ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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第97話 追加人員

 

 旧・上天久佐総合スポーツ公園体育館。

 なんだかんだそのままの形で便利使いされている施設の大ホール。

 

 いつだったか佐々君と天常さんがVSイベントやってたステージを前にして。

 

「はーい、集まってくれてありがとうねぇ」

 

 資料片手の六牧司令と、今は後方支援に徹している先生たちと向き合った。

 

 

「今日は事前に連絡した通り、うちの小隊の新メンバーと顔合わせしてもらいまーす。ぱちぱちぱちー」

 

 パチパチパチ。

 まばらな拍手。真顔の姫様がやってるのがハイライト。

 

「おふざけしていたら、いつまでたっても顔合わせできませんわ。司令、進めてくださる?」

「はっは~ん。立場も上がってさらに手厳しくなったねぇ、天常会頭?」

「公私は分けておりますわ。今の私はあくまで天常輝等羅十剣長。階級はそちらが上でしてよ」

「よろしい。では本題に入ろう」

 

 司令の昼行燈顔が、ピシッと引き締まる。

 それを合図に、ふわっとしていた全体の空気が一気に引き締まった。

 

 

「追加人員は4名。これから一人ずつ名を呼び、出てきてもらう。まずは……」

 

 名を呼ばれ、ステージ脇の扉から一人の少女がやってくる。

 フワッとした長身。赤が混じった茶髪を短くポニテに結んだ、そばかすキュートな眼鏡っ娘。

 

 って!?

 

瓶兆(びんちょう)一二三(ひふみ)。職業は新規配置の三番機のパイロットだ」

「兵器ちゃんじゃん」

「ん? どうした?」

「いえ、なんでもありません!」

「私語は慎むように」

「はい!」

 

 ……兵器ちゃんじゃん!!

 原作HVVの仲間キャラじゃん!!

 

 兵器ちゃん。

 隈8小隊の整備士にして、清白さんもいた『白の鳥籠』で育成されたエリート!

 パイロット適正のが高いのにスペック隠して整備士してる、プレイヤーに配置換えされるの前提で置かれてたような子! 実際強い! 幸運3!

 

(マジか。こういうことってあるんだ……いやあるか)

 

 姫様という前提がある以上、こういう可能性は考慮するべきである。

 もうこの世界、原作通りになることの方が、きっと少ないだろうから。

 

 

「瓶兆一二三です。えっと……その……パイロット、うちで上手に務まるかあんま自信ないんスけど……精一杯頑張るので、その、よろしくお願いするッス」

 

 チラッ、チラッ。

 兵器ちゃんの視線が何度もとある人物へと向けられている。

 

「うん?」

 

 その人物。

 清白さんはよくわかってない様子で首を傾げていた。

 

「うひ~、マジで雪姫いるッス……」

 

 ボソッと呟いた言葉、俺にはしっかり聞こえているぞ!

 まぁ、意識するなって方が無理があるよな! 同郷だもんな!

 

(ともあれ、パイロットとしての素養は文句なし。キッチリ鍛えて、活躍してもらおう)

「ひぇっ、謎の寒気が……」

 

 しかし、追加人員か。

 こうなってくると、俄然興味が沸いてきたな!

 

 さぁ、どんどん来い!

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

鹿苑寺(ろくおんじ)桂馬(けいま)! 機動歩兵でハベベ取れるって聞いて志願しました! 敬愛する佐々さんの隊に来れて感激です! マジ頑張るんでよろしくお願いします!!」

「おー……」

 

 二人目も原作キャラだった。

 

 鹿苑寺桂馬。通称ゴッドスピード。

 佐々家が運営する児童養護施設の出身で、先の戦いで犠牲になった佐々君の志を継いだとかいう、特攻精神溢れるヤンキーボーイである。通称の通りすぐ死ぬ。

 金髪剃り込みヘッドのヤンチャっぷりに対して性格はお人好しで世話好き、言うほど喧嘩も強くないが、戦場ではガンガン前に出る、そしてすぐ死ぬ。

 

(HVV初見プレイの7割以上で最初の犠牲者になるといわれる死にやすさ。佐々君が生き延びているこの世界線ではどうなっているのか、要注目だな)

(あれが佐々さんがマブって言ってる黒木終夜か。史上三人目のハーベストハーベスター……へへっ、オレもぜってぇその頂まで登ってみせるぜ!)

 

 ……なんかめっちゃこっち見てくる。

 昔の佐々君みたいでなんかアレだな。近寄らんとこ。

 

 次だ次!

 今度も隈8の奴が来そうな予感バリバリしてるけど、次!

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「はじめましてぇ~☆ まぁやは、竜胆(りんどう)摩耶(まや)って言いま~す☆ キャハッ☆」

「「………」」

「まぁや整備担当なんだけどぉ~、できれば輝等羅様の響輝専属の整備士させて欲しいなぁ~って、思ってま~す☆」

 

 三人目も原作キャラだった。

 

 竜胆摩耶。通称ナイフちゃん。

 制服指定の集会でゴリッゴリの病み系メイクとゴスロリ衣装キメてる姿が示す通り我を通すタイプで、パイロットになっても着てるその貫きっぷりは、いっそ清々しいほどの根性である。

 めばえちゃんと同じ陰の者に属するかといえばそうではなく、積極的に交流したり自分の好きなものを布教したりと、ギャル寄りの性格をしている。カルト人気枠はこの子が持ってった。

 ちなみに輝等羅様呼びしてるのは、彼女の着てるゴスロリが天常家傘下のアパレルメーカー製だからだ。天常家が手広く守るインフラの賜物である。

 

 で、そんな彼女がどうしてナイフちゃんなのかというと。

 

(この子に強い恋愛感情を持たせてしまうと依存スイッチが入り、加えて、そんな彼女を何かしらの形で裏切ってしまうと……次の会話時、隠し持ってたナイフで刺される。プレイヤーは死ぬ)

 

 そう。

 彼女こそ、悪名高き“デストラップ”持ちなのである!

 

(ゲームだとある程度ラインを視認できたが、ここは現実。十分に気を付けないと……後ろからドスッだ!)

(えへ~☆ ここならまぁや、もぉ~っと自分らしくいられるかなぁ? わくわく☆)

 

 うーん。読めねぇ!

 とりあえず原作にあった地雷を回避しつつ様子見するしかないな。

 

 原作にあるデストラ消滅ルートも……一応狙えるし、な。

 

 まかり間違ってもこんなんで死にたくはない。要注意である。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

(さて、これで紹介されたのは3名、か)

 

 兵器ちゃん。ゴッドスピード。ナイフちゃん。

 いずれも原作HVV、隈8小隊に所属する人物たちだった。

 

 彼らの所属派閥的にも、清白さん関連、佐々君関連、天常さん関連と、実に政治的である。

 

(となるとあと一人は、建岩家からの人選だよな?)

 

 建岩チョイスは姫様チョイス。

 もうこうなったら俺の中で答えは一つしかない。

 

 彼しかいない!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

(いよいよだ。いよいよ会えるぞ……真白く~ん!)

 

 真白一人。我らがヒーロー!

 世界を救う役目を持った、この世界になくてはならない存在!

 

 彼さえいれば、世界は救われる。

 彼さえカバーできれば、俺たち人類に負けはない!

 

 

(めばえちゃんがいない今、先んじて真白君と姫様が出会えているなら、二人の絆の成就にめばえちゃんは関わらない。絶望しない。踏み台(ラスボス)には、ならない!)

 

 赤の一族がばら撒いたラスボス因子。

 他にどんな奴らが候補になるのか、俺も詳しくは知らない。

 

 だが、少なくとも天2にその傾向を持っている奴はいなかった。

 いたら、姫様が何かしらの反応を示していたはずだ。

 

(そいつには悪いが、めばえちゃんを助けるためなら、犠牲を強いる覚悟が俺にはある!)

 

 俺は世界を救うヒーローじゃない。

 俺にとっての希望の人である、黒川めばえを助けるためにここにいるのだから。

 

 ただ、その上で。

 可能な限り、この世界の誰かが犠牲にならないように尽くしたいとも思う。

 

(誰かを踏み台にして助かった、なんて。めばえちゃんが知ったら絶対気に病むからな)

 

 掲げる理想は、ラスボス因子の撲滅!

 現状の最善策として、推しのラスボス化絶対阻止!

 

 今後の俺はこのスタンスで行きたい。

 この世界に生きる一人の人間として、この世界に迫る理不尽に、最大限抗うと誓う。

 

 

(さぁ、覚悟完了! 出て来い、真白一人(ヒーロー)!!)

 

 六牧司令が、最後の追加人員の名を呼ぶ。

 

「――次。黒川めばえ。職業は保健衛生管理官。開発に回る清白なずな女史との入れ替わりだ」

 

 ………。

 

 ………………………………………………はい?

 

「来たまえ」

「はい」

 

 その子は。ゆっくりとした足取りで俺たちの前へとやってきた。

 一歩一歩歩く度、毛先だけが白いもじゃもじゃウェービーな黒髪ロングが揺れていた。

 

「………」

 

 俯き気味に、野暮ったく垂れる前髪をそのままに、少し猫背気味な姿勢で彼女は俺たちを見る。

 ほの暗い紫色の瞳は、けれど俺の知るイメージよりも少しだけ力強かった。

 

「あ……ん……」

 

 言い淀む。

 話慣れてないのか視線が泳ぎ、委縮する。緊張しているのがよくわかる。

 

 それでも――。

 

 

「――黒川、めばえ。後方で、皆さんの衛生面……や、怪我の治療など、微力を尽くし……ます。よろしく……おねがい、しま、す」

 

 彼女は黙り込むことなく、言うべきを伝えて、頭を下げた。

 

「………」

 

 現実の彼女は、俺の知る彼女よりも、少しだけ……ほんの少しだけ、強くなっていた。

 

 

「以上4名が追加隊員だ。しばらくは戸惑うことも多いだろうが、命を預ける者同士、しっかりと交流を深め、連携を――」

 

 この辺で、俺の意識はプッツリと途切れた。

 

「――!? ――!!」

 

 大勢の騒ぎ声が耳に入ってきたが、その音を聞き取ることはできなかった。




4人「!?!?!?」

次回でお話一区切り、です。

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