ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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さぁさ、グランドフィナーレに向けて!
天2の、終夜の、いつも通りな無理・無茶・無謀な挑戦を始めましょう!


第31章 踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世で幸せにする方法
第215話 何人揃えば文殊越え?


 

「さて! じゃあ実際問題どうやって二つの世界を救うのか、考えようか!」

 

 みんなで輪になって、相談タイム。

 

「あー、このままだと。俺たちの世界はともかく、そこの虹姫様の世界が滅びます」

「………」

 

 俺の右隣に立つ虹姫様が、静かに頷いた。

 

「歴史の収束点とやらにこの世界が到達する前に、どうにか俺たちの歩む世界と、元の歴史を辿った世界を両立できる状態にしなきゃいけません」

「だね」

「ん」

 

 正面に立つ真白君と、その腕に抱き着いてるめばえちゃんが顔を見合わせた。

 

「そういうわけで。みんなで知恵を絞って何とかしようと思います。って感じだ!」

「うん!」

「はい」

 

 俺の左隣で帆乃花と姫様が、力強く同意した。

 

「以上!」

 

 現状把握、終わり!

 

 

「いや、そもそも世界を両立させるって、どうすりゃいいんだってのー!!」

 

 自分でやれそうとか言っておいて、コレである。

 

(でもでもだって!)

 

 今もって、やれそうだ、って考えは……変わらないのだ。

 

(今はこの直感を信じて、頭を回すしかない!)

 

 考えろ。

 考えろ考えろ考えろ!

 

 俺はこれまでだってそうしてきた!

 これからだってそうやって……欲しい未来へ向かっていくんだろ!?

 

 

「うおおおおおおーーーーーーー!! なんか閃けぇーーーーーーーー!!!」

 

 天を仰ぎ、雄叫びを上げて。

 

「………」

 

 沈黙。

 みんなが見つめる中、ゆっくりとまた、口を開く。

 

 

「……なーんも浮かばん」

『騒ぎすぎです』

 

 ヨシノがバチンでおちついた。

 

 

「……正直。僕たちがやろうとしていることが相当以上の無茶だってことは、わかっているつもりなんだけどね」

 

 俺がヨシノのお仕置きに悶えているあいだに、真白君が口を開く。

 

「そもそも歴史がどうのこうのって段階からして僕たちの手に余る話なわけで。いったいどこから手を付けたらいいのか……」

 

 思案顔の真白君の横で、小さくめばえちゃんも頷いている。

 確かに、俺たちにはまだまだ問題そのものへの理解が足りないような気がしないでもない。

 

「いえ、そうでもありませんよ?」

 

 と、思ってたらうちの姫様が手を挙げた。

 

「私たちはすでに、その問題を解決できるやもしれない、糸口の一つを手にしていますから」

 

 そう口にする姫様は、虹姫様と目を合わせて頷き合う……って、ああ、そうか。

 

 

「この世界は、事実として分岐する可能性を持っています」

 

 そう口にしたのは虹姫様の方。

 彼女は自らサングラスを取り、その素顔を全員に晒す。

 

 

「え、え、えええーーーーーーーーーー!?!?!?」

 

 この場で一番ふさわしいリアクションを、帆乃花がしてくれた。

 

「命ちゃんが、二人ぃ~~~~~~~~~!?!?!?」

 

 完璧な突っ込みに、二人の建岩命は同じように優しい微笑みを浮かべ、頷いた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「まさか、RRが別世界の建岩命さんだったなんて……!」

「命ちゃんは知ってたの!?」

「はい。と言っても、確信に至ったのは昨日今日の話ですが」

 

 二人並ぶとよくわかる。

 

「いやぁ、並ぶとマジで壮観だな」

 

 長短の違いはあれど、赤く艶やかな髪。

 そしてどちらにも共通するエアインテークの部分。

 

 瞳も赤で、キラッキラ。

 まぁあと特徴的なところといえば……サイズ感バッチリの胸部装甲もか。

 

 ……うむ、似ているってレベルじゃないな。

 ちょっとだけ虹姫様の方が成長してるから姉妹っぽくもあるが、逆に超レアだ。

 

 これもまた、歴史的瞬間と言っていいかもしれない。

 

 

「……こうして、面と向き合うのは初めてですが」

「はい。こうして向き合えたことがまず、一つの証左ですね」

 

 姫様たちはまた頷き合って、俺を見る。

 彼女たちの言いたいことは俺も理解しているから、それを口にしよう。

 

「異なる時間を生きている同一個体が顔を合わせて、それで同一化もしなければ世界が歪みもしない。世界がその矛盾に対処しようとしない。SF的に言えば、パラドックスの解消が起こってないってことだな?」

「「はい」」

 

 まず一つ、これで旗を立てられる。

 

「パラドックス……今回で言えば、一つの世界に同一個体が同時に存在するという矛盾。ですが、こうして同じ存在であるはずの贄たちがここに……歴史の収束・修正が現実として起こる世界において共存し、パラドックスの解消が起こらないのなら……」

「二つの世界は必ずしも同一の存在であるとは言い切れず、私……虹の姫君となった建岩命の世界と、今を生きる建岩命の世界が別個に存在する可能性を示し……」

「つまりは複数の世界が同時に両立しうる可能性を示す証に……なる!」

 

 暴論だが、それでも可能性はゼロじゃない。だからこれでいい。

 今必要なのは正しさよりも、“出来るかもしれない”という可能性の模索だ。

 

 なんだっていい。屁理屈だろうが積み重ねていくんだ!

 

 

「複数世界の両立、つまり併存が可能であるならば、問題は、どうやってそれを確定させるか、でしょうか?」

「ですね。具体的な手段について模索しましょう」

 

 天才姫様ーズがサクサクと話を進めてくれる。

 これは頼りになるぞ、なんて思って見ていたら。

 

「「………」」

 

 途端に二人はフリーズしてしまったかのように、黙り込む。

 

 

「姫様?」

「はい」

 

 問いかければ、申し訳なさそうなウチの姫様。

 

「大変申し訳ございません、終夜様。私たちでは、自分たちの存在をもって併存の可能性を示せはしましても、最も重要な、歴史の収束点を越えて二つの世界の併存を確立させる具体的な方法が、何一つとして浮かばないのです」

「こちらも同じです、黒木終夜。今私たちが挑む難題は、現時点での私の所属である組織、虹においても未発見の考え方ですので」

 

 虹姫様の補足もあって、彼女たちの今の限界が示される。

 いかな天才たちであっても、とっかかりとなる材料がなければ答えを導き出せない場合があって、今がまさにその状況なのだ。

 

 そもそも、世界を複数に分けて両立させようってのが、人智を越えた領分の話だからな。

 

 

「皆様は、何か思い当たることなどございますか?」

「ううーん。僕は、なんとも……めばえちゃんは?」

「私? 私は……えっと、タイムスリップ物は、あんまり読んでなくて」

「私もダメダメだー! すでに頭がパンクしそう!」

 

 姫様が広く意見を求めても、天才を超える思考なんて早々出るはずもなく。

 

「「うーん」」

 

 早々にして話し合いは、暗礁へと乗り上げてしまった。

 

 

(二つの世界は併存できそう。でもそれを成立させる手段が確立できない……うーん)

 

 考えても考えても脳がぐつぐつ煮えるだけ。

 

「ヨシノ、ユメ。なんか思いつかないか?」

 

 藁にも縋る思いで、問いかける。

 

『思いついたことをただ言うのであれば、ひとつ』

「お」

 

 頼れる相棒は、今回も頼り甲斐MAXだ。

 

 

『複数の世界、というのを聞いて。私が思うのは現世と幽世の関係性、でしょうか』

『ん。生と死の、境界、とか?』

「あー」

 

 その辺も、複数の世界が併存してるって考える材料に出来るのか。

 でもそこらはあくまで人の領分である現世と精霊の領分である幽世っていう、ハベベ世界の枠内で収まる話で、だからこそ上位存在の奴らは、それを便利に利用してたんだよな。

 

 幽世の門を使っての侵攻。

 世界を赤に染める、マーキングというシステム。

 

 赤の一族の力である“略奪”において、世界そのものを奪う、侵食する力として扱われる技術。

 あれらも上位世界が下位世界に働く無体の具現で、世界そのものに干渉する力だと言える。

 

 これは、世界を変える力ではあっても、世界を分ける力ではないと俺は思う。

 でも……無視は、出来ない情報な気がする。

 

 

『参考になりましたか?』

「ありがとう。おかげで考える幅が増えたぜ」

『それは何よりです』

 

 上位存在の力ってのは、やっぱり理不尽で、かつ重要だ。

 そもそも俺たちが今挑んでいるのだって、白の一族の叡智たるアイテムが示す理だし。 

 

歴史の羅針盤(ワールド・タイム・コンパス)……世界の歴史を線として観測し、改変された歴史の痕跡や特異点、正しい歴史を指し示す……まるでこの世界の時間というルールそのものを規定するかのようなアイテム)

 

 複数の世界が併存することを成立させるには……って、あれ?

 

 

「なぁ、虹姫様」

「はい」

「歴史の羅針盤にはさ、ハベベ世界以外の下位世界の歴史も観測できてるんだろ?」

「はい」

「それも、複数の世界が併存する証明、になるよな?」

「………」

 

 虹姫様が目を見開き、口元に手を置いて考える仕草をする。

 

「……そう、ですね。ここ、ハベベ世界の他にも、六色世界の主たる六つの国の領域内には、様々な下位世界が存在し、それぞれに歴史を紡いでいますので」

「だったらその観測されてる他の世界みたいに、今いる俺たちの世界も、元の世界とは別の世界として歴史の羅針盤に認識される状態になれば、違う歴史をそれぞれ歩めるようになるんじゃないか?」

「そう、ですね……理屈としては、それで成るかと」

「ふむ……となると」

 

 必要なのは、歴史の羅針盤の示すルールに従いながらも、それを欺く裏技ってことか。

 もともと世界は別々に存在しましたよーって、羅針盤ちゃんに思わせれば勝ち。

 

 イメージとしては、ゲームのバグを意図的に突くような感じか。

 壁抜けとかのグリッヂ利用みたいな。

 

 

「二つの世界の併存を認めさせるための、壁抜け的な行為……ねぇ?」

 

 一歩進んだような気がするが、未だに答えは見つからない。

 裏技を使うためには、そもそもこの世界の時間や空間のルールについてもっと掘り下げが必要な気がする。

 

 あるいはもっと、大きなスケールで考える必要があったりするのか……。

 

「……新姫様とかクスノキ女史の意見とか、聞きたいな」

 

 ぽそっと、口に出した。

 

「それは、悪くない意見ですね」

「確かに、生粋の白の一族である彼女たちの意見は、大いに参考になるかもしれません」

 

 それに二人の姫様が頷いた。

 

 

「新姫様? それに生粋の白の一族……って?」

「あーっと、俺たちに味方してくれてる上位存在がいるんだ。ほら、通信で言った建岩の重鎮様」

「ええーっ!? そうだったの!? 命ちゃんの親戚に上位存在の人が!?」

「はい。建岩家が持つ秘密の中の秘密です」

「大丈夫。千年単位で人類見守ってくれてる萌えキャラ系ロリババアだから」

「ロリババア……」

「萌えキャラ……」

 

 味方になった新姫ちゃん様はこのくらいの呼び方しても許してくれる、懐の深いお方。

 その証拠に驚くましめばとは裏腹に、ダブル姫様は笑いを堪えてるぜ!

 

「でもでも、そんな人がいるんなら。本当に助けになってくれそうだね!」

「だろ? なんだったらもう巡パイセンや佐々君に天常さん、みんなの意見も聞いちまおうか」

 

 これ、なかなか悪くない案じゃないかな?

 3人寄れば文殊の知恵ともいうし、天2の賢い仲間たちの手を借りれれば何か起こるかもしれない。

 

 

(何度も人類の可能性を広げてくれたみんななら、きっとそこから何かが生まれる)

 

 そうに違いないって、俺は信じられるから。

 

「みんなに、協力を仰ごう!」

 

 俺の言葉に、反対意見は出なかった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「んじゃ、虹姫様。結界解いてくれるか?」

「解くことは、できますが……」

「?」

 

 善は急げとばかりに聞いてみたら、思わぬ渋った声がする。

 

「何か問題でも?」

「はい……」

 

 申し訳なさそうな感じで目を細める虹姫様。

 歯切れ悪く口を開く彼女が、それに続けて言うことにゃ。

 

 

「……“歴史の収束点”は、本日午前0時となっています」

「………」

 

 ………………。

 

 タイムリミット、チェック。

 時が止まった端末が示す時間は、午後9時58分。

 

「oh」

 

 残り、ほぼ2時間。

 

 

「この結界を張り直すこと自体は可能です。ですが、それでももたせてさらに2時間。計4時間が勝負となります」

「なる、ほど」

 

 そりゃ、あのクソ野郎が勝ち誇るワケだわ。

 

 でも……。

 

「……んじゃ、結界解いたら虹姫様は仮眠取ってくれ。ギリギリまで休んで、その上でまた結界張って最大限時間稼ぎしようぜ」

 

 諦める理由には、ならない。

 

「はい」

「みんなも、結界が解けたら全力で仲間たちを集めて、知恵を絞ろう」

「ご安心を。先程までの状況を記した議事録と贄の見解を含んだ説明用のテキストは、こちら端末にてご用意いたしました」

 

 まだ誰も、諦めちゃいないから。

 

(俺が諦めない限り、諦めないって奴らがいっぱいいてくれるから)

 

 無理無茶無謀の実行は、俺たちの十八番だぜ!

 

 

「それじゃよろしく頼む」

「……はい」

 

 覚悟を決めた虹姫様が、結界を解く。

 

 途端に世界に音が加わり、風が頬を撫で、潮の香りが鼻をつく。

 

 戻ってき――

 

 

「うわああああああああああ!?!?!?」

 

 ――!?

 

 聞こえた叫びに身を翻せば、叫んでいたのは……鏑木さん。

 

 

「海渡るオオカミぃぃ~~~~~~~~~!?!?!?」

 

 

 あ。

 

 

「……ガフ」

 

 隅っこで気配を殺し、すっかりゴロゴロワンちゃんしてたこいつ。

 忘れてた☆

 

「グルルッ」

「た、たお、たお!!」

「今戦えるのは私だけ? 転神っ! “七つ色纏い(ななついろまとい)”!!」

「わーまてまて!!」

 

 戦う気がない偉大なる戦士“海渡るオオカミ”の無害を証明するのに、そこから15分を必要として。

 

 残り時間、速効で2時間切り。

 

 最後のミッションは騒がしさと共にスタートした。




海渡るオオカミ「ワフッ(今はまだ戦う時ではない)」

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