ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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真の理不尽。


第210話 ラスボス討伐戦~世界が愛したバカップル~

 

 時はしばらく、巻き戻る。

 

「ま、ましろひとり……くん!」

「は、はいっ!」

「あ……あ……あなたのことが、す、好き、です!」

「!?」

「あの、その……私、と。恋人になって、くだ……さいっ!」

「…………は、い」

「ぁ……!?」

「……はい。こちらこそ、よろしくお願いしまうわぁっ!?」

「~~~~~~~~~~っ!!」

 

 黒木終夜が奥分で無双していたその裏で行われた、小さくも特別なイベント。

 戦いの中で恋人関係となった、ヒーローとヒロイン(ラスボス候補)。

 

 

『(あーあ。これはもう修正しようもない、しっちゃかめっちゃかな展開です)』

 

 正史回帰を望む明星の精霊(スズラン)が諦めの極致へと至った結果、出力を落とし。

 

「きゃあああ!」

「大丈夫、僕に掴まってて!」

 

 それでも一人乗り用の機体に二人乗りという不利すら跳ね除けて、彼らは柱を攻略した。

 

 その結果――。

 

 

「僕たちなら、いける!」

「私たちなら、なんでも、できる……!」

 

 

 ――それはそれは見事なつり橋効果によって。

 

 

「いこう、めばえちゃん! 世界を救いに!」

「うん、うん。あなたとなら、どこへでも……!」

 

 

 ここに、一組の()()()()()が、誕生した。

 ついでになぜか、この瞬間より二人の体がぼんやりと輝きだす。

 

「「?」」

 

 二人は特に気にしなかったが、世界的には割と、とんでもないことが起こっていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「あ?」

「へ?」

 

 目の前で起こった出来事に。

 俺はちょっとばかし、脳の処理が追い付かなかった。

 

(あれは、明星? ってことは、真白君と……めばえちゃん、だよな?)

 

 突如として戦場に乱入してきた明星が、俺の知らないなんか超すごい防御結界を、精霊拳の一撃でかち割った。

 ルピタの説明的に、おそらくは俺も読んだことのない未来の展開で登場するような、えっぐい超防御だったと思われるそれを。

 

 

「は、い?」

 

 当のルピタ(鬼)も、なんか口半開きのアホ面になっている。

 多分この場の誰一人として、この瞬間に何が起こったのか正確に把握できてない。

 

 マジのマジで……奇跡としか言いようのない何かが。

 

「……マジかぁ」

 

 あの二人の手で成されたんだ。

 

 

「こ、の……な、ぜ……!?」

「僕たちが!」

「明日を、掴むために!」

「!?!?!?」

 

 防御を破られ、無防備を晒したルピタを、明星の左脚が襲う!

 青い燐光を纏った一撃が、その頬へと叩き込まれ……振り抜かれる!!

 

 

「ゴルブルゥァァァァァ!?!?」

 

 俺たちが通せなかったダメージを、あっさりと通した。

 ゴムまりのように跳ね飛んで、何度も何度もバウンドするルピタをよそに、華麗な着地を決める明星。

 

 まるでその一撃で格付けが完了したかのように、両者の有利不利は明白で。

 

「あれが、世界に選ばれた、ヒーロー……!」

「はは。本当に規格外、だねぇ……?」

 

 治療を受け意識を取り戻した木口君&乃木坂君から、感嘆の声が漏れ聞こえた。

 

 

「っぱ、“ひと×めば”だったってことだな!」

 

 なんかもう、いろいろ吹っ飛んで誇らしかった。

 どこまでもヒーロー気質な真白君の、その隣にめばえちゃんがいるという光景。

 

 今まさに窮地を救われて、一発で希望を見せつけられて、震えが止まらない!

 

 

「うおおおおおお!! 俺の推したち、世界一ぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!」

 

 たまらずに、叫ぶ。

 こんなん我慢なんてできるはずがない!

 

 ほとんど失っていた気力が、ギュンギュンと回復していく!

 

『……――!』

「ん?」

 

 そんな時。

 どこからか声が、聞こえてきた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……い、や。いやいやいやいやいや! それはないでしょう理不尽でしょうナンセンスでしょう!?」

 

 立ち上がり、ルピタは全身を使って猛抗議する。

 

「なんですか今のは!? 私がどれだけ幻実防御結界を練り上げるために苦労したと思っているのですか!? あれは白の技術と赤の技術を両方手にした上で幾度の実験の上に成り立った私の最高」

「だああああーーーーーーーーッッ!!」

「ぬああああああああ!!!」

 

 言葉を遮って飛んできた弾丸を、再び幻実防御結界で受け止めようとするも。

 

「ウバババババババババ!!!!」

 

 あっさりそれを破ってヒット! ヒット! ヒット!!

 思ってもみない形でダメージを負い、彼の中で混乱と困惑、そして怒りのボルテージが高まっていく。

 

「なぜ!? なぜ!? なぜ!? いったいどういう理屈でオバババババババ!! ちぃぃ、鬱陶しいっ!!」

 

 しかして考える間もなく乱射される突撃銃の弾幕に、ただただ今は逃げ惑う。

 

「僕が!」

「私が!」

「「この世界を、守る!!」」

 

 現在進行形で理不尽遂行中の二人からは、ただただ想いを発露した言葉だけが吐き出されていた。

 

 

「命ちゃん!」

「用意はできています!」

『次弾装填完了デス!』

 

 一転して有利。であればそのチャンスを逃さないのが天2である。

 機を見て敏の天才と、()()()()()()()()()が、明星の動きに呼応して駆動する!

 

「足を止めます! 真白機は接近戦の用意を!」

「了解!」

 

 命と一人。

 正史であれば結ばれた二人は、ただの戦友として言葉を交わし、連携する。

 

 それでも運命によって繋がった二人の縁は、高度な連動を実現する!

 

 

「ミサイル、発射!」

「いっけぇぇーーーー!!」

 

 再装備されたミサイルは、今度はルピタの移動を阻害するように降り注ぐ。

 

「!? くっ!!」

 

 受けきれないのか、ルピタはそれを必死に回避。

 冷静さを欠いているのか、結果としてまんまと誘導に引っかかり。

 

「僕たちは!」

「勝つ!」

「んなぁっ!!」

 

 足を止めたところで、飛び込んできた明星の精霊拳をモロに打ち込まれ、地を舐めた。

 

 

「! 行こう、めばえちゃん!」

「ええ……! 追い詰めて、追い詰めて、生まれてきたことを……後悔、させましょう?」

 

 さらなる追撃にかかる明星に対して。

 

「こんな、こんなくだらない展開など……認められるかぁ!!」

 

 とうとう。

 ルピタは咆哮を上げ、立ち上がり怒りを露わにする。

 

「アドリブはいい! これまでの経験や積み重ねの先に生まれるランダムにはロマンがある! だが、だが! これはダメだ! チート! ズル! こんな理不尽! 認められない!!」

 

 全身から触手を生やし、鞭のようにしならせて、あらゆる者の接近を拒む。

 

「すべてをひっくり返す雑な奇跡など! 私は認めな」

「バァンッ」

「!?」

 

 取るに足らない一発が、ルピタに命中した。

 

 

「はぇぁ?」

「……人の形してんだから、そうなるんだよっ」

 

 それはダメージを与えるには足りない、けれど確かに命中個所を圧し、衝撃を与える一撃。

 

 カクンッ!

 

「?!」

 

 不意の脱力に、ルピタが片膝をつく。

 射撃手、鏑木翼が狙い撃ったのは、まさしく彼の膝裏だった。

 

 崩れた姿勢に触手の軌道が乱れ、互いに打ち合い弾かれて、空白が生まれる。

 そこにやや、大柄な人影が飛び込んだ。

 

 

「がまっ、だすっ、ばい!!」

 

 木口猛が、青い燐光を放って猛然と突っ込み、そのこぶしを叩き込む!

 狙いは崩れた態勢を支える、もう一方の足。

 

 きりもみ回転してふくらはぎにサイドアタックを決めた一撃は。

 

 ドゥンッ!

 

 巨大な太鼓を叩くような音と共に、鬼たるルピタの巨体を浮かせてみせる。

 

 

「これはおまけだ、受け取れ!」

「!?!?!?」

 

 一撃離脱。

 そんな彼が離れ際に投げたのは、緑の燐光を放つ手榴弾。

 

「ぬああああああーーーー!!!」

 

 炸裂したそれは、反射的にルピタに、防御の構えを取らせた。

 己の感情に振り回されている彼に、この瞬間冷静な対応を取る余裕などなかった。

 

 だからこれを、見落とした。

 

 

「……ルピタ・オ・レオル・ユビ」

「!?」

 

 気づけば彼の頭の上に、一人の女が立っていた。

 赤い契約鎧を身にまとい、赤い短髪を吹き荒れる戦上の風にたなびかせる美女。

 

「今、借りを返しますよ」

 

 その両の手に……()()()()()()()()()

 

「ばっ!」

「ふんっ!!」

 

 叩きつける。

 直後、衝撃と共にそれは炸裂し、ダメージを通した。

 

 

「……儀式であれば、私たちの勝ちですね?」

 

 ゲートドライブの短距離転移で遠ざかりながら勝ち誇る、虹の姫君の視線の先。

 

「……な、あああ!!」

 

 鬼となったルピタの象徴であった、角が砕け散っていた。

 それは、彼自身が仕組んだゲームにおける……敗北を意味しており。

 

 

「そんな、そんな……!」

 

 打ちひしがれて、ぼぅと夜空を見上げるルピタ。

 その瞳から星屑色の滂沱の涙をこぼし、両手を挙げて空を仰ぐ。

 

「なんだこれは! なんなのだこれは! このような決着! このような終わりなど! どうして! どうして認められるはずがない!!」

 

 それは神へ祈りを捧げる祭司のように。

 同時に哀れな子羊めいた、自らに同情を引こうとするかのような悲愴で満たした表情で。

 

「こんな最高の舞台なのだ! 負けるにしても、負け方というものがある!」

 

 直後。

 

「無効無効無効無効ぉぉぉーーーーーーーーー!!!」

 

 憤怒を燃やし、雄叫びを上げ……砕けた角を再生する。

 

「……愚かな」

「黙れ歴史の敗北者ぁ! 私を負かしていいのはぁ! 彼だけ! 彼だけだ!」

 

 唾棄する虹の姫君を怒鳴りつけ、ルピタは戦場を見回す。

 この場で唯一、倒されてもいいと思える自らの一番の推しの姿を探した。

 

 

「くろきぃ! くろきくろきくろきくろきしゅうやぁぁぁ!!!」

 

 もはや己を一切制御できていない様子で、その名を呼ぶ。

 

「もっと! もっと派手で! 楽しく! 激しい戦いを! 決着を! 興奮をををを!!」

「あー、はいはい。準備に手間取ってごめんなさいねっと」

「!」

 

 返事があり、狂喜と共に目を向けて。

 

「でも、ざーんねん。俺は、俺だけで決着をつける気なんて、さらさらないんだわ」

 

 目の前に広がる光景に、愕然とする。

 

 

「……手、貸してくれるか? 真白君。めばえちゃん!」

「もちろんだよ! ね、めばえちゃん?」

「えぇ、私たちで……世界を救いましょう!」

 

 並び立つ、二機の明星型精霊殻。

 片や超高機動改造を施され、もはや別物となった……“呼朝”。

 片や未来に至り改修を重ねた、今黒に染められた真なる救世機……“暗夜”。

 

 日ノ本軍のレーダーにその名を示す、かつて戦い傷つけ合った両機は。

 

「そんなの……そんなのが認められるかぁ!!!」

「うるせぇ! てめぇは死ね!」

 

 幾度の戦場を越えて今。

 遂には同じ戦舞台で、共に舞う栄誉を得たのだった。




その理不尽の名は、愛の奇跡。

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