ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~ 作:夏目八尋
感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。
さぁさ、第2部も大詰めです。
よろしくお願いします。
第53話 夏季特別訓練という名の海回
7月半ば。
本格的な小隊設立を前にして、おそらく最後の“純粋な学生”として過ごす夏。
青い空。白い雲。
そしてキラキラと輝く白砂の岸に、打ちつける涼やかな海の青。
対比的で美しい、夏そのものといった光景を前にして。
「……全員、整列!」
「これより、夏季特別訓練期間を開始しますわっ!!」
俺たち
「まずは浜辺を往復10周! 始め!」
「「……了解!」」
地獄も地獄の特訓メニューへと、その身を躍らせる。
「よし、やるか……!」
俺たちの夏は、そんな、とんでもない“強化合宿”と共に始まった……!
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「今回行なう2週間の特訓期間で達成させる目標は、体力・気力を1100! 運動力・知力を1000! そして感応力を最低Aランク……400まで向上させる!」
「それだけではありませんわよっ! 今回は全員、生存力の底上げのため格闘・射撃のいずれかの技能レベルを1に、そして最低でも夜戦技能レベルを1にすることを目標に、技能習得訓練も行ないますわ!」
前回のスポーツテストで定めたよりもさらに高い基準。
この世界基準のエリートであるステ600ラインを大きく超えた、世界的強者の入り口まで鍛え上げる。
なぜ1000なのかと問われれば、清白親子というか、白の鳥籠が作ってたステータス閲覧技術によって、マスクデータであるSランク以上の区分が判明したからである。
能力値のランクによって判定に大きな補正あるとされるこのHVV世界、
今後のことを考えても、小隊員たちには最低限、ここまでは頑張ってもらいたい。
やりすぎ?
否、やっていいなら目標は
ちなみに感応力400は、精霊関係の対応できる幅が広がるボーダーライン。
精霊殻のあれこれができるようになる最低値でもあるので、ここも頑張って欲しい。
「運動訓練は午前中のみ行なう。その分強度の高い内容になるから、覚悟するように!」
「午後は休憩を挟んでから座学ですわ。覚えるまで何度でも叩き込みますわよ!」
鬼教官となった各クラスの委員長、佐々君と天常さんの宣言に。
「どんとこいだよ!」
「俺たちに任せろ!」
「やれるだけはやりますよっと」
しかし、意外にもクラスメイトたちの士気は高かった。
(あ、いや。意外でもなかったか)
少し考え、思い至る。
(思えば小隊士気補正、バッチバチに影響出すイベント起こしまくってたもんな)
文化祭を開催して大成功させたり、社会科見学で湯治をしたり。
俺たちは学校規模での楽しいことを、派手にいくつもこなしていた。
(最低でも全員に士気+500は入ってることを考えたら、こうもなるか)
500はSランクになる数字である。
Sランクとはつまり、抜きんでているという意味である。
結論。
今の天2小隊の士気は、十分すぎるほどに高かった。
そしてその結果――。
「――よくぞ訓練を乗り越えた! まさか全員が目標を達成するとは思わなかったぞ!」
「本当に! 本当によく頑張りましてよ! これでもう、皆様がエースオブエースですわ!」
天2小隊の面々は、用意された目標を全員で達成する。
現状俺たち以上のステータスを持った小隊は、この世界のどこを見ても存在しないだろう。
そして。
「訓練は今日までで終わり! あとは……」
「……めいいっぱい、この海のバカンスを楽しみますわよーーーーー!!」
「「「うおおおおーーーーーーーー!!!」」」
地獄を乗り越えた俺たちは、ただの学生として最高最後の長期休暇へと突入した……!
即ち。
海回である!
※ ※ ※
「オーーーッホッホッホ!!」
「お嬢さばばばばばばば……!!」
「ひゃああああーーーーーっほーーーーーーぅ!!」
「おおおー」
「んんんっっ!!」
バナナボートに連なって、すごい勢いで海上を走る。
「最っ高! ですわーーー!!」
「おおおおお嬢様!? 胸! 胸が! 金ビキニが緩んでまろび出てしまいそうですっ!!」
激しく揺れるボートにまたがり、5人連なりガッチリと。
「あばばばば!! 黒木くんが私の背中に! つかつかつかつかつかまってーー!?!?!?」
「おおおおおお!? 落ち着け、清白さうおぁっ!?」
「んんんっっ!!」
天常さん、細川さん、清白さん、俺、パイセンという配置。
そして。
「うおあああああーーーーーー!!」
バナナボートの尻尾に括りつけられたロープで繋がる、デカい浮き輪で佐々君。
「これれれれ、やばばばばば……! このボボボボボ!?!?」
振り向けば、ジャンケン敗者の佐々君の体が何度も何度も宙を舞っていた。
「どあっ!?」
あ、吹っ飛んだ。
ナムナム。
激しく打ち上がる水飛沫をバックに、さらにしばらく俺たちは、激しく揺れる荒馬の上で必死に食らいついていた。
・
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砂浜遊びも手を抜かない。
「こ、これは!?」
埋められた俺の上に作り上げられる、ご立派様。
ではなく……。
「……八九式中戦車! 再現度高いなおい!?」
ご立派な戦車様だった。
「ふふー。頑張ったよ!」
製造者である清白さんは、大仕事を終えてご満悦である。
「これは、負けられませんわ! 細川! 巡さん!」
「はい、お嬢様!」
「はいはい」
対する佐々君の上に作り上げられていく物はと言えば。
「ぐおおお、動けない……!」
さらに立派な隈本城である。
「オーッホッホッホ! 美術技能の差が出ましたわね!」
「むむむ……! 黒木くん、何かお題頂戴! リクエストがあったらもっと上手に作れる気がする!」
「あら! でしたら同じテーマで勝負と参りましょう! 巡さんは清白さんのフォローに回られて結構でしてよ!」
「わかったわ」
どんどん白熱していく砂遊び。
気づけば他のクラスメイトの実況解説入り乱れての、ミニイベントのようになっていた。
「く、ぅっ……好きにしろっ!」
「すやぁ……」
そのあいだ、佐々君と俺はずっと砂の中だった。
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俺たちはその後も、あれやこれやと遊び倒して、ビーチを満喫した。
ビーチバレー、スイカ割り、ビーチフラッグに波打ち際での追いかけっこ。
思いつく限りの遊びをハイペースで詰め込みに詰め込んで、全力で遂行する。
一日で遊び足りないなら、二日、三日とかけて。
手を替え品を替え、つるむ仲間を入れ替えて。
「天2軍学校、ビーチクイーン決定戦ですわーー!」
「「イェーイ!!」」
「HEY! クイーンと聞いちゃあ、引くわけにはいかないかな!」
「な、なんで私まで……」
「いつもお嬢様が申し訳ございません。巡様」
「黒木くーん! 私に清くなくていいから一票ちょーだーい!」
「紹介しよう、アマビエ姐さんだ」
『私ノ絵ヲ飾リナサイ。大体ノ病ハ余裕デ跳ネ飛バスワ』
「ぴえっ、本物の精霊とかわたし初めて見たよ。終夜ちゃん」
「いつも引きこもりのタマちゃんが契約するとちょうどいいんだ」
『仲良クシテアゲテモ良イワヨ?』
「へぇあ!? それマジで言って――」
「拠点が病気知らずになるし、パソコンが湿気の影響受けなくなるぞ」
「――契約しよう! 姐さん!!」
『現金ナ子ハ嫌イジャナイワ』
「バーベキューの用意ができたぞー! さぁ、肉を食って肉を増やせ!」
「なんと本土のブランド肉まで、佐々君と天常さんが用意してくれちゃったよ!」
「野郎ども! 肉が食いたいかー!」
「「うおおおおーーー!!」」
「お代わりいっぱいありますから、存分にお食べになってくださいましー!」
鍛え上げたステータスをフルに使って、全力で夏を満喫する。
元気になったパイセンも含めて、誰一人欠ける事無くここに集ったみんなで、一緒に。
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「3,2,1……点火!」
設置された筒が、ボボンッと大きな音を立て。
ドンッ!! ドドンッ!!
その数秒後、夜空に大輪の花が咲く。
「たーまやー!」
「かーぎやー!」
「てんじょうや!」
次々と打ち出される空の花だけでなく、地上には幾筋もの光が踊っている。
「……綺麗ね」
「パイセン」
楽しむみんなを眺めていると、浴衣姿のパイセンがやってきた。
長い髪を結い上げて、小さいながらも大人な和服美女風の仕上がりである。
「あの子たち、いったいどれだけの数を打ち上げるつもりなのかしら?」
「確か、100発は用意したって聞いた気がするな」
頷くと、パイセンは落ち着いた所作で隣に並び、俺と一緒に夜空を見上げる。
ドドンッ!
再び大きな花火が、一面に咲き誇った。
それは確かに、夏の思い出に変わる。
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