この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
ついに神野編突入です。
(正直私自身が怖いですいや本当に)
大きくなる不穏の旋律
林間合宿襲撃から翌日。
雄英はUSJ事件に続き、合宿でも二度目の襲撃を受けたこと。
被害者並びに拉致され行方不明者を出したこと。
その責任を追及しようと事件後の翌日、言い換えて今日は夏休みで生徒が1人もおらず、教師だけの雄英高校の門の前に無数の報道陣が群がっていた。
それと同時刻に
そして翠は手術室へと入ると、そこには複数人の医師がおり、中央の手術台には1人の男性が拘束されながら寝かされていた。
「ッ! ギアさん、お忙しい中ご苦労様です!」
「えぇ、それよりも報告を聞いて来たのだけれど……」
「はい。これを見てください」
医師の1人が手術台にいる男性を見せる。
手術台に拘束されながら寝かされているのはムーンフィッシュだった。
「ここにいる医師たちは公安委員会絡みであり、あなたの義娘である彼女のことも把握している者たちです。遠慮せず話してください」
「やっぱりアイツらも気づいてるわよね……」
公安委員会と何かしら関係を持つ翠だが、今この手術室にいる医師たちも全員がヒーロー公安委員会とも繋がりがある者たちだったのだ。
「確認するわ。襲撃を受けた生徒の一部から、ゆぅちゃんが紫の装甲を纏い、放った輝きにてこの
「目撃者は3名もいましたので間違いないかと」
「となると……この
「はい、データは既にここにまとめてあります」
医師の1人がタブレットサイズの端末を翠に渡し、翠はそれを受け取り中のデータを確認した。
「ムーンフィッシュって、死刑判決を受けてる
「はい。身体に受けた傷などは既に治療しましたが…その……」
「"
翠のとんでもない発言に、全員が黙ってしまった。
「ゆぅちゃんから聞かされていたけど…まさか本当だったとわね……」
翠は一度幻神から聞いていた。
幻神の自身に宿る"個性"にて纏える『シンフォギア』。そのモデルとなっているものとその宿られし
「『
7つめの『シンフォギア』である『
最弱だが最凶のギア。
原作の『
それをその世界に存在した人々は【聖遺物殺し】と呼んでいた。
だが幻神は転生者であることと元の【聖遺物殺し】などは話していない。
『
具体的にはそれが"個性"にあたり、幻神は『その輝きで他者の"個性"を分解し、永遠に"無個性"にする可能性がある』と説明していたのだ。
それを聞いた翠は流石にそれはないと半分冗談で受け流していた。
だが万が一を考え、それらの情報も資料として
だが公安は目を離すことなく、それらに関する情報も徹底的に提供するように命令して来たのだ。
そして『
「何度も検査しましたがムーンフィッシュは完全に"無個性"になっています。"個性因子"も完全に消失しております」
「ゆぅちゃんはこれを【"個性"殺し】と名付けていた……でも本当だとわかった今、公安委員会もゆぅちゃんを野放しにはしてられないでしょうね」
「救出したところで公安はそのまま隔離するのが見え見えです。【"個性"殺し】なんて、この超人社会からすれば、いくつもある危険中で最も危険な
「それに加えて公安は
医師たちの意味ありげな公安への話を他所に、翠は端末を返すと背を向けて出口へ向かった。
「もうよろしいのですか?」
「えぇ、公安が何と言おうと私は
「「「……ッ!!!」」」
翠……否、ギアの発言もだが、その後の膨大な覇気により全員が身体を硬直させ、冷や汗を流した。
既に表舞台を降り、隠居状態になったとはいえど、その実力と覇気は現役No.2のままだったのだ。
「ムーンフィッシュは"無個性"になったとはいえ危険性はまだあるわ。念のために『タルタロス』へ輸送して頂戴」
「は、はい!!」
ギアはそれを最後に手術室を後にした。
——◆——
更に翌日、2日目に当たる頃。
1年生の合宿先から最も近い庵木総合病院にて、重軽症者のうち、重傷者が数名入院していた。
そしてその病室の1部屋にて、その1人である緑谷出久は身体中、主に腕に大量の包帯とギプスが巻かれた状態で目を覚ました。
「……」
だがその顔は上の空な表情をしている。
そんな表情のまま緑谷は、あたりを見渡すように顔を動かせば、横に棚があることが分かりその棚の上には、剥かれた林檎を乗せた皿と直筆のメッセージが一枚添えられていた。
緑谷はすぐに自身の母が書いたことだと理解したが、数秒後には再び顔を天井へと戻した。
すると緑谷の病室の扉がそっと開けられ、そこから上鳴が覗き込んで中を確認した。
「あっ! 緑谷目ぇ覚めてんじゃん!!」
そして緑谷がめをさましていることに気づき、嬉しさと安心が混ざった声を上げながら扉を全開に開けて病室へ入る。だが上鳴だけではない。
他のA組生徒も入って来た。
「みんな……」
「テレビ見たか? 学校今マスコミでやべぇぞ」
「春の比じゃねぇ」
「メロンあるぞ! 皆で買ったんだ!」
施設に居たり、軽傷で済んだA組たちでお見舞いに来ていたのだ。
「A組みんなで来てくれたの…?」
「いや…耳郎君葉隠君は
「……15人だよ」
見舞いに来た数は緑谷の病室で、緑谷を覗いた計15人。緑谷を含め、八百万、耳郎、葉隠は入院。
そして……——
「——爆豪と天堕いねぇからな」
「ちょ、轟……」
轟が躊躇なく現実を突きつけるように残りの2人の名を言った。
それを聞いて芦戸はすぐに指摘するも、緑谷は改めて救けられなかったことを理解した。
空気が重くなる中で全員が黙り込むが、最初に口を開いたのは緑谷だった。
「…オールマイトが、言ってたんだ……手の届かない場所には救けに行けないって…だから手の届く範囲は必ず救け出すんだ……僕は、手の届く場所にいた。必ず救けなきゃいけなかった…僕の"個性"は…その為の"個性"なんだ。でも…身体…動かなかった……!!」
緑谷は悔しさがこみ上げて来たのか涙を流し始め、それを見たクラスメイトの大半が辛そうな表情をした。
「じゃあ今度は救けよう」
「「「はっ?」」」
切島の唐突過ぎる発言に、轟を除いた全員が口を開けて驚いた。
「実は俺と轟昨日も来ててよ。2人で緑谷の病室に向かってる途中、八百万の病室にオールマイトと警察がいて話しているところを見たんだ」
合宿にて
不意を突かれたことで八百万は頭部に大きなダメージを負ってしまっていた。
それでも薄れいく意識の中で状況を判断し、脳無の身体に『創造』にて創り出した発信機を泡瀬の"個性"にて接合していたのだ。
その発信機は今も起動し続けており、発信機をオールマイト達へ渡していた。
それを切島と轟はこっそり見ていたのだ。
「……つまり、その受信デバイスを八百万君に創ってもらうと?」
「……ッ」
「だとしたら?」
その話を聞いた飯田は頭がいいだけあってすぐに察した。だがそれでも思わず聞いてしまい、それに対し切島と轟は否定しなかった。
飯田は歯を食いしばっていた。
「オールマイトのおっしゃるとおりだ! プロに任せるべき案件だ! 俺たちが出ていい舞台ではないんだ! 馬鹿者!!」
「——っんなもん分かってるよ! でもよ、俺はあんときなんもできなかった……!
飯田は我慢ならず、過去職場体験にて自分が犯してしまった過ちを、今目の前にいる友がやろうとしていることを止めようと感情的に叫び出す。
切島もまたそれは理解していた。
だが林間学校にて施設にいた自分は、他のみんなが頑張ってる中何もしなかった自分に対し悔しさがあった。それは爆豪と幻神を救けたくてもできなかったからだ。
「ここで動けなきゃ俺は…! ヒーローでも漢でもなくなっちまうんだよ!!」
「切島ここ病院だぞ落ち着けって! それにこだわりはいいけど今回は……」
「飯田ちゃんが正しいわ……」
上鳴、蛙吹も落ち着かせながらも切島を止め、飯田同様そのような過ちをしないでほしいと止める。
「飯田が…皆が正しいよ……! そんなことはわかってる…でも! なぁ緑谷!! まだ手は届くんだよ!! 救けに行けるんだよ!!!」
「……ッ」
切島はそう言いながら、緑谷へ振り返りその手を伸ばした。まだ可能性はあると、この手で救けにいけると。それを聞いていた緑谷は戸惑いながらもしっかりと話を聞いていた。
「えっと、つまりヤオモモから発信機を貰って、自分らで爆豪と天堕を救出しに行くってこと?」
「あぁ」
「
芦戸がここまでの話をまとめて改めて聞けば、切島は合っていると返事をし、轟は合宿襲撃時に
「ふざけるのも大概にしたまえ!!」
「——待て、落ち着け。切島の何もできなかったという思いも、轟の眼前で奪われた悔しさも分かる。俺だって当然悔しいさ。あと少しの所でこの手は届かなかった……救けることができなかった。だが、これは感情で動いていい話じゃない。そうだろ?」
飯田が再び叫ぶもそこを障子が冷静に止めに入り、それぞれの気持ちも理解していた。
轟同様、障子もあと少しの所で幻神を救け出すことができたが、マグニールの乱入によりそれは叶わなかった。
「オ、オールマイトに任せるべきだよ。相澤先生が出した戦闘許可はもう解除されてるんだし……」
「青山の言う通りだ。救けられてばかりだった俺は、そこまで強く言えんが……」
「けど——」
「——みんな、爆豪ちゃんと幻神ちゃんが攫われてショックなのよ。でも冷静に考えてちょうだい。どれ程正当な感情であろうとも、また戦闘を行うというのなら……ルールを破るというのなら、その行為は、
蛙吹の辛くも正論な言葉に、その場にいる全員が黙り込み、再び重い沈黙が続く。
そんな空気の中、扉の方からノック音が響き、一番近くにいた青山は驚いた。
「お見舞い中にごめんね~。これから緑谷君の診察時間なんだが……」
入って来たのは1人の医師。
話の中でも時間は過ぎるため、緑谷の診察時間がいつの間にか来ていたのだ。
それを聞いた少年少女たちは、他の入院者の元へ行こうと緑谷の病室を後にしていく。
そんな中、切島だけはみんながある程度離れていったのを確認してすぐに緑谷へ伝えた。
「——八百万には昨日話した。行くなら即行…今晩だ。重傷のお前が動けるかは知らねぇ。でも一番悔しい思いをしているお前だからこそ誘ってんだ……今晩、病院前で待つ」
それは立ち去る寸前で、飯田の耳にも入っていた。
だがそんな飯田に2人は気づかなかった。
——◆——
時刻は夕方。
外では空がオレンジに染まっている頃、一部ヒーローたちは緊急要請により合流地点に向かっている最中のと同時刻。
施設のような薄暗い部屋に1人の男性が椅子に座り、PCモニターに映る外のリアルタイム映像を方法は分からないが視ていた。
「(やはり今夜にでも動くか…脳無に発信機が付けられていたから、きっと弔の方と格納庫のほうを同時に襲撃するだろう……)」
すると男性の後ろの傍に1人の少女、メドゥーゴルが歩み寄った。
「ご主人様。
「そうか、状態は?」
「問題ありません。
メドゥーゴルの話を聞いた男性は振り返りもせずにそのまま話を続ける。
「なら君とマグニールをドクターの元へ『転送』させる。君たちを失う訳には行かないからね」
「心得ました……ご無理はなさらずに」
メドゥーゴルはお辞儀をしてから下がると、口元から銀色ともいえるような泥が、メドゥーゴルの意志とは関係なく強制的に吐かれる。
そして泥はメドゥーゴルを包み込み、その場から姿を完全に消した。
メドゥーゴル、並びにフィッティングルームの方にいたマグニールが完全に姿を消してから男性は立ち上がる。同時に、薄暗い部屋に反響するようにコツッコツッとゆっくりと歩く足音が響き渡った。
「もうすぐ始まる……君の絶望する顔を見れるのが楽しみだよ。オールマイト……君もそう思うだろう——」
男性がゆっくりと振り返れば、そこには黒で統一されたドレスを着る少女が立っていた。
「——僕の日陰にして、最高の闇の歌姫よ」
男性の問いに少女は応えなかった。
だが少女の両目には『黄金』の輝きが薄っすらと輝いていた。
『
でも『シンフォギア』の能力を"個性"として置き換えるとこうなるなァって初期段階から思ってたんですよね。だからこうした。何度でも言いましょう。
この作品は【何でも許せる人向け】デス!!!
ちなみに、『陽だまり』の対義語は『日陰』です。
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