この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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合否発表

 

 

 

 

「ん~…う~…」

 

「……はぁ、先生、少し落ち着いてよ」

 

「だ、だって! もうそろそろでしょ!? あなたの雄英からの合否発表が届くの!」

 

「いやだからこそなんで、受けた私はこうも落ち着いて、保護者(・・・)である先生が緊張してるの……」

 

雄英の入試試験から約一週間がたった。確かに入試試験なんて実際、合否を知ってこそ真に終わりってところもある……かな?

現在私はリビングでノートを書き留めており、心配と緊張の顔をしながら先生は往復していた。ちなみに私が書き留めているのは、各『シンフォギア』に合いそうな"曲"。MADとかでも、その映像の作品と流れている別作品の曲が合ってていい!ってのがあるし、思いついた奴とかは書き留めておかないと忘れてしまう。

 

「ゆぅちゃんのことだから大丈夫だろうけど、それでもやっぱり~……」

 

()とはいえ、プロヒーローなんだから余裕を保った方がいいんじゃないの?」

 

「ん~…無理!!」

 

いや無理って……まぁ先生はこういう人だからしょうがないか。というか、一週間たって、場所によってはもう来てる人もいるんだろうか。

 

「(彼は……合格したのかな…?)」

 

入試でいろいろな意味で一番印象にあるあの少年のことを思い出していると、インターホンが鳴りだした。インターホンを見ようとしたときには先生が猛スピードで玄関まで向かった……そして戻って来た。

 

「来た! 来たわよ!!」

 

先生の手には、右下に『雄英高等学校』と書かれた封筒が握られていた。私はそれを受け取り、そのまま開ける。先生は「部屋で見ないの?」と聞いてきたけど、どっちにしろ結果は報告するんだ。なら一緒に見たほうが手っ取り早い。

自室で封筒を開けて中身を取り出すと、中には数枚の紙と丸い機械だけがあった。ナニコレ?紙を封筒と一緒に机の端に置いて、機械を真ん中に置いた。

 

「(押して起動なのかな? ポチッとな)」

 

ボタンを押すと、空中に映像が浮かび上がった。なぜに近未来のようなことが……。

 

『やぁ初めまして天堕くん! 私は『根津』。この雄英高校の校長を務めさせて貰っているものさ!』

 

ね、ネズミ!?そして校長……!?というか動物…異形型?いや、でも人としての面影がないような……。

 

『筆記試験は問題なし。実技試験ともに合格基準を満たしているよ』

 

「よしっ!!」

 

「ほっ……」

 

合格基準を満たしている。=合格は確定。とりあえずこれで安心はできる……。

 

『さて、実技試験での(ヴィラン)ポイントは31ポイント 。これだけでも合格。だけど、それだけじゃないんだ』

 

――え?

 

『見ていたのはもう一つ。そう、救助活動(レスキュー)なのさ! 雄英が見ていたもう一つの基礎能力、そしてその救助活動(レスキュー)ポイントだが、君はあの入試で現れた0ポイント仮想(ヴィラン)の足元で逃げ遅れてる少女を、救出し安全な場所に移動させただけにあらず、共に駆け出した少年を体を張って助けた!! その勇気ある行動に、救助活動(レスキュー)ポイントは40ポイント! 累計71ポイントで4位。合格さ! おめでとう!!』

 

救助活動(レスキュー)ポイント……確かにヒーローは救助活動(レスキュー)も大事。それ以前に先生が「ヒーローとは本来"奉仕活動"なんだよ」って言ってた。

 

『おいで! ここが君の、ヒーローアカデミアさ!』

 

その言葉とともに映像は終わった。

 

「やった…やったわねゆぅちゃん!!」

 

「…~~ッ! うん!!」

 

先生が抱き着いて来て、自分のことのように喜んでいた。私も嬉しい!

 

「時間もあれだから、今夜はお祝いで豪華にするわよ!!」

 

「その豪華夕飯を全て作るのは私だよね!?」

 

 

――◆――

 

 

時刻は遡り、雄英高校の薄暗い部屋にて、いくつもあるモニターに『実技試験』の映像が流れていた。そしてその映像を様々なコスチュームに身を包んだヒーロー達が見ていた。

映像の一つには、受験生の名前と成績が上位からズラリと並んでいた。

 

救助活動(レスキュー)ポイント0で1位とは、後半他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だな」

 

「対照的に(ヴィラン)ポイント0の救助活動(レスキュー)ポイント60での8位……」

 

「大型(ヴィラン)に立ち向かったのは過去にも居たけど、ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね!」

 

「しかし妙な奴だな……自身の攻撃の反動で莫大な負傷とは……まるで発現したての幼児だ」

 

『爆豪勝己』『緑谷出久』。2人の少年の対照的なポイントに、評価する。そんな話をしばらく続けた後、映像が切り替わる。映像に映ったのは『ガングニール』を纏っている天堕幻神が映し出された。

映し出されている場面は【正義を信じて、握り締めて】を歌いながら、『ガングニール』を駆使して仮想(ヴィラン)を倒す映像。

 

「変わった"個性"だよな。"個性"によるものなのか、鎧を具現化させて身に纏ってる。しかも歌うと来た」

 

「戦闘などはまだまだ未熟だ。だが、それを本人は自覚していると言った動きだな」

 

歌いながら、仮想(ヴィラン)を殴り蹴りで倒していく姿。だが、プロはその動きがまだぎこちなく、未熟であるというのを瞬時に見抜いていた。

 

「だが、ヒーローとしての精神は本物だ」

 

映像が切り替わり、先ほど別で映っていた緑谷出久と共に、巨大仮想(ヴィラン)へ向かっている姿が映りだした。

 

「あの二人、案外気が合いそうだな」

 

「えぇ。両方とも大型(ヴィラン)の足元にいる少女を救わんと駆け出していた。そして片方は真っすぐ少女の元へ駆け出し、もう片方は大型(ヴィラン)の真ん前へ飛んだ」

 

「それだけじゃねぇぜ! この二人跳躍と加速のタイミングが全く同じだったぜ! ほんとは知り合いとかって疑っちまうよ!」

 

「それに関して何ですが、出身中学は全くの別ですし、真反対にあります。接点はほとんど0ですよ」

 

天堕は少女の元へ、緑谷は巨大仮想(ヴィラン)の前に、全く同タイミングで加速と跳躍をやっていたのだ。今までの試験でこれほどまでに息の合った動きをしたものはいなかった。否、そもそも別の学校でありながら知り合いでない限り、それはないのだ。試験で同じ出身中学の生徒は、意図的に別々の会場にて実技を行う。だからこそ、こういったことは過去の記録にもないのだ。だが、その"ない"という記録を、この二人は『過去にも今にも、1度だけあるという結果にしたのだ』。

そして天堕は瓦礫に挟まっていた少女を救い、その場から離れようと急いで抱き上げて走り出す。そして少し離れた瞬間、緑谷が巨大仮想(ヴィラン)を一発で殴り壊した。

 

「これだけでも高評価。だが、彼女はそれだけでは終わらなかった」

 

天堕は少女を下ろし、今一度駆け出して、落下していっている緑谷を助けようと飛び上がり、ビルを踏み台にして跳躍して緑谷を抱きしめ、そのままもう一つのビルの窓に突っ込んだ。

 

「だが、焦りが出ていたのか、助け方は減点(マイナス)だな。いくら助けるためとはいえ、重傷者を抱きしめてそのままビルの窓に突っ込むのは」

 

「それだけじゃない。音声を聞けばわかるが、声が全くの別人と言っていいほどに、変わっている」

 

映像は再び変わり、ビル内に設置された監視カメラの映像へと変わった。そこで、音量を上げることで天堕の素の声が流れた。

 

『ちょ、ちょっとぉぉッ!?』

 

「さっきまで歌ってた声とは全く違う。声を高くしたとか、そういうレベルじゃない。全くの別人(・・・・・)としか言いようがないな」

 

「一見関連性がないようなだけど……"個性"によるなにかしらの応用でやっているのか? そもそもなんで歌っているんだ……?」

 

その後、試験は終了し、気絶した緑谷を天堕は横抱き(お姫様抱っこ)して、ビルから飛び降りた。

 

「流石に試験が終わった後だから減点(マイナス)はしないが、それでも個人的な意味では減点(マイナス)かな。いくら気絶していて、それしか方法はないとはいえ、あれほどの重傷者を抱えて、戦闘の際に使用していたブースターを使用、減速をせずにそのまま落下したのは、傷に響いてしまう」

 

「それでも助けようとしている意思は伝わるな。リカバリーガールに治癒をしてもらった後も案内されるという形で彼を医務室へ運んだんた。それに、それらも含めてこれから我々が育てていけばいいさ」

 

各々のヒーローたちが意見を言い合い、そして纏まったとばかりに静かになり、全員が白いネズミ、根津校長に視線を向けた。

 

「よし。みんなの意見も踏まえた上で、天堕幻神くんを合格する。いいね?」

 

根津校長の言葉に反論はいなかった。全員が満場一致で頷いたのだ。

 

「では次に……」

 

画面は次の審査対象者に切り替わり、議論を始めた。

 

 

 

 

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