ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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天上の輝きを、ここに。


第208話 ラスボス討伐戦~その歌声は何度でも、そう何度でも~

 

 限界を超えた加速で仲間を連れてきてくれた、建岩謹製の輸送機が飛び去って行く。

 

「パラシュート降下って初めてだったけど、ヤタちんの補助があっても怖かった~!」

「っていうか、たけポン……パラシュート使ってなくない?」

「フッ。オレには加藤寅之助様の神懸かりと、フンッ! この! 筋肉があるからな!」

「「化け物じゃん」」

 

 戦場も、随分と賑やかになってきた。

 

「ねぇ、黒木君! あれ、何!?」

「ラスボス!」

「「「ラスボス!?」」」

 

 ギャーギャー言い出す三羽烏から視線を外し、空を見る。

 ちょうどそのタイミングで、白い衣の和風魔法少女がすっ飛んできた。

 

 

「終夜ー!」

 

 デュクシッ!

 

「うおっ!!」

 

 体当たりだった。

 

「怪我はない? 治療は必要? 気力減ってるわね……ちょっと待って」

「お、おお……」

 

 治療担当緑の差し色を衣に浮かべ、気力をちょっと回復してもらう。

 気力はアクティブな激しめの行動をすることでも消耗していくため、正直超ありがたかった。

 

 治療中、ずーっとギュってされてたけど。

 

 

「ちょちょちょ! 巡ちゃんそれはズルじゃない!?」

「終夜様の治療をしつつ自身のメンタルにも強化(バフ)を載せる、効率的です」

「命ちゃんはどっちの味方なの!?」

『多分ヒメサマ、後デ自分モヤル気ダヨ』

「ええーっ!?」

 

 防諜とか一切考えてないんだろう。

 誰も彼もがオープンチャット、やりたい放題伝え放題。

 

 って、こらパイセン。ドヤ顔しない。

 うちの契約精霊みたいだいだだだだだだっ!!

 

「あっ、ごめんなさい。大丈夫?」

「いやこれはパ……巡のせいじゃないから」

『いったい誰の仕業なのでしょうね』

 

 俺の相棒、とうとう心まで読み始めたか? これ?

 

 

「……くっ。くくくっ!」

「!?」

 

 潰れて形を黒い泥に戻したルピタが、いったいどこから出してるのか笑い声をあげた。

 

「いいでしょう。奇策も策。第四形態はあれで終わりといたしましょう……!」

 

 再び泥が形を変えて、今度はゆっくりと、一本の柱を形作っていく。

 

(……いや、あれは。…………木、か?)

 

 柱のように太い幹。

 高さ40mに近いところから、一気に広がり生い茂る枝葉たち。

 

 それは星屑の果実を大量に実らせた、世界樹とでもいうべき姿になって。

 

「奇策には奇策を。私の第五形態を、存分に味わってください!」

 

 満を持して、動き出す!

 

 

「……………………?」

 

 ?

 

「ん?」

 

 シン……――。

 

(動き出した、ハズ……だよ、な?)

 

 パッと見、何かが変わったような気配はない。

 それどころかルピタの野郎は、むしろ微動だにしなくなったっていうか――。

 

 

『――あ、ぐっ、あああああ!!!』

「ヨシノ!?」

 

 

 それは、突然に響き渡る、相棒の呻き声だった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

『ナッ、イ゛ッ! ア゛ア゛ア゛ア゛!!?』

「サザンカちゃん!?」

 

 突然の呻き。

 それは帆乃花と契約で結ばれたもう一人の殻操の精霊からも漏れ出でて。

 

『……!!』

「加藤様!?」

『なっ、しま――!』

「田鶴原様!?」

 

 神懸かりを発動していた木口君から光が抜けて、巡に至っては変身が強制解除され。

 

「終夜様!」

「姫様!」

「大阿蘇様との繋がりが弱まりました! これはおそらく……霊体への直接攻撃です!」

「なっ!?」

 

 焦りを伴う姫様の指摘。

 それを裏付けるように、仲間たちから次々と声が上がる。

 

「ヤタちん!? 大丈夫!? ヤタちん!?」

「ちょっと! ここにきてダウンとかヤバイってぇ!」

「クッ……私との繋がりもですか、建岩龍命(たていわたつのみこと)様……!」

 

 虹姫様ですら、その効果からは抗えなかったらしい。

 全体に、どうしようもなく強烈な動揺が走る。

 

(俺たちと精霊や神様たち。その繋がりの力を、何をどうやったかあん畜生が阻害したってか!?)

 

 大樹になったルピタを睨む。

 それはまるで、俺がそうすることを待っていたかのように、声を発した。

 

 

「お察しの通り、此度の形態は皆様お頼りの精霊たちへの攻撃態。放置すれば弱い精霊から、その力を失い休眠状態へと陥って行く……ですが、精霊の助けなくば貴方たちは無力! えぇ! 無力!! そんな状態でどうやって、生命力に満ち満ちた大樹となった私を、倒せますでしょうか!?」

「………」

 

 ク、ク、クソゲ~~~~!!

 

(精霊の助けを得られない、だって!?)

 

 それは大前提として、マジのマジの大前提として、致命的すぎる!

 

(俺たちの戦う力は、自身の力と精霊の力、そして兵器の力を足した物。その中でも特に、異界存在であるハーベストたちと戦うためには……幽世に属する精霊たちの助けが必須!)

 

 精霊による補助がなければ俺たちは……特に、俺たちの扱う兵器は!

 

 

「く、のっ!」

「鏑木!」

 

 パァンッ! パキッ!

 

「うっそ! 弾丸が……届く前に砕けた!?」

 

 御覧の通り。

 ハーベスト相手にその威力を大幅に減衰……亜神級相手ともなればもはや、通じない!

 

「え……これ、マジでヤバい奴だったりぃ?」

「大いにマズいわ。少なくとも今の私は、ただの役立たずな小娘よ……!」

 

 乃木坂君が懸念する通り、巡パイセンが言う通り。

 

 

「……やべぇな、コレ」

 

 

 一転して、俺たちは窮地に立たされてしまった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「今の俺たちは……攻撃する手段も、身を守るすべも、ない!」

 

 聳え立つ大樹を前に。

 俺たちは……天2は……無力だった。

 

 

「さぁ、さぁ、さぁ! そろそろこちらから、次の攻撃へ移りますよ!」

「!? みんな! 離れろ!!」

 

 咄嗟に叫び、それに合わせてみんなも駆け出す。

 だが、遅かった。

 

「そぅれっ!」

 

 それは大樹となったルピタからの攻撃。

 その身を震わせ、たわわに実った星屑の果実を、次々に振るい、地上へと落としていく。

 

 それは間違いなく、意趣返しだった。

 

 

 チュドドドド……ッ!!

 

 爆発。爆発。爆発爆発爆発爆発!!

 

「うおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!!」

 

 星屑の果実の正体は、爆弾。

 腹立たしいことに、爆発の際に星を散らすような美しい輝きを放ちながら、それは爆ぜる。

 

 直撃したら致命の一撃。

 

 それらを天2隊員たちは、辛うじて躱し、逃げ惑う。

 

「ふぅぅんんんんん!!」

 

 豪風に乗った帆乃花は、複座である利点を利用し命の力を精霊殻へ供給。

 無理矢理に駆動させ、呼び出した大盾を天へと掲げてみんなを守る傘を作った。

 

「くぅぅぅぅぅっ!!」

 

 大盾へのダメージをいくらか自身で受け持って、ギリギリのところで踏ん張っていた。

 

 

(ギリギリ、ギリギリ耐えてはいる。耐えてはいる、が……!)

 

 ジリ貧だった。

 反撃の手がなければ、ここから先へ繋げられない。

 

「虹姫様! 何か手はないか!?」

「現状、思いつく手立てとしては……私たち自身の生命力を直接相手に叩き込み、ダメージを与えるという手段しか……!」

 

 それ、俺たちの命が絶対先に尽きる奴!

 

「誰かを、誰かを犠牲にしなきゃ勝てないってのかよ……!」

「「………」」

 

 俺の慟哭に、集まった天2メンバーも虹姫様も押し黙った。

 

 

(誰かを犠牲に、誰かを踏み台にしての勝利なんて、絶対に認めねぇ!)

 

 諦めたくない。

 絶対に、絶対に、ぜっっっったいに、諦めたくない!!

 

(……使う、か?)

 

 俺は、胸の内に隠した切り札に意識を向ける。

 確かな重みをもったそれは、この世界とは異なる世界の理で働く必殺の武器だ。

 

(これの力を借りたなら、確かにこの状況を打破できる可能性はある。だが……それこそこれは、本当の意味での切り札なんだ。でも……!)

 

 使うべきか、使わざるべきか。

 頭の中で激しく葛藤しながら、それでも答えを出し切れない。

 

 

(ヨシノ……気合で何とかできないか!?)

 

 遂には今この瞬間も耐え忍んでいるだろう相棒に、思いっきり無茶ぶり投げる思考になった……その瞬間。

 

 

「うぇ?」

「え?」

 

 不意に聞こえた、鏑木さんと巡の、素っ頓狂な声。

 

「なに…………あ」

 

 釣られて彼女たちの見ている先へ、俺も目線を向けたとき。

 

「……へはっ!」

 

 勝った。

 そう確信した。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 星屑果実爆弾に耐え忍ぶ豪風の下。

 無力な俺たちの前に、それはふわふわと飛んできた。

 

 それは小さな、小さなドローン。

 小さい体にこの世のモノとは思えない、超科学の粋を込めて作られた、異界レベルのチートマシン。

 

 そのドローンに搭載されたプロジェクターから、中空に、猫耳フレームのモニターが映し出される。

 

 ノイズだらけの映像に、ただ一文。

 

 『LIVE START』

 

 勝利の言葉が、刻まれる!!

 

 

『オーーーーーーーーーーーッホッホッホ!!!』

「!?!?!?」

 

 神子島の空に、再びその声が響き渡る!

 

『みなさま! お待たせいたしましたわーーーー!!』

 

 大きな大きなスクリーンが、数多のドローンを媒介にして作り出される!

 

『天に輝くキララ星! 世界の歌姫! 天2最高のお嬢様たるこの(わたくし)。天常輝等羅の、登場ですわーーーー!!』

『お嬢様の忠実なるしもべ、細川渚です。よろしくお願いします』

 

 スクリーンに描き出されたのは、二人の少女……って、ん?

 

「あれ?」

「え? どういうこと?」

 

 その姿を見た俺たちに、困惑が広がった。

 

 

『準備に多少手間取りましたが、天2が誇る整備班が、1時間で響輝の改装やってくれましたわー!』

『こら輝等羅! ここまでやったんだ! しくじるんじゃないぞ!』

『当然でしてよ! あとはこの、天常輝等羅! 天常輝等羅にお任せくださいましー!』

『HEY! 最前線で頑張ってるみんな! 私たちも応援するから、頑張って!』

『隈本本丸は、まぁやのだぁりんとその他大勢が守るからだいじょうぶ~』

『ッスよ~』

 

 画面の向こう、賑やかな姿を見せる、整備班。

 だが、そんな彼らの姿よりも、もーーーーーっと気になっちまうのが。

 

「ねぇねぇ、輝等羅ちゃん! どうして輝等羅ちゃんも、()()()()()()()()!?」

 

 帆乃花が指摘してくれた、その一点。

 正確にはそれプラス……細川さんの口元にも、マイクが取り付けられてること。

 

『オーーーッホッホッホ! よくぞ聞いてくれましたわ! 答えは簡単! 私も()()、するんですのよーーーー!!』

 

 ……俺が指摘しなくても、答えは得られそうだ。

 

「………」

 

 あろうことかルピタの野郎も、天常さんに興味を惹かれて攻撃を止めていた。

 

 

『私、常々思っておりましたの。歌唱が出来て、演奏が出来るなら……一人で『合奏』できるのでは? と』

『お嬢様に不可能はありません』

『そして私、本日は渚と協力し、完全合奏を見事成し遂げましたわ!』

『お嬢様なら当然です』

『で・す・の・で!』

『はい、お嬢様』

 

 

『私と渚でそれぞれ合奏し、それを完全合奏させたらパーフェクトを超えたパーフェクトになるのではないかと、考えましたのよ~~~~~~!!』

『わー!』

 

 ドンドンパフパフ!(by整備班)

 

『ということで、ぶちあげてまいりますわよ~~~~~~~!!』

『はい、お嬢様!!』

 

 

 だからそれは。

 何物にも妨害されることなく、当然のように始まった。

 

 

『完全合奏、さらに重ねて……超越合奏!!』

『お送りします……“最強、則ち、イコール私”!!』

 

 

 神子島に、歌声が響く。

 盛大で、壮大で、何よりも楽しげな……天上を超えた歌声が響き渡る。

 

『何も恐れることはない たとえ世界が振り向かなくても それを追い越し私は進む♪』

『何も怖がることはない もしもあなたが怯えるならば 私の背中を追いかけなさい♪』

 

 こんなの、知らない。

 そもそも完全合奏って何だってのに、超越合奏ってマジで何?

 

『私の声は剣で盾 矛盾を抱えてそれでも前へ♪』

『私の舞は希望で奇跡 光の翼で飛び出すの♪』

 

 力が湧いてくる。

 胸の奥底から、熱い何かが湧き上がってくる。

 

SOUL(ソウッ)! 誰が最強?』

YES(イエスッ)! 私が最強!』

 

『『最強、則ち、イコール私!!』』

 

 歌が、俺たちを奮い立たせる!!

 

 

『終、夜……!』

「ヨシノ!」

 

 そしてそれは、精霊たちも同じだった。

 

『あれが、最新の……人が精霊へと捧げる歌、ですか』

「あぁ……凄いだろ? あの歌声は……まさしく希望へ繋げる極上の歌だ!」

 

 みんなみんな、手に手に武器を掲げて、構えていく。

 契約兵装が、契約鎧が、そして精霊殻が、その力を120%以上発揮し始める!

 

 

「……いけるか、ヨシノ?」

『問題ありません。私の舞踏は、今再び貴方と共に!』

 

 挫けそうになっていた心が、また立ち上がる。

 あの歌声があれば何度でも、そう何度でもそうできると確信する!

 

 

『はい! そこなでっかい木のお方! よろしくて?』

「…………はい?」

『……人類、舐めてもらってはいけませんわよ! おーーーーっほっほっほ!!』

「………」

 

 MCで、キッチリワンパン決めたお嬢様を見届けて。

 

 

「戦えるなら相手はただの木偶(でく)(ぼう)だ! ぶちのめすぞ!!」

「「「おうっ!!」」」

 

 木口くんの号令と共に、俺たちはまた戦場へと飛び込む!

 

 ……結果?

 

 この形態は突破した。

 

 それで十分だよな?




超越。それ限界を超え境界を越え、新たな世界へ羽ばたく力。

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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