ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~ 作:夏目八尋
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主人公と主人公の共闘、好き。
丁寧に丁寧に準備を重ね、そこから繋がる展開と結末を愛する男、ルピタ。
そんな男がHVV戦役を再演し、求めたのは……より激しく、より派手な戦いだった。
そのためにこの男は、あまり言いたくはないが間違いなく努力を重ね、行動した。
結果。原作ゲーム版でも史実小説版でも起こりえなかった様々な戦いを巻き起こし、日ノ本を、ひいてはこの世界そのものを大きく揺さぶったのは間違いない。
俺が、その片棒を担いでしまったことも、否定はできない。
だから奴が、自分にとって都合よく、考えの分かる範疇で活躍する俺のことを気に入り、推しと呼ぶことも……今なら理解できる。
要は、俺があいつの好むタイプのキャラクターだったんだ。
持ちうる手札を使って、考えられるだけの頭を絞り策を出し、目の前の状況に挑む。
想定外の状況があれば、そこからさらにアドリブで必死に対応し、攻略にかかる。
研究、検証、実践。
そういった、人間として順当な手順を踏んで行動するタイプだった俺だから、あいつはことさらに構ったし、絡んできたし、次々と厄介な状況を投げ込んできたんだ。
だが、それは。
裏を返せばそうでないタイプが嫌いってことになる。
それはいわゆる、天才タイプ。
思考の先で至るべき答えを先に理解し、掌握し。そこに辿り着く道筋をあっさりと探り当てれば一直線。するべきだと思えば実行し、皆の見ている前で神業のごとく事を成す。
そんな超常的で、理不尽な存在。
このHVV世界においてはハッキリと、技能レベル4という領域として設定されているもの。
六色世界に属する、下位世界のひとつで生きる者たちにおける限界値。
そんな奴らが時折見せる、人智を超えたイレギュラーを。
(俺には……根拠はないが、確信がある)
真白一人という人物が持つ、一つの可能性。
公式設定資料集にも載ってない、けれど、もしそうならきっとそうだという確信。
ラスボス候補が複数いるように、ヒーロー候補も複数いたとして。
そこに格差があるのなら。
(もしも、ヒーローという存在の力を技能レベルで表示できるなら……)
彼は、間違いなくヒーロー技能レベル4の、
「そんなの……そんなのが認められるかぁ!!!」
「うるせぇ! てめぇは死ね!」
それをあいつは、ルピタは、認められない。
「行くぜ、真白君! めばえちゃん!」
「うん!」
「ええ!」
そこが、俺たちの勝機だった。
※ ※ ※
鬼となったルピタに、呼朝と暗夜で接近する。
左右に広く展開し、まずは同時に中距離から――。
「おおおおおお!!」
「どあっ!?」
――攻撃する前に奴からこっちに急接近!
2倍の体格差を大いに利用した、打ち下ろしのこぶしが勢いそのまま迫りくる!
『上体反らし、入力済みです』
振るわれたこぶしを、スウェーの動作で回避する。
脚部ローラーを逆回転させ姿勢を制御。横に構えた突撃銃をぶっ放す!
「ふんっ!」
20mの巨体が跳んだ。
バク宙決めて、片腕で地面を押しもう一度ジャンプ。距離を取られる。
そのあいだにこちらも姿勢を整えて、次なる攻撃に備え――ったく!
「どらぁっ!!」
「ははははははは!!!」
気づけば再び超至近距離!
すでに振りかぶられたこぶしの軌道に、突撃銃を放り投げ、こちらも精霊拳をぶっ放す!
ドゥンッ!!
「ふひっ!」
「ぐぅぅ!!」
鬼のこぶしと呼朝のこぶしに挟まれて、突撃銃が爆発した。
「ヨシノ!」
『合わせます』
派手に煙を上げたそれの下を潜るようにして、こっちから接近。
ルピタもそれを待っていたかのように数歩後ろに引いて……始まったのはこぶしの打ち合い!
「ざっけんなぁぁぁぁ!!!」
「ははっ! ははっ! はははははははっ!!」
精霊拳でこぶしに超常の力を込めた上で、ようやく威力はトントン。
こちらはコマンド入力式で、あっちはダイレクトに動きたいように動ける。
サイズ差もあれば動きの制限もあちらが有利。
それでもこうして打ち合いが成立するのは……相手がそれを望んでいるからだ。
「あああああいい! いい! それでいいんだ! やはり黒木終夜! キミがいい!!」
「っせぇ!! こっちの計算ことごとく上回りやがって! 無駄にスペックだけはいいのか!? ああ!?」
「そうとも、そうとも! 私は六色世界の赤の一族、それも
『終夜』
「やれ!」
「!?」
ヨシノに任せたコマンドレールを使っての精霊脚!
気力を注いで放ったひと蹴りは、けれども同じく足を使ったガードに阻まれて。
「そう来る可能性は、考えていたとも!」
勝ち誇った声が聞こえた、その直後。
「だあああああっ!!」
「はあああああっ!!」
重なり合った二つの声とともに、俺たちのもとへ迫りくる強い力の気配。
「精霊空拳!? なっ!」
「逃がさねぇよ!」
俺が入力した姿勢制御コマンドで、相手の動き出しを阻害。
翼ちゃんの言葉を借りるが、人間の形をしてるなら、ある程度は誘導できる!
ほんのひと時の抑え込みが、確かな成果をもぎ取りにかかる!
「ごあっ!!」
「っしゃあ!」
真白君たちの精霊空拳、HIT!
脇腹に打ち込まれた衝撃とダメージに、ルピタの体がぐらりと揺れた。
「ダメージソースとしちゃ、
「……私と黒木終夜との戦いに、余計な横槍を入れるなぁ!!」
「っとぉ!?」
予想通りの腕振りに、先行入力していた後方跳躍で対応する。
……っていうか。
「いつから俺とお前の決着って話になったんだ? ここで行われるべきは、
「!?」
あ。
今頃気づいた?
もうすでに、俺の役割って変わってるんだわ。
「なっ、あ……!」
「よっしゃあ真白君! めばえちゃん! 世界を救う戦いだ! 俺は全力で
「ああああああああああ!!!!」
はい。
俺は、完璧に、脇役をこなしますよ。
誰がお前の望む形で戦ってなんてやるもんか。
「自分で好き勝手しっちゃかめっちゃかにしておいて、最後だけ気に入らないから都合に合わせろなんて、通らねぇよなぁ!?」
今の俺、100%オリジナル笑顔。
(……認めるぜ、ルピタ。俺とお前はよく似てる)
派手なの好きだし、楽しいのは最高だ。それをどこまでも欲しがる気持ち、よくわかる。
でもな?
(似ているが……非なる者だ)
真白君たちが攻撃を当てやすいように、全力で俺は、ルピタ好みの攻撃を振る。
俺のことがだーい好きなあいつは、その流れに食いつかないって選択は……ない!
「くそっ、くそっ、くそっ! 私の相手をしなさい! 黒木終夜!!」
「やだね!」
俺が誘って遊ばせて、隙を狙って真白君とめばえちゃんがダメージを与える。
前々から俺の動きを調べてた二人は、俺から指示を出さなくても、いつ攻め込めばいいのかはわかってくれる。
彼らこそがこの世界を救う、ラスボスを倒すためにいる存在。ヒーローなのだから。
俺はただ、それを信じて動くだけ。
(ルピタ。俺とお前、どこが違うか教えてやるよ。お前の、お前の推し活には……!)
俺と同じくどこまでも欲深で、どこまでも本能に逆らえないあいつには。
「推し相手への
「うおおおおおああああああ!! 黒木終夜ぁぁああああああ!!」
「お前の相手は僕たちだ!」
「はああああ!!」
超至近距離での白兵戦。
そこで引っ張り出したルピタの一瞬の隙。
その隙を、俺の推したちが見事に捉える。
「だああああ!!」
暗夜のこぶしに輝く青い燐光。
放たれた精霊拳が、無防備なルピタの横っ腹に、ズブとめり込み潜り込む。
「っしゃあ!」
併せて呼朝の精霊拳も、反対側から打ち込めば。
「ヨシノ!」
「スズランさん!」
『『了解』』
こぶしを引き抜き、距離を取り。
「隠し追加コマンドF・O・B!」
「フィナーレ・オブ・バーン!」
互いに背を向け、ポーズをとれば。
「「「爆・砕!!」」」
「なっ、ちょ……!!」
なにか、ルピタの野郎が言おうとしていたが、当然の如く無視をして。
「こんな、こんな終わりなんて! い」
ボボボガーーーーーンッ!!
「――……!!」
体内に打ち込んだ俺たちの気が爆発し。
緑と青の輝きを放つ巨大な花火が破裂して……平成32年に現れた鬼の怪異は、その身を砕かれた。
※ ※ ※
月夜の神子島に、静寂が下りる。
爆発が収まった場所で、鬼だったものが白い輝きとともにチリになっていく。
「はぁー、はぁー、はぁー……」
「ふぅー、ふぅー、ふぅー……」
決めポーズを解き、レーダーを見てゆっくりと周囲を警戒しながら、俺と真白君は残敵がないことを確認し。
「……勝った、の?」
愛するめばえちゃんのふわっとしたその言葉を聞いて、ようやくそれを自覚する。
「勝った?」
「勝った、んだろうな」
ラスボスは、無事ヒーローの手により討ち果たされた。
「い……よ」
よっしゃあああああーーーーーーーーーー!!!
って、言うつもりだった。
だがそれは、もうちょっと後になりそうだった。
「あ?」
気づけば、世界が静止していた。
「黒木終夜! まだ、まだです!」
「虹姫様?」
「あいつは、ルピタはまだ、生きています!! そこに!!」
「!?」
突然の通信。そして指摘。
同時に表示されたモニターの先、そこには……人間サイズに戻った、ルピタが立っていた。
もう勝負、付いてるから。
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