ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

一番付き合いの長い仲間。


第84話 相棒

 

 憎いあん畜生“海渡るオオカミ”こと、フェンリルに見つかった俺たちは。

 

 ブシュッ!

 

 用意していた煙幕を使い、奴の視界からその身を隠す。

 

 

「“隠れ身”! 再起動!」

 

 数分の目くらまし。

 その隙に再び認識阻害の超常能力を起動して、即座にフェンリルたちから距離をとる。

 

 

「そら逃げろ、やれ逃げろ!」

『アーカイブから対応する語彙を引用します。あらほらさっさ~』

 

 脱兎のごとく駆け抜けて。

 俺たちは全力疾走、この場から逃げ出した。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 全力疾走で向かった先は、来た道とは逆の、本島に入ってさらに奥。

 本戸の街を一望できる、すぐ傍にそびえる小高い山の上。

 

 自然公園として整備されている木立の中に滑り込むようにして、俺たちは身を潜めた。

 

 

「……さて。っていうことで。目的は達成したというかなんというか」

『居ナイヲ確カメルはずガ、見ツケテシマイマシタ、ネ』

「だなぁ」

 

 亜神級isヒア。

 本当なら天久佐の壁まで突っ切って、いませんでしたーってそこの通信施設使って連絡する予定だったんだが、見つけてしまった。

 

「かんっぜんに、居着いてるよなぁ……アレ」

『肯定。天久佐工業高等学校を拠点にしているものと思われます』

 

 クッソ厄介!

 

 煙幕が晴れたあと。

 しばらく周囲を警戒していたフェンリルは、元の位置に戻って再びドヤ顔待機状態になった。

 

 それを俺たちは、アレの認識範囲外から望遠で覗いている。

 

 

「……うーん」

『終夜、先程モその顔ヲシテイマシタネ?』

「あぁ、えっとな。あいつから、前みたいなプレッシャーを感じなくってな」

 

 こっそりこそこそ観察しつつ、俺はさっきも感じた違和感について吐露する。

 

 プレッシャー……そう、プレッシャーだ。

 

 天久佐の壁防衛戦で向き合ったときに感じた、強烈な圧。

 これが亜神級かって納得の存在感があのときにはあったんだが、それが今は……ない、気がする。

 

 正直、なんだこの違和感ってくらいの差がそこにあるような気がして。

 

 なんつーか、アレなら……ワンチャン……。

 

 

「……ぶつぶつ」

『終夜』

「……ぶつぶつ」

『終夜』

「………」

『超過駆動のダメージフィードバックをオールパイロットに設定しま』

「キャンセルキャンセル! ごめんなさい!」

 

 ヨシノさんや。

 ここでそれは死活問題ですぜ?

 

 なんとか設定変更をキャンセルしてもらったところで、改めてヨシノが俺に問う。

 

『終夜。聞カズトモ察シテイマスガ……』

「……ごくっ」

『…………ヤル気デスカ?』

「………」

 

 俺は顔を背けた。

 

『ヤル気デスネ』

「ハイ」

 

 頷く俺の口から出た声は、妙に高くてか細かった。

 

 

『イイデスカ? ソモソモ、我々ノ任務ハ偵察デアリ……――』

「ぐぇー……」

 

 始まってしまったヨシノの説教に耐えながら、俺はもう一度遠目にフェンリルの姿を見る。

 

(……だって、しょうがないじゃん)

 

 今、そこにいる脅威。

 亜神級なんていうイレギュラー。

 その存在を見逃すなんて、絶対にできないんだから。

 

 

「……なぁ、ヨシノ的にはどう思う? アレとやりあって、勝てそうに見えるか?」

『ソウデスネ……勝率15%ト言ッタトコロデショウカ?』

「つまり勝てるってことだな」

 

 コマンドを入力。

 ゆっくりと、ジャイアントスナイパーライフルを構える。

 

『待ッテ下サイ。終夜』

「んおっ!?」

 

 俺の入力したコマンドが、アラートと共に停止する。

 ヨシノの権限で、コマンドの実行に強制的に待ったをかけられたのだ。

 

 滅多にやらない行動だから、ちょっとびっくりした。

 

『終夜。今ノ貴方ハ何カガ変、デス』

「変?」

 

 どっちかというと、ヨシノの方が変な気がする。

 精霊殻の機械音声越しでも、なんとなく、彼女の声音が切羽詰まっているような気がして。

 

 まるで今にも、叫びだしそうな……。

 

 

『……コレマデノ貴方ハ、ドンナ状況デアッテモ、自ラ命ヲ投ゲ出スヨウナ選択ハ選バナカッタハズ』

 

 え?

 

『貴方ノ戦略ニハ、貴方ノ生存ガ常ニ計算サレテイマシタ。デスガ今ノ貴方ハ、何カ違ウ基準デモッテ戦略ヲ立テテイル。それハ……』

 

 あ、あー……!

 

 あーあーはいはい。そういうことか。

 言われて、さらにびっくりした。

 

 そうかそうか。

 確かにこれは……今までの最善じゃあないもんな。

 

 

『理解シタナラ、ドウカ冷静ニ……』

「大丈夫。俺は冷静だよ。っていうか、冷静すぎるくらい冷静だ」

 

 これは、ちゃんと説明しておかないとダメだろうな。

 あの日から……天久佐の壁防衛戦を終えてから、ずっと考えてきたこと。

 

「そうだな。前の俺と、今の俺。ちょっとだけ、勘定が違うところがあるんだ」

『? それハ……?』

 

 俺のこれまでが、死に物狂いの日々の積み重ねが、前世知識(ものがたり)を越えた理不尽な現実にあっさりと打ち払われてしまった、あのときから。

 

 考えても、考えても。

 この答え以外の答えを出すことができなかったからこその、選択。

 

 

「……今日の俺な。最悪、何をやっても最後には死ぬかもしれなくてさ」

『エ?』

 

 別に、諦めているわけじゃあないけれど。

 

「そういう()()かもしれないってんで、だから……」

 

 その可能性をどうしたって、排除することができなかったから。

 

『!? ナッ!? 操作権ノ上書キ……!』

 

 だったらせめての、ちょっとした方針転換。

 推しの明るい未来のために、俺にできる精いっぱいを、捧げたいから。

 

 

「今日の俺は、今日死んでもいいように、戦う」

 

 俺の命を、命よりも大切な、何に変えても救いたい女の子のために使い尽くす。

 

 

「死ぬ気はない。が、どうあがいても死ぬ未来が定められているってんなら……この命、後悔しないように使い尽くして、全力で戦果をあげるのが……今日の俺の最優先事項なんだよ」

『終――』

「ごめんな。いざってときはちゃんと解放して、みんなの元に送り還すから」

 

 契約精霊との対話を、切る。

 多少効果は落ちるが、力を借りるだけのこの状況こそが本来の精霊契約重層同期だ。

 

 ここに来て能力ダウンは痛いが、とはいえ欲を言いだすと際限ないからな。

 戦いってのはいつだって、使える手札でクリアするっきゃない。

 

(さぁて、ここからがある意味本番だな。理不尽な運命とやらをどこまで否定しきれるか……)

 

 ま、最期の最期まで、理想は諦めない方向で。

 俺の命は、決して安くはねぇんだぞっ!

 

 

「……考えるのはここまでだ。ぶちかます!」

 

 手動で“隠れ身”からのスニークキルシークエンスを行う。

 狙いは校庭のど真ん中でドヤ顔キメてるフェンリル君。

 

 消音、狙いをつける、射撃。

 

 最速操作で入力した通りに動く精霊殻を、けれども遅いと、感じてしまう。

 

(今できる最大限で、やれるだけやる……!)

 

 体力気力を消費して、超過駆動で精霊殻の力を引き出し、解放する!

 格上相手だ、出し惜しみはしてられない!

 

 

「!?」

「ちぃっ!」

 

 こちらの気配に相手も気づいた、が!

 

「アォ……!!」

「遅っせぇっっ!!」

 

 もう弾丸は……発射済みだっ!

 

 

 ズガァァァァァンッ!!

 

「――!?!?!?」

「っしゃあ!」

 

 初弾命中!

 不意打ちの必殺ショットは、確かにフェンリルの胴をぶち抜き、貫通した。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 戦いの開始を告げる、一発。

 

「ォォォーーーン!!」

 

 衝撃に弾かれ、フェンリルがその身を跳ね上げる。

 

 が。

 

「グルルルルッ!!」

 

 そいつは当然のように身をよじり、しっかりと着地し臨戦態勢を取った。

 

 

(ま、流石にあの一撃でどうにかなるとは思ってなかったけどな!)

 

 重りになるスナイパーライフルを放り捨て、超過駆動をかけて即座に移動!

 

「ウオオオオオ!!」

 

 山を一気に滑り降り、辛うじてフェンリルの飛び込みからの氷のブレスのコンボを回避して、俺は市街地へと再び飛び込んでいく。

 

 

「さーて、さてさてさてなっと!」

 

 大物から再び距離を取り、周りに意識を配りつつコマンドを入力していく。

 フェンリルが弱体化してるっぽいとはいえ、今回は周りにわんさか雑魚もいる戦闘だ。

 

 しかも長引けば長引くほど、敵の増援は増えていく。

 最終的には八津代城址のとき以上の数が、集まってくるかもしれない状況だ。

 

 脳みそフル回転でもまだ足りないが、それでも思考に思考を重ねて、戦局を読み解いていく。

 

 

「抜刀!」

 

 大太刀を抜き、ノールックで後ろに振り抜く。

 

 ガキンッ!

 

「グルルルゥゥゥ!!」

 

 刃はすぐ後ろに迫っていたフェンリルの牙と噛み合って、当たれば必死の一撃を凌いだ。

 

「……よっと!」

 

 そのまま刀を振り抜くも、そんな動きは読んでいるとばかりに巨体は派手にバックステップ。

 またいつでも飛びかかれる距離に着地して、氷の亜神は間合いを保って走り出した。

 

 うーん……今の振り抜きをヨシノがやってくれたら、そのあいだに俺のコマンド入力で、蹴りの一発でも入れられたんだけどな。

 やっぱ、サポートなしはキッツいぜ。

 

 

 ビー! ビー!

 

「うおっ!?」

 

 唐突に鳴り出すアラーム。

 直後、今はどこにも繋がらないはずの通話が繋がって。

 

『終夜!!』

 

 お怒りヨシノの怒声が響いた。

 マジかよヨシノさん、自力でチャンネル繋ぎ直してきやがった!

 

 

『私ニ機体ノこんとろーるヲ返シテ下サイ!』

「いやでも」

『協力スルカラ!! オ願イ!』

「!? ……わかった」

 

 敵の追撃から逃げ回りつつ、設定を狙撃直前の状態へと戻せば……即座に俺の意思とは違う動きを始める精霊殻。

 

「ゴブギャッ!」

 

 ヨシノによる振り向きざまの大太刀フルスイングが、弾丸のように飛んできていたゴブリンを、憐れ、真っ二つに切り裂いた。

 

 

『……終夜』

「うん」

『ヨリニモヨッテ、コノ私ニ死ノ匂ワセトハ……意地悪デスネ』

「ごめんなさい」

 

 さすがに、返す言葉もない。

 なにしろ彼女に名前をくれた、いつかのパイロットさんは、もう……。

 

 でも。

 

 

「ヨシノ、俺は」

『理解モ納得モ出来マセンガ、協力シマス』

「え?」

 

 俺の操作に完璧に合わせて彼女が振るう大太刀が、飛び出してきたキマイラを断つ。

 

『貴方ニ避ケラレヌ死ノ運命ガ迫ッテイルト、ソウ仰ルノナラ』

 

 俺が踏んだステップに加えて彼女の操る手が近くの壁を掴み、移動を加速させ。

 

 ゴォォッ!!

 

 直後。

 吹きつけてくる氷のブレスを、無駄な超過駆動なしのギリギリで回避する。

 

 

『ソノ死ガ、貴方ヲ穿ツマデ。私モ共ニ舞イマショウ』

「………」

『私ハ、貴方ノ第一ノ……契約精霊ナのでスかラ』

 

 戦いの只中で告げられた言葉が、俺の心の奥の奥に、スッと染み込んでいく。

 

 契約結んでかれこれ一年。

 俺が複数絆を繋いだ精霊たちの中でも、一番の古株の言葉。

 

『やるのなら、徹底的にやりましょう。最期の、最期まで』

 

 いつもより流暢に聞こえたそれは、俺自身の中にある……どこか、知らず冷え切っていた心の一部を、温めてくれた気がした。

 

 

「……ヨシノ」

『はい』

 

 改めて、彼女に請い願う。

 

「俺と一緒に、戦ってくれ」

『その言葉を待っていました』

 

 願いは届いて。

 

 だから。

 

 

「アオォォォーーーーー!!」

「っせぇぇい!!」

 

 飛び掛かってきたフェンリルの爪を、ヨシノが振るう太刀で弾いて。

 

「今度は逃がさねぇ、ぞっ!」

 

 俺が入力していた精霊脚――精霊拳の回し蹴りバージョンが、氷の毛皮ごとぶっ飛ばす!!

 もちろんしっかり、ライフルでぶち抜いた傷口に、足先グリッと決めてるぜ!!

 

「ギャゥンッ!!」

 

 吹っ飛ぶフェンリルから、実に心地いい悲鳴が聞こえた。

 

 

「っしゃあ! 無駄なく、強く、迅速に。ついでにここら一帯の敵を潰してマーキングもぶっ壊してやるかぁ!」

『了解』

 

 敵陣ど真ん中。

 自軍1機に対して敵軍超多数。

 

 けど今は。

 

『では、いつも通り、ご自由にどうぞ』

「んじゃ、お言葉に甘えて……ひぃぃやっはぁぁぁぁーーーーーーーー!!」

 

 万に一つも、負ける気がしなかった。




ヨシノ の 精霊としての格 が 上がった!

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