この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!




LATE FATHER

 

 

 

 

お姉ちゃんが泥に飲み込まれ、その後を追うようにアダムが泥の中へ入っていった。

私たちも入ろうとしたけど、イヴちゃん……正確にはイヴちゃんの纏う『イチイバル』が止めて来た。

その後は穴が閉じられ、無理やり入ろうとしたけどできなかった。

 

泥はその名の通り感触なども泥でありながら、入ろうとすると固く、岩盤のように亀裂も入らなかった。傷付けられるのは自ら飛んできた泥や、私たちの攻撃を防いだり、妨害されたものに限りだった。

そして見せられた映像と異なり、泥は私たちを取り込もうとしてこなかった。

 

「くっ!! 何度殴っても…壊れないなんて……」

 

「泥は、自身が取り込むか、開いた穴以外で、自身の中に入れるつもりはないみたい……多分私は『紡心(アクシア)』の力の一端を、幻神さんは『並行世界』でも『紡心(アクシア)』をその身に宿している故の可能性が高いけど……」

 

この泥の中にお姉ちゃんがいるのに……!でも、悔やんでいる場合はない。

今こうしている間にも『マクロス・クォーター』の方では激しい戦の音色が鳴り響いているんだ。

 

「不安要素しかないけど、アダムに託すしかない……行こう、幻神さん」

 

「そうだね……行こう!」

 

 

——◆——

 

 

爆破に氷結、炎が泥の上で発生し、その中を緑の稲妻が駆け抜けていく。

 

「くっ!! 空からかっちゃんの【APショット】、地面からは轟君の氷結と炎の両方! 思ってた以上に2人の組み合わせが強すぎる!!」

 

泥の爆豪に泥の轟。

両者に感情はなく、あくまで戦闘能力、"個性"、形と言ったものでしかない。

故に操り人形、故にコンビネーションなどは完膚なきまでに完璧。

結果、現状、緑谷は苦痛の顔を浮かべながら苦戦を強いられていた。

 

【シュートスタイル・スマッシュ!!】

 

負けじと緑谷は抵抗するも、崩された泥は、形の一部が残っていればそこから再生するように元の形へと復元されてしまう。

どうすればと、緑谷は思考を動かしまくる中、泥の爆豪は両手から爆破を繰り返して回転していく。

 

「ッ!? まさか、【榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)】!?」

 

それは体育祭やI・アイランドなどで使用した、初期から編み出し用いる爆豪の最大火力の技【榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)】。

それを放とうとしている一方、泥の轟も身体から氷結を最大火力で放射するかのように、泥でありながら自身の形が凍り始めていた。

 

「ガァントォォオオオッ!!!!」

 

「撃ち抜けェェエエエッ!!!!」

 

次の瞬間——2人の少女の叫びと共に、黄金と赤の輝きがそれぞれ、泥のツートップの大技に対抗するように衝突した。

黄金は【榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)】に、赤は氷結に。

そして押し切り、相殺した。

 

「幻神! っと、ンンンゥッ!!!?」

 

その正体を見た緑谷は、両者ともに知っている。

だが、片方だけ幻神と似たようなものを纏っている故、緑谷は目を大きく開いてしまう。

 

「出久くん無事!?」

 

「だ、大丈夫だけど…そっちの人って……」

 

「イヴだよ! そして私が纏ってる『イチイバル』とかそこらの詳細は後で!! 今は目の前の泥の駒を止めよう!!」

 

前方を確認すれば、泥のトップ2が既に自身たちの下へ向かってきているのが見られる。

それも最もだと、緑谷はすぐに体勢を直す。

 

「いくよ!」

 

「はい!」「うん!」

 

そして3人は同時に駆け出した。

 

 

——◆——

 

 

同時刻。

泥の範囲外に出ていたはずの『マクロス・クォーター』だが、その足元は既に泥が広がっている。

それはなぜか?器として、泥を溢れないようにもしていたクレーターが既に役目を終えているから。封印系の"異能"が施された柱の残り本数は1。故に泥の進行は止まらず、クレーターから漏れ、地上全体へと広がっているからである。

 

「クソ! ダメです!! 全システムがダウンしていきます!!」

「脚部から終わりなき災禍の泥が物理的に侵食しています!! 対処不能!! むしろ、対処しようとした隊員から飲み込まれて行ってます!!」

 

「くっ…非戦闘員並びに負傷者を優先で全員退避を!! 私は『ファウストローブ』で直接出る!! 蜂沼! 避難誘導頼んだわよ!!」

 

「正気っすか!? いくら歌姫から摘出して作り出した疑似錬金術のサポートアイテムと言えど……」

 

「グタグタ言わずにやりなさい!」

 

「は、はいっス!!!」

 

アリスは『スペルキャスター』を取り出し、避難誘導の指揮などを蜂沼に託し、たった1人、窓から飛びだし直接地上…泥へと落下していく。

その間にも蜂沼は他の隊員たちに命令をし、急ぎ撤退の準備を始めようと動かした。

 

「『スペルキャスター』起動!!」

 

一方でアリスは『スペルキャスター』を起動させ『ラピス・フィロソフィカス・ファウストローブ』を纏う。

そして泥の地に着いた瞬間に、襲われないよう瞬時に、戦いを繰り広げている幻神たちの下へと駆け出していった。

 

 

——◆——

 

 

泥、内部。

ボコボコと液体の中のように空気が詰まった泡が上へと上がる。

その一方でただ一人、イヴと幻神の攻撃を食らい、重傷を負った『並行世界』の黒換ミネが逆に下へと沈んでいた。

 

「(ワタ、シ……何デ…コウ、ナッタンダッケ……?)」

 

重傷でボロボロな身体。

傷口から血が溢れ続け、泥と混ざっていく。

そして虚ろ…否、光が一切ない黒一色の瞳を、瞼を半開きという形で露にしている。

そんなミネは心の中で誰もいない中、問いかけた。

本来であれば答える者はいないだろう。

 

「それは完全に受け入れないから」

 

だが泥の中では違う。

ミネの問いに答えるかのように、男女でありながら、子供や大人、老人関係なく無数の声が重なって、泥の空間全体に響いた。

 

「あなたが弱いから、あなたが完全に■を受け入れないから」

 

「(受ケ入レナイッテ、ナニヲ? ワタシハナニヲ受ケ入レナイ? ワタシハヨワイ? ナンデダッケ? ()()()()()()()()。ナノニナンデ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)」

 

「そんなの、あなたにとって邪魔でしかない。無視して、全てを■に委ねればいい」

 

「(委ネレバ、ナニカアルノ…?)」

 

響き渡る無数に重なった声は、どこか強制力がある。

だが今のミネは、それすらも気づくことはない。

 

「委ねれば、全部■がやってあげる。あなたの望みも叶えてあげる」

 

周囲にて、泥が集まり始め、形を手としミネへと伸ばしていく。

そして手はミネの身体を、至る所を掴んでいき、掴まれた接触面から侵食が始まり出していた。

 

「いい子、いい子。そのまま委ねて……」

 

「(分カッタ……ワタシハ、アナタニ、委ネ——)」

 

『——本当に、それでいいの?』

 

「(——えっ?)」

 

囁く声らしきものと泥の手に全てを委ねようとしたミネの心に、1人の少女の声が響き渡る。

その声はミネにとってどこか懐かしく、それでいて最近聞いた声。

 

『——みんな頑張って救けようと頑張ってる。私も諦めてないよ』

 

次の瞬間、ミネの真っ黒な黒一色の瞳は徐々に、色と光を取り戻し始める。

 

「(何も、思い出せない…あなたは、誰なの……わたしは、誰なの……?)」

 

頭の中、脳裏に曇りに曇った何かが流れ始める。

だがそれでも彼女は思い出すことができない。

 

「余計なことを考えずに委ねて」

 

『——委ねるだけじゃ未来は掴めない。自分で斬り平なきゃ行けない。だから諦めないで!!』

 

「(——わた、し…は……!!)」

 

何かが掴めそうで掴めない。

無意識に手を伸ばそうと、泥に掴まれている身体を、腕を、手を動かそうとする。

しかし侵食が早すぎるのか、思う通りに動かせない。

 

「——遅くなってしまってごめんよ」

 

「ッ!?」

 

そこに第三、否、第四とも言える声が響き渡る。

次の瞬間には、黄金の輝きがミネへと真っすぐ降り注ぎ、泥の手を全て吹き飛ばしてみせる。

そして解放されたミネは、誰かに抱き寄せられた。

 

「バカな…いや、なぜお前が邪魔をする!?」

 

その正体はアダム・ヴァイスハウプト。

人でなしと言われている、【戦姫絶唱シンフォギア】に出る空想人物(キャラクター)

だがそんな人でなしは今、ミネを優しく抱き寄せ、守るようにその場にいた。

 

「ア…ダ……」

 

「来るのが遅くなってしまってすまない。それと、これも奪ってしまって……ごめんな?」

 

アダムの()()()()()()()()()()()()()()()()()

それどころか、アダムの目は優しい目をしており、片手に、内部に光を圧縮し保管している結晶を取り出す。

そしてその結晶を砕き光だけにすれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!? ゔゔぅ…! あ”ぁ”!!!」

 

「それは…貴様! 何の真似だ!!」

 

響き渡る声は怒号と焦りが混ざっている。

その一方でアダムは口角を上げる。

 

「決別でも裏切りでもないさ。俺は最初からお前と協力した覚えはない。この時が来るまで利用したに過ぎないんだよ。()()()()()()()

 

響き渡る声の正体をアダムは言い当てる。

その正体は終わりなき災禍であると。

 

「何故だ!?」

 

だが泥は——終わりなき災禍は声を荒げる。

それでも、アダムは怯むことなく顔を上げた。

 

「そんなの簡単さ」

 

帽子がゆらりと上に打ち上げられ、長い青黒髪が揺れる。

 

「——()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

その衝撃的すぎる発言は終わりなき災禍を黙らせる。今こうしてみれば、2人の髪色は近しく同じ。

終わりなき災禍はようやくと、理解した。

 

「バカな…!? お前はあの日命を落としたはずだ! 肉体も全て含めて…この世から消滅したはずだ!!!」

 

終わりなき災禍は声を荒げる。

その正体を知っており、いま改めて知ったから。

 

「あ、あぁ…わたしは…そうだ、わたしは……!!! 」

 

一方でミネは激しい頭痛の苦しみから、()()()()()()()()

そしてアダムを見て、その黄金の瞳から、透明な血を——涙を漏らす。

 

()()()()()()()()()()()()——」

 

その正体は、日陰が幼少期に失ったはずの血を分けた存在——

 

 

「——パ…パ……!?」

 

「――『黒換(くろかわ)黎真(れいま)』ァ!!」

 

 

——黒換美音(ミネ)の父親であった。

 

「——血を分けた我が子を救けるためなら、天国だろうと地獄だろうと、舞い戻る。それが親の特権なんだよ」

 

 

 

 





名前 『黒換(くろかわ)黎真(れいま)
外見 アダム・ヴァイスハウプトと変わりない。
年齢 不明
身長 不明
体重 不明
誕生日 不明

『基本世界』では既に亡くなり、最終的に妻と娘の美音と一緒に光へと消えてった、幻神にとっても血を分けた父親。
『並行世界』では詳細は不明だが、娘であるミネを救うため、アダムに変わってまで、人でなしとして活動をしていた。
今話で時が来たため正体を明かし、何故か保管していたミネの記憶も全部ミネに返却もした、本当に謎なのに父親な人。

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