ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。




第61話 星堕ちる夜

 

 月夜の路地裏を、僕は全速力で走っていた。

 

「大丈夫、大丈夫だからね」

 

 腕に一人の少女を抱えて。

 

「ピギィィィーー!!!」

「!?」

 

 そう遠くない場所で響く、怪物の鳴き声。

 ソレは愛らしく親しみやすい顔をしてこの少女を釣り出し、命を奪おうとした。

 

 

「おにいちゃん……」

「大丈夫。僕が必ず君を、守るから」

 

 瞳に涙を溜めて不安げな少女に、努めて笑顔を作ってみせる。

 今の彼女が頼りにできるのは、僕をおいて他にいないのだから。

 

「ピギィィィーー!!」

「っ! 上か!」

 

 月を隠して出来た影に反応して、横に飛ぶ。

 直後、僕たちのいた場所を、醜悪な表情の妖精が放った光弾が撃ち抜いた。

 

 

「ごめんね。ちょっと待っててね」

「え? おにいちゃん!」

 

 物陰に少女を隠して、僕は押っ取り刀に近くに落ちてた鉄パイプを拾い立ち上がる。

 

「来い! 僕はここだ!!」

「ピギィッ!」

 

 叫べば、怪物は僕に向かって真っ直ぐに飛んできた。

 

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 恐れずに立ち向かう。

 僕の背中には、守るべき人がいる!

 

「でぇぇぇい!!」

 

 鉄パイプを振り下ろす。

 

「ピギャァァァーー!!」

 

 グチャッとした肉を潰す嫌な感触とともに、怪物は地面へと落ち、溶け消えていく。

 

「ふぅぅぅ……」

 

 わずかに蒼い燐光を放ちひん曲がってしまった鉄パイプを捨てて、僕は少女の元へと戻った。

 

 

「おにいちゃん!」

「ただいま。うんうん、怖かったね。もう大丈夫……行こう!」

 

 飛びついてきた少女をよしよしと撫でて慰めて、再び走り出す。

 もう少しいけば、戦闘区域から脱出できるはずだ。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「おにいちゃん、ありがとう!」

「どういたしまして。お母さんと仲良くね!」

 

 戦闘区域を脱して、運よく少女と母親を引き合わせることができた。

 僕は再会を喜ぶ二人に別れを告げ、歩き出す。

 

(やっぱり、誰かの笑顔っていいなぁ。見てると僕も元気を貰える)

 

 お節介だと級友は言うけど、ほっとけないものはほっとけないんだ。

 誰かが手を差し伸べないと救えない人がいるのなら、僕はなるべくその手を救う人でいたい。

 

「だから……」

 

 立ち止まり、僕は懐から一通の封筒を取り出す。

 これには僕の、軍への入隊希望届が入っている。

 

 

(そうだ。僕は、戦う……!)

 

 世界を救うなんて大きなことは言えないけれど。

 それでも僕は、一人でも多くの人たちを助けたい。

 

 

「僕だって、天2軍学校の人たちみたいに……強くなって、みんなの希望になるんだ!」

「それは素晴らしい。まるでヒーローのようだ」

「!?」

 

 

 突然に感じた人の気配。

 そして同時に感じる違和感。

 

 僕とその人以外の……人の気配が、ない?

 

 

「何者だ!?」

「おや、その警戒っぷり。さすがは未覚醒とはいえ最大のヒーロー適性所持者だ」

 

 ぬるり。

 

 そう表現する以外ないような気味の悪い出方で、その人は物陰から姿を現した。

 

 胡散臭い笑顔を浮かべる、白衣の男だった。

 

 

「真白一人クン、だね?」

「……そうですが」

「君は、世界を救いたいのだね。彼らのように……天2の人たちのように」

「………」

 

 絶対に怪しい。

 ()()は、何かがズレている。

 

 長年頼りにしてきている僕の直感が、そう訴えている。

 

 

「それじゃ、僕はこれで――」

「残念ながら、君の出番はなくなったのだよ」

「――え?」

 

 不意に耳元で声を聞き。

 

 ドッ!!

 

 続けて自分の腹に、刃物が突き立つ音を聞いた。

 

 

「こ、ほっ……!?」

「では、サヨウナラ……ヒーローかもしれなかった、君」

 

 刃を引き抜かれ、地面に倒れる。

 急速に体から熱が抜けていくのを感じる。

 

 代わりにぬるりとした不快な熱を持つ水気が、僕のお腹辺りに強くあった。

 

 

「ま、て……」

 

 遠ざかる足音に向かって手を伸ばす。

 けれど、僕の体はどんどん力を失って、最後はパタリとコンクリートの上に落ちた。

 

「……ぼ、くは」

 

 薄れゆく意識の中。

 最後の力を振り絞って顔を上げた僕の目は。

 

 どこまでも深い、深い、真っ黒な闇を映すだけだった。

 

 

 ハーベストハーベスター

  第2部 セカンド・ブレイク  完




これにて、第2部完結でございます。

次回からいよいよ正式な小隊となったシュウヤたち。
侵略者たちとの戦いを含む、新たな青春の日々が始まります!

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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