ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

作戦会議はいつもの場所で。


第35話 作戦会議はいつもの場所で

 

 天2軍学校、プレハブ校舎屋上。

 お天気、薄雲。

 

 5月の頭。

 清白(すずしろ)さんへのパイロット勧誘を始めた日から数えて、8日目。

 俺は佐々君、天常さん、巡パイセンをランチに誘って相談した。

 

 清白さんには悪いが、彼女が秘匿している能力についても開示する。

 今後隠さないで済むような状況にもっていくつもりというのもあるが、この3人なら、悪いようにはしないだろうと信頼して。

 

 

「まさか、そんな逸材が眠っていたとは」

「あの保健ちゃんが……にわかには信じられない事実ですわね」

 

 同席しない細川さんが、食後のおやつにと持たせてくれた“からし蓮根ポテト”をつまみつつ、俺の話を聞いていた佐々君と天常さん。

 お互い清白さんはノーマークだったのか、からし蓮根フレーバーのピリリとした刺激以上に眉をしかめている。

 

「高度に能力を偽っての後方勤務……どういった背景をお持ちなのか、気になりますわ」

「彼女はやや消極的だが堅実に仕事をしてくれていた。対するならばボクたちも誠意をもって当たろう」

 

 とはいえ、そこは優秀な二人だ。

 知らなかったことを悔いるより、その先にどうするべきかをすぐに話し始める辺り、さすがは御三家の次期当主たちである。

 

 んだが。

 彼女の素性を探る方には、行って欲しくないところ。

 

「あぁ、いや。彼女の背景については――」

「あの子には、触れずにおいてもらえないかしら?」

「――お?」

 

 二人を制そうとしていた俺の言葉に重なる、深みのある声。

 俺が相談しているあいだ、からし蓮根ポテトを一口食べてからずっとお茶を飲んでたパイセンからの横入りだった。

 

 

「少しだけ、彼女から事情を聞いたことがあるわ。その話を踏まえて言わせてもらうけど、今のあの子を精霊殻パイロットにするのは、お勧めしないわよ」

 

 訳知り顔で俺たちに言い聞かせるパイセンにあるのは、共感と憐憫。

 

「む、そうなのか……」

「その事情については……いえ、それを聞いては職務違反になりますわね」

 

 小柄な少女に浮かぶ憂いが、真面目でいい子な佐々君と天常さんをたしなめる。

 ナイスパイセン。さすがはベテランメンカウ系アイドルだ。

 

 

「あなたもよ、シュウヤ。たとえ才能があったとしても、それを隠すからには相応の理由があるというのはわかっているわよね?」

「無論だ」

 

 御三家二人に向けたものより強めの言葉に、力強く頷く。

 この物言いも、パイセンの境遇を考えれば納得しかない意見だと思う。

 

 パイセンと清白さん。

 俺の持ってる知識が正しければ、共通項はそれなりに多いのだ。

 

 それに。

 

(結局のところ、あの異常に低い士気がある以上、無理に戦場に立たせてもかなりの弱体(デバフ)がかかるだろうしなぁ)

 

 現状のまま無理矢理、というのは俺も考えてない。

 だが、それでも俺は、彼女こそが精霊殻パイロットにふさわしいと確信していた。

 

 だから。

 そのための策を、用意した。

 

 

「……改めて、宣言する」

 

 思い浮かべていた情報をいったん横に置いて、俺は改めて3人に向き合い、告げる。

 

「悪いが俺は、清白さんをパイロットにする道を諦めない」

「なっ!? 黒木、今の話を聞いてなか――」

「彼女は、パイロットになりたがっている」

「えっ?」

「必要なのは、士気だ」

 

 断言する。

 士気とはつまり、戦う意志。

 彼女のそれを十分に高めることができれば、いろいろすっ飛ばしての解決も可能である、と。

 

 絶世の黒髪隈目の乙女たる黒川めばえを想っていつでも士気MAXである俺ほどとは言わないまでも、戦うために必要な士気を、稼いでやればいい。

 

 戦えない理由なんてのは、戦いたい理由で上書きができるのだから。

 

(もっともこれは、真の一手の下ごしらえに過ぎないが)

 

 これだけじゃ、清白さんの枷を外すにゃちと足りぬ。足りぬのだ。

 

 

「……黒木さん。士気を上げると言いましても、相手に事情がある以上無理強いは――」

「いや、これから士気を高めるのは、俺たちだ」

「――っ!?」

 

  “小隊士気補正”

 ゲーム版HVVには、そんな仕様がある。

 

 これは小隊員のQOLや参加戦地の戦局などの影響で、小隊員全員へとかかる士気補正だ。

 住んでる環境が良かったり、人類に有利な状況ならそりゃやる気も出るって理屈だな。

 上手いこと利用すれば、出撃命令を無視するようなやる気ゼロ小隊にしたり、毎日無理矢理出撃するチェスト中毒小隊にしたりと自由自在。

 

 環境の変化が人の心を変えるという演出なんだろうが、このシステムを2000年初頭に作ったゲームスタッフはマジで怪物揃いだったに違いない。

 

 

「そうか、相手を変えるにはまず自分たちから。と、いうことだな?」

「そういうことであれば、私たちに否やはございませんわ!」

「同調圧力……いえ、そこまでは言っちゃダメね」

 

 さて、この小隊士気補正。

 当然システムとして組まれているわけだから、それに影響を与えるイベントも用意されている。

 

「そこで、だ。全軍の士気向上に関して、俺に腹案がある。その実現をみんなには頼みたい」

「「!?」」

 

 本来なら作戦会議で議題に挙げ、過半数以上の支持を得なければ実行できないのだが……。

 

「黒木がやりたいことがあるのなら、このボク! 佐々千代麿が全面的に協力しよう!」

「おーっほっほっほ! 天に輝くキララ星たる私、天常輝等羅が! 万難を排して差し上げますわ!」

 

 ご覧の通り。

 俺にはつよーい仲間がいる。

 

 六牧司令には悪いが、ここはごり押しさせてもらおう。

 

 

「で、それを私たちに頼むとして、あなたは何をするの?」

「その前にパイセン。一つ確認したいんだが」

「なに?」

「清白さんの保健室所属って、本人の希望?」

「………」

 

 確認よし。

 このタイミングでの沈黙は、答え教えてくれてるようなもんだな。

 

 おかげ様で、確信できた。

 

 

「あなた、何を知って……?」

「それについては、事が済んだら話す。必ず」

 

 だからパイセン。

 その可愛いお顔で睨まんといてください。

 

 あいたっ、横腹デュクシするのは勘弁! 勘弁だって!

 

 

「ぐふ……そ、それじゃみんなの士気を上げて、清白さんの士気もあげる作戦を発表する」

 

 パイセンの攻勢から逃れ、俺はようやく用意していた腹案を口にする。

 

 それは。

 

 

「やるぞ、天2軍学校……春の文化祭!」

 




からし蓮根ポテト(からしれんこんポテト)は実在します。

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