この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!




混沌(カオス)が渦巻く夜の森に降り注ぐは……

 

 

 

 

神野区、BAR。

そこではコップを磨く黒霧とカウンターに並べてある写真を見る死柄木弔がいた。

 

「本当に彼らのみで大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫さ、それに俺の出る幕じゃない。アイツらだけで十分。つまりさ、ゲームが変わったんだ。今まではロールプレイング*1……装備は万端だけどレベルは1のままラスボスに挑んでた。だけどそれは間違い……本当はシミュレーションゲーム*2だったんだよ」

 

死柄木はUSJ事件での行いと、今回の合宿襲撃での行いで、何が違い、何処をどうすればいいのか、前回の失敗から今回は何をして成功させればいいのかを自分なりに模索し、その答えを導いていた。

 

「俺はプレイヤーであるべきで、使える駒を使って格上を切り崩していく。そのために、まず超人社会にひびを入れる(・・・・・・)(ヴィラン)連合開闢行動隊……奴らは成功と失敗、どちらでもいい。そこに(ヴィラン)が来たって事実でヒーローを脅かすという結果が出ればいい」

 

「捨て駒…というわけですか?」

 

「バカ言え! 俺がそんな薄情者に見えるか? 寄せ集めと違って、やつらの強さは本物だよ。向いている方向はバラバラだが頼れる仲間さ」

 

死柄木は1枚の写真を手に取った。

 

「ルールでがんじがらめの社会……抑圧されてんのはこっちだけじゃない…成功を願ってるよ」

 

死柄木はそう言いながら写真を置き、黒霧も別で用意していたジュースを死柄木の傍に置いた。

 

「まぁ気にする…というよりかは、気になる点で言えば、なんで先生があの女のガキにこだわるってところだな」

 

「女…天堕幻神ですね。我々が起こしたUSJ事件にて脳無を倒すほどの実力者。それほどの戦力と"個性"を用いているのなら先生も気にするはずですが……」

 

「それだけじゃねぇ気がする……」

 

「それだけじゃない?」

 

死柄木の呟きに黒霧は反応する。

死柄木は「あぁ」と言いながらおいてあるジュースのストローをいじりだした。

 

「だって脳無を殺せるほどの奴だぞ? 俺だったら今すぐにでも殺したほうがいいって思ってる」

 

「それは確かにそうですね」

 

「だが先生はどうだ? 「なるべく無傷で攫え」だぞ? "個性"目当てならまだいいが、それだったらボロボロにして気絶させてからでもいいはずだ。なんせラグドールにはそう命令したんだからな」

 

「確かに…そう考えると少し引っ掛かりますね……」

 

子供大人と言われていた死柄木だが、今の死柄木なりの考察に近い考えの説明を聞いた黒霧は、コップを元の位置に戻しながらも理解し始めていた。

 

「可能性の1つで言えば、俺が爆豪勝己を勧誘させるように、先生もまた"個性"目当てじゃねぇ……」

 

天堕幻神を勧誘させようとしている(・・・・・・・・・・・・・・・・)。ですか?」

 

「そういうことだ……だからこそ気になる。というか先生はロ〇コンじゃねぇか普通に?」

 

「ッ!? な、何を突然言い出すんですか死柄木弔!!」

 

死柄木の突然すぎる且つ予想外な発言に黒霧は思わず動揺を露にした。

 

「だってさ、今思えば先生の周りってドクターも含めて3人いて、そのうち2人はトガヒミコと同じ年齢だぜ?」

 

「……確かに、肉体的年齢で言えばまだ学生の年頃のようなものですね」

 

「しかもご主人様って言ってんだぞ?」

 

「……」

 

「……」

 

沈黙が2人を襲う。

いくら自分たちの強大な後ろ盾、ブレーンとはいえさすがに引いてしまう状態なのを改めて理解した。

先生と呼ばれている(ヴィラン)の他に、側近とも言える立場の者が3人、先生の元にいる。

1人は先生と同じぐらいの年相応の老人だが、他2人……マグニールとメドゥーゴルは犯罪者とはいえ、普通に見れば高校に通っている生徒と変わりないのだ。

 

「……先生がそっち方面での勧誘でないことを祈りましょう」

 

「どっちにしても絵面でアウトな気がするけどな」

 

それを最後に黒霧は「時間も近いので拘束具の準備をしてきます」といい、そそくさと 裏のほうへ向かっていき、残ったのは死柄木だけとなった。

 

「先生…あんたは何を狙ってる? 先生にとってあの女は……特別(・・)なのか?」

 

死柄木は体育祭の映像を写真として切り抜いた紙を、幻神が映った写真を手に取りそう呟いた。

 

 

——◆——

 

 

時刻は緑谷が洸汰を連れて施設に向かっているところまで遡る。

 

「(急いで施設に行かないと! 洸汰君を預けてから先生に天堕さんのことを伝えてかっちゃんを……!)」

 

「ッ! おい、あれ!!」

 

緑谷の背中に掴まっている洸汰が声を上げた。

洸汰はそのまま視線のほうに指差し、方向を示せばそこには広場へ向かっているイレイザーヘッドがいた。

 

「先生!!」

 

緑谷が大声でイレイザーヘッドを呼べば、本人はそれに気づき足を止めた。

 

「緑——…!」

 

「先生! 良かった!」

 

イレイザーヘッドは緑谷の名を呼びかけるところで止まった。止まってしまった。

それは緑谷の重傷すぎる姿を見たからだ。

 

「先生! よかった! 大変なんです……! 伝えなきゃいけないことがたくさんあって、けど、とりあえず僕、マンダレイに早く伝えないといけないことがあって……!」

 

緑谷は誰でもわかるほどに興奮した様子で、矢継ぎ早に話し続ける。

それはイレイザーヘッドが声をかけても、まったく耳に入っていないような状態だった。

 

「先生、洸汰君をお願いします! あと、僕たちが通った道の先に崖があって、そこで天堕さんが重傷で倒れています! 僕の状態だと連れてこれなくて、でもマンダレイにも伝えないといけないことがあって…! とにかく洸汰君を守ってください! それと天堕さんもお願いします!!」

 

緑谷は早口で説明しながら洸汰を降ろせば、すぐに走り去ろうとする。

 

「待て緑谷!!」

 

イレイザーヘッドはそれをよしとせず緑谷を大声で止めた。緑谷もそれに思わず足を止めてしまう。

 

「その怪我……またやりやがったな」

 

「あ、いやっ…でも……」

 

イレイザーヘッドが言いたいことを緑谷はわかっている。だが動かずにはいられないのが緑谷出久であり、それを担任である相澤消太もわかっている。

 

「だから……今から言うことを彼女(マンダレイ)にそのまま伝えろ」

 

 

——◆——

 

 

そして現在。

 

 

『A組B組総員——プロヒーロー『イレイザーヘッド』の名に於いて、戦闘を許可する!』

 

 

イレイザーヘッドの伝言を緑谷はマンダレイに伝え、それを受け取ったマンダレイは"個性"『テレパス』にて1年A組並びにB組、全生徒に伝えた。

それをしっかりとやりきったマンダレイは再びスピナーに攻撃を仕掛け、スピナーも防御する。

 

「伝令ありがと! でもすぐ戻って! その怪我、尋常じゃない!」

 

「いやっ…すいません! まだもう1つ伝えて下さい! (ヴィラン)の狙い、少なくともその2つ!」

 

「ッ!」

 

緑谷は【フルカウル】を纏い、肝試しのルートへ向かって走り出し、それを虎と交戦しているマグネが緑谷の発言に引っかかった。

 

「かっちゃんと天堕さんが狙われている!! テレパスお願いしますッ!!!」

 

「かっちゃん!? 天堕さんはともかくそっちは誰!? ちょっと…!?」

 

「(さっきの地鳴りのような音……! 派手なパワーバトルが出来るのは私らの中じゃ2人……情報漏らしたってことは……血狂いマスキュラーが倒された……!? あの小さな子にパワー負けしたってこと……!?) やだ……この子!!」

 

「しまっ——」

 

マグネは虎の攻撃を弾くと同時に一気に緑谷へ向かっていった。

 

「死柄木の言う通り、本ト殺しといたほうがイイ!!」

 

「手を出すなマグ姉!!」

 

「ヒャッ!?」

 

緑谷へと距離を詰めるマグネだが、そこをスピナーがその間にナイフを投げてマグネの進行を防いだ。

それによってマグネは脚を止めてしまい、緑谷へ気にせずまっすぐ森へ入っていった。

 

「ちょっと何やってんのスピナー!? 優先殺害リストにあった子よ!?」

 

「そりゃ死柄木個人の意思」

 

「だったら何しに来たのよあんダッ!?」

 

だがその隙を生み出してしまい、そこをマンダレイと虎は見逃さず一発イイのを入れて抑えた。

 

「やっとイイの入った……仕方ない。とりあえず伝えなくちゃ!」

 

マンダレイはすぐに緑谷から聞いた情報をすぐさまテレパスで伝達した。

 

(ヴィラン)の狙いが2つ判明……!! 狙いは『かっちゃん』と『天堕さん』!! 2人はなるべく戦闘を避けて!! 単独では動かないこと!! わかった!? かっちゃん! 天堕さん!!』

 

 

——◆——

 

 

「ハァ! ハァ! ハァ! ハァ!」

 

テレパスで爆豪と幻神が狙われていることがしっかり伝えられたことがわかった緑谷は、ボロボロの身体を走らせて、ルート上にいるであろう爆豪の元へ向かっていた。

だが次の瞬間、銃声が緑谷の耳に届いた。

 

「(何だ今の音、銃声……!? 皆どうなってる……!? かっちゃんたちは肝試しで2番スタートだった……動いていないならそう遠くにはいないハズ…——)」

 

それでも爆豪を最優先にして緑谷は【フルカウル】5%を維持して走り続けるが、突然目の前に黒い影が現れた。

急ぎ回避しようとするも折れた両腕の痛みで動きが一瞬止まってしまう。

そして黒い影は巨大な拳状となって襲い掛かった。

 

緑谷は迫りくる衝撃に耐える為目を閉じ身体を強張らせた。だが一向にそれが来ることはなく、また自身が何かに包まれているのに気付き、そっと瞼を開ける。そこ……土埃にまみれた障子がおり、障子の"個性"『複製腕』が緑谷を抱えていた。

 

「障子君……!?」

 

「その重傷…もはや動いていい身体じゃないな……友を救けたい一心か、呆れた奴だ……」

 

「障子君、今のって……」

 

「あぁ…」

 

2人が話している間も前方から激しい音が響き続ける。障子は草陰に隠れ、注意を払いながらも緑谷に今目の前で起きていることを説明し始めた。

 

(ヴィラン)に奇襲をかけられ俺が庇った……しかし、それが奴が必死で抑えていた"個性"のトリガーとなってしまった。ここを通りたいならまずコレをどうにかせねばならん」

 

緑谷は思い出す。

障子のペアは常闇踏陰ということに、そして彼の"個性"の能力を体育祭にて知った。

 

『俺の"個性"は闇が深い程攻撃力が増すが、どう猛になり制御が難しい(・・・・・・)

 

緑谷はすぐに黒い影に視線を向ける。

そしてその正体が"個性"『黒影(ダークシャドウ)』が暴走し、制御できずに飲み込まれつつある常闇だと判明した。

 

「そんな……常闇君!?」

 

「俺から……離れろ! 死ぬぞッ!!」

 

普段と異なる禍々しい姿の黒影(ダークシャドウ)それを必死で抑え込もうとしている常闇。

それを見た緑谷はすぐに障子に問いただす。

 

「どっ、どういうこと!? 障子君……!」

 

「静かに………マンダレイの『テレパス』で敵襲来・交戦禁止を受けすぐに警戒態勢をとった。直後、背後から木々を裂く音が迫り敵に襲われた……変幻自在の刃だ。俺は常闇を庇い、腕をかっ斬られつつも草陰に身を隠した」

 

「腕……!?」

 

「何、傷は浅くないが失ったわけじゃない。俺の『複製腕』は複製器官も複製が可能。斬られたのは複製の腕だ……しかし、それでも奴には堪えられなかったのか……抑えていた『黒影(こせい)』の暴走を始めてしまった」

 

緑谷は障子と小声で会話しながら常闇の方を見る。

禍々しさを増した黒影(ダークシャドウ)は巨大化し、常闇をも飲み込んで周囲の木々を次々となぎ倒していた。

 

「闇が深いと制御が利かない……こんなピーキーな"個性"だったのか……!」

 

「その上恐らく奴の義憤や悔恨等の感情が暴走を激化させている…奴も抑えようとしているが……」

 

ゆっくりと場所を移動していた障子は足元にある小枝を踏んでしまい、その小枝は折れることでパキッと音を立てる。

黒影(ダークシャドウ)はその音に反応して攻撃を振るう。

障子はなんとか躱すが、躱した場所が抉れており闇夜での黒影(ダークシャドウ)がいかに強大かを真に理解した。

 

「動くモノや音に反応し、無差別攻撃を繰出すだけのモンスターと化している」

 

「俺のことは…いい…! 他と合流し…他を救け出せ…!! 静まれっ……! 黒影(ダークシャドウ)……!!」

 

そして常闇自身も抑えようと必死だが非常に困難な状態が続いていた。

 

「光…火事か施設へ誘導すれば鎮められる……緑谷」

 

黒影(ダークシャドウ)との距離を一定に保ちながら障子が緑谷に語り掛ける。

 

「俺はどんな状況下であろうと苦しむ友を捨て置く人間になりたくはない。お前は幼馴染(ばくごう)が心配でその身体を押して来たのだろう? まだ動けるというのなら俺が黒影(ダークシャドウ)を引きつけ道を拓こう」

 

「待ってよ…! 施設も火事も距離がある。そんなの障子君が危な……ッ!?」

 

2人は小声で会話を続けるが、黒影(ダークシャドウ)もまた周囲を無差別に攻撃し続ける。

 

「わかってる。救けるという行為にはリスクが伴う、だからこそヒーローと呼ばれる。このまま俺と共に常闇を救けるか、爆豪のもとへ駆けつけるか……お前はどちらだ……? 緑谷……」

 

「……ごめん、障子君」

 

「…?」

 

どっちを選ぶにしても障子は責めることはないだろう。だが緑谷は、片方だけをという選択はない。

幻神の時は苦渋の決断故に洸汰を最優先にし、先に行くという決断をした。

だが今回は違った。

 

 

——◆——

 

 

同時刻。

 

「肉…肉め~ん……肉ゥ!!!」

 

爆豪と気を失っているB組生徒を背負っている轟が、(ヴィラン)連合の1人にしてサイコキラーと呼ばれる類の人間である(ヴィラン)

『ムーンフィッシュ』と交戦していた。

 

「チッ!」

 

「近づけねェ! クソ!!」

 

だがムーンフィッシュの"個性"『歯刃』が2人に襲い掛かり、轟の氷結にて防ぐという防戦一方状態になっていた。

 

「最大火力でブッ飛ばすしか……」

 

「ダメだ!」

 

「木ィ燃えても即行氷で覆えッ!!」

 

「爆発はこっちの視界も塞がれる! 仕留め切れなかったらどうなる!? 手数も距離も向こうに分があんだぞ!」

 

爆豪が反撃しようとするも、轟が制止する。

爆豪はそれでも行こうとするが轟の危惧は正論でもある。『爆破』によって木に燃え移らないようにと爆豪は言うも、その後の轟の言い分は正しい。

爆破後の煙幕は互いにとっても視界を塞いでしまい、ムーンフィッシュを仕留められなかった場合は、『歯刃』を自由に伸ばすムーンフィッシュに分がある。轟の氷結で全体を防御するようにも考えたが、その氷結すらも砕き貫くほどの強度。

完全に不利な状態であることがわかり、爆豪は何も言えずにただムーンフィッシュを睨むしかできなかった。

 

だがその時、離れた位置から大きな地鳴りが響き渡り出した。

 

「「!?」」

 

「あ……?」

 

それに気づいた2人も、ムーンフィッシュもその地鳴りが起こっている方向へ視線を向かせた。

 

「いた! 氷が見える、交戦中だ!」

 

そしてその地鳴りはどんどんと爆豪たちの元へ向かって行っていた。

その正体は木々をなぎ倒しながら迫ってくる『黒影(ダークシャドウ)』とその前に走り続ける障子と障子に抱えられている緑谷がいた。

 

「爆豪! 轟! どちらか頼む……光を!!!」

 

「肉ゥ!!」

 

ムーンフィッシュは自分の元に来たのが目の前にいる人物たちと同じ生徒であることを認識し、刃を伸ばす。だがその刃は届くことなく、ムーンフィッシュの声に反応し手を伸ばした黒影(ダークシャドウ)に地面へ叩き伏せた。爆豪と轟は驚愕の表情が顔に出たまま、黒影(ダークシャドウ)の口の中に苦しみだしている常闇がいるの確認したことで、目の前にいる巨大な影は常闇の黒影(ダークシャドウ)ということが分かった。

 

「障子と緑谷……それに常闇!?」

 

「早く光を!!! 常闇が暴走した!!!」

 

「見境なしか…よし炎を——」

 

「——待てアホ」

 

必死で走ってくる障子達の姿で状況を理解した轟が炎で黒影を鎮めようとするが、爆豪がそれを止めた。

 

「見てぇ……!」

 

爆豪は早急に静めなければこの場にいる全員が危ないということを理解し気づいている。

だが光が弱点であり、『爆破』もまた光であるがために相性が最悪で『黒影(ダークシャドウ)』本来の力を見ることができずにいた。

だからこそ今、目の前で暴走し本来の力を発揮している黒影(ダークシャドウ)を見たがっていた。

 

「肉ゥ…駄目だァァ…肉ゥ、にくめェ~ん…駄目だ駄目だ許せない……」

 

黒影(ダークシャドウ)に叩き伏せられたムーンフィッシュが刃を手代わりにゆっくりと立ち上がる。

 

「その子達の断面を見るのは僕だァ…横取りするなァァァアアア!!!」

 

ムーンフィッシュは黒影(ダークシャドウ)へ刃を突き立てようと伸ばした。それに気づいた黒影(ダークシャドウ)もまた、その巨大な手をムーンフィッシュへ叩きつけるように伸ばした——

 

 

 

 

 

——Rei shen shou jing rei zizzl(鏡に映る、光も闇も何もかも)——

 

 

 

 

 

「「「ッ!?」」」

 

——だがそれは唐突に、突然に全体へ響き渡った。

 

それは『聖詠』。

その場にいる全員の耳に届き、常闇以外の全員が目を見開く。

次の瞬間、黒影(ダークシャドウ)とムーンフィッシュの間に大きな紫の閃光が降り注ぎ、迫る刃と黒影(ダークシャドウ)の手が互いに届くことなくその光に砕かれた。

そしてそのまま地面に強く直撃し、激しい衝撃と共に土煙が立ち昇る。

 

「ひゃん!」

 

「うぁ……!」

 

そしてその光によって暴走していた『黒影(ダークシャドウ)』は一瞬にして大人しくなり、そのまま本体である常闇の中へ引っ込んでいった。

 

「すまん、助かった…!」

 

「いや、俺らじゃねぇ…光の何かが降って来て、お前はそれで収まった」

 

「別の…?」

 

全員が土煙で見えていないが降り注いだ場所へ再び視線を向ける。そして土煙が晴れる……。

 

「なっ!?」

 

「あれって…だけどあの姿は初めて見るぞ」

 

「いいところだったってのに……いやテメェ、まだ隠し玉があったんか…歌女ァ!!

 

肌にピッタリと張り付く紫と白を基調とするバトルスーツを身に纏い、両脚には紫の厳つい機械装甲を装着し、頭部の前面には獣の牙の様なバイザーが装着され、後頭部には円盤の装置が装着されている。

両腕にはそれぞれ一本ずつの黒色の細長く先端が鏡のようなものが付けられている布が伸びている。

 

「なんでここに…あ、天堕さん……!?」

 

——神獣鏡(シェンショウジン)を纏う幻神が立っていた。

そして幻神はゆっくりと瞼を開く。

露になった瞳は左目は通常の『つつじ色』だが右目は吸い込まれるような『黄金色』に変異していた。

だがそのどちらとも虚ろな目に、生気を感じさせない死んだ目になっていた。

 

ついに少女すら積極的に使ってこなかった『シンフォギア』が——

 

 

出久は…『(■■■)』が守る……

 

 

——【最弱にして最凶のシンフォギア】が今、宿られしその能力(せんりつ)を奏で披露する。

 

 

 

 

*1
現場や疑似的な場面を想定して、自分の役割を演じることでスキルを身に付けるゲーム

*2
現実のさまざまな出来事や体験を疑似体験できるゲーム






 『神獣鏡(シェンショウジン)』 またの名を  聖遺物 殺し】





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