ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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ここから新章。
そろそろ見たい、ロボット要素。


第5章 天2軍学校、緊急特別軍事演習!
第24話 影はいつだって日常の裏でひっそり動いてる


 

 日ノ本、本土。

 都内某所、会議室にて。

 

 

上天久佐(かみあまくさ)第2軍学校、か……」

 

 集められた政府高官たちの一人が、手にした資料をテーブルに放り、頬杖をつく。

 その態度からはあからさまな不貞腐れ、嫌悪が見て取れた。

 

天常(てんじょう)佐々(さっさ)、地方氏族のボンボンたちが幅を利かせて前線で軍人ごっことは、余裕がおありなことだ」

 

 彼の言葉に多くの者が同意を示す。

 この場に集った者たちは皆、人類、日ノ本を守る最後の砦を自負する者たち。

 

 今更兵隊未満(じかんかせぎ)の資料を確認する手間などに、かかずらってはいられないと誰もが思っていた。

 

「いやいや、そうおっしゃらず。これでいて数値は驚きの結果なのですよ」

「数値?」

「こちらのデータをご覧ください。彼らのステータスを記したものです」

 

 そんな政府の役人たちに、立ちっぱなしの白衣の男が新たな資料を提出する。

 気怠そうにそれを受け取り、流し見て……彼らはすぐにその目を細めた。

 

 

「なんだ、この数値は。これは本当なのか? 整備士がすでに一線級の戦士並みだぞ?」

「はい。霊子ネットリンカーの故障ではありません。正確な数値です」

「信じられん……まだ活動を始めて2ヶ月も経ってないのではなかったか?」

「その通りです。この短期間で彼らは驚異的な伸びを見せ、ここまで成長を果たしました」

「ふむ……」

 

 役人たちは、改めて資料に目を通す。

 今度は一つひとつ、丁寧に。

 

 そこに記されていたのは、天2(あまに)軍学校の生徒たちが叩き出した成果。

 10代の若者たちが示した、成長という名の異質だった。

 

「あのロートルの備品ですら、これなのか?」

「はい。扱いを間違えばすぐにでも壊れそうな物を、ここまで磨き上げたそうで」

「にわかには、信じられませんな」

「だな」

 

 ざわざわと、会議室が揺れる。

 自分たちが2年はかけて作ろうとしていたモノを、すでに彼らが成そうとしている。

 

 いったいどれほどのスパルタをもって、ここまで叩き上げたというのか。

 

 

「……あそこを管理しているのは、確か……揚津見(あがつみ)君だったかね?」

「はい。その通りです、大臣」

 

 役人たちの中でも恰幅がよく年季の入った男――防衛大臣が、口を開く。

 この場の誰よりも地位の高い人物の鶴の一声で、会議室には静寂が舞い戻った。

 

「子供をあやすのが得意と聞いたから配備したのだが……はて。この手腕は、彼女の手によるものなのかね?」

「いえ、生徒たちの自主的な訓練によって成されたもののようです」

「彼女からの報告は?」

「青春を諦めなかった者たちによる奇跡、だと……」

「ふむ、ふむ? どういう意味だ?」

 

 思索に入り、大臣は口ひげを軽くなぞる。

 と、そこに。

 

 ピリリリッ。

 

「む……はい、私です」

 

 霊子通信が入ったことを示す、電話アイコンを耳に表示して。

 周りを軽く手で制し、彼は通話主との応対を始めた。

 

 

「はい、はい。えぇ、ちょうど今そのことで会議を……はい、はい……え?」

 

 これまで堂々としていた大臣の顔が、先ほどの役人たちと同じ驚きに染まる。

 

「いえ、さすがにそれは……え、そんな!? は、はい……わかりました」

 

 相手は彼より地位が上のようで、大臣は通話越しにもぺこぺこと首を縦に振る。

 彼の態度から通話の相手が誰なのかを察し、他の役人たちも自然と緊張を走らせていた。

 

 

「はい、はい。了解です。その通りに……では、また」

 

 ピッ。

 

「……ふぅ」

 

 通話が終わった。

 大臣は頬を伝う冷や汗をタオルで拭い、大きくため息を吐く。

 

 

「……これより話すことは、一切の他言無用とする」

 

 ひと心地ついたところで改めて大臣が口にした、その先の話は。

 

「は? 本気ですか!?」

「そんな、ありえない……!」

「なんてことだ!」

 

 この場の誰もを驚かせ、戸惑わせ、頭を抱えさせた。

 

「……ほほう。なるほど」

 

 ただ一人。

 白衣の男を除いて。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

黒木(くろき)! ついにボクたちの天2軍学校に、司令官がやってくるぞ!」

 

 朝のHR前。

 ハラハラと、桜の花びら舞い踊る4月の半ば。

 

「本土から、若い本職の軍人さんが派遣されてくると聞きましたわっ」

「扱いとしては同じ生徒で、その方とは別に、校長の就任も行われるそうです」

「へぇ」

 

 とうとうここに、欠員だった校長先生と司令官がやってくる。

 間違いなくビッグニュースだ。

 

(司令官が来る。つまり、この学校が本格的な小隊運用され始めるってことだ)

 

 慣らし運転くらいでしか乗ってなかった精霊殻(せいれいかく)での本番さながらの演習や、より実践的な戦術行動なんかのいかにも軍隊らしい動きを、これからは学んでいくことになるだろう。

 

 ここからが本番。

 待ってたぜぇ、この時をよぉっ!

 

 

(まぁ、永崎(ながさき)の壁も天久佐の壁も残ってる今じゃ、このくらいの時期になるか)

 

 正直言うと。

 司令官が来るのはもうちょい早いと思ってた。

 

 ゲーム版HVV(ハベベ)だと、学校開設から1ヶ月もしないで司令官が来て隊員を叩き上げ、戦場に送り出す。

 背後に色んな思惑が重なっていたとはいえ、一番は“日ノ本が追い込まれてた”ってのが、やっぱり理由としてデカかったんだなと実感する。

 

 っていうかやり方によっちゃ1週間しないで司令を呼べる。

 そうしないとファイナリアリティエデン黒川めばえちゃんが小隊に来ないから、俺的にはいつも最優先事項だった。

 

 

(こっから西の天久佐本土や、内海挟んだ南の八津代(やつしろ)芦子北(あしきた)あたりじゃ何度か派手な戦闘もあったらしいが、この辺は平和そのものだったしな)

 

 なんだかんだ時間があった。

 おかげで今や、天2の生徒全員が、最低限のステータス強化を達成している。

 

 ヴンッ!

 

 ----------

 

 超常能力“他者ステータスの閲覧”を行います。

 

 ----------

 

 体力・気力を全員最低800以上。

 運動力は最低500、戦士枠は700以上。

 知力も最低500、整備士枠は700以上。

 

 つまりこれらはオールS。

 

 できれば感応力も伸ばしておきたかったんだが、感覚的な訓練って教えにくいんだよな。

 一応話を聞いてくれた佐々君、天常さん、細川さんは実践してくれてるようで、結構いい感じに伸びてたが。

 

 あとは、例外が一人。

 

 

「……やっぱ感応力に関しては、パイセンが強い」

「なによ」

 

 俺の左隣の窓際の席で、憂鬱そうにしてた(めぐる)パイセンがこっちを見た。

 

 聞いて驚け見て笑え! パイセンの感応力、衝撃の1200オーバーだ!

 ゲーム中に実行できるあらゆる超常能力を使うための必要ステ値を超えていらっしゃる。

 

 つまり!

 

「今度一緒に神社行こうな、パイセン!」

「は? 嫌よ」

 

 ステが十分なら次は、技能!

 九條(くじょう)シリーズであるパイセンならではの奴とかあるし、今から先が楽しみだ。

 

 

「ぐっ、ぅぅ。九條め、正直言って羨ましいぞ。黒木とあんなに親しくして……!」

「嫉妬は醜いですわよ、千代麿。とはいえ、私も少々妬いてしまいますけど」

「平和が一番ですよ、お嬢様」

 

 やいのやいのとクラス全体が騒がしい時間を過ごしていた。

 その時だ。

 

「あ、みんな。先生来たよ!」

 

 三羽烏の紅一点、鏑木(かぶらぎ)さんの声がして。

 

「全員おはよう! 私が来たぞ!」

 

 すぐさまドアが開かれ、スポテス以降テンション上がり気味な揚津見先生が入ってきた。

 

 

「今日はHRのあと、グラウンドで校長の就任挨拶と転校生の紹介がある。……で」

 

 先生はクラスをぐるっと見回すと。

 

「おいコラ佐々ぁ! お前はとうにBクラスだろうが! 速やかに退出しろ!!」

 

 御三家相手にもお構いなし。

 鬼の顔して怒鳴りつけるのだった。




地味に脳を焼かれている大人がいますね。

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