この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!

UA100,000突破ありがとうございます!!



歪鏡に映る光と闇に秘められし凶器

 

 

 

 

神獣鏡(シェンショウジン)

『シンフォギア』の中では最も低スペックであり最弱と言われているギア。

だが最弱だが、同時に最凶と言われているギアでもある。

 

それが存在した世界。

その世界に住まう陽だまりの少女(小日向未来)は、太陽の少女(立花響)への並々ならぬ愛もあってそれを纏っていた。

それが友愛なのか親愛なのかは本人しか判らない。

 

だが今はその少女らが持っていた『シンフォギア(ちから)』を1人の少女の因子として宿り存在している。

そしてその少女は1人の少年に未だ無自覚なものの好意を寄せていた。

 

陽だまりは太陽あってこそ成り立つもの。

 

少年は少女を薄々と陽だまりのように感じていた。

少女もまた少年のことを太陽のように感じ、意識していた。少女は感情が高ぶればその使用者の声帯、性格に近い状態になることがある。

そして並々ならぬ愛(シェンショウジン)を纏った今、少女の好意は増大し……その矛先は——

 

——出久は…『(■■■)』が……守る

 

——『緑谷出久』という太陽に向けられた。

幻神は『神獣鏡(シェンショウジン)』を纏い、イグナイトでないにも関わらずその声質、声帯は『小日向未来』へと変わっている。

自身の背後にいる、障子に背負われている状態の緑谷をチラッと横目で見てからそう呟いた。

 

そして脚部に装着されている厳つい機械装甲が、戦闘を開始すると言わんばかりにガシャッ!と機械音を立てながら一部を展開する。

地に着いていた脚が地面から離れる。

否、その場で浮遊を行う。

さら右腕を横に伸ばし掌を開けば、そこから【扇子】を印象付けるアームドギアを生み出し掴み構える。最後には獣の牙の様なバイザーが、ちょうど目隠しをするかのように目元で閉ざされ、牙の隙間から赤紫の光を漏らした。

 

「肉…肉ゥ!!!」

 

そしてムーンフィッシュは幻神に向けられた戦闘意志に気づき、自身の"個性"『歯刃』を幻神目掛けて伸ばした。

 

「くっ!!」

 

それにいち早く反応した轟は氷結を出し刃を防いだ。

 

「天堕! そいつは…——いない!?」

 

轟は天堕を見るも、既に幻神はいなかった。

 

「肉……にっ——!?」

 

次の瞬間、ムーンフィッシュは既に真横に移動していた幻神にアームドギアで横腹を叩かれ、吹き飛ばされる。だがムーンフィッシュは"個性"を駆使して刃の一部を足代わりにし、残りの刃を幻神に向けて伸ばす。それに対し幻神は『神獣鏡(シェンショウジン)』の機能で浮遊し回避した。

 

「肉ゥ!!!」

 

ムーンフィッシュはそれでもなお刃を伸ばしていった。幻神もまた回避ばかりではない。

アームドギアとは別に4つの円盤をビットのように出し、その中心から紫のエネルギーをムーンフィッシュへ向けて乱射していった。

刃を足に跳躍しながら動くムーンフィッシュと機能の1つ【浮遊】を駆使して飛行する幻神。

そしてムーンフィッシュの刃は幻神に届き、その身体に命中させる。

だがその刃が貫くことなく、金属音と共に火花を散りながら弾いた。

 

「肉…肉めぇん…!!!」

 

ムーンフィッシュはさらに多くの『歯刃』を突き立てる。それに対し幻神は空中駆け巡りながら避けていき、『神獣鏡(シェンショウジン)』を駆使していった。

そしてアームドギアを構え、その先端にエネルギーを集中させることで大きなレーザーのように放った。

 

「ヴぁ…!?」

 

そのエネルギーはムーンフィッシュに命中し、ムーンフィッシュは地面へ落下した。

 

「に、くぅ……(なん、で…"個性"が、僕の"個性(・・)"が弱くなってる(・・・・・・・)……) なん、でぇ~…!!」

 

ムーンフィッシュは自身の"個性"に起こる違和感…弱体化という違和感を感じていた。

ムーンフィッシュは立ち上がろうとするも、その直上から『神獣鏡(シェンショウジン)』の輝きが流れ星のごとく降り注ぐ。

 

「うぁぁああ!!!」

 

ムーンフィッシュは降り注ぐ輝きの僅かな隙間を狙い、刃を一点にして伸ばした。

その刃は見事に幻神の肩に命中し、肩に切り傷が出来る。それによって輝きは消えてしまい、幻神は地面に激突した。

だが幻神は傷が出来ようとグググッと身体を動かし、紫の稲妻を漏らしながら立ち上がる。

 

出久は…『(■■■)』が……『(■■■)』、が…まも……守、る……

 

そんな幻神はまるで壊れた音声のごとく、ただ1つの目標、動く原動力を言葉にしてブツブツと拭いていた。それは『緑谷出久という太陽を守る』ということ。『神獣鏡(シェンショウジン)』…元となる人物の並々ならぬ愛と天堕幻神が緑谷へ向ける好意が重なることで、今の幻神でも幻神(?)でもない、重すぎる愛を原動力に動く幻神が出来ていたのだ。

英雄を夢に、自称英雄と語り、その天才と発明は本物の博士が結論付けた大きな力。

 

 

【 愛 】

 

 

出久は『(■■■)』が…守るのォ!!!!

 

幻神の叫びに呼応するかのように『神獣鏡(シェンショウジン)』は円盤型のビットを生み出し、さらにアームドギアを扇子のように開き、全てが同時に輝きをムーンフィッシュへと放った。

 

- 閃光 -

 

ムーンフィッシュは『歯刃』を使い- 閃光 -を避けていく。

そしてムーンフィッシュと幻神、他緑谷達の立ち位置は偶然にもいい位置になった。

幻神が真ん中でその目の前にはムーンフィッシュ、そして幻神の背後には緑谷たち全員がいる状態。

 

幻神はそれがわかっているのか、アームドギアを即座にしまい両脚をそろえた。

すると脚部の厳つい機械装甲の上部先端が両方とも前に倒れ、円盤のようにミラーパネルが伸び、幻神の頭部上でドッキングした。

同時に両腕に伸びていたケーブルが上部に接続される。その形まるで、中央部分がない輪っかの鏡のようになっていた。

幻神は両手を左右に伸ばすと、輪っかは紫の輝きを点滅のごとく発生し、その輝きを充填し始めた。

 

そして始まる……——

 

♪ 閃光…始マル世界 漆黒…終ワル世界 ♫

 

【無垢にして苛烈・魔を退ける輝く力の本流】

その秘められた旋律(ちから)が。

 

 

♪【歪鏡・シェンショウジン】♫

 

 

♪ 殲滅…帰ル場所ヲ 陽ダマル場所ヲ ♫

 

「肉ぅ…!!!」

 

ムーンフィッシュは自身の歯を全て伸ばしはじめ、顔を大きく振るうように後ろに向ける。

 

♪ 流星…アノ日は遠ク 追憶…全テガ遠ク ♫

 

「轟! 氷結を!! 衝撃を防ぐんだ!」

 

「あぁ!!」

 

幻神の後方にいる緑谷たちも障子が轟に伝え、轟はすぐに氷結を出し自分たちが衝撃で巻き込まれないよう出そうとした。

 

♪ 返シテ…返シテ… 残響ガ温モル歌 ♫

 

- 流星 -

 

だが一歩速く、幻神は充填した輝きを……- 流星 -をムーンフィッシュ目掛けて解き放った。

 

「肉ゥ!!!!」

 

同時にムーンフィッシュもすべての歯を刃にし幻神へと一直線に突き立てた。

- 流星 -と『歯刃』が激しくぶつかり合う。

そして- 流星 -はぶつかり合った勢いで、一部はそのままムーンフィッシュの後方の森へ飛んで行き、地面や木に命中しなぎ倒して爆破もし、そのまま共に炎上していった。

 

♪ 指をすり抜ける キミの左手 ♫

♪ 私だってキミを 守りたいんだ…! ♫

 

「うぅぅうぅ……!!!」

 

ムーンフィッシュはもがきながらも刃を止めない。

折られようとそこから新しく伸び、- 流星 -を押し返し、そのまま貫こうとしている。

 

♪ あの懐かしのメモリア ♫

♪ 二人を紡ぐメロディーを ♫

♪ 過去も今日も…そう、そして未来も! ♫

 

「ッ!? な、なんで…!?」

 

だがムーンフィッシュは驚愕、絶句と言えるような事態に気づいた。それは自身の"個性"『歯刃』が押され始めているだけではない。

ゆっくりと1本1本が分解されているからだ(・・・・・・・・・・)

 

♪ 私は絶対譲らない もう遠くには行かせない ♫

♪ こんなに好きだよ ねえ…大好きだよ ♫

 

 

7つめの『シンフォギア』その名は神獣鏡(シェンショウジン)

『シンフォギア』の中では最も低スペックであり最弱と言われているギアだが、同時に最凶と言われているギアでもある。

幻神はそんな『神獣鏡(シェンショウジン)』を扱えはするが、雄英…ましてやクラスメイトや教師たちの目の前では使用してこなかった。

それは原作の『神獣鏡(シェンショウジン)』にて備えられていた能力(ちから)にあった。

 

【聖遺物の力を分解する能力(ちから)

 

聖遺物でありながら、同じ聖遺物を分解させて消滅させることができる能力(ちから)

それを、その世界に存在した人々はこういった。

 

【聖遺物殺し】

 

『神殺し』という異名を付けられた『ガングニール』でさえも消滅させることができる。

まさに【無垢にして苛烈・魔を退ける輝く力の本流】

 

だが忘れてはいけない。

それは別の世界であり、兵器として改良された世界。だが現世界は聖遺物を兵器としていない。ましてやまったく別の、かつては"異能"、現代では"個性"と呼ばれし超人世界だ。

その世界は時に、神話や童話などに存在した者たちの能力(ちから)に近い、もしくはそれがモデルになっている"個性"も存在する。

 

演習試験時、幻神(?)が使用した『ダウルダブラ・ファウストローブ』も*1、原作ではその能力(ちから)を使うために【思い出の償却】という、自身の思い出・記憶をエネルギーに変えることで行った。

だが幻神(?)の場合はその機能がなく、代わりとして置き換えられたのが【生命力単体の消耗】だった。体力をエネルギーにし、なくなれば補うように生命力を使用するのが通常の幻神だが、『ダウルダブラ』は体力を完全無視し、そのすべての能力(ちから)を生命力だけをエネルギーにしている。

つまりは、元の世界をモデルに今の世界に理を合わせるように兵器としてではなく、"個性"として書き換えられている。

聖遺物ではなく"個性"として『シンフォギア(ファウストローブ)』は存在している。

 

 

——では【聖遺物殺し】が聖遺物としてではなく、"個性"として存在しているとしたらどうなる?

 

 

♪ あの忘却のメモリア ♫

♪ ぐしゃぐしゃに笑って泣いた日 ♫

 

幻神の歌に呼応し、合わせてるように- 流星 -はその輝きを増大させていく。

増大すると共に勢いもまた大きく増していき、次々とムーンフィッシュの『歯刃』を分解していきながら押し始めた。

ムーンフィッシュも負けないとばかりに地面を抉りながらも耐えて『歯刃』を伸ばし続ける。

 

♪ 強く握った手はあったかく…あったかく ♫

 

だがついにというべきか、『歯刃』の発動条件であるムーンフィッシュ自身の歯そのものが、根元までのすべてが綺麗に分解された。

 

「あぁ…アァァァアアアアアッ!!!!」

 

そして- 流星 -の輝きに飲み込まれた。

 

♪ 私は絶対許さない こんな自分を許せない ♫

 

それでも- 流星 -は止まることなく、ムーンフィッシュごとそのまま森を次々に貫いて奥へ奥へと飛んで行く。

 

♪ だから戦うの そう…戦うの ♫

 

そして歌が終わると- 流星 -も徐々に勢いを無くし消滅していった。

 

「「「……ッ」」」

 

緑谷たちの目の前に起きている現象。

神獣鏡(シェンショウジン)』を纏い、- 流星 - を持ってムーンフィッシュを倒した幻神の姿。

だがその姿はどこか狂気的なものを薄っすらと感じさせるような雰囲気を漏らしていた。

自分たちが今まで見て来た装甲…鎧とは違う。

まるで最強の文字が、凶器に使われる文字を合わせて【最凶】と書かせるような雰囲気だった。

そして奥の森も- 流星 -が貫いていった跡が残っており、その跡の部分には木々や地面に微かに炎が燃え上がっていた。

 

やがて幻神は対象を排除できたのが分かったのか、『神獣鏡(シェンショウジン)』の展開していたミラーパネルを閉じ、脚部の厳つい装甲を元に戻す。

そしてゆっくりと緑谷たちのほうへ振り向いた。

 

…いず、く……

 

そのままブツブツと好意を寄せる少年の名を呟き続け、ゆっくりと緑谷出久へその手を伸ばしながら歩み寄ろうとしていた。

幻神の視点ではバイザー越しに、ボロボロの状態の緑谷出久の顔が拡大されて映し出されていた。

だが同時に幻神の身体には紫の稲妻が徐々に漏れ出す。

 

「おい、あれはどっちだ? 常闇のように暴走してんのか? それとも自分の意思なのか?」

 

「ンなこと知るか! どっちにしても攻撃してきたらぶっ飛ばす!」

 

「爆豪の言い分はあれだが確かにそうだ。俺みたいに光で収まるといった弱点が天堕にはあるかどうかわからない以上は……」

 

明らかに様子がおかしな幻神に思わず爆豪、轟、常闇は身構える。

だが先に倒れたのは幻神だった。

身体をそのまま前に倒し、地面に受け身もせずに倒れると同時にその身に纏う『神獣鏡(シェンショウジン)』も解けてしまい、元のボロボロな身体と血が染みついている私服に戻った。

障子はソッと幻神の傍に近づき、首元に指を伸ばす。

 

「……気絶している」

 

「きっと連続武装のし過ぎとかが重なって限界が来たんだ。天堕さんはさっきのとは別で僕と一緒に別の(ヴィラン)とも戦ってる。その時も武装を切り替えてさらに何か大きな強化技もやってた。とんでもない量のエネルギーを消耗しているはずだから、それで……」

 

「ようは電池切れみたいな感じだな?」

 

「うん」

 

緑谷はご自慢の分析を使い、幻神の気絶している理由を皆に説明した。

そしてそのまま言葉を繋ぎ、自分が知っていることを話し始めた。

 

「とにかく、 (ヴィラン)の目的が判明しているのはかっちゃんと天堕さんだ」

 

「爆豪と天堕を? 命を狙われているのか!? なぜ!?」

 

「正確には拉致だと思う。僕と天堕さんで相手した(ヴィラン)は、天堕さんに「なるべく傷つけずに攫え」って言ってたんだ」

 

「どっちにしても狙ってんのに変わりねぇってことだろ? ならこれからどうする?」

 

「ブラドキング、相澤先生のプロ2名がいる施設が最も安全だから施設に向ったほうがいいと思う。ただ広場はプッシーキャッツがまだ交戦中なはず。道なりに戻るのは(ヴィラン)の目につくしタイムロスになるからまっすぐ森を突っ切るのがいいと思う」

 

緑谷の説明に常闇は驚くも、緑谷はすぐに修正しそのまま話を進め、自分たちがやるべきことを伝えた。

 

(ヴィラン)の数わかんねぇぞ? 突然出くわす可能性もある」

 

「障子君の索敵能力がある。そして轟君の氷結に、常闇君さえいいなら制御手段を備えた無敵の『黒影(ダークシャドウ)』! このメンツなら正直、オールマイトだって怖くないんじゃないかな!」

 

「なんだこいつら!?」

 

「お前中央歩け」

 

「俺を守るんじゃねぇクソども!!!」

 

それぞれが爆豪を真ん中にするように、障子と抱えられている緑谷が先頭。

轟がその隣、後方には常闇が着くことになった。

 

「常闇、俺はコイツ背負ってるし障子も緑谷を背負ってる。爆豪は狙われてるからお前が天堕を運んでくれねぇか」

 

「心得た」

 

轟に言われ、常闇は幻神を"個性"を使わず自身の身体で抱き上げた。

 

「よし、行くぞ!」

 

「無視すんなコラァ!!」

 

「ちゃんとついて来いよ」

 

「命令すんな!! ……ケッ!!」

 

そして5人は気絶している2人を連れてその脚を施設へ向けて歩かせた。

 

 

——◆——

 

 

同時刻、肝試しルート。

そこに麗日と蛙吹の2人がおり、そこは幸いにも毒ガスも火災も及んでいない場所だった。

だが油断は許されない。

なぜなら現在2人は、制服を着た同い年かどうかは不明だが歳の近い女の(ヴィラン)…『渡我被身子(トガヒミコ)』に襲われていたからだ。

 

「お茶子ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫! 掠っただけ!」

 

不意を突かれて麗日は腕を切られたが、その傷口は浅かった。

蛙吹が心配するが、麗日は血の滲んだ上腕を押さえて「大丈夫」答えた。

そして傷を付けた本人はというと、ナイフに着いた血を見ていた。

 

「う~ん…浅い、少ない…」

 

「急に切りかかって来るなんて酷いじゃない。何なのあなた!」

 

「トガです! 2人ともカァイイねぇ~麗日さんと蛙吹さん」

 

手に持つナイフを2人に向け、彼女たちの名前を呼びつつトガはご丁寧にも自己紹介を行った。

それを聞いた2人はさらに警戒する。

 

「名前バレとる…」

 

「体育祭かしら…何にせよ情報は割れてるってことね」

 

体育祭で全国公開されている自身たちの"個性"。

無論それを見れば(ヴィラン)もまた雄英生徒の"個性"を把握することは可能。

だからこそ体育祭でバレていることを蛙吹はすぐに理解した。

 

「血が少ないとダメです」

 

トガヒミコは背面に装備してある、2つで1つのようなダイビングボトル。

そのボトルとチューブで繋がっている両肩に装備されている注射針を1本取り出した。

 

「普段は切り口からチウチウとその…吸い出しちゃうのですが……この機械は刺すだけでチウチウするそうで、お仕事が大変捗るとのことでした」

 

注射針から針が伸び、片手にナイフともう片方には注射針という凶器の武器を構えるトガヒミコ。

 

「だから……刺すね

 

「来たぁ!」

 

「お茶子ちゃん」

 

トガヒミコは2人に向かって駆け出す。

そして蛙吹もすぐに自身のベロを麗日に巻き付かせて、後方へと投げた。

 

「施設へ走って。戦闘許可は(ヴィラン)を倒せ』じゃなくて『身を守れ』ってこと。相澤先生はそういう人よ」

 

「梅雨ちゃんも!」

 

「もちろん、私も…ッ!」

 

冷静に考える蛙吹はイレイザーヘッドの考えも即理解し、撤退を選ぶ。

そしてそれを聞いた麗日はすぐに蛙吹へ手を伸ばし、蛙吹も続いて撤退しようとするがそれよりも速くトガヒミコが接近し、蛙吹の舌にナイフで切りかかり、そして切られた。

だが幸にも舌が斬り落とされることはなかった。

それでもナイフは深くまで入ってしまい、舌から血が流れ出る。

 

「梅雨ちゃん…梅雨ちゃん…? 梅雨ちゃんっ! カァイイ呼び方。私もそう呼ぶね!」

 

「やめて。そう呼んで欲しいのは、お友達になりたい人だけなの」

 

蛙吹もどうにかして撤退しようと跳躍するも、トガヒミコは注射針を投げ、蛙吹の束ねている髪ごと木に打ち付け、彼女を捕えて動けなくした。

 

「や~! じゃあ私もお友達ね! やったァ!」

 

「梅雨ちゃんッ!!」

 

麗日は着地後すぐに蛙吹を助け出そうと駆け出す。

だがトガヒミコは気にせず蛙吹に密着し、顔を赤めながら口角を上げていた。

 

「血ィ出てるねぇ、お友達の梅雨ちゃん! カァイイねェ! 血って私大好きだよ」

 

「離れてッ!」

 

麗日はそのまま接近し、それに気づいたトガヒミコは蛙吹から離れてすぐに麗日へナイフを突き立てる。だがそのナイフを麗日は躱した。

 

「(ナイフ相手には、片足軸回転で相手の直線上から消えて、手首と首根っこを掴み! おもっくそ引き押す!!)」

 

「あら?」

 

「(職場体験で教わった近接格闘術……ガンヘッド(G)マーシャル(M)アーツ(A)!!)」

 

麗日は職場体験先であるプロの武闘派ヒーロー『ガンへッド』に直々に教わった近接格闘術を記憶通りに、練習通りに行い、それは見事トガヒミコを抑えることに成功した。

 

「凄いわ、お茶子ちゃん…!」

 

「梅雨ちゃん! ベロで拘束出来る!? 痛い!?」

 

「ベロは少し待って」

 

「お茶子ちゃん…あなたも素敵。私と同じ匂いがする」

 

「え?」

 

取り押さえたトガヒミコは突然、麗日に謎の話をし始めた。

 

「好きな人がいますよね? 分かるんです。乙女だもん」

 

「(何、この人…!?)」

 

麗日はトガヒミコの言葉に動揺し、その動揺は表情に出てしまっていた。

 

「好きな人と同じになりたいよね。当然だよね。同じ物を身に付けちゃったりしちゃうよね。あなたの好みはどんな人? 私はボロボロで血の香りがする人大好きです。だから最後はいつも切り刻むの。ねぇお茶子ちゃん、楽しいねェ! 恋バナ楽しいねぇ!

 

トガヒミコの顔は、明らかに酔ってイカれているかごとくその頬を赤くさせて、口角を更に上げて大きくニヤける。

一方で麗日はそんなトガヒミコさらに動揺と疑問が湧き上がる。

だがそれによって意識を逸らされ、次の瞬間——

 

「いッ!?」

 

「お茶子ちゃん!?」

 

——麗日の太腿に激痛が走る。

トガヒミコは僅かな隙を突き、別の注射針を手に握り麗日の太腿に刺していた。

 

「チウチウ、チウチウ、チウチウ!!」

 

そしてそこから機械の機能により、麗日の血が採血されていった。

だがその時、茂みをかき分ける音が鳴りそこから人の影が出て来た。

 

「麗日!?」

 

「障子ちゃん、皆!」

 

そこに障子と抱えられている緑谷、更に轟と抱えられているB組生徒だった。

障子が麗日に気づき、蛙吹もまたその障子たちに気づいた。

 

「あっ、しまっ……!」

 

だが同時に麗日が一瞬気を取られてしまい、その隙に抑えられていたトガヒミコは抜け出し、反対側の森へ移動した。

 

「人が増えたので殺されるのは嫌だから、バイバ——……!?」

 

トガヒミコは撤退しようとしたが、その瞬間に視界にボロボロの緑谷が映り、思わず見惚れてしまう。

だがすぐに森へ入っていった。

 

「待っ……!」

 

「危ないわ! どんな"個性"を持ってるかもわからない以上、深追いは危険よ!」

 

トガヒミコを追おうとする麗日だが蛙炊が止めた。

蛙炊の言うように、向こうは自分たちのことを知っているが逆に自分たちは(ヴィラン)の"個性"が未知数。

そして暗い森の中では待ち伏せされているか可能性もあるため、深追いは危険という蛙吹の冷静な判断によって麗日はその場に留まることができた。

 

「なんだ、今の女……」

 

(ヴィラン)よ、クレイジーよ」

 

「麗日さん、怪我を……!?」

 

「大丈夫、全然歩けるし……っていうかデクくんの方が……!」

 

「立ち止まってる場合か、早く行こう」

 

トガヒミコが完全に見えなくなってから、障子たちは麗日たちへ駆け寄り、状況を聞くが2人はただクレイジーな(ヴィラン)としか知れなかった。

そして緑谷が麗日の心配をするが、麗日は自分よりも緑谷のほうが重傷であるため、もはや互いに安否を気にし合いの状態になっていた。

だがそこを障子が止め、すぐに移動するよう提案する。

 

「そうだね、とりあえず無事でよかった……そうだ、一緒に来て! 僕ら今、かっちゃんと天堕さんを護衛しつつ施設に向かってるんだ」

 

「爆豪ちゃんと幻神ちゃんを護衛? その2人はどこにいるの?」

 

「…? 何言ってるんだ。かっちゃんたちなら後ろに……——」

 

麗日と蛙炊の言葉に緑谷達は耳を疑う。なぜなら自分達は陣形を整えて移動してきたからだ。

後ろには爆豪と天堕、そして天堕を抱えている常闇がいるはずだ。

緑谷は話しながら後ろに振り返る。

だがそこには——……誰もいなかった。

緑谷に続いて障子と轟も振り返り、麗日と蛙吹の言っていることが本当であることが分かったが、思わず数秒固まってしまう。

 

 

「彼らなら、俺のマジックで貰っちゃったよ」

 

 

次の瞬間、直上より聞きなれない男性の声が聞こえ、全員が驚いて目を向けるとそこには……茶色と黄色混じりのロングコートを身に着け、黒いトップハットを被り、まるで笑顔をイメージしたような白黒の謎マスクで顔全体を隠している(ヴィラン) ……『Mr.コンプレス』が木の上に立っていた。

 

 

 

 

*1
第30話『奇跡の殺戮者 VS 速すぎる男』参考





    聖遺物 殺し】 否 【 ■■殺し



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