この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!




動き迫りくる不穏な影

 

 

 

 

林間合宿3日目。

 

「補習組、動き止まってるぞ」

「オッス……!!」

「すいません……ちょっと…眠くて……」

「昨日の補習が……」

 

今日も地獄の"個性"伸ばしをしている中、相澤先生の叱咤と切島くんの微妙に気合が入っていない返事と共に他の補習組のヘトヘトな声が聞こえた。

チラッと見れば、補習組は横一列に並んでいて、それぞれフラフラになっていた。

 

「(南無三としか言えないな……)」

 

「麗日! 青山! お前らもだ。赤点こそ免れたがギリギリだったぞ。30点がラインだとして35点くらいだ」

 

「げっ!? ギリギリ……!」

 

「心外☆」

 

「気を抜くなよ、みんなもダラダラやるな」

 

お茶子ちゃんと青山くんを呼び止めて赤点回避をわかりやすく言っていた相澤先生は、今度は全体に向けて声を張り上げる。

 

「何をするにも原点(・・)を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何のために汗かいて、何のためにこうしてグチグチ言われるのか、それを常に頭に置いておけ」

 

「…………」

 

原点。

私はその言葉を聞いて思わず、纏っている『アガートラーム』から切り替え武装をするために『イガリマ』の『聖詠』を口ずさもうとした口を止めてしまった。

 

原点…今思えば、私は何を原点にヒーローを夢見ているんだっけ……『シンフォギア』も『マクロス』も、どっちも歌と戦いという点が繋がってる。

そして『シンフォギア』は元々は、アニメ【戦姫絶唱シンフォギア】に出てくる『ノイズ』という存在を倒すために作られた武装兵器のようなもの……この世界では、まさにヒーロー向けの能力(ちから)だ。

普通ならこれでヒーローを夢見るも当たり前だろう……けど…。

 

 

——ズキッ

 

 

「……ッ」

 

また頭痛だ。

収まって来たのにまた起き始めてる、イグナイトを使用したあの日*1からの現象?のようなもの。

最初は暴走の影響かと思ってた。

だって克服してからは頭痛も収まって来ていたから……でも今も起きている。でも深い理由は分からない。そもそもこの世界では"個性"という前世には存在しない特殊なDNA……因子という物があるから、病気とか身体の不調を意味するとは言えない……青山くんとかは"個性"を使えば腹痛で下痢を起こしたりするし、お茶子ちゃんも嗚咽が起こったりするから、私の頭痛も使いすぎれば起こるものなのだろうかって私は思ってる……。

 

「ねこねこねこ……それより皆! 今日の晩はねぇ……クラス対抗肝試しを決行するよ! しっかり訓練した後はしっかり楽しいことがある! ザ・アメとムチ!」

 

……肝、試し…?

イベントらしいこともやってくれるんだ……そう思いながら『アガートラーム』を纏ってる私はそのまま息を整えて、繊細なコントロールと体力・生命力のエネルギー消費量を意識した。

 

 

——Zeios igalima raizen tron(夜を引き裂く曙光のごとく)——

 

 

改めて『イガリマ』の『聖詠』を口ずさむ。

『アガートラーム』のギア、装甲や鎧が白銀に光だして、私を包み込む。

そしてその光は黄緑へと変わり、私はバトルスーツ以外のギアが全てはだけた。

 

肌にピッタリと張り付く水色と白を基調とするバトルスーツはその色を緑と白を基調に変えていく。

そしてそのスーツに繋がるように前側だけが黒緑と緑でそこ以外は白のスカートが履かれた。

両肩には左右合わせて4つの黒緑の装甲が装備され、両腕に緑と白のオペラグローブに指先は緑、手首は大きな緑のバングルが装備された。

両脚には白と黄緑のシマシマストッキング、外側に黒緑のバツ型の装甲が装備され、脚先には緑の刃のような靴が履かれた。

そして両耳に緑のヘッドセット、頭部には前部分にのみ尖った帽子の装甲が付けられて、左側にはバツ印が刻まれた。

 

『アガートラーム』から『イガリマ』に切り替え武装が終わった途端、口の中が鉄の味でいっぱいになっていく。

反射的に手で口を押えて片足を曲げて膝を着けてしまった。ゆっくりと手を口から離せば、口を抑えていた掌は吐血で汚れていた。

 

「(やっぱり、まだ切り替え武装はしんど——)」

 

 

——ズキッ!!

 

 

「——ッ!?」

 

瞬間、脳に今までとは比べ程にないほどの頭痛が襲ってきた。

そして吐血で汚れた手を見ている視界が、テレビの砂嵐のようなノイズがゆっくりと発生して、何か、記憶のような何かが微かに重なった(・・・・・・・・・・・・・・・・)

なんなの、今の……あんなの知らない。

前世の記憶にもない……全く知らない記憶。

でも同時に、胸の奥で……歌が、旋律が……——

 

「(——悲しい旋律が、流れた…?)」

 

 

——◆——

 

 

日も傾き空色がオレンジに変わった夕方。

今日はイベントがあるため先に湯で身体の汗を流し洗ってから、私たちは夕飯(本日は肉じゃが)の調理に取り掛かっていた。

 

「爆豪君包丁使うのウマ! 意外やわ……」

「意外って何だコラ! 包丁に上手い下手なんざねえだろ!!」

「出た、久々の才能マン」

「皆元気すぎ……」

 

それぞれの担当を務めて調理に取り掛かっている中、お茶子ちゃんが人参を切っている爆豪くんを見て驚いていた。

てかさらっと余計なこと言ったよね……。

 

「天堕~! こっちどうすればいい~?」

 

「あ、はいは~い今行きま~す!」

 

別の班に呼ばれ、私はそっちに助太刀に向かった。

 

 

——◆——

 

 

夜、施設から離れた場所。

 

「さて、腹もふくれた! 皿も洗った! お次は……」

 

夜食も終わり後片付けも一段落して、夏の定番イベントが行おうとしており、芦戸さんを始め、他補習組もテンションが上がっていた。

 

「肝を試す時間だ~!」

 

「「「「試すぜェ!!」」」」

 

「——その前に、大変心苦しいが」

 

相澤先生がそう言った瞬間、補習組の動きがピタリと止まった……止まってしまった。

 

「補習連中は、これから俺と授業だ」

 

「ウソだろッ!?」

 

顔面が崩壊してもはやギャグマンガみたいな顔+担任教師に思わずタメ口が出ちゃってるよ芦戸さん……そしてそんな芦戸さんと他男子4人の補習組は、気を取り戻して逃げ出そうとしたけど、相澤先生はそれよりも速く一瞬で補習組を捕縛した。

 

「すまんな、日中の訓練が思ったよりも疎かになっていたので、こっちを削る」

 

「うわあっ! 勘弁してくれェ!」

 

「「試めさせてくれェ!!」」

 

心からの叫びも虚しく、補習組は相澤先生に強制連行で引きずられて行き、そして森の奥へと消えて行ってしまった…アイツらは、良い奴らでしたよ。

 

「ゴホンッ! と! いう訳で脅かす側先攻はB組。A組は2人1組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いた御札があるから、各自それを持って帰ること!」

 

「闇の狂宴…」

 

「(また言ってる)」

 

先攻はB組で脅かす側。

既に指定されたルートの位置にそれぞれ配置についてもうスタンバっているらしい。

そして私らA組は2人1組で一緒にその森の指定されたルートを進んでいくと……。

 

「脅かす側は直接接触禁止で、"個性"を使った脅かしネタを披露してくるよ!」

 

「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」

 

「やめて下さい、汚い」

 

いくら肝試しでも失禁はダメでしょ。アウトでしょ。

 

「なるほど……! 競争させることでアイデアを推敲させ、その結果"個性"に更なる幅が生まれるというワケか……さすが雄英!!

 

「いくら何でも都合のいい解釈過ぎない?」

 

「真面目も一周回ってバカだよな」

 

尾白くんの呆れと峰田くんの真顔での返答に、私は思わず同意してしまった。

 

「さあ! クジ引きでパートナーを決めるよ!」

 

組はクジか。

誰になるんだろ……そしてピクシーボブが持ったクジを近くの人から引かせていって、みんなも順序良く引いていった。

私たちA組はB組と違って生徒が21人。

それでペアは2組で補習組が5人だから、今の数は16人……あれ、余りがない?

これ、A組も20人もしくは補習組が6人だった場合、絶対誰か1人は余って1人で行くことになってたんじゃない……ちょっとホッとしたわ……あ、すいません直ちにクジ引きます。

んで、クジを引いた結果……——

 

「よ、よろしくね天堕さん」

 

「う、うん……!」

 

ペアが緑谷くんとかあり得るのかよォ!!!?

昨晩の芦戸さんたちのせいもあって今日は必死に考えないよう意識して視界にも入れないようにしていたのに…!!!

ただでさえ今も目が合わせられないのに……!!

 

「ど、どうしたの? (もしかして、僕とペアだったの嫌だったのか!? なんか今日1日、目も合ってなかったし……)」

 

「な、なななななんでもない……!! (目が合わせられない! 心臓の鼓動が胸の歌を上回って聞こえるぅ~!!!)」

 

絶対終わった後あの2人処す!!絶対処す!!!

 

「み~ど~り~や~……!!」

 

「えっ、ッ!?」

 

すると峰田くんの声が聞こえて、そっちに視線を向ければ、紫の怪しいオーラを出しながら近寄ってくる峰田くんがいた。

 

「青山といい…お前らズリィよォ……オイラと変わってくれよォ…!!」

 

「み、峰田君!?」

 

「ヒッ!?」

 

性欲の権化がじわじわと来ている。

どうやら青山くんにも同じように追い詰めても拒否られて、同じように男女ペアである私たちの方に来たようだ。

そんな峰田くんを見た私は咄嗟に緑谷くんの背中に隠れて盾にするようにピッタリとくっついた。

 

「ちょ、あ、天堕さん!?」

 

「肝試しよりも今の峰田くんのほうが断然怖い! 怖すぎるって!!!」

 

「緑谷テメェ!!! なんっでお前だけそんな羨ましいことばっかりィ!!」

 

「峰田君やめたまえ! 緑谷君と天堕君が困っているだろう!!」

 

「(また背中に微かに柔らかいものががが——)」

 

峰田くんとペアだけは一生無理!!

 

 

各2ペア並びに出発する順番。

1組目 常闇、障子。

2組目 爆豪、轟。

3組目 耳郎、葉隠。

4組目 青山、八百万。

5組目 麗日、蛙吹。

6組目 尾白、峰田。

7組目 飯田、口田。

8組目 緑谷、天堕。

 

補習組。

芦戸、上鳴、瀬呂、切島、砂藤。

 

 

——12分後——

 

 

『『いやぁぁぁあああッ!!!』』

 

「んじゃ5組目! 麗日キティ! ケロケロキティ! ゴー!」

 

各組は順番に3分の間を開けてから森へ入っていく。ちなみに5組目のお茶子ちゃんと梅雨ちゃんペアが出発する前からずっと3組目の耳郎さんと葉隠さんの悲鳴がスタート地点であるここまで聞こえていた。

 

「"個性"ありの肝試し……どんだけヤバいの…!?」

 

「…もしかして天堕さん、こういうホラー系ダメなの?」

 

「ゲームとかテレビとかのならまだ大丈夫だけど…こういうのは………」

 

前世のホラゲーでも、有名なのとかはそれに合うすごい音楽とかもあってそれ調べでやってたりとか、ザ・ホラー系の音楽も聞いてたし……でもやっぱり実際に肝試しとかでこうやるのは無理だ。

下手したらまぁた声質が勝手に変換しまくる可能性もあるよこれェ……。

 

「……?」

 

だけど、不意に焦げ臭いものが鼻の中に入って匂ってきた。

 

「——あれは?」

 

緑谷くんがある方向を見て呟いた。

それに釣られて私たちも見れば、山の奥で青い光と共に黒煙が立ち昇っていた。

 

「……黒煙?」

 

「何か燃えているのか?」

 

「まさか山火事!?」

 

山火事…?

プッシーキャッツの私有地なのになんで山火事が?

 

「マンダレイ! すぐに連絡を……ッ!? な、何これ!? 後ろに引っ張られ……きゃあ!?」

 

「ピクシーボブ!?」

 

焦げ臭い匂いの正体であろう、遠目に見える黒煙に気をられていると、ピクシーボブの指示と共に、困惑の声を上げたのが聞こえた。

マンダレイの叫びと同時に咄嗟に振り返ればそこには——

 

「な、なんで……万全を期したはずじゃ……!」

 

 

「なんで……なんで(ヴィラン)がいるんだよォ!!!」

 

 

——頭部から血を流し気絶しているピクシーボブと、それを押さえつけている、武装した(ヴィラン)の男が2人もいた。

 

 

 

 

*1
第24話『抜剣(ばっけん)せし魔の(つるぎ)……』参考





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そろそろシンフォギアとマクロス以外の曲歌わせる?

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  • 主さんのお好きなようにしろよ
  • そんなことより深夜のラーメンが食べたい
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