ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

シュウヤ、動きます。


第49話 彼女の本音

 

「パイセンは、精一杯天常さんと向き合ってたんだよ。な、パイセン?」

「………」

 

 俺の問いかけに、パイセンは答えない。

 代わりにフッと視線を外して、そっぽを向いた。

 

 それが肯定だってのを、俺はちゃんと知っている。

 

 だって見てきた。

 俺はそういうのを観察して、考察するのが好きだから。

 

 

(……だから、ごめんな。パイセン)

 

 俺は今から、パイセンを晒し上げる。

 彼女の中にあるいろいろなものを、暴いて、詳らかにして、みんなに伝える。

 

 この場の誰よりも大人で。

 この場の誰よりも優しくて。

 この場の誰よりも今を大事にしているこの人を。

 

「天常さん。天常さんも、そのままでいいからちゃんと聞いててくれ」

「ちょ、終夜っ! アナタまさか……!?」

 

 みんなに知ってもらう。

 

 それが必要だって、今この時を生きる俺が、そう思ったから。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「パイセンは、何も天常さんとの日々がツマらなかったわけじゃあないんだ。今日みたいなハチャメチャな時の方がもっと好みだってだけで」

「え……?」

 

 最初の一言で、天常さんが顔を上げた。

 

「カラオケも、放課後の買い食いも、一緒に技能上げを頑張るのだって、パイセンは楽しく過ごしてたんだよ。なぁ?」

「………」

 

 沈黙は肯定。

 だから当然、続行する。

 

 

「そりゃ、誰かに気遣われて用意された時間より、降って湧いたようなイベントの方がどきどきワクワクするだろうさ。でも、だからと言って天常さんが用意した、たくさんの楽しい時間が面白くなかったわけじゃない。それはそれ、これはこれって奴だ」

「そう、なん、ですの……?」

「当たり前だろ。だってこの中で一番青春にこだわってるの、パイセンだぜ?」

「終夜!!」

 

 ポコッ!

 

 大して痛くないパンチが俺の脇腹を打つ。

 見れば小さな美少女が俯き顔を真っ赤にしてプルプルしていた。

 

(手は出ても、違うって訂正は入らない……)

 

 なら問題はない。

 なので当然、続行する。

 

 

「何年もずっと戦場でみんなのために頑張って、応援して、送り出してきたパイセンが、それを仕事にしてきたパイセンが、今ようやっと手に入れた穏やかな日々。それを彩ってくれる存在を、みんなを、どれだけ大事にしてるかなんてちょっと考えればすぐわかることだ」

 

 ポコポコポコッ!

 

「そりゃ、擦り減った心が荒んだ考え方を生んだりもするし、天常さんに対して斜に構えてた頃もあっただろうけどな? 今のパイセンを見ろよ。今この瞬間も俺の脇腹をポコポコし続けるこの可愛い生き物の姿をさ」

「なっ! かわ……! ~~~~っ!!」

 

 ボコッ!

 

 ぐっ、今のはちょっと効いた。

 

 

「で、ですがそれは、貴方だからでは……?」

「そんなわけないだろ。パイセンほど周りをちゃんと見てる奴がいるかよ。天常さんの気遣いを、細川さんの献身を、佐々君の誇りを、清白さんの我慢を、誰より理解してるぜ?」

「っ!」

 

 俺を見ていた天常さんの視線が、そこで初めてパイセンへと向けられる。

 それにつられて周りの目もパイセンへと集まれば。

 

「~~~~っ」

 

 パイセンはいやいやと、小さく身を震わせていた。

 

 

「でもな、そんなスーパーハイスペックなパイセンだって、出来ないことがあるんだ。正確には、慣れてないこと、だな」

 

 続けて俺は、視線を清白さんの方へ向け、言葉を紡ぐ。

 

「慣れてないこと……って?」

「そりゃもちろん、清白さんが指摘した通りのことだ」

「え?」

 

 ハッ、と。

 隣でパイセンが何かに気づいた様子を見せたが……もう遅い。

 

 

「パイセンはな、誰かと正面から本音で向き合うのが大の苦手なんだよ」

「終夜ぁ~~~~~~~~っっっっ!!」

 

 ドゴォッ!!

 

「ごほぉっ!」

 

 

 頭突き。

 っていうか、体当たり。

 

 思った以上の衝撃に、膝からくずおれる。

 

「アナタっ、このっ! ばかっ! なにを! このっ! このっ!!」

 

 バシバシバシバシッ!

 

 押し倒され、マウントポジションからベシベシ連打される。

 

「しゅうやこのっ! ばかっ! ばかっ! ばかーーーー!!」

 

 顔を真っ赤にして涙目のパイセンからの連続張り手。

 それなりに痛いが、とっくに覚悟完了済みの俺にとっては些事である。

 

 よって続行する。

 

 

「戦線に立つみんなのために、ずーっとアイドルを演じてきたパイセンだぜ? そりゃ、この8年どれだけの時間、自分の本音を押し殺して過ごしてきたと思ってるんだ? そしてそれが、どれだけ大変か、清白さんならわかるだろ?」

「あ……!」

「そんなパイセンが、天常さんにどんな感情持ってたかって言えば、そりゃいろいろだ。自分を散々振り回してきた奴への怒りもあるだろうし、ただただ悲観的になってる自分の感傷に巻き込んでる負い目もある。そして最近の楽しい時間を一緒に過ごす感謝もあれば、日々の振る舞いを見て培った信頼だってある」

「……っ!」

 

 清白さんが、天常さんが。

 俺の言葉で何かに気づき、目を丸くしていく。

 

「このっ! 終夜! 黙りなさいっ! 黙って! しゃべらないでっ! やめてっ!!」

 

 その間ずっと俺を叩いてるパイセン。

 そんな彼女の本当の望みを叶えるために、今俺は、彼女の願いに反目する。

 

 

「加えて自分に時間がないんだ。何かを判断する、悩む時間もないんだ。ならもう、流されちゃうのもしょうがないよな? せめてそうやって相手の望みに応えることで、相手にとっていい時間になればいいって、誰よりみんなを理解してる、優しい優しいパイセンは判断してしまうわけだ」

「も、もう、やめて……やめなさい……よぉ……」

 

 とうとうヘナヘナになって俺の胸にしがみ付き、さめざめ泣き出すパイセン。

 俺は俺の持ちうる知識と経験のすべてを使って、暴き晒した彼女の心を、こう締めくくる。

 

 

「パイセンはパイセンなりに、頑張って向き合おうとはしてたんだよ。ただ、上手くいってなかったってだけで、な?」

「「………」」

 

 

 言い終え、俺は胸で泣いてるパイセンの背中に手を当て、よしよしとさする。

 小さく縮こまっているパイセンは、見た目相応の、どころかもうちょっと幼い甘えん坊な童女みたいだった。

 

 正直これで嫌われちまったろうなぁとは思うが、それでも俺に、後悔はない。

 

 パイセンのこれからのために、天常さんのこれからのために。

 そしてこの場にいる全員にとって。

 

 彼女の本音(こころ)は、今伝わってなきゃいけないと俺は判断したのだから。

 

(じゃないと、顔向けできないもんな)

 

 たとえ嫌われるのだとしても、誰かのために最善を尽くす覚悟。

 それを持たずして、心から推しは推せないのだから。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「まぁ、そんなわけで。天常さん、清白さん。今回のパイセンのやらかしは、俺に免じて許してやってくれ」

「……は、あ?」

「え? あっ! あっ!」

 

 押し倒されたまま片手で謝罪メンゴ決めた俺に、ポカンとしていた二人が慌てだす。

 

「い、いえいえいえ! 悪いのは私ですわっ! 巡さんの気持ちを知りもしないで私の考えを押し付けてしまったのがそもそものすれ違いですのに!」

「わ、わわわ、私もごめんなさい! 叩いちゃったし、巡ちゃんならわかってるはずって勝手に決めつけて……!」

 

 バタバタとそばに来て、それぞれに土下座みたいなポーズで身を寄せて。

 

「「本当にっ……ごめんなさい!」」

 

 直後、二人の謝罪の言葉が重なった。

 

 

「………」

 

 パイセンは、終始無言だった。

 俺の胸元に顔を埋めて、微動だにしていなかった。

 

「巡さん……」

「巡ちゃん……」

 

 不安げな天常さんと清白さんの視線が向けられて。

 

「九條……」

「巡様……」

 

 遠目から静かに見守る佐々君と細川さんの視線も注がれて。

 

 そうしてしばらく経ってから。

 

「……もう、許してぇ」

 

 蚊の鳴くような小さな声で。

 羞恥に顔を真っ赤にしたままパイセンが呟いた。

 

 なんとなく、みんなとパイセンのあいだにあったわだかまりについては。

 もう大丈夫だと思った。

 

 って、ことで。

 

 

「――そんじゃあ、ここからが本題なんだが。パイセン」

「………………なに?」

「あと少ししたら、寿()()()()()()しに行こうぜ。もちろんどうするかはパイセンに任せるけど」

「……は?」

 

 諸悪の根源、寿命問題の解決に向かって。

 俺は準備していた計画を、実行に移すことにする。




さぁ、知識チートの時間だ。

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