この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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漆黒の黒から繋ぐ黄色、そして魔の色へ

 

 

 

 

「ピクシーボブ!!」

 

緑谷くんが叫びながら駆けだそうとしたが、虎さんに止められた。

USJ、保須、I・アイランドとこれまでの事件での(ヴィラン)を考えるに、あの2人だけとは考えられない。

万が一に備えていつでも歌えれるようにしておかないと……。

 

「——ご機嫌よろしゅう雄英高校!! 我ら(ヴィラン)連合開闢(かいびゃく)行動隊!!

 

開闢。

世界や国などの始まり、創生を意味する言葉……それを既視感のある服装をしているトカゲ、もしくはヤモリのような異形型の"個性"の男がそう言った。

いやそれ以前に、峰田くんの言う通り生徒にも合宿先を教えない程に万全を期したはずだ。

なのに何でここに(ヴィラン)が……。

 

「ねぇ、この子の頭潰しちゃおうかしらどうかしら!? ねぇどう思う?」

 

「させぬわ! このっ……!」

 

「待て待て早まるなマグ姉! 虎もだ、落ち着け!」

 

ピクシーボブの頭部をサングラスの男が四角く長い棒で抑えていて、それを虎さんが怒りに声を震わせて一歩踏み出したが、それよりも速く異形型が2人の間に入って静止させた。

 

「生殺与奪はすべて、ステインの仰る主張に沿うか否かだ!」

 

「ッ!? ステイン…!」

 

「奴にあてられた(・・・・・)連中か……!」

 

ステインって確か、ヒーロー殺しで緑谷くんと轟くんに飯田くんが職場体験中に遭遇した(ヴィラン)

 

「アァそう! 俺はそうお前、君だよメガネ君! 保須市にてステインの終焉を招いた人物……申し遅れた、俺は『スピナー』。彼の夢を紡ぐ者だ」

 

夢を紡ぐ者…?

そんなことを名乗ったスピナーという異形型は背負っていた物を取り出し、両手で構えた。

覆われていた布が落ち、姿を現したそれは、何種類もの刃物を束ねてできた悪趣味な大剣のようなものだった。

 

「何でもいいが貴様ら……! その倒れてる女、ピクシーボブはな、最近婚期を気にし始めててなぁ……女の幸せ掴もうって、いい歳して頑張ってたんだよ……そんな女の顔キズモノにして、男がへらへら語ってんじゃないよ……!」

 

「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」

 

虎さんが前に出て、怒りを露にしながら猫の手袋の指先から鋭い爪を出した。

同時にスピナーがこちらに向かって駆け出してくる。

 

「虎! 指示(・・)は出した! 他の生徒の安否はラグドールに任せよう! 私らはここで二人を抑える! みんな行って! 良い!? 決して戦闘はしないこと!! 委員長引率!!」

 

「承知いたしました! みんな、行こう!!」

 

マンダレイの指示を聞いて、私たちは飯田くんを先頭に施設へと足を向けだした。

だけど、隣にいた緑谷くんだけが動こうとしなかった。

 

「……飯田くん、先行ってて」

 

「緑谷君!? いったい何を言ってるんだ!?」

 

すると緑谷くんはマンダレイに叫び、マンダレイが振り返れば——

 

「——僕、知ってます(・・・・・)!!」

 

——意味深な発言をし、それを聞いたマンダレイは少し険しい顔をしながらも「お願い!」と叫んだ。

それを聞いた緑谷くんは迷うことなく、施設とは別の方向へ走り出した。

 

「緑谷く——…ッ!?」

 

「行っては駄目だ!」

 

私はすぐに緑谷くんを追いかけようとしたけど、そんな私の手首を飯田くんが強く握ってきて、止められた。

 

「でも、緑谷くんが1人で……ッ!」

 

私の言葉は続かなかった。

それは、私の腕を掴む飯田くんの手が微かに震えているのが分かったからだ。

私は小さい声で「わかった」と言い、追いかけるのをやめたら飯田くんはホッとして手を離してくれた。

 

「緑谷君は仕方がない。もうどこに行ったがわからないが、彼が理由もなくどこかに行くなんてあり得ない。俺たちは緑谷くんが無事に戻ってくることを信じて、先に施設に行こう!」

 

飯田くんの指示で、スタート地点に残っていた残りのメンバーは頷き、急ぎ施設に向かいだした。

 

「(……ごめん、飯田くん)」

 

私は心の中で謝罪をし、みんなが少し先に行ってから息を吸い——

 

 

——Granzizel bilfen gungnir zizzl(溢れはじめる秘めた熱情)——

 

 

——『黒いガングニール』の『聖詠』を口ずさんだ。『聖詠』がその耳に届いたのか、みんなが驚いた表情で振り返る。

そんな中、私の心臓はドクンッ!!と高鳴り、身体から黒紫の光が溢れて私を包み込んだ。

 

肌にピッタリと張り付く黒と赤を基調とするバトルスーツを身に纏い、両腕両脚には黒の機械装甲であるガントレットと黄色とは異なる形をしたグリーブが装着される。

頭部にはヘッドセットを装着し、首元には漆黒のマントが装着された。

 

『黒いガングニール』を纏い終えた私は、緑谷くんが向かった方向を見て、その脚を走らせた。

 

「天堕君ッ!!!」

 

後ろから飯田くんの叫び声が聞こえるけど振り返らない。ごめんと心の中で何度も謝り、私は緑谷くんを追いかけた。

 

 

——◆——

 

 

崖上、秘密基地。

 

『洸太聞いてた!? すぐ施設に戻って! 私ごめんね、知らないの! あなたがいつもどこへ行ってるか…ごめん洸太!! 救けに行けない! すぐ戻って!!』

 

今夜も1人、洸太は秘密基地に来ていた。

そして今現状起きている事態は、山火事とマンダレイからのテレパスを聞いて理解したが、洸太は逃げる以前に恐怖で立ち尽くしていた。

 

「見晴らしの良い所を探して来てみれば、どうも資料に無かった顔だ」

 

その理由は自身の目の前にローブと仮面で身体を、正体を隠している大男の(ヴィラン)がいるからだ。

 

「なァ、ところでセンスの良い帽子だなァ子供。俺のダセェマスクと交換してくれよ。新参は納期がどうとかって、こんなオモチャ付けられてんの」

 

洸太は恐怖の余りその場から逃げ出そうと背を向けて走り出した。

だが(ヴィラン)は"個性"を発動させ、ブーツの上からでもわかるほどに少し形が歪になり、そして次の瞬間には洸太の前に回り込んだ。

 

「景気づけに一杯やらせろよ」

 

(ヴィラン)は左腕をローブから出すとその腕は"個性"であろう。手首から前腕、上腕まで筋繊維で纏った。

それと同時に(ヴィラン)が付けていた仮面が落ち、その素顔が露になった。

洸太はその顔に見覚えがあり、すぐに誰なのかわかった。

 

「パパ…ママ…!」

 

洸太は涙を流し、亡き両親を呼ぶ。

そして(ヴィラン)の腕が洸太へ振り下ろされた。

しかしその拳が洸太に当たることはなく、緑色の稲妻が閃光のごとく駆けつけ、洸太を助け出した。

だが助け、庇った本人は攻撃を少し受けてしまい、持っていた携帯は壊れてしまった。

 

「…? お前は…リストにあったな」

 

「な、何で……!?」

 

「((ヴィラン)と接触させない為に来たのに…ピンポイントで(ヴィラン)がいるなんて…! くそっ…今ので携帯が壊れた! 皆にここを知らせずに来ちゃった…となると、前みたいに増援は望めない……)」

 

洸太を庇った緑谷は、(ヴィラン)を前に洸太を守るよう立つ。

 

「(1人だ、僕1人…! 1人で何とかこの(ヴィラン)を、洸太くんを守りつつ! やれるかどうか…——)」

 

緑谷は後ろにいる洸太を見る。

洸太は涙を流しながら怯えていた。

 

「(——…じゃない!! やるしかないんだ…今、僕1人でッ!!!)」

 

緑谷は【フルカウル】を身に纏いながら立ち上がる。

 

「だ、大丈夫だよ洸汰君……必ず、救けるから!

 

そして決意を固めた表情で、不器用なように笑った。

 

「必ず救けるって……? はぁははは……さすがヒーロー希望者って感じだな。どこにでも現れて正義面しやがる」

 

(ヴィラン)……『血狂い』の『マスキュラー』と呼ばれているその大男はせせら笑いをする。

 

「緑谷ってやつだろお前? ちょうどいいよ。お前は率先して殺しとけってお達しだ。じっくりいたぶってやっから……血を見せろォッ!!!

 

マスキュラ―はローブを脱ぎ捨て、次の瞬間には——

 

「ッ!?」

 

——瞬きも許さない程の一瞬で緑谷との距離を詰め、その握りしめた拳を振りかざした。

それに対し緑谷は間一髪、防御が間に合い、左腕をメインにその拳を受け止めた。

だがその勢い、強さは凄まじく、防御したその左腕からは砕けるような嫌な音が鳴り、そして壁へと殴り飛ばされた。

 

「あっいけねぇ…そうそう、知ってたら教えてくれよ……——」

 

 

「——爆豪と天堕ってガキはどこにいる?」

 

 

「ッ!!? (かっちゃんに天堕さん!?)」

 

「一応仕事はしなくちゃァ……よォ!!!」

 

マスキュラーは再び攻撃する。

緑谷はそれを回避しながら思考を動かしていた。

 

「(目的はかっちゃんに天堕さん…!? なんで——)」

 

「答えは『知らない』でいいか? いいな? よし、じゃあ……遊ぼう!」

 

マスキュラーが距離を詰め、緑谷の腹部に蹴りを入れようとした。だがそのわずかな瞬間に、その2人の間に1人の影が割り込み、漆黒のマントが割り込み盾となって防いだ。

 

「あ?」

 

「ッ!?」

 

だがそのマントもマスキュラーの攻撃を防ぎきれず、その影は吹き飛ばされ、緑谷は咄嗟に受け止めて地面を抉りながらも踏ん張った。

そして少し離れた位置でようやく止まり、緑谷はその人物を見た。

 

「はぁ…はぁ…なんで、天堕さん!!

 

「心配…だからだよ…!!」

 

その正体は『黒いガングニール』をその身に纏い駆けつけた天堕幻神だった。

 

 

——◆——

 

 

最後に緑谷くんが向かった方向と、急いでいたからしっかりとついていた足跡を辿って追いついたけど、まさかドンピシャで(ヴィラン)がいるなんて思わなんだ……しかも『黒いガングニール』のマントで防いでも勢いを殺せず吹き飛ばされるレベルなんて……。

 

「あ? 女でヒーローみてぇな格好……はっはぁ、なんてラッキーだ……まぁ一応確認だ。お前、天堕ってガキか?」

 

「ッ! だったらなんなの…?」

 

「その反応は『はい』だな? 面倒だがお前はなるべく無傷で攫えとのお達しでな」

 

「——は?」

 

攫う?私を?なんで…!?

 

「天堕さん! 洸太君を連れて逃げて! (ヴィラン)の狙いは君とかっちゃんだッ!!」

 

「ッ!? 私と爆豪くんを!?」

 

なんでよりにもよって私と爆豪くん!?

考えても考えてもわからない!いやそれ以前に!!

 

「1人になんてできないよ! それにあの(ヴィラン)、明らかにこれまでの(ヴィラン)たちとは格が違う!」

 

血を吐き、何度も倒れるほどに先生と実戦に近い模擬戦をしてきたからこそわかる。

先生やオールマイトには劣るけど……それでも、ヒーローランキング上位に食い込むほどの実力を、目の前の(ヴィラン)は持っている!!

それに緑谷くんの腕を見れば、左腕が歪になってる…きっと折れてる。

そんな状態で置いて行けるわけがない。

 

「私狙いならむしろそこを利用する。それに私は"個性"とはいえ装甲を纏ってるか——」

 

「いつまで話してんだァ?」

 

「——らッ!?」

 

(ヴィラン)が一瞬で距離を詰めてきて、私は咄嗟にマントを盾にして防いだけど、壁に吹き飛ばされて激突した。

 

「無傷って言われたけどよォ……『なるべく』って言ってたんだ。だから俺ァお前(天堕)を死なねぇ程度に、そしてお前(緑谷)は本気でいたぶってやるよォ!!」

 

「ぐぁっ!?」

 

私がグググッと身体を動かしている間に(ヴィラン)は緑谷くんの腹部に蹴りを入れてそのまま蹴り飛ばした。

 

「はっはは! 血だ! いいぜこれだよ! 楽しいや! 何だっけ? 必ず救けるんだろ!? 何で逃げるんだよ!? オッカシイぜお前!」

 

私はすぐに駆け出し、『黒いガングニール』のガントレットを『立花響』の『ガングニール』同様に変形させてパイルバンカーにさせる。

同じ『ガングニール』でも使用者によってその機能(のうりょく)が異なる『シンフォギア』。

でもそれを"個性"としてすべてのタイプを宿している私ならもしかしたらッて賭けに出た。

ゲームでの並行世界で、別世界の自分に自身の『シンフォギア』を託し纏わせる祖業。

それを参考に一か八かで"個性"伸ばしで試してみて偶然にも行けた仕様!

 

烈槍・ガングニール(マリア・カデンツァヴナ・イヴ)』のまま、

撃槍・ガングニール(立花 響)』の機能を使う!!

 

「こんのォ!!!」

 

そして私はそのガントレットを(ヴィラン)へ向けて放ったが、(ヴィラン)はそれを筋繊維で覆っている片腕で防がれた。パイルバンカーが起動しても、そこから吹き飛ぶこともなく、ビクともしていなかった。

 

「そんなっ!?」

 

「面白れぇ"個性"だな? だがなァ…俺の"個性"は『筋肉増強』。皮下に収まんねぇ程の筋繊維で底上げされる速さと力! そしてお前以上の装甲としても補える! 何が言いたいかって?」

 

(ヴィラン)はそのままもう片方の手で私の腕を掴んできた。

 

「自慢だよ!!!」

 

そしてそのまま地面に振りかぶるように叩きつけられた。

 

「カハッ!!」

 

「はっははぁ! あ?」

 

そこにもうボロボロの緑谷くんが戻って来て、右腕を構えていた。

 

「【 スマッシュ!!】」

 

そして緑谷くんはその拳を(ヴィラン)に放ったが、(ヴィラン)はそれを簡単に受け止めた。

 

「それがお前の"個性"か? 速さは悪くねぇが力が足りねぇ!!」

 

そのまま緑谷くんを弾き飛ばし、私は軽く蹴り飛ばされ、再び壁にぶつかりそのまま流れるように倒れた。

 

「さっきも言ったが俺の"個性"は『筋肉増強』だ。女は"個性"自体が違うが……お前の方は俺の完全な劣等型! それこそ俺にとっちゃ自慢だよ!」

 

(ヴィラン)はそのまま緑谷くんに向かって行き殴りかかる。緑谷くんは上に跳躍してそれを避けるも、(ヴィラン)の攻撃で跳ね上がった瓦礫にぶつかりバランスを崩してしまった。

 

「必ず救ける? んな"個性"でどうやって救けるんだ!? 実現不可能なキレイ事のたまってんじゃねぇぞ!! 自分に正直に生きようぜェ!!」

 

私は必死に立ち上がろうとしていたけど、洸太くんが小石を(ヴィラン)へ投げた。

そして小石は(ヴィラン)に当たり地面に落ちる。(ヴィラン)はそれに気づいて洸太くんへと振り向いた。

 

「『ウォーターホース』……パパも…ママも…そんな風にいたぶって殺したのか……!」

 

パパに、ママ……殺した…?

その犯人が、あの…(ヴィラン)…!?

 

「あ? マジかよヒーローの子どもかよ? 運命的じゃねぇの……ウォーターホース。この俺の左目を義眼にしたあの2人だ」

 

「お前のせいで…お前みたいな奴のせいで、いつもいつもこうなるんだ!!」

 

「ガキはすぐそうやって責任転嫁する。よくないぜ。俺だって別にこの眼は恨んでねぇぞ? 俺はやりたい(ころす)事やって、あの2人はそれを止めやがった。お互いやりてぇ事やった結果さ」

 

私の頭の中は真っ白になってた。

だけどすぐに怒りと、悲しみの共感(・・・・・・)が湧いてきた。

身体を起こして、息を大きく吸う。

視界を(ヴィラン)の奥に向ければ、緑谷くんも【フルカウル】を纏いながら立ち上がろうとしていた。

 

「悪いのは出来もしねぇ事をやりたがってた…——」

 

 

「——てめぇの、パパとママさ!!!」

 

 

私は洸太くんへ、緑谷くんは(ヴィラン)へと向かって飛んだ。

 

「っとなったらそう来るよな! ボロ雑巾共ォ!」

 

「悪いのはお前だろ!!」

 

そう叫んだ緑谷くんは、折れた左手を(ヴィラン)の筋繊維の隙間に通した。

 

「これで速さは関係ない!」

 

「(折れて使えねえ腕を筋繊維に絡めて……!) で何だ!? 力不足のその腕で殴るのか!?」

 

「ッ……幻神ァ!!

 

私は緑谷くんの声を聞き、洸太くんの傍に移動して抱き寄せてから、マントを伸ばして(ヴィラン)の足元や腰あたりを巻き付かせて拘束させた。

 

「なっ!? 女テメェッ!!」

 

「できるできないじゃないんだ!! ヒーローは——」

 

 

「——命を賭して! キレイ事実践するお仕事だァ!!!」

 

 

緑谷くんはそう叫びながら、腕を構える。

 

「(何だ? さっきまでと様子が……!?)」

 

「(『ワン・フォー・オール』100%…!!!)」

 

私はマントを拘束させたまま、すぐに洸太くんを守るように抱きしめた。

 

「【 スマァァァッシュッ!!!】」

 

——そして次の瞬間、まるで爆発でも起こったかのような衝撃波が発生し、私たちに襲い掛かって来た。

 

 

——◆——

 

 

緑谷の『OFA』100%による衝撃は凄まじく、崖自体が崩れてはいないが、辺り一帯は瓦礫なども落ちており、少しばかり崩れていた。

そして『黒いガングニール』を纏っていた幻神は、拘束していたマスキュラーが緑谷の攻撃で吹き飛ばされ、マントもそれによって千切れたが残った部分で洸太を自身ごとすぐに包み吹き飛ばされないよう耐えていた。

そしてマントを戻し、2人は緑谷達の状況を見れば、満身創痍の緑谷が息を荒くしながら立っていた。

 

「ッ! 天堕さん、怪我は!? 大丈夫!?」

 

「それは、こっちのセリフ…だよ……緑谷くんのほうがひどい状態だよ…!」

 

幻神もダメージを追っているとはいえ、『シンフォギア』を守っているから目立った傷は装甲の一部損傷や肌が出ている部分の切り傷などだ。

それに対し緑谷は左腕はマスキュラーの攻撃で折られ、右腕も自身の"個性"の反動により、服が一部破け、内出血で変色し腫れあがり、形が歪んでいる状態だった。

 

「僕なら大丈夫…とにかく施設に行こう……ここなら近——」

 

緑谷が喋っている中、突如瓦礫が崩れる音が鳴り響き、全員がその方向を見た瞬間、緑谷と幻神の顔は驚愕に染まっていた。

 

「……ウソだ」

 

そして緑谷は驚き、絶望が混ざった驚愕で声を漏らした。

 

「ウソだろ……100%だぞ?」

 

「【テレフォンパンチ】だ。しかしやるなァ! 緑谷…!!」

 

マスキュラーはゆっくりと3人の元へ歩み寄る。

それを見た緑谷は叫んだ。

 

「く、来るな!」

 

「やだよ、行くね俄然」

 

「な、何がしたいんだよお前たちは! (ヴィラン)連合は何が!!」

 

「知るかよ。俺ァただ暴れてェだけだし、羽伸ばして"個性"ぶっ放せれば何でも良いんだ……たださっきまでのは遊びだったが、もう終いだ。おまえ強ぇし、そっちの女も厄介だ。」

 

マスキュラーはそう言いながら筋繊維を身体から出し、ポケットからいくつもある義眼のうち1つを取り出す。

 

「だからこっからは……本気の義眼()

 

「「……!」」

 

次の瞬間、マスキュラーは筋繊維を一瞬で纏い飛び出す。同時に緑谷も【フルカウル】で纏い、幻神も洸汰を抱きかかえてその場から急いで離れた。

そして緑谷たちがまだ空中に飛び上がった時にはもうマスキュラーは、緑谷たちが先ほどまでいたところに既におり、足場を崩落させてしまうのではないかという程に地面をえぐっていた。

 

(さっきまでと比べ物にならない…! 速さも力も……遊びだったんだ…! 本当に、遊び感覚で殺そうとしてたんだ!!)

 

改めてマスキュラーの本気を知った緑谷。

だが緑谷たちがまだ空中にいる時にマスキュラーは振り返り、再び襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

幻神はマントで緑谷を掴むと同時に壁を蹴ってすぐにマスキュラーの攻撃方向から避けた。

だが、その攻撃が壁に当たり、その衝撃波が襲い掛かって3人はそのまま地面に落ちた。

 

「あっクソ、勢い余った……!」

 

マスキュラーはそのまま壁に腕がめり込み、抜け出せなくなっていた。

その間にも緑谷と幻神はマスキュラーを睨んでいた。

 

「……天堕さん、洸汰くんをお願い。僕がアイツを足止めするから、施設まで行って、誰か応援を…——」

 

「ごめん、出来ない」

 

「ぇ……?」

 

緑谷は自身を犠牲にし、幻神と洸汰を逃がそうとしていた。だがそれを幻神は即答で断り、立ち上がり、逆に幻神が緑谷と洸汰を守るように前に出た。

 

「(狙いは私で、アイツは『死なねぇ程度に』って言っていた。つまりは私は殺されない! それに、緑谷くんは私と違って満身創痍……なら!!)」

 

幻神は息を吸い、口ずさんだ。

 

 

——Balwisyall nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)——

 

 

『聖詠』。

同じ『ガングニール』でありながら、それを纏う使用者によってはデザインと一部機能を異ならせることを証明した『第三聖遺物・ガングニール』

ドクンッ!!!と心臓の高鳴りと共に幻神は黄色い光に包まれる。

 

肌にピッタリと張り付く黒と赤を基調とするバトルスーツは黄色と白を基調とするバトルスーツへと色を変え、両腕両脚には黒の機械装甲、ガントレットは形は変えず白色と黄色へと色を変え、脚部のグリーブは黒のヒール型でもあるその形を変えた。

白色と黄色のヒールではないグリーブへと変形させ、頭部のヘッドセットとブレードアンテナも色だけを変えていった。

そして首元の漆黒のマントは真っすぐ縦に線が引かれ、2本の分かれると漆黒の黒から真反対の白色へと変わり、足先まで伸びているマフラーへと変わって巻かれていった。

 

『黒いガングニール』から『ガングニール』へと切り替え武装を終えた幻神は、口角の片方から血をたらしながらもマスキュラーを睨んだ。

マスキュラーもまためり込んだ腕を引き抜くことができ、幻神を見た。

 

「あ? さっきと少し恰好変わったか女」

 

「あ、天堕さん…!」

 

「大丈夫……」

 

緑谷は幻神に「ダメだ」とばかりに名を呼ぶも、幻神は優しく微笑みながら緑谷を見た。

 

大丈夫…へいき、へっちゃらだから…!

 

幻神はそう言いながら、マスキュラーへと再び視線を戻し、胸元のギアペンダントへ手を伸ばした。

 

「行くよ…『ガングニール』ッ!!!」

 

 

 

イグナイトモジュール - 抜剣 - ッ!!!

 

DAINSLEIF(ダインスレイフ)

 

 

 

ガングニール(手を繋ぐ拳)』に『魔剣』を乗せて、少女たちは歌いだす。

 

 

 

 





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