ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

今回は保健ちゃんこと、清白帆乃花視点。


第38話 決着、そして清白帆乃花の見た標

 

「……っとと!?」

「きゃっ」

 

 あの日。

 うっかりその人と、ぶつかった。

 

「あ、ごめんなさい!」

「いや、こっちこそごめん」

 

 それは、なんてことのない短いやり取り。 

 黒髪黒目で私と同じ年頃の、男の子。

 

(わ……!)

 

 でも、私にとって初めての……外の人とのやり取りで。

 

 そして――。

 

 

「ひぃぃやっはぁぁぁぁーーーーーーーー!!」

 

「~~~~っっ!!」

 

 

 ――初めての、恋だった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

『エマージェンスコード確認。手動緊急モードで運用』

(乗っちゃった……)

 

 天2軍学校、文化祭。

 起動していく精霊殻の中で、私は流されてしまったことを後悔していた。

 

『一度だけ、あいつのわがままに付き合ってくれないかしら?』

 

 いつも気にかけてくれてる巡ちゃんの言葉じゃなかったら、私はきっと、逃げていた。

 

 

(一度だけ、一度だけ。だから)

 

 今回だけ。

 そう言い聞かせて私は、黒木くんと向かい合う。

 

「クックック。乗ってくれてマジで感謝するぞ。清白さん」

「……今回だけ。なので」

 

 これは戦いじゃない。

 ただの演劇、だから。

 

(別に侍役が負けてもいいって。あっさり終わらせて、すぐに保健室に戻れば……)

 

 

「………」

 

 本当に?

 

 

「さぁ、いざ参らん! 日ノ本の武士よ! 生半な動きでは、伝説になれぬと思え!」

「!?」

 

 迷ってしまった。

 だから、黒木くんが用意してくれていた、これまで通り(モブ)でいられる逃げ道を。

 

「おおおおおお!!」

「きゃああああ!!」

 

 私はついうっかりと、手放してしまった。

 

 ヒュボッ!

 

 シュバッ!

 

「ああーーーっと! 鬼の強烈な初撃を、侍が見事にかわしたーーー!! 初めての戦いではこの一手で敗れたとされる侍ですが、どうやらこれは面白くなりそうです!」

「「わぁぁぁぁ!!」」

 

 あ。

 

 それからの私は、ずるずると彼の勢いに引きずられていくことになった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「これはどうだ? こっちは? これは? これならばどうだ!」

「ひゃあ! きゃあ! わぁ!!」

 

 猛攻をすんでのところでかわす。

 

 ピリピリして、ヒリヒリして。

 

「ハッハッハ! たぁのしぃなぁ!?」

「ああああーーーーーー!?!?」

 

 こんなの、経験したことない!

 自然に体が動いて、限界以上の力を引っ張り出されてく!!

 

 っていうかずっと聞こえてくる楽しそうな声に頭がどうにかなっちゃいそうだよ~~!!

 

 

(無理無理! 勝てない! 何もさせてもらえない!!)

 

 圧倒的な実力差。

 完全な格上相手の勝負。

 

(角を折れば私の勝ちなのに! 攻撃に回れる瞬間がまっったくこない……!)

 

 やっぱり黒木くんはすごい。黒木くんは強い!

 黒木くん黒木くん黒木くん! すごいすごいすごいカッコいい好きすごい好き!!

 

(でもでもどうしようどうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしよう!)

 

 どんな手を考えても、間違いなく黒木くんはそれを上回ってくる。

 攻めるも守るも、私が今無事なのは、手加減されて、その上で運がいいからでしかない!

 

 

「掴むぞ」

「えっ」

 

 しまった!

 って、思ったその直後にはもう。

 

「そらっ!」

「きゃあああーーー!!」

 

 地面と擦られ放り投げられ、一瞬で中破させられる!

 

 たった1ミスでこの結果。

 機体の吹き飛ばし方まで全部魅せプレイなのに、全然対策取れなかった!

 

 

(やだやだやだ! どうしよう、どうしようどうしよう! ここからどうしたら――)

『――更ナル(ちから)ヲ、欲シマスカ?』

「!? へぁ!?」

 

 突然の声。

 

「誰ぇ!?」

『私ト契約スレバ、今ヨリモ、ヨリ精密ニ精霊殻ヲ操縦デキルヨウニナリマス』

 

 それは、精霊殻の……この子に同期している契約精霊の声だった。

 

 

『清白帆乃花。今ノ貴女ニ、断ル理由ハナイハズデス』

「ちょ、ちょっと待って。なんで――」

『彼ガ、望ンデイルノダカラ』

「――!?!?」

 

 黒木くんが……?

 

『彼ハ、終夜ハ、望ンデイマス。貴女ノ解放ヲ』

「私の、解放?」

『貴女ノ才覚ガ、意思ガ、十全ニ発揮サレルコトヲ……』

 

 私の、意思……。

 

『貴女ノ、自由ヲ!』

 

 ドクンッ!!

 

「!?」

 

 胸が、高鳴る。

 今までとは比べ物にならないドキドキが、私の中でうねりをあげて沸いてくる。

 

 

『解キ放チナサイ。彼ノタメニ。私ガ、力ヲ貸シマショウ』

「精霊さん……」

 

 彼女がここにいる、理由。

 

(黒木くん……だよね。全部手の平の上、全部、全部黒木くんが、用意して……)

 

 こんなにも黒木くんが、望んでる。

 こんなにも黒木くんが、願ってる。

 こんなにも黒木くんが、求めてる。

 

 嬉しい。

 嬉しい。

 嬉しい。

 

(黒木くんに、応えたい……!)

 

 ……でも。

 

 

「ダメ、だよ……」

『ドウシテ?』

「だって、裏切り者で、逃亡者な私は……」

 

 私が目立って、白い服の大人たちに見つかったら。

 捕まって、またあのおうちへ連れ戻されて、閉じ込められてしまったら。

 

 “これは出来損ないだよ”

 

 また全部、なくなってしまったら……。

 

 

「だから、私、お母さんが来るまで……」

()()()()()()()

「え?」

()()()()()()()()()()()

「へ……?」

 

 唐突にモニターに映る、観客席。

 

 そこに。

 

「~~~~~~~~っっ!!」

 

 お母さんがいた。

 

「いけー! 負けるなー! 帆乃花しか勝たーーーーん!!」

 

 笑顔で、堂々と、私を応援してくれていた。

 

 

『彼カラノめっせーじヲ伝エマス……『俺は好きにした、清白さんも好きにしろ』……以上デス』

「……ははっ」

 

 涙が零れる。

 でも、今は泣いてる場合じゃない。

 

 そんなの彼は、黒木くんは望んでない!

 

 

(……すごい、すごいよ。黒木くん。黒木くんは私に、本当の自由をくれたんだね)

 

 黒木くんは私のこと、どこまで知っているのかな?

 黒木くんのこと知りたいな。いっぱい話して、一緒に過ごして。

 

 黒木くんとやりたいこと、いっぱいいっぱいいっぱいあるよ。

 ただ推し続けるだけなんて、モブのままでいるなんて、もうもう絶対できないんだよ。

 

 だってもう、こんなにも!

 

 貴方のことが、大好きだから!!

 

 

「……精霊さん。あなたのお名前、なんていうの?」

『ヨシノ、ト。今モ呼ンデモラッテイマス』

 

 どこかで聞いたことある声で、彼女が言う。

 

『帆乃花。りんかーヲ……!』

「うん……うん!」

 

 もちろんだよ、ヨシノさん。

 だって今、全力で来いって、黒木くんが望んでるんだから!

 

 難易度OD……オーバードの、大難問(かれ)に!

 

 私の全部! ぶつけなきゃ!!

 

 

「霊子リンク! 疑似神経接続。感応・同調・精霊契約……!」

『リンク確認。各種同調……精霊契約、承認――サァ、彼ヲ楽シマセマショウ』

「――重層同期!」

 

 セットアップ。

 すべてが整って、コントロールを受け取って。

 

「すごい。これが、精霊契約の力……!」

『此度。私ノ舞踏ヲ貴女ニ任セマス』

「……うん! 行こう、ヨシノさん!」

 

 お母さん。見ててね!

 

 

「そうだ! 全力で楽しめ! 日ノ本の侍よ! お前の力を、すべて見せてみろ!」

「……邪悪な鬼め! 我が全身全霊の一撃を受けてみよ!!」

 

 

 これが私の!

 

 推し活だから!!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「ああああーーーーッッ!!!」

「うおおおーーーーッッ!!!」

 

 裂帛の気合と共に、2機の精霊殻が全速をもって衝突する。

 深い読み合いの先に両者が選択したのは、ただ一手。

 

 真っ向からのぶつかり合いだった。

 

 

「おお、あれが!」

「緑の風!」

 

 両者の機体から噴き出す緑の燐光。

 それはこの地で守られた者たちすべてにとっての希望の輝き。

 

 奇しくも、その輝きを放つのは。

 片や今世における緑の風の操者と、片や()()()()()()緑の風の操者。

 

 

 バキィッ!!

 

 

 二つの風が交差した、その結果。

 

「……見事!」

「はぁ、はぁ、はぁーー! わあああーーーーーー!!!!」

 

 鬼役の精霊殻に取り付けられた一角が、侍役の手によって破壊された。

 

 

「勝負あり! 伝説は確かに、再現されましたぁっ!!」

 

 高らかに謳い上げられる実況のアナウンスに。

 

「「……わああああーーーー!!」」

 

 数瞬の間を置いて。

 今日一番の歓声が上がるのだった。




そして、清白帆乃花は解放された。

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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