび割れ、砕け、砂へと変わった。

 

 

「やったの……?」

「いや、これは……」

 

 巡の言葉を否定する。

 まだ、戦いは終わってない。

 

「……は」

 

 その証拠に、ホラ。

 

「ははは! はははははは!!」

 

 聞こえてきた。

 クソみたいな野郎の、鼻につく声が!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……素晴らしい! 実に素晴らしい! さすが! さすがの天運! さすが我が推し! 持ってますねぇ!!」

 

 それは、空から聞こえてきた。

 

「そうでなくては、こうでなくては!! 最終決戦とはかくあるべし!」

「うるせぇ! だったら第三形態で終わっとけ!!」

「うーん、推しから供給される純然たる殺意。ファンサとして120点!」

 

 空に吹き上がった黒い泥は、どういう理屈か空に留まっていた。

 一つの球体になって纏まって、それは段々、違う形になっていく。

 

 

「地上での戦いばかりでは、少々マンネリとなるでしょう? で・す・の・で!」

 

 それは、翼の生えた悪魔を模した姿を取った。

 黒い泥の一部を巨大な両手持ちの鎌へと作り変え、いかにもといった格好を――。

 

 

 ――ジュンッ!!

 

「………………はい?」

 

 

 取った、その瞬間。

 その脳天を、一発の弾丸がぶち抜いた。

 

 聞こえてくるのは、エンジン音。

 

 怪物の……そのまた天上より鳴り響く、そのプロペラ音は……!

 

 

八津代(やつしろ)ぶりだなぁ、英雄殿ぉ! 無理無茶無謀はお宅の専売特許ってワケじゃあねぇぜ! 日ノ本男児の底力ぁ! 見せてやるぜぇ!!」

 

 限界高度から急速落下してきた巨大な輸送機!

 そしてオープンチャットで鳴り響く、爺様パイロットの声に目を見開く!

 

 すでに解放済みの後部ハッチには、何人かの人影が!

 

 

「はぁい。不意打ち暗殺のご依頼は、天2三羽烏にして天常輝等羅専属SPの鏑木翼ちゃんまで、よろしくお願いしまーす!」

 

 発射済みのスナイパーライフルを縦に構え、勢いよく空へと飛び出す鏑木さん。

 不意の一撃が変身中のルピタの動きを一時的にだが停止させた!

 

「それじゃ……カケルちゃんも、いっきまーす!」

 

 同じく空へと飛び出した乃木坂くんが、盛大に……なんか見たことない手榴弾をばら撒く。

 それらは爆破の瞬間緑色に輝く燐光を放ち。

 

 カッ! ドドドド……ッ!!

 

 いくつもの爆発を巻き起こし、悪魔を呑み込む!

 

「こ、何を……!」

 

 突然のダメージにルピタが何かを言おうとした……次の瞬間。

 

清正公(せいしょこさん)の加護ぞある!! 唸れ筋肉! 精・霊・断!!!」

 

 青い輝きをまとったゴリマッチョ……木口くんの放った全力チョップが、悪魔を縦に切り裂いた!

 

 

「おおおおああああああああーーーーーーーー!?!?!?!?」

 

 悪魔の姿を取ったルピタが、地に墜ちる。 

 頭から落下し、とうとう30mを超えようという巨体が、地面に伏す。

 

 そこに。

 

「だっしゃああああーーーー!!」

「はぁぁぁぁぁーーーー!!!」

 

 俺と虹姫様が、全力で刃を突き立てた。

 

 

「ガアアアアアアアーーーーーーーーー!!」

 

 飛び退き、距離を取る俺たちの視線の先で、奴がまた姿を変えていく。

 

「あー。これは、つまり……」

『はい』

 

 数には数を。

 だが、俺の近くに揃った手勢は一人一人が一騎当千。

 

「……第四形態は、スキップってことだな? ははっ!」

 

 ちょいとばかし、集めた力は過剰だったかもしれない。




スキップされた第四形態ですが、動き出すと超常能力ベースの自称魔法攻撃を連発するくそウザボスでした。

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
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