この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
今回は短めです……(許して)
日陰は家族と共に
神野の悪夢と名付けられた事件から約3日。
世間ではオールマイトの真の姿、もう活動できないなどで話題がいっぱいであるが、同時に
よって世間では彼女がヒーローであるか、
同時に、彼女の勇気ある行動を称賛し、ヒーローの夢を進んでほしいなどの声も上がっていた。
それとは別で世間では、目立たずとも声の上がっていることもある。
「『プロヒーロー、未成年暗殺の疑い』、か……」
神野区にある1つの病院。
その病室で病衣を着ている幻神が新聞を読んでいた。内容は先のオールマイトや幻神のこと、そして公安も抑えられなかったのだろう、公安直属というのは控えられているが、それでも彼らの行動に関しての記事もあったのだ。
「一番の脅威はやっぱり世間って感じだね……」
「ある意味ね」
ベットで新聞を読んでいる幻神の隣には、パイプ椅子に座りリンゴの皮を不器用ながらに切っている翠がいる。
「……というか私、色々と問題起こしまくって公安にも
本来なら幻神は
だが実際はすぐに病院に移動され検査などを受けられて今に至る状態になっていた。
「クソどもはとても重い処罰をあなたに下そうとしたけど、あの現場に居合わせた表舞台のヒーローたちは「それでも彼女は辛い中立ち上がり、頑張ったんだ」と高く評価して、むしろ庇うように公安に訴えかけていたけど、まぁ最終的には全部私の持てる限りの権限で蹴りに蹴りまくって……——謹慎まで持ち込んだわ」
「えっ、謹慎!? それだけッ!?」
——あんたは『風鳴弦十郎』か!?
と幻神は心の中でそうツッコんだ。
だが翠は超常世界で"無個性"になったが、それでもプロを凌駕する実力は健在。
だからこそ"個性"を奪われてもなお戦えていた。
言い換えれば超常世界版『風鳴弦十郎(女)』とも言えてしまう存在なのだ。
そして公安直属とまでは言えないが、それでも公安と深い関係を持っており、ある程度の権限も譲られている。それらの権限を利用し、幻神の処罰を謹慎まで持ち込み、耐えきったのだ。
「まぁ条件として免許は剥奪されたけどね」
「…ッ!?」
都合のいいことは行かない。
公安は条件としてギアのヒーロー免許の剥奪をし、ギアは半ば強制的に引退にされた。
世間では表の上位ランキングに復帰を望むものも多くいたが、それでもギアは公安に所属もしていた。
だからこそ今回の
「気にしなくていいわ。
幻神は頭を抱えてしまう。
何故なら一瞬幻神の視界には翠の後ろに『風鳴弦十郎』がうっすらと見えてしまっていたからだ。
「(お人好しにも程がある……これがOTONAっていう奴なの?) ……でも公安は私に骨の髄まで洗いざらいオール・フォー・ワンとの関係のことか聞き出したいことが山ほどあると思うんだけど……」
「それはこれから行うわ」
「……ふぁ?」
そして待ってましたとばかりに病室の扉が開かれ、そこから塚内とトゥルーフォームで包帯を巻かれているオールマイトが病室内へ入って来た。
塚内が翠と少しばかり話せば、彼女は立ち上がり病室を後にした。
「あれ、お義母さん…?」
「すまないがギアは別で話があってね。今だけ席を外してもらったんだ」
「なるほど」
「それよりも天堕少女、身体は大丈夫かい?」
「はい、まぁ……傷もそこまで酷くないので、後遺症とかも残らず早くに完治するって言われてます。ていうかオールマイトのほうが心配されるような恰好ですよ」
「ハハハッ! こう見えても大丈夫さ! 君の、君たちの歌と想いのおかげでね!!」
オールマイトはトゥルーフォームでも平和の象徴であるのに変わりないかのように笑顔で答える。
それを見た幻神は難しそうな顔をし、それに気づいたオールマイトは幻神の傍まで移動し、左手を幻神の肩に乗せた。
「気にしないでくれ。本来なら法に反した犯罪に変わりないが、君の、君と黒換少女の歌が、そして君が送ってくれた人々の想いがあってこそ、私の、私たちの勝利があったのだ。ギアが君のためにここまでやったように私もまた、私個人としての恩返しとして君の力になるよ」
「ありがとうございます……」
オールマイトの言い方に幻神は気付く。
それは記憶の中で見たAFOらの会話を聞いたことで理解できることだ。
その間に塚内が用意したパイプ椅子に2人が座り、塚内が問いかけた。
「まず、手荒い形で連れて行ったことはすまなかった」
「いえ、それが現実です。むしろ身柄の拘束なしで連行するほうがおかしいと思いますし」
「理解してくれてこちらとして申し訳なさとありがたさが混ざってるよ」
塚内は自身の後頭部をかきながら言うが、すぐに真剣な表情になる。
「さて、我々が聞きたいことは君とオール・フォー・ワンの関係についてだ」
幻神はやっぱりかと、その質問は必ず来るとわかっていた。
「奴が君たちを改造し、全く異なる脳無の製造に取り組んでいたのは既に調査済みだ。そして君はその中で唯一改造せず、脳無になることもなかったと聞いたんだ」
「……オール・フォー・ワンはまだ幼い頃に精神的ショックで不安定な状態だった美音に1つの"個性"を与えたんです」
「オール・フォー・ワンも言っていたな」
「そして元々発現していた"個性"と混ざり、1つの"個性"となりました。それが今宿っている"個性"です」
幻神の話を聞いた塚内はチラッとオールマイトを見る。オールマイトは戦いの中でオール・フォー・ワンに聞いたため既に知っている。
故に落ち着いていた。
「その後の記憶はあまりなく、気が付いたら研究所がボロボロで、ただ脱出して逃走することだけを考えて行動しました」
それらはすべて美音の行動だが、美音の想いと記憶を受け継いだ今、幻神にとってもそれは体験した記憶でもある。
だからこそ幻神は第三視点での説明ではなく、体験した風に話していた。
「その後は、あなたたちも知っての通りです」
「その時期だとちょうどオールマイトが一度オール・フォー・ワンを倒した時期と重なる。てことはオール・フォー・ワンが意図的にではないのは確かだ。内通者の可能性は低い」
「内通者ならわざわざあんなことしないと思うが、疑っていたことには変わりない。すまない」
「(内通者って疑われてたのか……) いえ、気にしてませんし今知りましたから」
オールマイトが頭を下げたのを幻神はすぐにやめさせ、上げさせる。
「正直、オール・フォー・ワンのことはこれでもか! ってぐらいもっとボコボコにしたい気持ちはありました。でもそれじゃダメなんだって、私の歌は『勝つ』ためでなく『救ける』ための歌なんだって、美音が歌を通して教えて、そして
「天堕少女……」
オールマイトは幻神が
『余計なお世話はヒーローの本質』と呼ばれるが、なぜか声が出せなかったオールマイト。
同時に彼には別の答えがあった。
「(私の役目ではないんだな……何故だかわかる。彼女に寄り添うことができるのは、親であるギア…もしくは同年代の友人だろう)」
「それ以外で過去に覚えてることは?」
「……いえ、特に何も。あ、"個性"増幅装置はどうなったんですか?」
「警察や専門の人たちに調べてもらっが、完全に壊れていて機能しないそうだ。データを調べても全て復元不可。つまりただの模型になってしまっている。だから誰かの手にも行かせないよう即処分した」
ただチョーカー型に改良と完成へとなった"個性"増幅装置。
しかし『
機械は人や"個性"とは違い、限界を超えない。
それが当たり前のことだが実際、現実ではそれ等の常識も、疑わせることを成し遂げてしまっていた。
だがその装置は役目を終えたようにもう機能しておらず、装置そのものもあちこちが破損してしまってたのもあってそれ以降動かなくなった。
専門家の者たちはデータ収集とかもしようとしたがそのデータもなく、本当にただの模型と化しており、これをいつか修復する者が現れてもおかしくないと考え、即処分を行ったのだ。
「そっか…あの装置があったからってのもあったから、お礼、言いたかったな……」
「すまない。こちらからすると政府も危険視していた代物が完成されていたと聞いたらまたあのようなことが起きる前に片づけておきたかったんだ」
幻神にとって、装置は奇跡を起こしてくれた。
最後にはデヴィットの理想とした人々の笑顔と平和のための装置として、『
"個性"増幅装置は政府から見れば凶器と言える代物だが、幻神と美音にとっては自分たちを出合わせてくれて、一緒に歌わせてくれたとても大切なものなのだ。
「君の身体はあの戦いの中、ずっと"個性"の増幅と活性化がされ続けていたが後遺症などはないみたいでね。君自身、何か違和感はないか?」
「いえありません。というか使わない限りはわからないと思うので……」
「そうか、なら"個性"を使った後でもギアを通して伝えてくれたらそれでいいから、何かあったらすぐに伝えてくれ」
塚内は立ち上がり、それに続いてオールマイトも立ち上がって2人は幻神の病室を後にした。
その際オールマイトは「次は家庭訪問で会おう!」と言い去った。
「ん…」
少しばかり空いている窓の隙間から風が入り、幻神は吹かれ軽く髪が揺れ動いた。
「……髪、切ろうかな」
——◆——
青い空に白い雲。
地には絶え間なく広がる明るい緑の草原。
そこに白いワンピース1枚だけを着ている1人の少女が目を覚まし、起き上がる。
その少女は夜空を印象付けるような青黒に、月を思わせる
そして瞳は星々を思わせるような黄金色に十字型の星の柄が入っている。
少女は立ち上がり、周りを見渡してから自身の格好を見て理解する。
『わたし、本当に死んだんだ……』
少女の名は『黒換美音』
本来の人格者にして一度は闇の歌い手となり、そして幻神と最後に歌うことを許してもらえた少女だ。
『『——美音ッ!』』
そんな少女の名を2つの声が呼び、その声に美音は目を大きく開いていた。
そして咄嗟に振り返れば、そこには
『パパ…ママ……!』
大人は幼き頃に美音が亡くした最愛の両親。
震えながらも漏れ出す声。
そして次の瞬間、美音は誰かに押され、驚く間もなく美音にはその声がはっきりと聴こえた。
——パパとママ待ってるよ!
——行ってあげて!
——僕たち怒ってないから気にしないで!
幼い男女の声。
美音は一瞬振り返るがそこには誰もいない。
だが美音は理解し一滴の涙を漏らす。
そして両親の元へ振り返り、脚を動かして2人の側まで移動した。
『あの…パパ、ママ……わ、わたし……』
傍まで来た美音は詰まらせながらも必死に喋ろうとしたが、それよりも速く、美音は温かい温もりに包まれた。
『……ごめんな、ずっと1人で辛い思いさせて』
『ずっと見守ってたわ。こんなに立派に育って……』
恋しくてしょうがなかった両親の温もり。
しっかりと肌に感じ、触れ合っている。
美音は涙が次々と漏れ始め、次の瞬間には泣き始めた。
『傍にいてられなくて本当にごめん。でも、立派になったな……』
『本当…私たちにのいいところを足しただけでここまで……』
『ごめ、ごめん、なさ…! わた、わたし…!』
『あぁもう、せっかくの綺麗な顔が台無しよ?』
泣き続ける美音を見て、母は困ったと言った表情で美音の頭を撫でる。
それを見て父は笑い出した。
『人は誰だって間違える。それに最後にはちゃんといいことしただろう? とても誇りに思っているさ!』
『そうよ。今ではあの子も私たちの娘みたいなものだもの。先に生まれた身として、お姉ちゃんとしてあの子を守ろうとしたんでしょ? 親には丸わかりよ!』
『恥ずがじぃから…言わないでぇ…!!』
死後でも揶揄う親に涙を拭きながら答える美音。すると父のほうが真剣な表情で美音に問いかけた。
『美音、もし心残りがあるならまだ戻れるぞ? ここは死後の世界に近しい場所だが同時に元の世界との狭間とも言える場所だ。俺とママは美音を見守るために、あの世からこっちに来て居させてもらっている』
『あの子と一緒に素敵な歌を歌ったり、恋愛だってしてもいいのよ?』
『恋愛だけは認めないぞ俺は!!』
『ここまで来てまだそれ言うのあなた!?』
両親は死後でも変わらないことを知れた美音はいつの間にか涙は止まっておりポカーンとしている。
だが思わず吹き出し笑い出してしまう。
『……大丈夫、心残りはないよ。わたしは救われたし、
『…そうか』
『本当に、成長したわね』
温かい空気の中、美音は両親の手をしっかりとそれぞれ握り、繋ぎ合う。
それを不思議がる2人だが、美音はしっかりと声に出した。
『もう離さない…! もし幻神みたいに転生とか、来世とかそういうのがあるなら…またパパとママの子供がいい!』
『まぁ! とっても嬉しいこと言ってくれるじゃない! そうと決まれば神様に頑張ってお願いしなきゃね!』
『そうだな! 愛娘にここまで愛されるなんて、俺ら幸せ者だな!!』
『わたしも2人の子供として生まれて、とても幸せ者だよ!』
3人の家族は幸せそうに笑い合い、そして光輝くある方向へ身体を向け、歩きはじめる
だが美音は何を思ったのか脚を止め、一度手を離す。しかし両親は歩みを止めず、美音もまたその両親を止めない。
すると美音は振り返り、満面の笑みで言った。
美音は別れの挨拶を言うと、両親を追いかける。
その際彼女の姿は幼い幼女へと変わり、2人の間で手を繋ぎ合う。
そして3人の家族は…黒換家は、光の中に消えていった。
正式に美音が退場いたしました。
美音に生きてほしいと願っていた方々、彼女を想い、愛してくださり誠にありがとうございます。
そして最後に美音の別れの挨拶、実は誰かにとかは書いてないんです。
その意味、なんでか分かりますか?ちなみにヒントは……「貴方」ですよ。
そして無事神野区編が終わったことで、同時進行で執筆していたヒロキュアのほうも再開するつもりですので、更新速度は落ちてしまいますが、今後もよろしくお願いします。
ヒロキュアが気になる方々私のプロフィールを見てくれればあると思うので!良ければ!
(なんなら美音や幻神の絵も……ん”ん”!!!)
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