ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

社会科見学ですよ、社会科見学!


第42話 おいでよ、天久佐下茂田温泉郷!

 

 週末。

 天久佐本島南西部。

 

 俺は天常さんに連れられ、九洲の守りの要である三壁の一つ『天久佐の壁』の視察へ行った。

 精霊銀を混ぜたコンクリで作られた直径100km弱にも及ぶ大壁は、その白い威容でもって今日も、日ノ本の人々を安心させている。

 

 だが、その安全神話も今年2月の『不知火の壁』の崩壊によって破られる。

 そして俺の前世知識は、早くて9月、遅くとも11月には、この天久佐の壁が崩壊するのだと言っていた。

 

 俺は天常さんの付き添いの一人という体で、天久佐の壁の検証、検討、対策会議に参加し、そこで可能な限り思いついた策を伝え、いくつかの案を通してもらった。

 

 前世知識で崩壊の時期がズレているのは、メディアミックスでifの話があったから。

 その中でも正史扱いされている小説版通りの11月となるように、俺は全力を尽くした。

 

 とりわけ9月ルートのトリガーだった“壁向こうへの調査船団派遣”を潰せたのはデカい。

 これによりさらに国力を失った日ノ本が、壁への対策を取れなくなる事態にならなくて本当に良かった。

 やぶ蛇にしかならんイベントに心臓は賭けないでもらいたい。

 

 

 ともあれ。

 こうして事が上手く運んだのも、俺を支持する天常さんの助力あってのこと。

 彼女は終始、会議の主導権を握りどこまでもみなを先行し、突き抜けて。

 

「では、これにて決定ですわ! おーっほっほっほ!!」

 

 人類の未来を左右する場においても特別な輝きを放ち、テッペンに立っていた。

 この輝きは、割かしマジで人類救いそうだなって思った。

 

 そして。

 

「さぁ! 細川、黒木さん。合流しますわよ!」

「はい。お嬢様」

「ああ」

 

 会議を終えた俺たちは、天常家の自家用車に乗りとある場所へと向かう。

 

 そこは、海に面した谷の内側。

 湯気立ち昇る、いにしえより数多の人々の癒しとなってきた場所――。

 

「――到着ですわ!」

「おお……!」

 

 天久佐本島、国民保養温泉地。

 

 その名も……!

 

天久佐(あまくさ)下茂田(しもだ)温泉郷ですわぁー!!」

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「来たか! 黒木ぃー!」

「やっほー! お嬢! 黒木君! 細川さん! こっちこっちー!」

「おう」

「お待たせしましたわ!」

 

 車を降りた俺たちを、玄関前に立ってた佐々君と三羽烏の紅一点、鏑木(かぶらぎ)さんがお出迎え。

 到着したのはひときわデカい、和洋折衷キメラ型の大型宿泊施設。

 

「へぇ、ここが……」

「えぇ。ここが天常家が皆様のために貸し切った下茂田温泉郷最大の温泉宿『ジャンガラマルコ(ゆめ)海王(かいおう)富士(ふじ)まつ』ですわっ!!」

「あはは! 何度聞いてもどうしてそうなった!? って名前!」

 

 いつもより数割増しにテンションが高い鏑木さんの反応を見つつ、ロビーへと向かう。

 そこには天2軍学校の生徒たち、A組B組両クラスのメンバーが、なんとびっくり勢揃いしていた。

 

 どうしてこうなったか、3行で説明する。

 

 1、天常さんが俺を週末の天久佐本島行に誘った。

 2、付いて行きたいと言った奴らがいた。

 3、天常さんがバスをチャーターして全員でのバスツアーを計画立案、会議を通した。

 

 以上。

 

 これぞ“繁栄”の天常家クオリティ。

 表向き社会科見学という名の学校行事扱いになっている点も抜かりなし。

 

 行きは天常家保有のヘリで移動した俺たちも、帰りはバスに同乗する予定だ。

 

「言い訳、言い訳……上司への言い訳……はぁー」

 

 一人だけもうすでにグロッキーな六牧司令がいるが、ぜひとも温泉で癒されて欲しい。

 ほら、あそこに足湯があるよ。有名な奴だよ!

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「はーい。それじゃあ全員揃ったみたいだから、これからのことを話します!」

 

 引率の清白先生が、ロビーで手短に説明し始める。

 

「温泉郷内は自由行動。一日好きに見学して回って良し。ただし、夕食と夜の入浴、就寝と翌朝食は全体行動。その後は一般生徒として天久佐の壁を見学して、天2軍学校へと帰る。以上!」

 

 1泊2日の社会勉強。実質ただの慰安旅行。

 

 だからこその素早い説明を終えた先生は。

 

「さぁ、ここからは一人の軍人としての自覚をもって、羽目を外し過ぎないくらいで楽しみなさい!」

 

 逸りに逸る生徒たちの首輪を、さっさと取り外してくれた。

 

 

「うおー! 筋肉に新たな栄養を! 天久佐名物海の幸ーー!!」

「天久佐温泉美人との一夜のアバンチュールーーー!」

「YEAH! タイムイズマネー! 神社仏閣総なめです!」

「ちょ、おいこら待てお前ら! 佐々班長! 助けてくれー!」

 

 さっそく外へとぶっ飛んでいく奴らもいれば。

 

「巡ちゃん。クロちゃん(へちゃむくれの犬精霊)のお土産どうしたらいいかな?」

「なんでもいいんじゃないかしら? それより私、部屋に籠るから」

「えぇー? ちょっとくらい館内散歩とかしましょうよー、巡パイセ~~ン」

「はぁっ!? なんでそんなのに付き合わなきゃ……っていうか珠喜(たまき)、あなた馴れ馴れし……や、こら、運ぶな~~!!」

 

 館内で過ごすガールズもいる。

 

 自然な感じでグループ分けされ、それぞれが騒がしく過ごす、そんな空気。

 なんだかんだ将来の軍隊となるよう鍛えられてるのもあって、その集団行動の中に規律を感じた。

 

 

「ねぇねぇ、黒木君はどう過ごすの?」

 

 さて俺はどうやって過ごそうかと考えていると、鏑木さんに声をかけられる。

 

「よかったら一緒に町を見て回らない? 翼ちゃんスイーツ奢っちゃうよ~?」

「スイーツ……」

「そう。スイーツ! 調べてきたんだよっ! それにね、あの時助けてもらったお礼、まだちゃんと返せてなかったからさ。それくらいはさせて欲しいなっ」

 

 助けたお礼?

 あぁ、そういえば演習という名の実戦した時にフォローしたっけか。

 

 だいぶ前の話だな。

 

 あっ。

 

 

「なるほど……」

「うんうん! じゃあ決まりだね!」

「わかった」

「えへへっ。それじゃあ――」

「せっかくだが遠慮しよう。やることができたんでな」

「――行こ……あぇ?」

 

 うおおお! サンキュー鏑木さん!

 戦闘の話題出してくれたおかげで思い出した!

 

 

(天久佐本島関係のイベントでしか手に入らないレアアイテム。入手するなら今がチャンスじゃん!)

 

 次からの実戦で役に立つ、バトル中の能力値補正アイテムがあるんだよ、ここ!

 それに道中でもいろいろ、錬金技能で使いたい素材アイテムも回収できそうだ。

 

 そうと決まればさっそく行動!

 

 

「え、あ、ちょ、待……!」

「それじゃまた、夕食の時に!」

 

 ぴゅーんっ!

 

 俺はダッシュで動き出す。

 

 

「…………ねぇお嬢、細川さん。これ、翼ちゃんフラれた感じ?」

「アウトオブ眼中ですわね」

「脈なしですね」

「……ぬあ~~~~~~っ!!」

 

 鏑木さんの愉快な叫び声を背に受けながら。

 

(レア素材っ、レアアイテムっ、回収っ、回収っ♪)

 

 俺はルンルン気分で、時間いっぱいアイテム回収に勤しむのだった。

 




つまり次回は、そういうことです。

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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