この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
ヒーロー仮免許取得試験は毎年6月と7月に、全国三か所で同日に実施される。
そして私たち雄英1年A組が受ける会場は『仮免許取得試験会場・国立名古場競技場』というとても大きな会場だ。
「この仮免試験に合格し、仮免許を取得出来れば、お前ら卵は晴れてヒヨッコ…セミプロに孵化できる。頑張ってこい」
相澤先生にそう言われ、緊張しているとはいえどやる気に満ち溢れる。
だけどそれとは別で、周囲からのざわめき声が聞こえて来た。
「おいあれ…」
「雄英の制服…会場が被っちまったか……」
「しかもあれ、1年A組じゃね?」
「ホントだ! てことは……あっ! いた! 天堕幻神だ!!」
「爆豪勝己もいるぞ……」
「オールマイトをも追い詰めたあのバケモンが同じとか、もう落ちたようなものじゃん……」
「そもそもあの2人が拉致さえされなければオールマイトも引退せずに済んだのに……!」
「というか天堕幻神の方は
「ちょ、あんたたちやめなって…!」
「だけど神野区の被害も、実際あの女のせいなんだぞ…!」
しっかりと耳に入ってくる爆豪くんと私…主に私への警戒と恐怖…そして嫌悪。
こんなことになるのは大体わかってた。中にはそれを止めたりしたり、その発言を否定したりする人の声もあるけど……それでもだ。
「(私は『響』じゃないからわからないけど……こんな気持ちだったのかな……)」
学校での陰湿ないじめを受けていたことはアニメ内で描かれていたけど、私のこれはまだ『立花響』のと比べたら……どうなのだろうか…私にはわからないよ。
「気にしなくていいからね幻神ちゃん!」
「そうだよ! あの時天堕は天堕で頑張っていたんだから! 周りがひどいことして来たら私たちが守るからね!」
葉隠さんと芦戸さんがそう言って来た。
そう言ってもらえてとても心が温かくなるよ…。
「っしゃあ! ヒヨッコなって、天堕も俺たちと同じ卵でこれからヒヨッコだってことを証明してやろうぜ!!」
「いつもの一発決めて行こうぜ! せーの! Plus…——」
「——Ultra!!!」
重い空気を軽くするためにも恒例行事である掛け声をしたところ、いきなり割り込んできた明らかに他校の男性が同じように叫んだ。
「勝手に他所様の円陣に入るのは良くないよ、『イナサ』」
「あっしまった! どうも大変! 失礼いたしましたァ!!!」
頭ァ!!謝罪の頭下げの勢いが強すぎて地面に激突してるからァ!!
「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」
「待ってあの制服って……!」
「あれか、西の有名な!」
「……東の雄英、西の士傑」
西の士傑って……確かお義母さんが言うには雄英に匹敵するもう一つの難関校だとか…。
「一度言ってみたかったっス! Plus ultra!! 自分雄英高校大好きっス!!! 雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!! よろしくお願いしまァす!!!」
元気な声を溌溂と上げてるけど、額から血が出てる…って、なんか急にキョロキョロと何かを探すように動いた。
そしてなぜか私と目が合うとこっちに迷うことなく来て私の手をガシッと握った。
「天堕幻神さんっスよね!? テレビで見ました! 体育祭もすごかったっスけど、神野での戦いはとても胸が熱くなる戦いぶりで…! 俺! とっても感動しました!!!」
「えっ、ぁ…ど、どうも……」
「テレビで見るより可愛いっスね! あの声も全部自分で言ってるんスか!?」
額から血をブシャー!と噴出させながら迫る彼に、私は思わずゾワッと鳥肌が立ち始めた。
ちょっと申し訳ないけど手を振り払って、迷うことなく止めようとしてきた緑谷くんの後ろに隠れるように逃げた。
「あ、天堕さん…!?」
無理。
なぜか私の中の本能的なのが無理だと訴えて来た。
それを見計らったように細目の他士傑生徒が「行くぞ」と言いながら会場へ向かい、熱血と言えるほどのさっきの人も後に続いて会場へと向かって行った。
「『夜嵐イナサ』」
「先生、知っている人ですか?」
「ありゃあ…強いぞ」
「「「えっ」」」
相澤先生曰く、昨年度の推薦入試。
私たちと同じ年に推薦入試でトップの成績で合格したにも関わらず、何故か入学を辞退した人物。
つまりはあんな巨体だけど私らと同い年であり、もし辞退をしていなければ同じクラスになっていた可能性もあった人物ということ。
雄英大好きと言いつつ入学は辞退するという変わり者って……なんで?意味が分からないんだけど……でも相澤先生が「実力は本物だ」と言うほどの人物……。
「あれ、推薦トップってことは……轟くん以上ってことだよね?」
「そう、なるね……」
私が思わず思ったことを口に出し、緑谷くんも同じことを思っていたのか同意見として返事をした。
「イレイザー? イレイザーじゃないか!!」
「ッ!?」
みんなも変なのとか言っていると、突然相澤先生をヒーロー名で呼ぶ女性の声が聞こえ、その声が聞いた瞬間相澤先生の顔が引きつった。
「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久し振りだな!」
声の方を見れば黄緑髪でオレンジのタオル…?的なのを被っている女性がこっちに手を振りながら来ていた。
「結婚しようぜ?」
「しない」
「しないのかよ!! 受ける!」
そして唐突のプロポーズ。
それを相澤先生は慣れたように即答で断る。
ていうかその一部始終を見た芦戸さんが一番興奮してる。
「スマイルヒーロー『Ms.ジョーク』! "個性"は『爆笑』! 近くの人を強制的に笑わせて思考・行動共に鈍らせるんだ! 彼女の
「そ、そうなんだ…」
緑谷くんが興奮しながらいつもの解説をしてくれた。人を強制的に笑わせるって……大海賊時代の笑顔という名の仮面を被せる失敗作の果実的なのが"個性"なの?
「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭を築けるんだぞ」
「その家庭幸せじゃないだろ」
「ブハ!!」
距離感が少し近い2人の会話に、梅雨ちゃんが「仲が良いんですね」と聞くと教師になる以前、事務所が近くでよく一緒にいたそうだ。
「助け助けられを繰り返すうちに相思相愛の仲へと…——」
「——なってない」
「いいなァその速攻のツッコミ! いじり甲斐があるんだよなぁイレイザーは!」
相澤先生は面倒くさそうにため息を吐きつつ、ジョークに「ここにいるってことは」と聞くと、ジョークは振り返り手招きをする。
「おいで皆! 雄英だよ!」
「おぉ! 本物じゃないか!!」
「すごいよすごいよ! テレビで見た人ばっかり!」
ゾロゾロと灰色のポロシャツを着た生徒たちがこっちに向かってきた。
「傑物学園高校2年2組。私の受け持ち。よろしくな」
すると黒髪のモサモサ頭の人がガシッと次々とA組1人1人に手を握り始めた。
それを見て私はそ~っと緑谷くんの後ろに再び隠れる。
「俺は『真堂』! 今年の雄英はトラブル続きで大変だったね! しかし君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだね、素晴らしいよ!! 不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」
眩しいくらいにさわやかな笑顔でウィンクをする。
なんだろう……どこか、言葉とは裏腹に何か企んでるような……それこそ、あのAFOと同じ、笑顔という名の仮面を被って騙すようなものを感じる……。
「その中でも、神野事件を中心で経験した爆豪君と天堕さん……特に天堕さん」
「えっ?」
私は少しばかり緑谷くんの後ろに隠れてるように移動していた為、緑谷くんを挟んで話すような形になってるけど、彼は平然と笑顔で話しかけて来た。
「君は特別に強い心を、精神力を持っている。何せあの事件でヒーローと
……何が言いたいんだコイツは。
「それでも君は自分の意志を貫き、ヒーローを勝利へ導いた。
…………あ”?
「今、何て言いました……?」
「ん?」
「あ、天堕さん…?」
私は緑谷くんの前に出て、目の前にいる奴を殺意を混めて睨む。
「悪の自分……? 撤回してください。美音は…美音は
私がそう言い放つと、周りは黙っていた。
そして目の前にいる彼は笑顔が一瞬だけ取れたけど、それでもすぐに口角を上げて笑顔を見せた。
「すまない。今のは撤回するよ。悪いことしちゃった——いだ!?」
すると金髪で後ろ髪を二つに縛った女子生徒が彼の後頭部を引っ叩いた。
「ヨーくん流石にそれはアウトだよ! 天堕さんもごめんね! ヨーくん外面いいけど腹黒だから……あっ! 試験終わった後でもいいからサインもらえる!?」
「……いいですよ」
「ヤッタァ!!」
腹黒か……それでもさっきのあの発言は殺意が湧いたけどね。
「天堕さん大丈夫?」
「ッ! あ、うん…! 大丈夫! 大丈夫!」
緑谷くんの心配してきて、私はハッと気づきすぐに大丈夫だと言い張る。それでも緑谷くんは心配そうな表情をしていた。
「おい!
「「「はいッ!」」」
相澤先生が指示して、私たちはやっと会場内へと向かって行った。
——◆——
更衣室で
他校も含め1500人ほど。よって大部屋はぎゅうぎゅう詰め状態になっていた。
『えー…ではアレです。仮免のヤツをやります。あー僕は…ヒーロー公安委員会の『目良』です。好きな睡眠はノンレム睡眠です…よろしく……仕事が忙しくてろくに寝れない…人手が足りてない…! 眠たい…! そんな信条の下、ご説明させていただきます』
なんとなく会場中が「大丈夫かこの人」みたいな雰囲気に包まれたのも気のせいじゃないと思う。
『仮免のやつの内容が…ずばり、この場所にいる受験者1541人。一斉に勝ち抜けの演習をやってもらいます……現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降、ヒーローの在り方に疑問を呈する動きも少なくありません』
確かテレビや動画とかで広まったものだと——
『ヒーローとは見返りを求めてはならない』
『自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない』
——だったっけ……?
まぁでもその通りとも言えるかも。
世間は自分たちでないからと好き勝手言ったり、勝手なとらえ方をして罵声を浴びせたりもするから。
そこら辺は前世と何ら変わりない。
でもヒーローも結局は人、同じ平等な人間という立ち位置に変わりないのだ。
失敗しない、完璧でいるなんてこと、到底できやしない。
『多くのヒーローが切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決までの時間は、引くくらい迅速になっています。君たちは仮免許を取得し、その激流の中に身を投じる。そのスピードに着いていけない者、ハッキリ言って厳しい……よって試されるはスピード』
巨大なモニターに『一次試験通過者100名』と表示された。
『条件達成者のうち先着100名を通過とします』
お義母さんの話では、仮免試験の合格率は例年5割ほどだと言っていたのに、それが1541人のうちの100人だけ。
つまり1割以下だということだ。
周りでは文句こそないけど、衝撃的すぎて悲鳴に近い声があちこちで上がっていた。
そして肝心の条件達成の方法。
試験の具体的な内容はざっくり言えば『的当て』。
受験生は各自配られた3つのターゲットを身体の好きな場所と同時に常にさらせる場所に着ける。
同時にその的を当てる専用の6つのボールを携帯し、相手が身に着けているターゲットにボールを当て、3つ全てに当てられた者は脱落。
そして3つ目を当てた者が撃破したことになり、2人撃破した者から先着100名が合格というルール……ようは的当てしながらの早い者勝ちってことか。
『えぇ……じゃあ
地響きのような音がして、説明会場が突然展開しだした。いや確かに展開だけども……無駄に大がかりだなぁ…。
『各々苦手な地形、好きな地形、あると思います。自分を活かして頑張ってください。一応地形公開をアレするっていう配慮です……まぁ無駄です。こんなもののせいで睡眠が……! 私が早く休めるよう…スピーディーな展開を期待しています…!』
それは流石に言っちゃダメな気がしますが…っと、ターゲットとボールどうも…そして配布が完了したみたいで、いよいよ1分後のスタートの合図が迫っていた。
「——先着で合格なら同校で潰し合いは無い…むしろ、手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋…! 皆、あまり離れず一塊で行こう!」
緑谷くんが真っ先にどう動くかを発言する。
その発言に全員が緑谷くんに注目して、すぐに同意していた。
「フザけろ、遠足じゃねぇんだよ」
「バッカ、待て、待て!?」
だけど爆豪くんは…やっぱりというか当然というか、即みんなとの行動を拒否して一人勝手に突っ走ってしまう。
そんな爆豪くんを心配し切島くんが追いかけ、さらにその2人をなぜか上鳴くんが追いかけて行ってしまった。
「俺も、大所帯じゃかえって力発揮できねぇ」
さらには轟くんまでもそう言って離脱してしまった。緑谷くんが呼び止めてもその背中は遠ざかっていってる。
「ごめん緑谷くん、私も1人で行く!」
「ッ! ダメだッ!!」
私も私でアレだから、1人で行動したほうがいいと思い、緑谷くんに伝えてから行こうとしたら手首を掴まれた。
「天堕さんはわかってるはずだ! だから、ここはみんなで…!」
「……」
私は緑谷くん手を空いている手で退かしてから、握手するように握る。
「——信じてるよ。
「ッ!」
私がハッキリと、心から思ってることを言えば緑谷くんは驚いたけど、それでも次にはわかってくれたのか、その顔が心配から覚悟を決めた表情へと変わった。
「——絶対通過してよ。
「ッ! うん!!」
そして互いに手を放して、私はみんなに背を向けて走り出した。
ドクンッ!!と心臓が高鳴り、黄金の輝きに包まれる。
肌にピッタリと張り付く黄色と白を基調とするバトルスーツを身に纏い、両腕両脚には白色と黄色の機械装甲であるガントレットとグリーブが装着され、頭部には白色と黄色のヘッドセットとブレードアンテナを装着。
首元には足先まで伸びている白色のマフラーが巻かれていった。
『ガングニール』を纏った私は住宅街エリアへ向かって行った。
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