この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!

今年最後の更新、結局オリジナル終わらずになってしまい申し訳ない……。



PAST WORLD

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に、入り込むことに成功したミネ。

最も干渉ではなく、実際に肉体ごと終わりなき災禍——原初の"異能"の中に入り込み、過去の記憶の世界に来ている故なのかもしれない。

 

そんなミネの目の前で、先ほど女性の親子がボロボロの衣服を纏い、廃家の庭で笑顔でいた。

しかし一度目を擦り、見直すとそれは幻のように既に消えてしまっていた。

 

「幻覚…? いや、それとも断片的に出てきて…——」

 

「知って何になる?」

 

「ッ!?」

 

次の瞬間ミネは困惑する中、彼女に問いかける存在が現れた。

ミネは咄嗟に振り返ると、そこにはドロドロに黒く塗りつぶされた謎の女性が立っていた。

まるで影のように、形しかわからないそれは、表情すら見せず、ミネへと語りかけている。

 

「あたしは救けなんて求めてない。これはあたしが自分で選んだんだ」

 

「……」

 

「あたしを知ったところで、結果は変わらないんだ」

 

「ならなんで、あの時——」

 

 

「——秘密を暴かれたくない子供のように荒ぶっていたの?」

 

 

「とっとと消えろ、偽善者」

 

影の女性はノイズのようにその場から消えていった。ミネは迷うことなく振り向き、廃家の扉の前まで歩み寄り、その扉を開けた。

 

「……ユウカがわたしの記憶を彷徨ったのと同じ現象…か」

 

扉の先は廃家の中ではない。

発展している普通の街。

しかし違和感を感じるミネは、その違和感にすぐに気づいた。

 

「異形型とか、"個性"故の"個性"的な人たちがいない……それどころか、ヒーローすらも……」

 

街を歩く人々は"個性"豊かな姿でもなく、みんながみんな同じ髪色。

異形型やヒーローの姿は一切ない。

 

「原初、つまりここは……まだ超常社会じゃない、"個性"以前の世界……」

 

超常、超常黎明期よりもはるか昔の現代社会。

だが次には妙なものを見つけ出す。

 

「……指名手配書?」

 

壁にはいくつもの指名手配書が貼られており、その写真は先ほど見た幼き少女の顔が映し出されていた。

 

『なァ聞いたか? また例のバケモンが街の徘徊したらしいぜ』

 

『マジかよ! あれって無差別に人を殺すんだろ? 特別な力とか確かに憧れるけど、こうなるぐらいならラノベとかの二次元で十分だわ』

 

『言えてる!』

 

「……」

 

通り過ぎる過去の記憶に映し出される人々の会話。

始まり、最初ということは異物。

超常世界で"無個性"が異物としてとらえられるように、過去はその真逆。

 

故に、ミネは最悪な展開を想像してしまった。

 

「あんな小さな子が、既に迫害を受けているっていうの…?」

 

次の瞬間、悲鳴がミネの耳に届き、彼女はバッと振り返る。

振り返れば先の街並みは消えており、路地裏での事件現場が映し出されていた。

 

『いや、いや…! やめて……!!』

 

『……』

 

そこにいたのは、血まみれの幼女とその幼女に怯え腰を抜かす女性。

 

『悪い人、倒したよ…? お姉さん、これでもう大丈夫だよ?』

 

『こ、来ないで! 化け物!! こっちに来ないで!!!』

 

『……なんで?』

 

『来ないでって言ってるでしょ!!』

 

『アッ!』

 

女性は持っていた鞄を幼女へ投げつける。

その際中身が溢れ、化粧品などの固いものが幼女の額などに当たり、幼女は倒れてしまう。

その隙に女性は立ち上がり、背を向け無我夢中で逃げるように走り去っていった。

 

そんな場面にミネは歩みより、よく周りを観察。

幼女の足元は血の溜まりが出来ており、その背後にはいくつもの男性の死体が転がっている。

おそらく幼女は、女性を救わんとその"異能"を使用した。

 

しかし彼女はこの世界で異物。

故に化け物と恐れられ、感謝されるどころか拒まれてしまっていたのだ。

 

『……ママが心配しちゃう、お家帰らないと』

 

幼女は表情を暗くさせ、俯きながらに立ち上がり、歩き出す。

その際、幼女はどこからともなく、微かな水を周囲から生み出し、風を発生させ、混ぜ込むことで自身にこびり付いた血をを吹き取り綺麗に戻した。

 

「……」

 

住まう家に向かうその小さな後ろ姿は、寂しさと悲しさで染まっていた。

 

 

——◆——

 

 

『また言われちゃったのね…ごめんね、ママがしっかりしないといけないのに……』

 

『ママのせいじゃないよ! あたしが、あたしが化け物だからいけないの…化け物じゃなかったら、ママも今もずっと幸せだったはずなのに……』

 

『もう、そんな悲しいこと言わないで? ママはあなたがいるだけで充分幸せなんだから』

 

廃家に戻れば幼女の様子と、意図的に現れたり直された肌を見て悟った母は、申し訳なさそうな表情を露にしながら、暖かいタオルで幼女の身体を改めて吹いていた。

 

『あたしがいたから、パパも逃げ出したんでしょ?』

 

『……でも、それでもあなたがママの子であることに変わりはないわ。それに、あなたが誰よりも優しい心を持った、素敵でママにとって一番の自慢で宝物に変わりないんだから』

 

申し訳なさそうにと、幼女は俯くが母はそれを慰めるように抱きしめ、頭をなでる。

次第に幼女の顔は笑顔になり、その温もりに身を預けたように、瞼を閉じようとする。

その瞬間だった。

 

「——ッ!?」

 

突如として窓から光が入り親子らは驚き、次には声が響いた。

 

『——居座っているのは分かっている! 出てこい化け物どもめ!!』

 

『嘘…! くっ!!』

 

その声を聞いた母は青ざめ、幼女を抱いたまま扉へと走り出す。

乱暴に開け、必死に裏口へ向けて。

 

ミネは外が気になりチラッと見れば絶句した。

時刻は夜故分かりづらいが、無数のライトや松明で照らされた多くの人々。

しかしその顔は怒りや恐怖などで染まっており、今いる廃家を睨みつけている。

 

『出てこい化け物! 殺してやる!!』

『そいつは呪われている! 病気みたいに感染したら人類は滅びる!!』

『出しやがれ! そして見せしめとして殺せ!!』

 

ミネは事態に改めて気づき、すぐに親子を追いかける。階段を駆け下り、微かに開いている裏口へ続く扉を開いた。

 

「っ…!?」

 

次に出たのは、路地裏。

だがそこにいる人物は酷いものだった。

 

『ママ、ママ!』

 

『だい、じょうぶよ……』

 

幼女と、身体に銃弾を抜かれて空いた穴や、刃物で切られた跡があり、血まみれの母。

さらには意図的に鋭利に加工された木製なども突き刺さっている。

 

『治すから! あたしが、治すから…!!』

 

幼女は自身の力、"異能"で治そうと試みる。

しかし治癒系はうまくできず、幼女の息も上がっていた。

それは単に未熟なだけではない。

 

目の前の状態は、幼い子供には刺激が強すぎる故、無意識に力を封じてしまっているのだ。

すると遠くから大勢の人々の声が聞こえ始める。

 

『ママは、大丈夫だから……行きま、しょう…』

 

『でも、ママ…!!』

 

もう動けないであろう身体を無理やり動かし、愛娘の手を優しく握り、不器用ながらに歩く。

その姿はまさに、どんな状況か、形であろうと我が子を守ろうとする親という姿そのもの。

 

「……ッ」

 

物理的干渉はできるが認識はされない。

ミネは思わず、後ろから来ている一般人たちの邪魔をしてやろうかと思い、アームドギアを形成しようとする。

しかしその次の瞬間。

 

「そんなことしたって意味をなさない」

 

「ッ!」

 

影の女性が目の前に現れた。

 

「干渉はできるが、未来が確定している以上、どんなことをしようと意味をなさない。過去を変えるということは未来を変えるということだが、過去からすれば、決まった未来があればその未来に必ず進むもの。だから、何をしたって意味はない」

 

瞬間、ミネの足元に穴が開き、ミネは抗おうとするも間に合わず落下してしまう。

 

「変わることはない」

 

そして、次の記憶へと強制的に移動させられた。

それはまるで、かつてミネがユウカに見せた記憶、精神世界のように。

 

 

——◆——

 

 

次に見せられたのはまさに地獄と言えるもの。

ミネは絶句し、困惑の表情で見ることしかできなかった。

それはなぜか?それは今目の前で起きていることが原因だ。

 

『化け物を生んだ化け物め!!』

『俺たちと同じ人の皮を被ってんじゃねぇ!!』

『いい加減姿を現しなさい!! そしてさっさと死になさいよ!!』

 

それは始まりにして原初の"異能"である幼女を生んだ母親が、十字に縛られ吊り上げられていたから。

さらに下の地面は炎が燃え盛り、母親の身体のいたるところが傷付けられ、ナイフなどが突き刺されてる。

 

「ッ、うぷ…ッ!!」

 

ミネは思わず口を押え、嗚咽しかける。

そんな彼女の耳に届く。

 

『やめて! ママを虐めないで!!』

 

『黙ってろこの化け物め!!』

 

「ッ!!?」

 

咄嗟に振り返れば、幼女が大の大人数人に無理やり抑えつけられ、その細く小さい腕を貫く形で地面に細いパイプのようなものを突き刺されていた。

しかし幼女は"異能"の力によるものなのか、痛みで叫ぶよりも、母のことで叫んでばかりでいる。

 

『クッソコイツ、こんだけやっても死なねぇのかよ!!』

『おい誰かでっかいハンマーもってこい! こいつの顔面叩きつぶす!!』

『だったら俺は心臓を撃ち抜いてやるよ!!』

 

「ッ! やめなさい!!」

 

ミネは咄嗟に駆け出し、止めようとする。

だが干渉させないとばかりに、見えない何かに阻められ、押し返された。

 

過去は変わらない。

変えたって意味はない。

自分たちの世界に影響しない。

 

「そんなの!!」

 

ミネは再び立ち上がり、手を伸ばすも阻まれる。

それでもと、ミネは必死に伸ばす……——だが。

 

『——死んだぞ!!』

 

「——は?」

 

そんな声が聞こえた。

思わず振り返れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

 

『ぁっ…ァあぁあ……!!!』

 

『化け物の親が死んだぞ!!』

『これで化け物はもう生まれねぇ!!』

『あとはそのガキを殺すだけだ!!』

 

『どんな手を使っても殺せ!』

『富士山のマグマの中に突き落とせ!!』

『深海の奥底に沈めてやれ!!』

 

もう死体に興味はないように、全員の殺意に満ち溢れた瞳が、幼女へと集中される。

しかし彼らのその顔は、次第に絶望へと染まっていった。

 

『あぁぁあ……アァ、aAあ…ぁぁ”あ”a”あ”a”あ”ア”ぁ”ァ”A”あ”ァ”a”ア”a”ァ”ァ”ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

幼女が悲鳴の如く叫びあげれば、泥が幼女の穴という穴から、ダムの崩壊の如く溢れ出る。

そしてその泥は、周囲の人々を襲い、取り込んでいった。

 

『な、なんだこれ!!』

『飲み込まれ…あぁ!!』

『痛い! 痛い!! あぁぁああぁ助けてェ!!!!』

 

幼女は一人、そっと立ち上がる。

 

『こんな、世界………』

 

「そう、こんな世界は……」

 

「はっ!?」

 

気付けば幼女の隣には、影の女性が立っていた。

すると、幼女と影の女性が重なっていく。

 

それが合図となり、幼女の周りに残った泥は幼女を取り込むように覆っていく。

そして弾け取んだ瞬間幼女のその姿は、ミネたちが対峙していた『終わりなき災禍』へと変貌していた。すると終わりなき災禍は浮遊し、片手を天へ掲げ、自身の細胞、遺伝子を次々と泥を通し量産していき、その全てをあらゆるタイプへと変えていく。

 

『蝕まれて、苦しみ流れ死ね』

 

やがてそれらはすべて外部へと摘出され、ウイルスのように全世界へ拡散されていく。

それも意図的に。

それは、幼女が苦しんだ人生を愚かな力を持たないクズな人間どもに同じように味わわせるために。

 

しかしこれは始まりに過ぎない。

『並行世界』の超常黎明期…その起源は今動き出したに過ぎない。

最初はウイルスとして人々の命を蝕み、奪っていく殺戮だろう。

 

だが生命は適合することが出来る。

このウイルスはのちの、『並行世界』の、ミネの世界の超人社会へと変えていくことを、当時の終わりなき災禍は知る由もない。

 

 

——◆——

 

 

あれからどれ程の月日がたったのだろう。

今は何年だろう、何世代目なのか、わかることはない。しかし分かることはある。ミネは人々を見てそう思う。

 

ミネは不意に横を見る。

そこには終わりなき災禍が立っていた。

 

そして終わりなき災禍は見つけた。

己に近しい力を、その真似事をすることが出来る力を持つ幼体を、その双子を。

 

片方は『奪い、与える』力。

片方は『与えるだけ』の力。

 

故に片方の幼体は、もう片方の栄養分すら奪い、成長していた。

母は出産後に死んだ故、教育もなく、ただただその力を振るうだけだった。

それも、自身に何も与えない疑問を、純粋な疑問を思いながら。

 

終わりなき災禍はそれをただ見届けるだけ。

自身の力の一端を持つ者の生末など興味もないのだろう。

 

そこからもさらに月日は流れた。

流れに流れ、終わりなき災禍の最後が迎えられた。

 

"異能"を持つ反乱軍の者たちが終わりなき災禍を見つけ、戦った。

犠牲は数えるのをやめるほどのものだった。

しかし、ある"異能"が終わりなき災禍にとって盲点、最悪なものだった。

 

『指定したものを上限なく封じる』"異能"

 

不意を突かれた終わりなき災禍は、その"異能"にて力を一時的に封じられた。

反乱軍はその隙を見逃さず、終わりなき災禍を傷つける。

結果、終わりなき災禍はその肉体が幼女へと戻らざるを得なかった。

 

『指定したものを上限なく封じる』"異能"

『亜空間を生み出す』"異能"

『一定範囲の空間の時間を止める』"異能"

『干渉を遮断する』"異能"

 

多くの"異能"によって幼女は、終わりなき災禍は発動者たちしか干渉できない。

誰も干渉することのできない、真っ暗な異空間に封印された。

どんなに力を使おうと、封じられ、誰にも干渉することもできず、時間を止められている故壊せない。

 

完全な拒絶。

自身ではなく他者から。

何もできなくなった終わりなき災禍は、幼女は一人、封印が解けるその時を待ちながら、悲しみに暮れるしかなかった。

 

そんな場面を、ミネは見るしかなかった。

何もできない無力感に蝕まれそうでしょうがない。

だけど、そんな彼女の背を押す者が、者たちがいた。

 

「あの子の手を取って、救けてあげて」

「君ならできるよ。僕たちの手を取ってくれた君なら」

 

とても懐かしくて、ついさっきまで共に戦った声だ。

けど、同じ声でも思いは、温もりはこれほどまでに違うものなんだとミネは痛感する。

ミネは涙を吹き取り、最後に終わりなき災禍が封じられたその空間へと手を伸ばす。

 

——『ワン・フォー・オール(ひとりはみんなのために)』+『紡心(つなぎあうて)

 

彼女の中には、『己が過去に味わった悲劇と亡き妹の記憶によって形成された具現せし力』と『聖火の如く受け継がれていった力の結晶』が内包されている。纏うガントレットに熱が通り、稲妻を重ねて纏う。すれば空間を掴み、終わりなき災禍が封じられているその空間を引き裂き、開いて見せた。

 

『オール・フォー・ワン』から派生し生まれた二つの"個性"。

『ワン・フォー・オール』と『紡心(アクシア)』。

けどより過去を巡れば、この二つは、否、この三つは全部、終わりなき災禍から……あの始まりの幼女から生まれたものだ。

 

ミネはその空間へと入り、真っ暗で上か下かもわからないそこを歩み進む。

もう影の女性は出てこない。

 

「……そっか、知らない間に来たんだ。あの子の最も脆い原点……オリジンに」

 

おそらく幼女は、終わりなき災禍はまだ微かに、そして無意識に望んでいたのだろう。

みんなで仲良く、平和で、笑い合って生きていける世界を。

だがこの空間に長く封印された影響もあってか、憎悪が、怒りが、憎しみが、復讐心が強くなり、優しい心が塗り潰されてしまった。

 

干渉できる過去の世界。

未来は変わらない。

それはきっと、終わりなき災禍が顕現し自分たちと戦うところまでだ。

 

されど、未来を掴み取ることはできる。

過去を変えても意味がないのなら、過去を変え、その過去に繋がる未来を己が手で作り掴みとればいい。

 

「(あの日、ユウカとイズクはわたしに手を指し伸ばして、笑顔で救けて託した……今度は、わたしの番だ)」

 

ミネは一人、その暗黒の世界へと進んでいった。

 

 

 

 






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