この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
時は流れ、とうとう明日、文化祭本番!
ミスコンの準備はもう完璧に終えたため、今は体育館ステージで最終確認をしていた。
「トントンツー! トントンツー! パッ! で、青山中央、緑谷ハケる」
「ウィ☆」 「ラジャ!」
「緑谷!! 動きまだヌルいから、グッグッ!! 意識!!」
芦戸さんの凄い熱量の熱血指導の下、ダンス隊は皆集中して練習している。
バンド隊である私たちも、楽器はないけどエア練習をしていた。
「緊張してまいりました……」
「本番で変なアドリブしないでね?」
「あぁ?」
「混乱しちゃう奴いるから」
「言い方棘あんなぁ…」
「上鳴、お前だけではないぞ」
結局今日に至るまで、爆豪くんは幾度もアドリブを入れて来てた。
元の原曲の通しとかもやれたはやれたけど、本当に根っからのプライドガチガチなせいで大変だった。
「まぁ仮にやって来ても私が上手く補助するから」
「うん、そん時は本当に頼むね……」
「何人を問題児扱いしてんだゴラァ!!」
「いや事実でしょ、謹慎主犯」
謹慎のこととかを指摘すれば本人は自覚がおありなようで、グググッと黙り込む。
「そんで緑谷はソデからすぐ天井行って、青山セットしてロープで吊り上げる! そうそうイイ感じ――」
「――もう九時だろォォ!!!!!!!」
そんな体育館に、ハウンドドック先生が声…というか咆哮を荒げながら入って来た。
「やっべ、帰りまーす……」
流石にこれでは延長での練習なんてできるはずもなく、私たち全員大慌てで寮に戻った。
——◆——
寮に戻って来て早々、共有スペースにまだいる人ともう部屋に戻って明日に備えて寝ている人で別れた。私も、まぁまだ寝てはないけど部屋に戻ってきてる。
理由としては寝るのも確かにあるけど…………。
「う~ん……
鏡に映る自分……その額、正確には額の髪、
気が付いたら出来ていたから、知らず知らずのうちに特訓、もしくは練習とかでぶつけたのかもしれない。荷物運びとかでも不注意で頭ぶつけたことだってあるし。
でも、そんなんじゃない気もするんだよなァ……なんだろ、これ。
髪の毛とかも場合によっては皮膚に埋もれて固まっているっていうのだっけ?、縦動画で見たことあるし、そういうのかな?
潰したら痕になっちゃうしなぁ……当日の朝には化粧してうまく隠そう。
「明日は本番……体育祭とかとは違う、皆で積み重ねて来た練習での、本当の意味でのライブ」
文化祭でも、ライブはライブだ。
前世でもやらなかった、皆の前で本当の意味で歌って演奏するあれが明日、行われる。
私が、私たちがやるんだ…!!
「…イヒヒ、やばっ、想像するだけで高鳴ってきちゃった」
今鏡見たらとんでもなくニヤついてると思う。
あ~ミスコンのことも考えたら余計にニヤついてしまう……!このままじゃ眠れなくなっちゃう!精神を落ち着かせて、眠りにつけるBGMを聴きながら就寝就寝~!!
——◆——
数週間前、文化祭の開催が決まるより前の日時の時に遡る。
「――文化祭は自粛したまえ」
雄英高校校長室にて、文化祭についての話が行われていた。
「警察庁長官じきじきに足を運んでくださるとは……」
「
「ごもっともです。しかし…」
「――駄目だ。
USJ、合宿に続き雄英は
そんな中での文化祭など、もはや
故に警察らは自ら出向き、自粛するよう命じて来た。
否、それだけにあらず――
「それに雄英は――最も警戒すべき危険分子がいることを忘れてはいないだろうな?」
ある事件をきっかけに、今もなお敵意や警戒を向けられている生徒のことも含めていた。
それを自粛の材料にした警察庁長官に、根津は歯を食いしばっている。
それでも態度を変えず、席から下りて自ら前に出た。
「こんな今だからこそ、生徒に必要なイベントだと考えています。万全は尽くします。だからどうか!」
根津は深く頭を下げる。
「これ以上、暗い未来を指し示すわけにはいかない!」
「………」
後方二人は長官の判断に従うのみ。
故に、長官の様子を伺う。
そんな長官は告げた。
「それが巡り巡って自分たちを、そして私たちの首をも絞めるということをわかっているのか?」
「百も承知です。ですが生徒は夢へ、明るい未来へ向かうためにここにいます。そんな生徒たちの進む道を、私たちが支えなければならないのです!!」
力強く、絶対に譲れないとばかりに根津は言い切る。長官は無駄に大きなため息を漏らしながら、こめかみを抑えた。
そして根津へ視線を戻す。
「ならば
「条件…ですか?」
「あぁ。この三つの条件を呑んだうえでなら、文化祭の開催を認める」
すると長官は手を上げ、人差し指を上げる。
「一つ、セキュリティーの更なる強化」
中指を立てる。
「二つ、警報が鳴った場合、それが誤報であろうと即時文化祭の中止と避難」
薬指を立てる。
「そして三つ――文化祭期間のみ、天堕幻神の身柄を預かる」
その三つが文化祭を開催する絶対条件だと、長官はハッキリと発言した。
それを聞いた根津は顔を上げ、静かに問いただす。
「天堕さんも、私たちが合格通知を送り、迎え入れた立派な生徒です。彼女にも、文化祭に参加し楽しく過ごす権利があります」
それは、三つ目の条件は呑めないということ。
三つ目の条件だけは認められないと表している言葉だ。
「ならん。彼女はそれ以前に前科持ちの犯罪者だ。ましてやあのオール・フォー・ワンと手を組み、雄英以前からの面識アリの関係だ。そんな犯罪者を入れた状態での文化祭など内側から崩壊するに決まっている」
だが長官もまた譲らなかった。
彼らにとって、それほどまでに幻神の存在を危険視していることだろう。
他の生徒たちの未来の為、一人の生徒を犠牲にする。
それが今彼らが根津に下した天秤という選択肢。
しかしどちらかを選ぶほど、根津も落ちてはいない。
「それは彼女自身が一番わかっております。彼女は、天堕さんはその罪を背負い、受け止め皆と未来へ向かおうとしているのです!」
「いい加減にしろ。文化祭を開催したくばこの三つを受け入れ――」
瞬間――扉が叩き開かれるようにバンッ!!!と音を立てて開かれた。
全員が反射的に扉の方へ視線を向ける。
扉の位置には一人の影。
その正体を見た途端、根津は驚愕する。
長官もまたありえないとばかりに驚愕し、付き添いの二人は青ざめ後退りしていた。
何故ならそこにいたのは――
「――話は聞かせてもらったわよ、クズ共」
――天堕幻神の義母、天堕翠だからだ。
「き、貴様! 裏切者が何故ここに――」
長官が声を荒げるがそんなの気にせず歩み寄る。
その瞬間に二発、"個性"を失っても絶えず鍛錬している技量と力により、長官の横にいた二人を気絶させた。
そして長官の目の前に立ち、その胸倉を容赦なく掴み睨む。
「個人的に雄英からお呼ばれされていてね、早く着いちゃったけどことは速めに終わらせた方がいいのと愛義娘に会いたいから来たの。そしたらアンタらの話を聞いた。それだけよ……――で?」
目力だけでもはや殺せるのではと思わせるほどの殺意が籠った瞳。
目の前でそれに直で向けられている長官はみるみる青ざめ始めた。
「誰の義娘をあんたが預かるですって? ちゃんと私の顔を見てもう一度同じことを言って欲しいわ。私耳が悪かったからか、その部分だけうまく聞き取れなかったのよ」
片手を見せびらかすように上げながら、わざと指を鳴らす。
そんな彼女の表情は恐怖を与える笑みだった。
その後、三つ目の条件は帳消し。
残り二つの条件のもと文化祭の開催が決定したことで、文化祭は無事に行われるようになった。
おや?幻神の額に異変が……アハッ。
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