この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!




不穏の旋律の上を彼らは音符のごとく進む

 

 

 

 

夜、庵木総合病院入口。

そこに轟と切島が誰かを待つように立っていた。

 

「……八百万たち、どうだろうな」

 

「まぁ、いくらはやっても結局、あいつら次第——」

 

瞬間、病院の自動扉が開かれ、そこから2人……八百万と緑谷が出て来る。

そして轟、切島の前で立ち止まった。

 

「八百万、答え…」

 

「私、は……」

 

「——待て!」

 

切島が八百万に答えを聞こうとし、八百万は口詰まっていると第三者の声が乱入し、全員が咄嗟に声の方へ振り返る。

振り返った場所には飯田がいた。

 

「飯田君……」

 

「何で…何でよりにもよって君たちなんだ…? 俺の私的暴走を咎めてくれた……ともに特赦を受けたはずの君たち2人が……! なんで俺と同じ過ちを犯そうとしている…あんまりじゃないか!!」

 

「何の話を——」

 

飯田は職場体験でのことを言っているが、その真相を知るのは飯田本人含め緑谷、轟のみ。

八百万と切島は知らない為、切島は思わず聞こうとするも轟が無言で止めた。

 

「俺たちはまだ保護下にいる…ただでさえ雄英が大変な時だぞ。君らの行動の責任は誰が取るのか分かっているのか!?」

 

「飯田君違うんだよ! 僕らだってルールを破っていいなんて——」

 

飯田の言いたいことも分かっている。

だから緑谷は説得しようと前に出るも、言い切る前に飯田が緑谷の頬を握った拳で一発殴った。

それを見た他3人は驚愕を隠せないでいた。

 

「俺だって悔しいさ! 心配さ! 当然だ! 俺は学級委員長だ! クラスメイトを心配するさ!! 爆豪君と天堕君だけじゃない! 君の怪我を見て、床に伏せる兄の姿を重ねた!」

 

「……ッ」

 

「君たちが暴走した挙句、兄のように取り返しのつかない事態になったら……僕の心配はどうでもいいって言うのか!? 僕の気持ちは、どうでもいいって言うのか……!」

 

飯田は普段、呼称を『俺』として過ごしている。

だが元々は『僕』であり、戻ってしまう程に彼は今取り乱していた。

緑谷の肩を掴み、最後には勢いを無くしながらも言い切っていた。

 

「飯田……俺たちだって何も正面からカチ込みをするつもりはねぇよ」

 

「え…?」

 

そんな飯田に、轟は改めてこれからやることを説明した。

 

「戦闘なしで2人を救け出す」

 

「ようは隠密活動! それが俺ら卵の出来る……ルールにギリ触れねぇ戦い方だろ!」

 

そう、保護下であり戦闘がまだ許されない彼らでも出来る活動はある。

それを考え、2人はルールを破らないギリギリのラインでの爆豪並びに幻神の救出を考えていた。

 

「私は轟さんを信頼しています。ですが、万が一を考えて私がストッパーになれるよう、同行するつもりで参りました」

 

「八百万君!?」

 

八百万も同行するつもりだったことに、切島は笑顔を見せ、飯田は逆に驚いていた。

そしてやっと緑谷も口を開く。

 

「……僕も、自分でも分からないんだ…手が届くと言われて…いてもたってもいられなくて……救けたいと思っちゃうんだ

 

決意表明した表情で言う緑谷を見て、飯田は「どういっても止まらない」と理解し溜息を付いた。

 

「平行線か…——ならば、俺も連れて行け」

 

飯田は友が過ちを犯さない為にも、ストッパーとして同行することを決めた。

 

 

——◆——

 

 

時刻は進み22時のBAR。

雄英の記者会見がテレビにて放送されている映像をテレビに映す中、BARには(ヴィラン)連合と拉致され拘束されている爆豪勝己がいた。

そしてテレビでは多くの記者たちが

 

「不思議なもんだよなぁ……何故ヒーローが責められてる?」

 

一度テレビの画面を消した死柄木は爆豪へ視線を向けて、上機嫌で喋り始めた。

 

「奴らは少~し対応がズレてただけだ。守るのが仕事だから? 誰にだってミスの1つや2つある。「お前らは完璧でいろ」って? 現代ヒーローってのは堅っ苦しいなァ…爆豪君よ」

 

「守るという行為に対価が発生した時点で、ヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示!」

 

人の命は失えば戻ってこない。

だがそんな人の命を金や自己顕示に変化させ、それをルールで縛り上げる現代の超人社会。

そしてヒーローもまた敗北する時はするのに、その敗北者を励ますどころか責め立てる国民。

 

「俺たちの戦いは【問い】ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのか。1人1人に考えてもらう。俺たちは勝つつもりだ……——君も、勝つのは好きだろ?」

 

死柄木の話を大人しく聞いていた爆豪の拘束を外すよう、死柄木は荼毘に指示する。

無論荼毘は「暴れるぞ」と反論するも、死柄木は対等に扱うことで、仲間になってもらうのが目的だ。

そして「この状況で暴れたところで勝てるかどうか分からないわけじゃない」と爆豪を高く評価もしていた。荼毘は数秒爆豪を見てから、隣にいるトゥワイスに任せることにした。

 

「はァ俺!? 嫌だし!」

 

「外せ」

 

「もうやだ~」

 

文句を言いつつもトゥワイスは爆豪の傍に移動し、彼を拘束している拘束具を外し始める。

 

「強引な手段だったのは謝るよ。けどな、我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむただの暴徒じゃねぇのをわかってくれ。君たちを攫ったのは偶々じゃねぇ」

 

「ここにいる者…事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに縛られ苦しんだ」

 

死柄木はゆっくりと爆豪の傍まで歩み寄る。

爆豪は拘束を解かれ、軽く手を解していた。

 

「君ならそれを——」

 

だが次の瞬間、爆豪はトゥワイスの顔面を膝で蹴り飛ばしてから死柄木へ迫っていき、ご自慢の右の大振りをかまして爆破させた。

爆破を受けた死柄木は顔に装着していた手が外れ床に落ち、他の連合メンバーも驚愕していた。

 

「黙って聞いてりゃダラッダラよォ…! 馬鹿は要約出来ねェから話が長ェ! 要は「嫌がらせしてえから仲間になって下さい」だろ!?」

 

煙幕がBAR内に広がる中、爆豪はいつも通りの調子で語る。

 

「——無駄だよ。俺はオールマイトが勝つ姿に憧れた! 誰が何言ってこようが…そこァもう曲がらねえ!

 

彼の眼は強い意思が宿っていた。

そして先の爆豪の『爆破』の衝撃によりリモコンが床に落ち、電源ボタンが入ったことで再び雄英の記者会見が映り出した。

 

 

——◆——

 

 

同時刻、記者会見場。

記者の1人が相澤に対し質問を投げかける。

その内容は事件の最中、生徒に戦うよう促したことの意図を知りたいとのこと。

それに対し相澤は「すべての状況を把握できていなかったこと」「最悪の事態を避けるため」と答えた。

 

「最悪の事態とは? 26名の被害者と2名の拉致は最悪と言えませんか?」

 

「……私があの場で想定した最悪とは、生徒が成す術なく殺害されることでした」

 

棘のある質問に冷静に答える相澤に対し、記者は目を細める。そして相澤に続いて根津も言葉を述べ、襲撃時の(ヴィラン)が使用したガス攻撃の"個性"は催眠系であることが判明済み。

ガスを吸い意識を失った生徒らは誰1人として命の別状はない。

同時に生徒のメンタルケアも行い、深刻な心的外傷は見受けられないことを伝えた。

だが記者は懲りずにその話題に食いつく。

 

「不幸中の幸いだとでも?」

 

「未来を侵されることが、最悪だと考えております」

 

「攫われた爆豪君についても同じ事が言えますか?」

 

雄英校に優秀な成績で入学、体育祭の優勝。

中学時代にはヘドロ事件にて強力な(ヴィラン)に対し単身抵抗を続け、その経歴を汲めばタフなヒーロー性を感じさせている。

だがその反面に体育祭で見せた粗暴な言動と態度。

爆豪勝己をよく知らない人々からしてみれば、精神面に不安定さが見える者もいる。

そこに(ヴィラン)連合は目をつけ、彼を言葉巧みにかどわかすことで悪の道に染められたら、それは果たして「未来がある」と言い切れるのか。

まさに記者は「今ここで言えるのであればその根拠を今すぐ言え」と遠回しに言っているようなものだった。とても攻撃的な言葉。

この記者は相澤がメディア嫌いなのを知っているのだろう。だからこその言葉。

そして相澤はゆっくりと立ち上がり、それに対し記者はニヤッとしていた。

 

「——爆豪勝己の粗暴な行動については、教育者である私の不徳の致すところです」

 

そんな相澤を見て内心焦っていたブラドキングだが、そんな相澤は頭をスッと下げた。

 

「ただ、体育祭での一連の行動は彼の理想の強さに起因しています。誰よりもトップヒーローを追い求め、もがいている。あれを見てと捉えたのなら、ヴィランは浅はかであると、私は考えております」

 

相澤の言葉を受け騒然とする記者団。

だが質問を投げかけた記者は食い下がり、「根拠になっていない」と言い「間所の問題ではなく具体策があるのかと」言った。

そして記者は「まだあります」と言いだした。

 

「天堕幻神の拉致はどうご説明されるおつもりですか?」

 

爆豪の話をすれば必然的というべきか当然というべきか、幻神のことも振り出し、教師たちはやっぱりかという表情をする。

 

「爆豪君同様優秀な成績で雄英高校に入学、中学時代もこれと言った目立ちはありません。ですが1つだけ不審な点はあります」

 

「不審な点、ですか?」

 

「彼女は7年前、年齢で言えば8~9歳辺りのころ、彼女はどうやら行方不明者(・・・・・)だったみたいですね」

 

「…ッ!」

 

7年前。

幻神自身も、転生者としての前世の記憶は覚えているが、なぜか9歳以前の現世界での記憶を一切覚えておらず、自分が誰から生まれ、"個性"の発現がいつなのか正確に覚えていない。

だが記者は「それだけしかわからない」「それらに関する詳細はどこにもない」と言いだした。

 

「まるで誰かが意図的に消したかのように……これに関してあなた方はどう思われるんです?」

 

「それらに関して我々からはお答えすることはできません。それに彼女のプライバシーに関わるものでもあります」

 

相澤の代わりに根津が答える。

幻神の過去はなぜか隠蔽されており、それを知るのはギアと公安を含めたごくわずかなのは確かなのだろう。だがここにいる根津、相澤、ブラドキングがそれを知る人物なのかは、その本人しかわからないからだ。

 

「そして我々も手をこまねいているわけではありません。現在、警察と共に調査を進めております」

 

 

——◆——

 

 

同時刻。

ヒーロー並びに警察は作戦通り二手に別れ、それぞれBARと脳無格納庫近くのビルに集結していた。

 

「まったく、なんで俺が雄英の尻ぬぐいを……そちらと違ってこちらは忙しいのだが?」

 

『まぁそう言わずに。貴方もOBでしょう』

 

「雄英からは今ヒーローを呼べない。大局を見てくれエンデヴァー」

 

モニターには互いのビルの映像がリアルタイムの通信で映っている。

警察の塚内に言われ、エンデヴァーは舌打ちをするが、塚内気にせずに改めて作戦の重要さ、そして流れを説明し始めた。

 

「今回の事件はヒーロー社会崩壊の切っ掛けにもなり得る。総力をもって解決に当たらねばならない」

 

するとベストジーニストは職場体験で爆豪の素行を矯正しようと事務所に呼んだことを語り始めた。

 

『あれ程に意固地な男はそうそういまい。今頃暴れていよう。事態は急を要する』

 

『貴様でも変えられなかったのか』

 

『毛根までプライドガチガチの男だった……』

 

ベストジーニストでも手に負えないほど自尊心とプライド。爆豪はそこまでの男であることを知ったベストジーニストは愚痴っぽく頭を抱えた。

話が終わったのを確認し、塚内は話しを再開する。

その内容は生徒の1人、八百万が仕掛けた発信機では、アジトが複数あることが考えられており、警察の調べによれば爆豪と幻神が拉致されている場所も把握済み。

主戦力をそちらへ投入し被害者の奪還を最優先。

同時進行でアジトと考えられている地点を制圧し、一網打尽に捕らえるという作戦だ。

 

「俊典、俺なんぞまで駆り出すのはやはり…」

 

「なんぞではありませんよグラントリノ! ここまで大きく展開する事態……奴も必ず動きます」

 

「『オール・フォー・ワン』……ギア、お前さんの義理娘も囚われておるんじゃろ?」

 

「えぇ、それにあなたたちも知っての通り、アイツも7年前の事件に大きく関わっていたわ…当時の一部被害者たちはアイツの手に堕ちていたし………マスコミ対策で当時の記録は公安が手を回しつくして隠蔽したけど…さすがにここまでくると、もう公安はゆぅちゃんを野放しにはしないでしょうね……」

 

天堕幻神の過去の情報は義母であるギア含め、公安とその公安の一部関係者しか知らない。

マスコミが知ればそれをネタの武器として使用するという恐れと、天堕幻神の自由という安全がなくなるからだ。

 

「今回はスピード勝負だ! (ヴィラン)に何もさせるな!」

 

それを合図にそれぞれ二手に分かれたチームが、アジト制圧を目的に外側を包囲し始める。

 

「意趣返ししてやれ! さぁ反撃の時だ! 流れを覆せ!! ヒーロー!!!

 

 

——◆——

 

 

薄暗い大きな格納庫。

そこは微かに月明かりで照らされていた。

 

♪ Shining eyes, fall into the dark side ♫

♪ I can't go back again 破滅の道 ♫

 

なぜか置いてある豪華な赤い椅子があり、その椅子に1人の少女が座っていた。

その薄暗い格納庫は最初に男性といた部屋とは少し異なっており、戦闘機一機分は入るほどの広さはある。そして唯一ともいえる窓が1つだけあり、そこから入る月明かりが少女を照らされしている。

そんな少女は自身の声質を『大いなる闇の歌い手』へと変換し【Glow_in_the_dark】を歌っていた。

 

♪ 月明かりが導くこのメロディーに乗せ ♫

♪ 奏でる世界 ♫

 

そんな少女は薄黒と黒で施されているドレスを着ていた。上半身は肩と背中が露出しており、前面からクロス状に紐が伸びて首元にぶら下げるようにかかっており、下半身は前はフリルに後ろはまるで翼を印象付けるような前短後長のドレスに、足先は薄めの黒いストッキングに真っ黒なヒールを履いている。髪の毛はロングで腰より下まで伸びているが+で『月白(げっぱく)色』一色のインナーカラーにもなっていた。そして頭部には黒いベールが付けられている。

それはまるで堕天使が身に纏う漆黒のウェディングドレスのようなデザインだった。

 

♪ Wait to see what's going on 静かに ♫

♪ 破壊のしらべが So don't look back ♫

♪ 革命と息ひそめた ♫

 

そんなドレスを身に纏う少女の首には、謎のチョーカー型装置(・・・・・・・・)が装着されていた。

 

♪ Into you, there is no way out まだ ♫

♪ 目覚めの時を待つ 静かに静かに,,,, ♫

♪ Gotta be ready to rock. ♫

♪ Maybe… ♫

 

少女は何もない空間で歌いながら自身の『黄金色』の瞳を微かに輝かせており、首に着けられているチョーカーにそっと指を添えて優しく撫でる。

チョーカーは前面中央が青く点灯しながら輝いている。それはまるで少女の歌に呼応するかのように。

 

♪ Only you can, only you can rock me ♫

♪ I know you can, I know you can ♫

♪ Only you can, only you can rock me ♫

♪ To the darkness, to the darkness ♫

 

すると少女の何もない背後に一瞬、巨大な何かが透明ながらも現れ、すぐに消えた。

同時に共鳴するかのように、少女の身に纏う漆黒のウェディングドレスがフワフワと揺れ出す。

 

♪ Ready to rock, get ready to rock! ♫

♪ 破滅のCountdown そう! ♫

♪ Ready to rock, get ready to rock! ♫

♪ 解き放て今 ♫

 

そして少女は首のチョーカーから指を放し、両手で窓の外の夜空…その月へと両手を伸ばした。

それはまるで歌を世界へ届ける、もしくは夜空の中世界へ歌を轟かせるかのように。

 

♪ Gonna be ready to rock ♫

♪ Into you ♫

♪ Gonna be ready to rock ♫

♪ Gonna be ready to, be ready to rock! ♫

 

そんな少女の歌声(こえ)は誰にも届くことなく、ただただ響き渡り、そしてゆっくりと消えていった。

 

 

 

 




【悲報(?)】
梅干し頭、幻神にウェディングドレスを着させる。


オリ主である『天堕幻神』の外見を改めて説明。
髪は夜空を印象付けるような青みがかった全体の黒髪であり、後ろ髪はロングで腰より下まで伸びていますが、ここにインナーカラーとして『月白(げっぱく)色』が一色で綺麗に染まっております。
イメージで言えば髪の毛全体は夜空で、インナーは満月と言ったところです。
言い換えれば、夜空に輝くお月様って感じですね。

陽だまり(幻神)
夜空を印象付けるような青みがかった全体の黒髪で腰より下まで伸びているロング。
瞳は『つつじ色』

日陰(幻神(?))
夜空を印象付けるような青みがかった全体の黒髪で腰より下まで伸びているロングに綺麗な『月白(げっぱく)色』一色のインナーカラー。
瞳は『黄金色』




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