ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~ 作:夏目八尋
感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。
決意した子は強い。
上天久佐市、
かつてレジャー用のクルーザーがたくさん並ぶ港を有する観光島だったそこは、今は軍の手が入り、補給基地の一つとして活用されている。
車や船が行き来しやすいよう整備されたその場所は、今まさに海から迫りくる最大の脅威に対して、最も強い戦力である精霊殻をぶつけるのに最適な、新たな最前線となっていた。
ヴンッ
「こちらドッグ2、配置完了! 当方に迎撃の用意あり!」
「こちらコントロールズー、僕たちは
「俺的にはもっと下がってて欲しいんだけどな」
「ははは。ギリギリの勝負なんだ。ギリギリまではやらないとね。通信終了」
通話を切り、改めて海を見る。
内海と外海の境のようなこの場所の波は、今日は外海寄りに高く波打っていた。
「この波のおかげで、海の上を走るあれの進行が遅めなんだよな」
おかげでギリギリ間に合った。
ギリギリ、勝負になりそうな手札を再びかき集めることができた。
ただ……気になることが、一つ。
「ほんと、よかったよねー。これなら何とか、足止めできそう!」
「………」
俺の精霊殻の隣には、精霊殻がもう一機立っている。
「ッスゥー……清白さん」
「ん? なになに、黒木くん!」
お耳ピコピコ。
尻尾ブンブン。
見ずともわかる、わんわん反応。
「清白さんの任務は、撤退する本隊の護衛じゃなかったっけ?」
「そうだよ」
「………」
堂々と命令違反をやってのけてる、この子こそ。
「……じゃっ、帰ろっか!」
「ヤダ! 私も戦う!!」
史上5人目のハーベストハーベスター。
特別育成のエリート戦士にして、今まさに自由を生きるアンチェインガール。
清白帆乃花さんである。
※ ※ ※
「くっくっく。私の眼帯が疼く!」
「外すべきでは?」
ご丁寧に精霊殻にもそれっぽいポーズをとらせて、清白さんはのたまう。
ある時から自称闇系……中二スタイルを嗜みだした彼女だが、その実力は折り紙付きだ。
素質的には間違いなく俺以上、あの姫様にだって匹敵する才を持った存在である。
こんなところで、万が一にも失っていい人材じゃあない。
「ここは俺に任せて、清白さんは自分の役目を」
「んーん。ここで踏ん張ることこそが、本隊を守るのに一番効果があるって、私は思うから」
「でも」
「でももへちまもないよ! 私がそう思って、そうするって決めたの!」
「Oh……」
完全に聞く耳持たず。
フリーダムに頑固者モード全開な今の彼女に、言葉はあまり通じない。
それでいいって言ったの、他ならぬ俺だし。
参った。
打つ手がない。
「黒木くん黒木くん」
「なんだ?」
「今、黒木くんは。万が一、ここで私たちが死んじゃったらって思ってるでしょ?」
「思ってるぞ」
「だったら大丈夫。私たちがここにいるなら、きっと生き残れるから! 城壁には、
「むむむ」
言葉の意味はわからんがとにかくすごい自信だ。
たまにだが、清白さんの言葉には、否応なく引っ張られる感覚があるな。
「とにかく! 私はここで一緒に戦う。足手まといにはならないから、安心して!」
「いや……前にも言ったが、亜神級と戦うには高い機動力が」
「
「!?」
次の瞬間。
清白さんの精霊殻から、ボッと緑の燐光が解き放たれる。
だがその輝き方は、俺がこれまで見たどの契約精霊とも違っていて。
「はい、挨拶して」
『ハジメマシテ。帆乃花様ト先日正式ニ契約ヲ結ビマシタ、サザンカデス』
「俺の知らない契約精霊!?」
『私と同じ気配を感じます。おそらく精霊殻が纏った小精霊が、形を持ったものかと』
「マジか!?」
ど、どんな力を持っているんだ……!
気になる……!
「……ちょ、ちょっと俺とも」
「ダーメ。この子は私の契約精霊だよ! 浮気厳禁!」
『浮気ハイケマセンネ』
『全くです』
「うぐっ」
浮気と言われてしまっては何も言えねぇ。
ってか、ヨシノさんや。今ちょっとビリッとさせた?
……まさか、文化祭のこと根に持ってらっしゃる!?
あっ! またちょっとビリッてさせた! 絶対根に持ってる!
「ヨシノさんと同じ殻操特化なこの子のおかげで精霊殻の操作性能があがったよ。これで私も、逃げ回ったり支援したりくらいならできるから」
「……確かに」
事実、想像以上のステータスアップだと思う。
ここまでの力があれば、すでに超過駆動を操れる清白さんの腕前的にも、戦いになる。
俺の知らないうちに、彼女は強くなっていた。
「黒木くんに比べたら、まだまだ私は弱いよ。でも、もう弱いままじゃいないから。これから、もっとも~~~っと、強くなるから」
そんな清白さんの口から聞こえる言葉は、決意表明のようでもあって。
「だからね、黒木くん。私のことは気にしないで戦って。私は今この瞬間だって、強くなる。強くなりながら、一緒に戦うよ」
それは静かな闘志を燃やす、英雄のような。
触れ合う者に勇気を与えてくれるような、優しくも力強い、意志。
「一緒に戦って、戦って、戦い抜いて……そして一緒に生きて、帰ろう?」
そんな彼女の言葉に、俺は。
「……そこまで言われちゃ、断れないな」
まったくもって、勝てる気がしなかった。
不覚にも……ホッ、と。させられてしまったから。
「一緒に戦ってくれ。清白さん」
「うん!!」
元気よく返ってきた肯定の言葉。
音声通信越しにも、俺には彼女の笑顔が見えた気がした。
『レーダーに反応! “青の氷狼”本体、4体の幻体を伴って急速接近中!』
「来たか!」
その時が来た。
「清白さん。覚悟はいいな?」
「もちろん! あのとき見た狼さんより幻体が弱いなら、私で何体かは引きつけられるよ! ……秘策もあるし、ね」
覚悟も、用意も万端だ。
『目視確認。迎撃用意!』
「アオォォーーーーーーーン!!」
本体+幻体で、その数5。
それ以外の戦力など一切不要だと言わんばかりに、他のハーベストを寄せつけず、それは一気に迫ってきた。
「噛みつきに一番注意しろ。それだけは絶対に食らうなよ!」
「わかった!」
普通に考えて、勝負にならない必敗必至の敵を前にして。
「勝つのは……!」
「私たちだーーーーー!!」
俺たちは、一切の迷いなく挑みかかった。
そして。
「ギャワワゥゥゥンッ!?!?」
「は?」
敵の第一波。
幻体たちによる真正面からのぶちかましを。
「いやったぁー! 秘策成功~!」
俺たちはあっさりと跳ね除けた。
「な……!?」
原因なんてわかりきっている。
今まさに、俺たちの背後から力を注いだ彼女がいるからだ。
「ふぅ。さぁ、すぐに構えて。ここで抑え込むわよ」
宙を舞う、白を基調とした和風魔法少女的衣装の、幼くも大人びた美少女。
人を超えた威を放つ、現代に舞い降りた羽衣の乙女!
「なんでいるんだ!? まじか「終夜?」……パイセン!?!?」
バフ担当、白に紫の差し色が入った衣装チェンジ版精霊合神まじかるーぷ……もとい、九条巡パイセンがそこにいた。
※ ※ ※
「いやマジでなんでパイセンがここに?!」
「私のことはいいから! 戦いはもう始まっているわよ!」
「アオォォーーーーーン!!」
確かに!
一度弾いたくらいじゃまったく堪えてない幻体たちが、再び飛びかかってくる。
「その動きはもう、学習済みだ!」
「共有済みだよ!」
それらを捌いて、かわして、繰り返し。
俺と清白さんの精霊殻は、大太刀を守りに使って敵の攻撃をいなしていく。
「終夜! 返事しなくていいから聞きなさい!」
「ハイ!」
「もうっ! ……あれから私なりにこの力について調べたわ。できること、できないこと、田鶴原様とも相談しながら、自分なりにできることを試したりして……その答えが、これよ!」
幻体3匹が同時に口を開き、氷のブレスを吐く。
それにピッタリとタイミングを合わせて、パイセンが大きな大きな障壁を展開した。
ガード担当、紫から黄に差し色が変わる。ちょっとセクシー度高め。
「今の私はまだ戦闘、特に攻撃に関しては素人もいいところだから。その分、貴方たちの精霊殻ではカバーしきれない守りを私が請け負う!」
だから、と。
ブレスの終わりに合わせて、再び黄から紫へとフォームチェンジして。
「その分できた余裕で、そいつらぶっ飛ばしなさい!」
「!」
叫ぶパイセンに示された……それは疑いようのない、勝利への道筋だった。
「「了解!」」
俺と清白さんの声が重なり、戦いは加速する。
耐えしのぐ戦いから、本当に勝利をもぎ取るための戦いへ。
「アォォォーーーーーン!」
「ここまでされて、負けるとか許されないだろ!」
激しさを増す幻体たちの攻撃をギリギリで捌きながら、叫ぶ。
「そうだよ! 私たちは、負けないっ!」
「諦めなんて絶対に、許さないから!」
しのぐ、しのぐ。
死なないためじゃなく、勝つために。
勝機を求めて、死線を掻い潜る!
「……――」
その戦いを、“青の氷狼”はジッと見つめていた。
パイセンはOVA版なのでいろいろできます。
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