ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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最終章、エピローグ章です。


最終章 もっとも新しい、物語
第223話 分岐した世界で


 

 2020年、8月。

 ハーベストの脅威から、無事日ノ本を守り切った天2小隊は。

 

 

「ひぃやっほぅー!」

「いぇーいっ!」

 

 ざっぱーん!

 

「うおおお!! 鹿苑寺! 鏑木! いきなり飛び込んでくるんじゃない!」

「わりぃ、タケぽん!」

「ごめんねぇ、タケぽぉ~ん」

「許さん! 二人まとめて筋肉スプラッシュの刑だ!!」

 

 どっぼーん!

 

「「おわーーー!!」」

「………」

 

 ご覧の通り。

 海に来ていた。

 

 いつだったか、強化合宿に使った場所である。

 

 世はまさに、天2バケーション……再び!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「おーっほっほっほ! 日ノ本の平和が成った今、ひと時でも英気を養う時間は必要ですもの。存分に羽を伸ばしますわよ!」

「お嬢様。メロンソーダでございます」

「ありがとう、細川」

「とはいえ、六牧司令は今も日ノ本軍の再編に忙しいのだろう? あの人こそ一番に休まねばならない人だとボクは思うんだが」

「仕方ありませんわ。あの方とうとう、生きたまま霊師になってしまわれましたもの。あの方が本当に休める日は、それこそ世界を取り戻しに行く作戦の発令後でなくて?」

「指揮車の中でしかちゃんと眠れないとかぁ、モモちゃん司令かぁいそ~」

 

 海岸にぶっ刺したでっかいパラソルの下で、天常さんたちがダベっている。

 珍しくこっちに参加している竜胆さんは、会話しながらも目線はずーっと海の上のダーリンに釘付けだ。

 手に持ったナイフで器用にパイナップルを切っているが、ちょっと切り方が猟奇的になってる気がする。今話しかけるのはやめておこう。

 

 

「黒木は遊びに行かないのか?」

「あぁ、俺は全力でダラダラすると決めている」

「そうか。ならちょうどいい……ボ、ボクの日焼け止めを塗っては」

「日焼け止めでしたら私が塗って差し上げますわよ千代麿? ほら、こっちへいらっしゃい!」

「なっ、待て待て。ボクは唯一無二の友人である黒木にあああああーーーー!!」

「ははっ」

 

 連れていかれてしまった佐々君を見送り、再び視線を海へと向ける。

 ビーチチェアーに寝っ転がって、ほど良い暑さを感じながらのシーウォッチ。

 

 正直、悪くない。

 至る所で楽しげな声やはしゃぐ姿が見れるのは、まさに勝者の贅沢だ。

 

 

(あの日、九洲全土を股に掛けた戦いのあと……日ノ本からハーベストは駆逐された)

 

 あの戦いは、大陸の手勢すらも使っての大攻勢だったらしい。

 おかげで大陸沿岸部からの赤い霧の侵攻なんかもぱったり止んで、日ノ本は平和そのものになった。

 

 人類が、初めて国家単位で侵略者に完全に打ち勝ったのだ。

 それはそれは日ノ本中が大騒ぎになり、大喜びして、お祭り騒ぎになった。

 

(おかげで俺らも、こうして短いながらも休みを手に入れられたワケだ)

 

 ヒーローとラスボスの決着はついたが、残党はまだ世界各地に散らばって残っている。

 それらを蹴散らし終えるまでは、人類とハーベストの戦争は終わらない。

 

 現に軍部のトップオブトップになった六牧司令は、次の戦いに向けて準備中。

 それに付き添う形で使命感に燃える真白君とめばえちゃんも、今日の集まりには不参加だ。

 

『僕たちにできること、まだまだもっと、沢山あると思うから!』

『私たちは、まだ、みんなほど頑張れてない。だから……ここから、たくさん……!』

 

 なんて言われて、泣く泣くお見送りしたのである。

 

 エターナルマイラブな我が推したちは、今頃クスノキ女史から新しい精霊殻を賜っているころだろう。

 真実の愛を手に入れたヒーローとヒロインは、今まさに自らの物語を歩んでいるのだ。

 それがどれだけ苦難な道であろうとも、手と手を取って……!

 

 

「ま、とはいえ正史ルートに比べたら……イージーもイージーだよなぁ」

 

 なにせ“海渡るオオカミ”フェンリル以外の亜神級は討伐済みだ。

 そしてそのフェンリルも、俺たちと別れたあとは、人類とは戦わず各地のハーベストたちを回収して回っているらしい。

 俺たちに手を貸してくれているのか、はたまた次の戦いの準備をしているのかはわからないが、現地の人たちの生存報告がポコポコ届くので、今のところは良いように働いているようだ。

 

 このあと始まる残党狩りは、そこまで危険を伴うものにはならないだろう。

 

 

「あっちは、ちゃんと進められてるんだろうか……」

 

 青空に手を伸ばし、今はもう繋がりのない彼らを想う。

 あの日、歴史の修正点を無事越えたあと、あまり間を置かずに彼女は元の世界へと帰還した。

 

『たとえ存在を許されていたとしても、私はこの歴史における異物ですので』

 

 そんな、合理的な意見を理由に、正史ルートの虹の姫君……建岩命は帰途に就いた。

 暗夜と共に、今回の戦いの記録をひっさげ、愛する虹の王の元へと跳んでいく。

 

 データ持っていけるってことは、やっぱりこの世界、番外編とか劇場版とかそういう扱いになりそうだな、なんて、思ったより暢気なこと考えながら見送った気がする。

 

 あれから六色世界側からの干渉はないらしく、新姫様たちは今も警戒しつつ、それでもだいぶん力を抜いているそうな。

 なんでもクスノキ女史とタマちゃん、そしてなずなさんが共同で作った対上位世界感知センサーがとんでもない出来らしく、干渉があればその傾向を示した時点で反応するとかしないとか。

 

 俺の知る限りやべー奴らが組むとここまでやべーことになるのかと、奇跡のコラボに驚愕した。

 

 

(ただ、新姫様がこうも言ってたんだよな……“六色世界”はもう、ないかもしれないって)

 

 俺が成し遂げた、世界の分岐。

 その結果同時並列的に存在する、正史世界と俺たちの世界。

 

 ハベベ世界の分岐はまだしも、六色世界レベルの存在までを二つに分けられたかどうかはこちらからではわからない。もしかすると、俺たちが今いるこの世界は完全に独立してしまっていて、上位世界からの干渉なんて、もはや届かない領域にいるかもしれない、だとか。

 

(だったらもう、余計なこと考えずに済むから最高なんだけどなぁ)

 

 あっちから干渉してこないなら、こっちからわざわざ藪蛇する理由はない。

 ハーベストを駆逐したあとは、人類らしく宇宙開発にでも勤しめばいい。

 

 せっかく空間を操る力があるんだから、前世の世界よりぶっ飛んだ未来を見てみたい。

 

 

「だーりぃーん!」

「ぐぁっ! 摩耶! ばっ、あた、あたって!」

「当ててんのよ?」

 

 気づけば同じパラソルの下でぼーっとしていたナイフちゃんも、日の光の下愛する人へとぶつかりに行っている。

 ……さっきのナイフ、確認。ヨシ!

 

「やれやれー! もっといちゃいちゃしろー!」

「煽るな鏑木」

「あああー! 僕も彼女連れてきたかったぁー!」

「……よきかな、よきかな」

 

 さっそく賑やかになりだした海上を、ぼへっと眺めていると。

 

 

「終夜様」

「終夜」

「終夜くん!」

 

 

 異口同音に俺の名を呼ぶ、複数の声を耳にした。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 呼ばれるままに目を向けると、そこには三人の美人さんが立っていた。

 

「終夜様。終夜様は海には入られないのですか?」

 

 建岩の姫こと、建岩命。

 赤髪エアインテークのロングヘアのボリューム感に負けないボリューミーなボディが、一切隠す気のないビキニスタイルの強気な水着で存在をアピールしている。

 正史ルートの方の姫様も美人だったが、鍛え方がやはり違うか、こっちの姫様はもう天上の美もかくやといった綺麗さに仕上がっている。

 

「ダラダラするのもいいわね。隣、いいかしら?」

 

 我らがパイセンこと、九條巡。

 黒髪ロングのロリボディに、ピッチリとしたデザインのワンピース型水着が、彼女のコケティッシュな魅力を際立たせている。

 彼女の場合、ボディはホントにロリなままだが、身にまとう精神年齢相応の落ち着いた雰囲気が妙な艶っぽさを演出していた。

 

「終夜君は飲み物いる? 欲しいのあったらそこのクーラーボックスから取ってくるよ?」

 

 天2のヒーロー、清白帆乃花。

 青白い髪をセミロングだった髪は今、ボブカットに変わった。水色でフリルがついたセパレートのビキニ水着は健康的で快活な彼女の性格とのギャップが大きい。

 元気はつらつなイメージと涼やかで愛らしいイメージとが組み合わさって、一目で目を惹く愛嬌を蒔き散らかしていた。

 

 

「激闘に次ぐ激闘、そして世界の救済。その戦後処理。お疲れ様です」

「忙しかったのはみんなもじゃない。これは、燃え尽き症候群も出てないかしら?」

「大丈夫、終夜君? はい、レモンソーダ」

「ありがとう。いや、まぁ、おおよそみんなの言う通りではあるな」

 

 帆乃花から缶ジュースのレモンソーダを受け取り、喉を潤す。

 しゅわしゅわで喉を軽く焼きながら応えるのは、偽らざる俺の本音だった。

 

 

「やるべきことはやりきった。そんな気がする」

 

 踏み台型ラスボス少女、なんて呼ばれていた推しの未来を守るため、俺は戦った。

 結果として推しは……めばえちゃんは原作ゲームの主人公にしてこの世界を救うヒーロー真白一人君を支えるヒロインとして、立派に戦争を戦い抜き、幸せのチケットを掴み取った。

 

 その際に俺は俺の気持ちをぶつけ、返事までもらった。

 俺個人の感情として、そこにはもう、悔いはない。

 

「終夜様のおかげで、本当に世界は救われました」

「そうね。この世界に干渉してきた悪い奴も、その干渉元の世界も、アナタは救ったのよね」

 

 そう、その上。

 俺は世界を救うなんていうガチで大それた役割も果たした。

 

 大好きなこの世界も、史実小説版と同じような道筋を辿った元の世界も、救うことができた。

 

 いつだったか十分な上がりを貰えたなんて言ったが、その上は確かにあった。

 

 

「まだまだ、世界には倒さなきゃいけない敵は残ってるけどね」

「だな」

 

 むんっとこぶしを握って体をゆすった帆乃花に頷く。

 まだ、完全に終わったわけじゃない。

 

 やるべきことはまだ、ある。

 

 けれど。

 

 

「ほぼほぼそれは、ウィニングランだよなぁ」

 

 最後の最後、一匹だけ気をつけなきゃいけない奴はいるけれど、そこだけだ。

 ある意味じゃもう、そこを除いて俺みたいな奴の出番は無理に作らなくていいとすら思う。

 

 この先。どう生きるか。

 俺は改めて、それを考えるタイミングが来ているのかもしれな――。

 

 

「――終夜?「終夜くん?「終夜様?」」」

「うん?」

 

 気づいたら、強めの視線が俺を捉えていた。

 

「アナタ、まさかこのまま流れに乗って自分の生きる道を決めよう、とか……考えてないわよね?」

「え?」

「そっかそっか。終夜君はこの先も、一人でなんでも決めて、これまでと同じように、我が道を行こうって考えてるんだね?」

「え?」

「問題ございません。贄はどこまでも終夜様のご意思を尊重し、その手助けをさせていただきたく思います」

「おお!」

 

 さっすが姫様! 話がわか――。

 

 

「――ちーがーうーでーしょ! こら! 終夜!」

「終夜君!!」

 

 左右から、巡と帆乃花に抑え込まれる。

 どこか縋るような……いや、どっちかっていうと獰猛な獣みたいな目が、俺を見ていた。

 

「確かに怒涛の展開で忘れてそうだとは思ったけど、思い出しなさいな!」

「私たち、ずーーっと待ってるんだよ!」

「……あ」

 

 言われて、思い出す。

 というか……気づかない内に遠ざけていた、ともいう事実。

 

「……待ってる?」

「「待ってる!」」

「Oh」

 

 俺は、この二人に告白されて、それをキープしていた。

 

 

「めばえが真白君と恋仲なのはとうにわかっているのよ。だってのにその落ち着きようは、もうアナタの中で決着がついてるってことでしょう? だったら!」

「そうそう! だったら、次は私たちと向き合ってもらうからね終夜君! 今フリーだってことはもうバレてるんだから、全力で、アタックするから!」

「あ、ちょ、ま……!」

 

 押さえつけられたまま、二人の顔が近づいてくる。

 思わず端末にアクセスしようとしたら、姫様がそれをしれっとロックしていた。

 

 

「とりあえず、これが……!」

「宣戦、布告……だよっ!」

 

 ちゅっ!

 

「!?」

 

 左右の頬に柔らかな感触。

 夏の暑さとは違った熱が、俺の体の内側から一気に湧き上がって。

 

 

「あ、がっ! がががっ!?」

「では贄からも」

 

 ちゅ。

 

「ほぁ!?」

 

 驚く間に追撃のでこキス。

 

 

「命……アナタのその行動、そうだと受け取っていいのね?」

「いかようにも解釈くださいませ。贄はただ、誓った通りに終夜様に身も心も捧げます」

「身も、心も!? ま、負けられないよ! それだけは、絶対に!!」

 

 固まっている間に何やら話が進んでいく。

 どうしたら、なんて思っていたら。

 

 

『……――』

 

 不意に体に触れてくる、不可視の何か。

 それがふわりと形を作り。

 

『……いい機会ですので、私もひとつ』

『んっ!』

 

 ちゅっ、ちゅっ。

 

 首筋に一回。耳に一回。

 

「ヨシノ、ユメ?!」

 

 共に戦い、ついには神に通じるところまでその存在を高めた二人の精霊が。

 

『私たちは終夜、貴方とどこまでも共に』

『ん、ずっと一緒』

 

 何をどうしてそうなったのか、それぞれに桜と星をイメージした水着を纏って宣言してくる。

 

 

(なんだこのハーレム!? どうしてこうなった!?!?)

 

 戦い終わって、この地の平和を手に入れて。

 けれどまだまだ、落ち着くにはどうしたって早いみたいで。

 

 

「さぁ、結論を出してもらうわよ! わ、私はその……覚悟は、できてる、から」

「う、うん。どんな結果になっても……うん、受け入れる。けど! 私を、選んで欲しい! です!」

「終夜様のお望みのままにお応えなさればよいかと思います」

『そういえば、細川渚という前例があるのよね……』

『ワンチャン、ある?』

 

 俺を中心に俺を置いて大盛り上がりしている連中を前にして、ゆっくりと息を整え、力を抜き。

 

 

「さぁ……!」

『「「「誰を選ぶの!?」」」』

 

 問いかけられた瞬間!

 

「俺の戦いは、まだ続いている!」

 

 するっとビーチチェアを滑り、脱出!

 戦線を離脱する!

 

 

「あー! 逃げた!」

「追うわよ!」

 

 追撃から逃れるべく、砂浜を駆ける。

 今はまだ、答えを出せない問題を胸に抱えたまま。

 

「あら、黒木さんが追いかけられいますわね!」

「おおよそ曖昧な返事でもして責められているんだろう」

「自業自得ですね」

「Hey! スイカのカット、終わったよ!」

「おうおう、やってるッスねぇ」

 

 推し活以外も、人生はある。

 

「待ちなさい! 転身!」

「精霊羽織り!」

「お覚悟を、神懸かり!」

「ちょっと待て本気すぎるぞそれは!!」

 

 この世界という現実を生きる俺には、まだまだ休む暇はなさそうだった。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 2020年、9月3日。

 日ノ本政府が公式に、全世界復興支援派兵を宣言。

 それに伴い日ノ本軍は再編成され、国防隊と海外支援隊へと大きく分けられた。

 

 両隊の最上位に位置する総司令には、多くの後ろ盾と国民の支持を受け、生きた伝説――六牧百乃介霊師が就任して。

 

 つまりはその日……。

 

「本日をもって、上天久佐第2独立機動小隊を解散する!」

 

 ……天2は、なくなった。




輝等羅「この水着いいですわね! スリングショ」
千代麿&渚&翼「待て待て待てぇーい!!」

ここまでの読了、応援、本当にありがとうございます。
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