ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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戦い終わって、それから。


第96話 リザルト&その後の天2小隊

 

 2020年、3月。

 隈本県上天久佐市、旧・上天久佐総合スポーツ公園。

 現・上天久佐第2独立機動小隊基地。

 

 そこでは今、トンテンカンテン、様々な工事の音が各所で響き渡っている。

 

「オーライ、オーライ……!」

「よーし! はいOK!」

 

“天2独立機動小隊戦力拡充計画”

 

 新型精霊殻“無頼”の投入により神子島戦線が比較的安定している今、これまでで一番の結果を出し、意味不明なくらいに強い俺たちを、さらにしっかり盤石にサポートするための計画。

 その一環として、この景気のいい金音が鳴り続けているのだ。

 

 無論その最大の出資者が、現・天常家ご当主、天常輝等羅であることに疑いようはない。

 なんかいい感じに新しい寮とか作るって張り切ってた。

 

 

「黒木、もうしばらくこの辺を見て回りながら向かうとするか」

「そうだな」

 

 隣を歩く佐々君の言葉に頷く。

 今日は午後から特別集会が行われるらしく、俺たちは予定時刻までの暇潰しに、敷地内を見回りがてらのまったり散歩である。

 

 なんでも、戦力拡充計画に合わせ、新しく天2に配属される隊員のお披露目をするんだとか。

 誰が来るのかは知らない。毎度のことながらいろいろな政治が関わっているらしく、人事に詳しい連中に聞いても答えを教えてもらえなかった。

 

 こういうのには下手に首を突っ込まないに限る。

 もしも本当にヤバい情報があったなら、誰かが事前に教えてくれるしな。

 

 

「……天久佐の壁、永崎の壁。どちらも修繕できる範囲の被害だったというのが幸いしたな」

「だなぁ」

 

 不幸中の幸いというか、どちらの壁も一点突破でぶっ壊されてたおかげで、直すことが可能な範囲の被害で済んだのだとか。

 俺たちが取り戻した天久佐はもちろんのこと、永崎も五島で敵を食い止め切って追い返すことに成功したらしく、二つの壁はその機能を完全喪失させる前に乗り切ることができたのだ。

 

「結果として日ノ本の地は守られ、亜神級を討った。ボクらの大勝利と言えるだろう」

 

 こうして佐々君が誇らしげに語るだけの結果は、出せたと俺も思う。

 そしてその結果があるからこそ、今ここで……上天久佐で俺たちは今日も大切な日常を過ごすことができている。

 

「そうだな。みんなで勝ち取った勝利だった」

 

 それは。

 俺一人では決して叶えることができなかっただろう、最善の結果だった。

 

「感謝しかないな」

「なにがだ?」

 

 キョトンとする佐々君に、俺はただ目を伏せ微笑みながら、左右に首を振った。

 ちょっと恥ずかしかった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「そういえば、清白さんは今日も?」

「あぁ。今日も建岩と二人で豪風のシミュレーションをしているぞ」

 

 清白さんと姫様。

 二人は天久佐撤退戦……もとい、天久佐奪還戦のあとから、正式にタッグを組んだ。

 

『命ちゃん! 私、今よりもっと、ずっと強くなりたいの! だから、私に協力して!』

『……本気のようですね。では、贄の持ちうるすべてでもって、お応えいたします』

 

 作戦が終わった翌日に聞いたやり取り。

 どちらも真剣な顔をして一触即発の雰囲気を醸していたから、ざわついたのを覚えている。

 

 それからは二人連れ立っているところをよく見かけるようになり。

 

『判断が遅い。移動可能範囲を常に意識しながら最適な位置取りを重ねてください。火器による効果を最大限引き出すには、何よりもまず自分たちが狙えて敵に狙われない位置に立つことが肝要です』

『うん! もう一度最初からお願いします!』

 

 シミュレーターでもいつも一緒。

 豪風での立ち回りを極め尽くさんばかりの勢いで、天才のスパルタ教育が行われていた。

 

 以前も思ったが二人の相性は良好で、その実力は連携含めメキメキと成長中だ。

 

 

「頑張ってるな」

「そうだな。清白からしてみれば、壁の防衛のときと撤退戦のとき、二度もお前に戦力扱いされなかったのが悔しかったんだろう」

「いや、それは……」

 

 どっちも亜神級相手の状況。

 ただの精霊殻じゃどうしたって相手するのが難しかったわけで。

 

「一度目は機体のせいにできたかもしれない。でも、二度目はそうじゃないだろう?」

「む……」

「本島に向かうお前を追えなかったのも、豪風に乗り換えた後の青の氷狼との戦いも、どちらも清白にとっては自分の力不足を痛感する出来事だったんだからな」

「そうか……」

 

 俺個人としては本当に清白さんは頑張ってくれてたと思う。

 でもそれはあくまで俺の意見で、彼女があの日感じた心に沿うものじゃないのだろう。

 

「いずれにせよ、今。彼女は自分の殻を破ろうと頑張ってるんだ。ボクたちはそれを見守り、時に手助けしてやればいい」

「そうだな」

 

 機会があれば、いくらでも協力しよう。

 清白さんは間違いなく、未来で俺を超えるパイロットになれる逸材なのだから。

 

 っと、そうだ。

 

 

「……自分の殻を破るといえば、パイセン。大変なことになっちまったなぁ」

「あぁ、うむ。九條は……なんというか、な」

 

 パイセンは今、ちょっとした時の人になっている。

 具体的に言うと……魔法少女パイセンが、全国デビューした。

 

 隠そうとしていた現人神モード、あの戦いで思いっきり衆目に晒して大活躍だったからな。

 戦いのあとも怪我人の治療とかしてたし、神秘の力で。

 

 殻を破ったってよりは、開き直ったって方が正確かもしれない。

 天2女子たちにめちゃくちゃモフられていたときの、あのすべてを諦めた顔が記憶に深い。

 

 

「ああして大々的に活躍してしまった以上、彼女の存在を隠しようがないのは事実だが。まさかそれを逆手にとって、キャラクターコンテンツ化してしまうとはな」

「天常さんとタマちゃん主導の全力プロデュースだからなぁ。まぁ……愉快なことにはなるだろうが、そうそう悪いことにはならないはず」

 

 現在、魔法少女パイセンこと精霊合神まじかるーぷは、霊子ネットに公式チャンネルを開いて活動している。

 現世に実在するマジ物の魔法少女として売り出し、今やチャンネル登録者数日ノ本TOP10に食い込むほどの人気者になっていた。

 

偶像(アイドル)を生業とする九條シリーズの面目躍如と言ってやるのが、せめてもの情けだな」

「おいたわしやパイセン……」

 

 ちなみにアニメ化企画も進んでいるらしい。

 いいぞ、どんどんやってくれ。

 

「広報活動に伴って、近々彼女は正式な天2隊員として政府公認を得るらしい。九條シリーズが備品と呼ばれている立場から一歩前進したと、天常が喜んでいた」

「そりゃ何よりだ」

 

 思っていた形とは全然違うが、九條シリーズ救済への道も順調そうで何より。

 たまに死んだ目をしてアイドル活動しているのを見かけるから、今度タピオカミルクティー持ってって労おう。

 

 今の時代、新規子供向けコンテンツの存在は貴重なのだ。

 士気高い系大人のお兄さんたちの支援も手厚いぞ!

 

 

「それにしても、大阿蘇様の娘である田鶴原様の加護を与え、九條の寿命問題を解決していたとは……黒木、お前はホントに常識では測れない男だな!」

「ははは」

「これも精霊契約の一種なのだろう? この期にボクも、真剣に取り組んでみるか……」

「いい手だと思う」

 

 ステータスは十分だし、整備に向いた精霊の心当たりもある。

 いずれは小隊員全員が、なんらかの精霊と契約を結べた状態に持っていきたいところだ。

 

(ヨシノをはじめとして、俺の知識の外にいる精霊はまだまだいっぱいいるだろうし)

 

 これからも探して、見つけて、ゲットしていく所存だ。

 まだまだ天2は強くなる! 強くする!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……む、黒木。上だ」

「上?」

 

 言われて顔を上げる。

 視線の先にあったのは、近々解体予定の旧プレハブ校舎。その屋上。

 

 機動歩兵三羽烏の紅一点、鏑木さんがサンドイッチ片手に反対の手を振っていた。

 

「鏑木の奴。正式に天常と契約を結んだらしい」

「えっ、鏑木さん派閥入りしたのか!? しかも御三家!?」

 

 今日一ビックリである。

 

(鏑木さんは、天2入学当初はフリーのエージェントだった)

 

 技能構成も完全に暗殺者ビルドで、いわゆる、金さえ積まれれば何でもOKタイプの子。

 ここに入学してきたのだって、間違いなく誰かしらの依頼を受けて、だ。

 

(それもおそらくは、御三家に対抗する誰かからの依頼だったはず……)

 

 防衛軍派閥の木口君、そして内閣府派閥の乃木坂君と組んでいたのは、保身と対御三家の両面的な意味合いがあったと俺は読んでいたが……。

 

 ってか改めて思うと、天2メンバーのバリエーション。とんでもないな。

 ゲーム版HVVの隈8小隊と比べても遜色ない中身の濃さである。マジやばくね?

 

 

「……パワーバランス変わりそうだなぁ」

「その点については、もはや手遅れと言ってもいいかもな?」

「?」

 

 俺の呟きに対し、意味深に笑う佐々君。

 どうやら俺の知らないところで、政はいろいろと進んでいるらしい。

 

「安心しろ。ボクたちは黒木の、お前の自由を尊重している。誰もお前を籠の中に閉じ込めようなどとは考えていないさ」

「そりゃありがたい」

 

 少なくとも、俺はこれまで通りにやらせてもらえるらしい。

 だったらいよいよ、本格化させてもいいかもしれない。

 

 なにをって?

 そりゃもちろん!

 

 

(マイエターナルゴッデスオブラヴ黒川めばえの生存証明だっっ!)

 

 

 俺は運命の死を乗り越えた。

 そしてこの戦いの裏で、俺の予想を超えて暗躍している誰かの存在を知覚した。

 

 だったらもう、歴史通りだとか言ってる段階は終わったのだと断言していい。

 

 

(やっと、だな)

 

 ようやく、探しに行ける。

 

(ずっと、彼女に干渉するのが怖かった。干渉した上で自分が死んだり、その死が原因で彼女の心に傷を生む可能性を考えると、何も歩き出せなかった)

 

 だが、もう違う。

 ここから先は、未知。

 

 未知なら、俺の思い描く未来をそのまま描き出していい!

 

 

(今日の集会が終わったらさっそく調査開始しよう。なに、タマちゃんや佐々君の力を借りたら、真っ当に登録してある彼女のデータなんてぽぽぽぽーんだ!) 

 

 運命を乗り越えた、今の俺は無敵!

 今日まで積み上げたすべてを使って、これからは彼女のために生きていく!

 

 俺の推し活は、ここからだ!!

 

 

「楽しそうだな、黒木?」

「あぁ、今の俺は最強だからな!」

「? そうか、そうだな」

 

 最近の佐々君、たまにこうやって優しい笑みを俺に向けてくるようになった。

 前に比べて距離感も心地いい。この変化、男子三日会わざれば……ってのを感じる。

 

「ほら、黒木。見回るなら次はあっちだ」

「了解」

 

 なんにせよ、俺にとって悪くない変化だ。歓迎しよう。

 

 特別集会まであともうしばらく。

 俺は佐々君と一緒にゆるっと敷地内を巡ってから、指定場所である体育館へと向かった。




天2メンバー、ほぼほぼ裏がある子しかいない説。

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