ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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確認、大事。


第82話 無理無茶無謀で、必要な一手

 

「ったはー! 可能な限り奥へ、奥へ……とは、言ったけどさぁ」

 

 指揮車の中、受け取ったメールの中身を確かめ、それに“了解”のスタンプを返してから、六牧百乃介は深い深いため息を吐く。

 

「しかもこの内容。それが、絶対に必要だってのもわかるんだよねぇ」

 

 間を置かず、大量に送られてくる小隊員たちからの抗議通信に頭を抱えながら、彼は言い訳のテンプレートを仕上げつつ、呟く。

 

「……だからね。失敗は、許さないよ? 黒木君?」

 

 天久佐撤退戦。

 開始直後にスタートした、黒木終夜の無謀な挑戦。

 

 

『天久佐地区における、亜神級ハーベスト“海渡るオオカミ”の存在確認』

 

 

 本作戦を実現するにあたって決して見逃せない要素、その確定。

 それを唯一果たせるだろう存在は、すでに指揮車の支援が届かぬ場所まで飛び出していた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 はい、ドーモ!

 “推しの踏み台許さない”黒木終夜デース。

 

 今回は亜神級ハーベスト、壁の時にバチバチにやりあったあの狼野郎がいないかどうかの確認のために、敵の陣地のど真ん中を全力疾走RTAしております。

 寝てるはずのクジラは来ない前提で……ってかアレが来たら撤退戦はその時点で失敗です。クソゲー!!

 

 はい。

 なんでまた今回、こんな無理無茶無謀なことをやっているかと言いますと。

 俺の知ってる天久佐撤退戦までの時間軸、亜神級が出るとかマジでなかったんで、不確定要素把握しきれてないってのが一番デカい理由になりますねぇ。

 

 天久佐撤退戦ってのは橋落としたり島ぶっ飛ばしたり、いろいろ派手なことやる大作戦なんですが、あくまでそれは敵が精霊級までって想定だから成立する作戦でして。

 “空泳ぐクジラ”はもちろん“海渡るオオカミ”なんてのが出てくる状態だと、まー、島吹っ飛ばしてもそのまま進軍されちゃうじゃんねって話になるわけなんですよ。

 

 だもんで、まず第一に、亜神級がここにまだ残っているかどうか。

 その確認ができるならやっとかないと、天久佐の壁防衛戦の二の舞になる可能性があるんですねぇ。

 

 一応、他国で起こった過去の事例からしてお上的にはもういないだろうって判断なんですけど、そこはHVV世界の現実、予想外のことが平然と起こりまくっているThisWorld――ってなもんで。チャートになくてもちゃーんと確認作業しましょうねぇってことで、こうして走っているわけなんですなぁ。

 

 

『終夜』

「はい」

『ソレ、楽シイデスカ?』

「割と」

 

 精霊殻の中、それなりに声を出しても外に音が漏れないから安心である。

 だからこのくらいのおふざけは、全然ヨユーヨユー。

 

 それに、何を隠そう前世で俺は、ニヨニヨ動画でHVV実況プレイ動画を生配信していたこともあるのだ!

 もちろんレギュレーションは我が愛、我が夢、我が希望たる黒川めばえ生存ルート限定。

 最大視聴者数7名をマークした、伝説の配信である。

 

 俺に配信の才能はなかった。

 

 

『気ヲ緩メ過ギナイ様ニ』

「了解。とはいえ、この状態なら気をつけるべきことはそんなに多くないけどな」

 

 最近お立ち台から俺の愛機に返り咲いた精霊殻2番機さん。

 ただ今えっちらおっちら敵陣ど真ん中を疾走中だが、戦いになる気配はない。

 

「?」

「GOU?」

 

 今もゴーレムの群れの中、スルッと抜けたがバレなかったし。

 

 それもそのはず。

 実は今、我が精霊殻は敵の認識を超常的に阻害する“隠密状態”にあるのだ。

 

 

 ヴンッ!

 

 ----------

 

 気力を追加で20消費。

 超常能力“隠れ身”を継続します。

 

 ----------

 

 隠密技能と情報技能、そして同調技能がすべて技能レベル1以上。

 さらに一定時間ごとに固定で気力を20消費することで、データの隠蔽や個人レベルでの隠密状態化を可能にする超常技能“隠れ身”。

 これに開発技能2以上かつ、ハベベ勲章入手で解禁される霊子ネットリンカー拡張プログラムアイテム“ハーモニーセル”を合わせることで、個人レベルだった隠密状態化を精霊殻(のりもの)ごと敵からの認識を阻害するモノへと拡張できるのだ!

 

 本来なら機動歩兵用の隠密戦術を精霊殻でやれるわけだから、ハベベ勲章後解禁なのもわかる無法っぷりである。

 

 

『終夜』

「おっと、隠れろ隠れろ」

 

 とはいえ、過信はできない。

 

「ブルルルヒヒーンッ!!」

「ユニコーンか……」

 

 敵の中には、隠密状態が通じない奴がいる。

 亜神級の奴らと、フェアリー、ユニコーン、ドラゴンの3種類のハーベストだ。

 

 こいつらからはしっかりスニークしないとダメ。

 視認されたらその瞬間からアラート全開、命を懸けた鬼ごっこが始まる。

 

 なので。

 

 

「ヨシノ」

『問題ナク。……スニークキルシークエンス、実行します』

 

 背中に背負ってたジャイアントスナイパーライフルを取り出して、構え。

 

 ヴンッ

 

 ----------

 

 気力を10消費。

 超常能力“サイレントムーヴ”を実行します。

 

 ----------

 

『照準良し、狙イハ万全デス』

「了解。ショット!」

 

 チュンッ

 

「ブルッヒッ!?!?」

 

 ヘッドショットを食らって、ユニコーンが倒れる。

 

『スニークキルシークエンス、滞りなく終了しました』

「OK。それじゃ移動を再開するっと、その前に……干し肉ガジガジっと」

 

 ----------

 

 黒木終夜の手作り干し肉を使用しました。

 気力を30+15回復。

 

 残り使用回数5回です。

 

 ----------

 

 ※残り使用回数は推定です。

 

 小まめな栄養補給も忘れずに。

 こんな感じで、バレないように狩っていく。

 

 

『現在撃破数17体。少々はいぺーすデス』

「想定より敵の層が厚いな。時間、あんまりかけたくないんだが、しょうがないか」

 

 すでに上島も半ばまで潜り込んでいる。

 ここまで奥に入り込めたら、もうフェアリーのような敵地侵攻役は出てこなくなる。

 

 だから、注意すべきはユニコーンとドラゴンと……それ以上の大物だ。

 

 

「まだ、フェンリルの姿は確認できないな?」

『レーダーに反応なし。体力・気力残量に注意して行動してください。……無理ナク行キマショウ』

 

 スナイパーライフルを再び背中に背負ってから、さらに奥へ。

 

(理想は大本営予想の通りに居ないのが一番だが、こういうのって、まぁまず裏切られるからなぁ)

 

 亜神級はきっといる。

 そう想定しつつ、俺たちはより深く、敵地となった天久佐の大地を踏み越えていく。

 

 途中、敷かれていた何個目かのサークルを発見、破壊しながら。




終夜君はいつも通り?

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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