ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

さぁ、過去一長い章が開幕です!
よろしくお願いします!!


第14章 天2独立機動小隊、天久佐撤退戦!
第80話 出陣式


 

 2月10日、大安吉日。

 この日、日ノ本政府は天久佐撤退戦の開始前式典――“出陣式”を開催した。

 

 上天久佐第2小隊基地に兵を集結させ、近隣の未だ避難していない住民たちを集め、マスコミも動員しての大々的な催事。

 隈本県知事さえも呼び、危険をおしての強硬開催。

 

 

「――先の天久佐の壁崩壊より今日まで、国民の被害を最小限に抑え、守り続けてきた者たちの働きに感謝し、えー……これよりさらなる戦いへ赴く戦士たちの勇気を――」

 

 霊子ネットに生配信される中、話し続ける県知事の近く。

 隈本御三家の佐々君、天常さんに並ぶ形で俺、清白さん、木口君が並んでいる。

 

 俺たちの胸にはそれぞれの活躍を示す勲章がジャラジャラと留められ、これでもかと優秀っぷりをアピールする。

 

「彼らこそが、神子島戦線の英雄たちと並ぶ……いや、新時代を担い、越えていく新たな英雄たちであると、私は確信しております!」

 

 ワァァァァーーーー!!!

 

「………」

 

 それは、いっそ清々しいほどのプロパガンダ。

 けれど、そうしなければ誰しもが、未来への不安に心潰されかねない状況であった。

 

 俺たちはこれから、大切な天久佐(ふるさと)を切り捨てるのだから。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 外向けの式典が終わり、いよいよ出陣という段になって。

 

「シュウヤちゃん。無事に戻ってくるのよ?」

「大丈夫。母さんも隈本の爺ちゃん家までちゃんと避難しといてな」

 

 今日まで天久佐に残ってくれていた母さんと別れの挨拶を交わす。

 

「なんだあの人を超えた美人」

「ご存じ、ないのですか!? 彼女こそ、天久佐が生んだ空前絶後の人妻天女、黒木さんなんですよ!?」

「あれがか……!!」

 

 この度。

 母さんの魅力値は無事、人の領域(1500)を超えました。

 

 

「これ、お弁当作ったから。お友達と一緒に食べなさいね? こっちは基地に残る子の分」

「ありがとう。それじゃそろそろ……」

「ええ」

 

 4段重ねの重箱と小さな包みを受け取ったところで、不意に柔らかな感触に包まれる。

 

「シュウヤちゃん。あなたは本当に、いっぱいいっぱい、いーっぱい頑張ったの。十分どころか百分、千分……いいえ、兆分くらい頑張ったの。だからね……」

 

 抱きしめられた俺を、温かく、柔らかい感触と心地よい香りが満たす。

 自然と目を閉じて、全身でその感覚に浸る。

 

 そんな俺の耳に、母さんの言葉が響いてくる。

 

「……本当にいざってなったら、逃げていいのよ。どこまでもどこまでも、遠くに。なんだったらお母さんたちを置いてってもいいわ。ただ生きて、どこかで生きていてくれたら、お母さんそれだけで本当に嬉しいから。だからね、シュウヤちゃん……死なないでね?」

 

 どこまでも優しい言葉が、じっくりと俺の胸に熱を与えてくれる。

 心からの願いが、想いが、踏ん張る力を高めてくれる。

 

「……わかった。超生きる」

「うん、うん。お母さんその言葉、信じるからね」

 

 ……何か、察しているのかもしれない。

 

 最後にギュッともう一度だけ強く抱き締められてから、俺は解放された。

 ほんの少し寂しくて、けれどそれ以上に身が引き締まった気がした。

 

 

「それじゃ、シュウヤちゃん」

「うん」

「いってらっしゃい!」

「いってきます」

 

 別れではなく、出発の言葉を交わす。

 対になる言葉を、お互い必ず返すために。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「天2独立機動小隊! そろそろ出発の時刻です! ご家族、報道関係者の皆様は――」

「……おし」

 

 重箱の中身を崩さないようにしながら、俺はみんなの元へと向かう。

 

「黒木の御母堂様……また美しさに磨きがかかっていたな」

「建岩さんも相当でしたが、あのお母さまにはさすがに及びませんわね……」

「うーん。私のお母さんももうちょっと、化粧に興味持つべきだと思うんだよねぇ。開発ばかりじゃなくて」

「帆乃花が教えてあげればいいじゃない。最近たくさん勉強してるんだし」

 

 俺が一番最後だったのもあって。

 何やらこっちの別れのシーンは見世物にされていたようで。

 

 ……ちょっと恥ずいな。

 

 

「すまん。待たせた。これ弁当、みんなの分もあるってさ。パイセンの分はこっちな」

「あらありがとう。いただくわ」

「まぁっ! ご丁寧にこーんな気配りまでいただいてしまって。将来黒木さん家に嫁ぐなら、妻に求められるハードルは高そうですわね?」

「はい。間違いありませんね」

「はわわっ!? りょ、料理ならそれなりに自信あるよ! 黒木くん!」

「……まぁ、一通りはできるわね」

「フッ。黒木が望むのなら、以前の弁当勝負の時よりさらなる研鑽を重ねたこのボクの珠玉の料理! それをまた振る舞おうじゃあないか!」

「そうだな。その時はありがたく頂戴しよう」

 

 いつもの軽口を挟みつつ、重箱を指揮車に乗る細川さんに預け、精霊殻へと乗り込む。

 豪風ではなく、このところお立ち台として活躍していた2番機に。

 

 

『終夜』

「はいよ。今回もよろしくな」

 

 珍しくヨシノの方から声をかけてきたのに答えると。

 

『……何カアレバ、私ヲ頼ッテクダサイ』

「? おう?」

 

 なんか意味深な言葉を心配げに告げられ、そのまま会話が終わってしまった。

 

(まぁ、しばらくハイスペック機の豪風に乗ってたしな。勝手が違う2番機(コレ)で無茶しないか心配なんだろう。しっかり気をつけておけば問題ないよな)

 

 ありがたい忠告をいただいたってことで呑み込み、待機モードで起動する。

 いつでも飛び出せるようにしつつも、しばらくは移動時間だ。

 

 ヴンッ!

 

「もしもーし、黒木君。ちょっといいかい?」

 

 およ、六牧司令だ。

 

 

「黒木君さぁ~。コックピットを開けて、お見送りの人たちにファンサしてくれない? 映え~って感じで」

「えぇー」

 

 バチクソ面倒臭い案件が来た……。

 そういうのは天常さんにやらせればいいんじゃないかって思うんだが。

 

「頼むよ~。っていうか黒木君は自分の外での評判とかもうちょっと気にしてよ~」

「えぇー」

 

 俺が評価されたい子への熱いメッセージはもう全国ネットで吐き出したしなぁ。

 

「笑顔で手を振るだけ、手を振るだけでいいから、ね?」

「……むむむ」

 

 ……正直。

 このタイミングで人の印象に残る行動は、あんまりしたくなかったんだが。

 

 

「……わかった」

「ありがとう~~~~!! 助かる~~~~~~~!!」

 

 めちゃくちゃありがたくない感謝を受けつつ、ハッチを開く。

 

 瞬間。

 

 ワァァァァァァ!!!

 

「うおっ」

 

 生で直接聞いた歓声は、思ったよりも圧力と、心を震わす熱量があった。

 

 

(これは、思ったより元気もらえるな)

 

 自分が英雄視されていることには、まだ慣れないがさすがに自覚は持ててきている。

 そうあるように力を求めて、そうだと思われるくらいには活躍してきたつもりじゃあった。

 

(……ただ)

 

 実際にこう、目の当たりにしてしまうと。

 なんつーか、こう……腹の奥にクるものがあるな……プレッシャーというか、なんというか。

 

 

『……終夜。見世物ニナルノハ其ノ位デイイト思イマスヨ』

「そう? じゃあこのくらいで……っ!」

 

 言われてホッとしながら、ハッチを閉じる操作をした……その瞬間。

 

「………」

 

 目が合った。

 

「…………え?」

 

 人影だった。

 視界の端、場所は人混みから外れた建物の陰になってるところ。

 

「んえ?」

 

 二度見した時にはもう、その人影は消えていた。

 そのまま開いていたハッチが閉じ、視界はモニターが映す世界へ移行する。

 

『ドウカシマシタカ、終夜?』

「いや……なんでもない」

 

 肉眼だったせいでデータを見直すなんてこともできない。

 だが俺は、そのほんの一瞬だけ目で捉えたその人影のことが、とてつもなく気にかかった。

 

 

(見間違い? いや、っていうか、なんだ、アレ?)

 

 自分の記憶にあるモノが、自分の記憶と違う姿形をしていたみたいな。

 

 たとえるならば……そう。

 久しぶりの再会で、印象がすごく違っててパッと見じゃわからないみたいな、そんな感じ。

 

 だから、これは単なる見間違いだったのかもしれない。

 

(そもそも、こんなところにいるはずがないもんな……)

 

 いるはずのない人が、するはずのない恰好でそこにいた。

 それも今となっては、確かめる術もない。

 

 むしろこれは……自分の願望がそうさせたと言った方が納得がいく。

 

 

「……だよな。さすがに都合が良すぎるか」

『?』

 

 シートに深く背を預け、ため息を吐く。

 きっとあれは、これから人生最大の危機へ自ら赴かんとする俺が見た、幻想。

 

(……ボロボロの外套をまとった真白一人って、どんだけ想像力豊かなんだよ俺ってな)

 

 絶対のピンチを救いにヒーローがやってきた!

 なんてベタな想像をしてしまった自分が、アホらしすぎて涙が出てきそうだった。

 

 

(そうじゃない、違うだろ? この先の運命は、俺自身の手で、掴むんだ)

 

 改めて覚悟を決める。

 これから向かう、運命の戦いは、俺自身のこれまですべてを賭して挑むべき戦いだ。

 

 だから。

 

「生き延びるんだ……絶対に」

『………』

 

 口に出して、こぶしを握って。

 俺は、大好きな推しの不器用な笑顔をこそ、めいいっぱい想像し始めるのだった。




終夜ママの魅力値、未だ発展途上。

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