この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
お久しぶりデェス!
暗い、暗い、暗い。
ずっと暗闇が続いた世界。
『白いガングニール』と『OFA』の白き稲妻を纏うミネはひたすらに歩き続ける。
敵もいなければ、阻むものもいない。
ただミネに聞こえるは子供のすすり泣く声。
「どうしてみんなして虐めるの?」
そして問いかける声だけ。
「あたし、皆に酷いことしてないよ?」
その問いかけは純粋な問いかけから、やがて憎悪などに染まっていく。
「お母さんを何で殺したの?」
泥が溢れ始めていく。
「なんであたしは生きちゃいけないの?」
やがてついた。
一つのスポットライトに当てられながら、座り込み泣き続ける幼き少女の場所に。
周りには彼女が抱いたであろう夢の数々が、子供が良く描く夢の絵として散らばっている。
「……こういう時こそ歌うんだよね、ユウカ」
亡き妹にして転生者である者の記憶と歌を受け継いだ少女は、今歌を口ずさむ。
♪ 終わりを拒み続けた 愚かな旅人の物語 ♫
その声帯を変換し、歩みながら歌う。
しかしその足取りは泥によるものなのか重く、一歩、一歩がおもりがあるように遅い。
♪ 愛する人を失う未来に怯えていた ♫
ミネの脳裏には、先ほどまで半干渉状態で見せられた、終わりなき災禍の誕生前の物語。
何故幼き少女があそこまで人類に対し憎悪を抱き、無差別に惨殺したかまでの経緯、その真実が映し出されている。
♪ 焼きついて離れなくて 遠い昔の約束 ♫
♪ 許さないで 振りほどいて 残酷なその瞳で ♫
♪ 今さらあまりに遅すぎると 突き放して ♫
本当だったら、世界が許していれば、遥か昔で幸せになり、普通に生き生涯を終えるはずだったのだろう。だが人という種族は異なるものを拒み、挙句の果てには死へ追いやる。
始まりの"異能"でもある彼女は、それでも寄り添おうとした。
しかし人類は拒み、肉親である母までも殺した。
彼女の憎悪が、『並行世界』での黎明期を始め、今に至り、そして未来で大半の者が命を落とした。
過去は未来が確定している以上変わらない。
変えても自身の世界が変わることはなく、更なる『並行世界』としてその結果が起こるだけ。
結局意味などないのだろう。
だとしても、ミネは諦めない。その重い足と共に歌いながら歩み寄る。
「(もっと合う曲が、彼女の心を救う曲があるのかもしれない……でも、まだあの子よりも未熟なわたしは、今はこれしか選べない……)」
♪ 正しくありたいと願うほど ♫
♪ 自分の小さな不純に気づいてしまった ♫
♪ ぜんぶ捧げて与えることで 満たされてたのは僕のほうだった ♫
すれば少女に近づけさせないとばかりに、泥が手を作りミネへと伸ばしていく。
それに対しミネは『
「(あなたは似ている……オール・フォー・ワンに利用され、世間から敵視され居場所を失いかけたわたしに……いいえ、
♪ 憧れて 待ち焦がれて やっと目にした楽園 ♫
♪ 踏み荒らして ぶち壊した もう跡形もないほど ♫
♪ 僕らが絆と呼んだ細い糸 ♫
♪ 手繰り寄せてしまう前に 断ち切って ♫
それでも『
だがミネは足を、歌を止めることなく進み続ける。
ギアは砕かれ、血を流そうとも、その拳を開き伸ばしていく。
すれば少女の背後に終わりなき災禍が現れ、必死に懇願するように叫ぶ。
「やめろ」
「来るな」
「覗くな」
「触れるな」
「私を否定するなァ!!!!」
「否定なんてしない! あなたのこれまでを、これからをわたしは受け入れる!! 全部受け止めてやる!!」
亡き陽だまりから授かり受け継いだ『
亡き太陽から授かり受け継いだ『ワン・フォー・オール』
日陰はその二つの輝きを持ってして、終わりなき災禍の懇願を黙らせ、声を上げる。
「あなたが生きていけないならわたしが生きる目的を作ってやる! わたしがあなたの生きる目的になってやる!! あなたが否定しようとも、わたしはあなたの手を取って一緒に生きる!! だから——」
「——生きるのを諦めるなッ!!!」
その時にはもう終わりなき災禍の言葉も、その影もなく、泥も収まっていた。
そしてミネは、少女の目の前まで辿り着いた。
♪ さよなら 口にすればなんて短い音の響き ♫
♪ さよなら その言葉で愛を示せるなら あなたへ ♫
「……あたしがいたら、みんな幸せにならない」
「そんなことない。あなたは生きていいの。あなたが幸せにならないと幸せになれない人だっている」
「いないもん…あたしは呪われた子だもん……お母さんだって、あたしが生まれなかったら幸せだったもん……!」
「それはわたしもだよ……わたしも同じように思って、消えてなくなろうとした。でも、そんなの嫌だって言われて、生かされた。とっても大切なものを2つも託された……ねぇ、あなたのお母さんは本当にそう思ったのかな? 過去で見たあなたのお母さんは、ずっと一緒にいるときの笑顔は——とても素敵だったよ?」
♪ 焼きついて離れなくて 遠い昔の約束 ♫
少女の脳裏には、彼女の歌声により本人も忘れていた故に干渉も叶わなかった遠い約束が、破片が集まり映し出されて行く。
『約束。どんなことがあっても、あなたは誰よりも優しい子に育ってね? その力は悪いことをするためじゃなく、いいこと……困ってる人たちを助け、慰め、怪我を直して、手を差し伸べるためのものだから』
♪ 泣き疲れて 崩れ落ちて やっと手にした結末 ♫
少女は思い出したのか次第に顔を上げ、光を失った瞳から涙を漏らしていく。
『あなたが誰よりも優しい心を持った、素敵でママにとって一番の自慢で宝物に変わりないんだから』
♪ 許さないで 振りほどいて 残酷なその瞳で ♫
とうの昔に忘れ去られた、たった一つの温もりと約束。少女の視界に映るミネは、亡き母と重なって見えていた。
♪ 今さらあなたへ告ぐ資格もない ♫
♪ 誰にも届かない独白 ♫
そしてミネは終わりなき災禍へ、始まりの"異能"へ、少女へ……——救いを求める女の子へ、その日陰のように暖かくそれでいて涼しくも感じさせる手を伸ばし、優しく包むように抱きしめる。
「もう大丈夫——」
♪ 声にならない僕の叫び ♫
♪ 渦巻いた嵐の目を貫いて ♫
「——わたしが来たよ」
「……~ッ、あっ、あぁ…! ぅああぁあぁああ……!!!!」
少女は心の壁が完全に砕かれ、本心を表すように、その目に光を取り戻しながら泣き出す。
それを引き金に、暗黒の空間が割れ、白く染まり始めた。
過去を変えるでも、誕生を止めるでもない。
今を救うこと。
それがこの戦いを終わらせることであり、原初の"異能"の救済。
ミネは現実世界へ戻される感覚に陥るが、彼女を放さないとばかりに抱きしめる。
その時、ミネの視界に一人の女性が映っていた。
その女性は少女が夢描いた絵を全て、大切な宝物のように抱きしめながらミネに告げた。
『——娘を、お願いします』
女性の正体に気づいていたミネは、安心させるように微笑み、言葉を返す。
「——必ず幸せにします。だから安心して見守っててください」
それを聞いた女性は心から救われたように一粒の涙を漏らしながら微笑み、ミネたちは完全に白く包まれた。
——◆——
ミネが終わりなき災禍の中へと侵入したが、現実での時間は10分も経っていない。
未だ動かず沈黙状態となっている終わりなき災禍を前に、幻神たちはただミネを信じ身構えるしかなかった。
「ッ! 動いた!」
「えっ!?」
だが次の瞬間、終わりなき災禍はゆっくり動き出し、その顔を天へと向ける。
すれば泥が周囲に溢れ出し、幻神たちは青ざめながら攻撃態勢に入った。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああッ!!!!!!!!!!!!!」
終わりなき災禍は苦しむように悲鳴のような雄たけびを上げ、泥を自身の身体に溶け込むようにしていく。そしてその身体は肥大化していき、やがて弾け飛ぶように爆散した。
しかしその爆散した中央から眩い輝きが飛び出す。
「ッ! この感覚って…!?」
「もしかして…!」
イヴは託された『イチイバル』のギアペンダントを、幻神は己の胸元に手を添える。
それは『
やがてその輝きはゆっくりと幻神たちの前に降り立ち、その姿を現す。
一人の小さな少女を包み込むように優しく抱いている歌姫。
「——ただいま」
『白いガングニール(Another)』を纏う黒換ミネが今、舞い戻った。
「お姉ちゃん……てことは!!」
「戦いは終わった……終わりなき災禍はもういない。ここにいるのは、強すぎる"個性"を持っただけの、小さな小さな女の子よ」
それを聞いた幻神たちは互いの顔を見合い、しばし沈黙後、全員の歓声がその戦場へと上げられた。
ミネも自然と微笑み、少女の背中を優しく撫でる。
アリスはその場面を見てすぐさま駆け寄った。
「その子は……そう、その子が終わりなき災禍の正体なのね」
「うん、わたしたちの世界で初めて"個性"を、"異能"を発現させた始まりの子。この子の過去を知っても変えられることはできない。だから今を救った……幻神」
「ん、なに?」
「あなたの言った通り、あの日あなたがやった通り、歌は繋いでくれる。だから——」
「――認めない」
「「「ッ!?」」」
脳に響き渡る歪な声に、全員が硬直する。
すると彼女たちの周りに怨念のように飛び散っていた泥が動き出し、一つになり不気味な顔となった。
「マジか!?」
「くっ!!」
ありえないと思いながらも、すぐに幻神たちは拳を、足を、銃を構える。
「私は認めない……私はこの世界、を――」
瞬間——膨大な量子の塊が憎悪の怨念・残留を貫き、貫いた先にて着弾後、大爆発を引き起こした。
「今のは【マクロスキャノン】? ……もしかして!?」
アリスはその正体に気づき、咄嗟に墜落地点へ振り向く。
その先には、辛うじて砲台を構えて放射したであろう、不安定ながらに構えている『マクロス・クォーター』がおり、周囲の乗務員たちは命中したことに喜んでいる姿があった。
「終わりなき災禍を形成させたとも言える怨念が、憎悪が完全に消えていく……」
【マクロスキャノン】により彼女たちを飲み込もうとしていた怨念・憎悪は完全にこの世から消滅した。
「それって…」
「終わったんだ……辛く犠牲だらけの、私たちの残酷な戦いは……」
『並行世界』での戦いは、ついに終わりを迎えた。
あと数話で原作に戻れる…やっと、やっとォ……!!
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