この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!



日陰は、陽だまりと太陽のために

 

 

 

 

アガートラームを纏っている幻神は残りの公安直属ヒーロー2人を相手に上手く立ち回りっていた。

 

「くっ、速い…!!」

 

根が進行方向に先回りするように生えれば真っすぐ幻神へと伸びていく。

それに対し幻神はアームドギアをクロス状に振るい斬撃を飛ばす。

 

- FIERCE†SCAR -

 

- FIERCE†SCAR -は根を全て一撃で切断する。その隙に幻神は一気に女性の方へと駆け出していった。

 

「これでェ!!」

 

「——…ふっ」

 

だが次の瞬間——

 

「ッ! うぁ…!!」

 

——幻神はなぜかそのまま女性の横を通り過ぎ、地面に転がり込んだ。

 

「カハっ…!! (身体が、動かない……!? いや、それ以上に…苦しい…!!)」

 

幻神はなぜか息が荒く、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……どうやら、うまくいったみたいだな」

 

「うぁ…!!」

 

拳主体の直属ヒーローはいつの間にか幻神の傍に着ており、幻神の背筋あたり程に短くしているロングの青黒に月白色のインナーカラーであるその髪を乱暴に掴み、幻神を無理やり引き上げた。

 

「(『シュルシャガナ』の時に食らった毒系は食らってない筈……なのに、なんで……!?)」

 

「作戦通りね」

 

「あぁ、作戦通りだ」

 

公安2人の会話に、幻神はあらためて気づいた。

どうやら彼らは、仲間がやられること自体は想定外だったが幻神が切り替え武装。

更にはそこから今この瞬間に至るまでは作戦通りだったこと。

自分は相手の術中に既にはまってしまっていたのだと。

 

「私の"個性"は植物と言った環境系を少しばかり操れるの。それはもちろん、その環境によって生まれる人体に悪影響をもたらすものも同じ」

 

女性がそう説明しながら根の1つを生やすと、その根の中間あたりから穴が開き、そこからガスが漏れ出した。

 

「ッ! 毒…ガス…!?」

 

そう、幻神は戦闘の中で微妙過ぎるあまり気づくことができなかったが、公安直属ヒーローである女性は、あの戦闘の中で幻神に少しずつ毒ガスを吸わせていたのだ。

幻神は戦闘しながら歌う。その際息を一度整えたりもするため空気を多く吸ったりする。

それらを公安直属ヒーローは利用していたのだ。

だがそれなら仲間も苦しんでもおかしくないはずだと幻神は思っていた。

 

「お生憎様、最初にあなたに直接突き刺した毒は、ターゲットを絞るためのマーキングでもあるの。その結果毒ガスは、貴女を中心に集まるようになった……いいえ、したというべきね」

 

「このまま勝てると思ったか? クソガキ」

 

「うぅ…ぅぅ……!!」

 

幻神は必死に身体を動かそうとするも、自身が思っている以上に身体には毒が回ってしまっているのか、動かせずにいた。

 

「おい」

 

「えぇ」

 

拳主体の男性が女性に合図を送れば、女性は根を生やし、幻神を拘束していく。

幻神は毒のせいもあり、意識が徐々に薄れてしまっていた。

 

「さて……」

 

そして男性は片腕を軽くほぐすように回してから、両足を上下にし、腕を構えた。

 

だが次の瞬間、ドンッ!!と地面を強く蹴る音が鳴り響いた。

公安直属ヒーローらはその音に気づき、男性は幻神に放とうとした拳を、そのまま音の方へと振るった。

 

「【スマッシュッ!!!!】」

 

「フンッ!!」

 

そして緑谷の【シュートスタイル】と公安直属ヒーローの拳がぶつかり合い、激しい衝撃波と風圧が発生した。

 

「ッ! 彼は確か、緑谷出久…!!」

 

「コイツのクラスメイトか……」

 

音の正体はギャングオルカのほうを皆に任せ、1人先に幻神の加勢に来た緑谷出久だった。

拳主体の公安直属ヒーローは押し勝ち緑谷をそのまま飛ばす。

緑谷はすぐに体勢を立て直して地面に着地した。

 

「くっ!!!」

 

そして再度駆け出す。

 

「幻神を…離せェ!!!」

 

【シュートスタイル】にて再度蹴りかかる。

それに対して公安直属ヒーローは腕で防いだ。

 

「こいつは俺がやる。お前はそのまま歌姫を完全に行動不能にしろ!」

 

「わかったわ!」

 

「ッ! そうは…させないッ!!!」

 

緑谷は駆け出し、それに合わせて公安直属ヒーローも駆け出す。

そして互いの足と拳がぶつかり合った。

 

「ぐぅ! どうして…あなた達もヒーローなはずだ! なのになんで幻神をそこまで!!」

 

(ヴィラン)に堕ちたあのガキに肩入れするか…!」

 

そのまま2人激しい肉弾戦を始めた。

 

 

——◆——

 

 

視界が、歪んで何も見えない……聞こえる音も、全部が曇り、詰まったかのように聞こえない……身体も動かない。

伝わってくるのは自身を縛り付ける痛みと、微かな振動だけ。

アガートラームを纏って、このまま残りも倒して、皆の方に加勢に行くはずだったのに……返り討ちにあって、結果的にこうなってる。

 

「(あんなカッコつけたセリフ言っておいてこの結果……ハハッ、我ながら恥ずかしすぎるなぁ……)」

 

声も毒のせいでうまく出せない。

アーマーパージでもして拘束を解いてすぐに他のを纏ったりすれば良かったんだけど……これが公安の意図的に私を不合格にするためなのか、それともこの人たちの単独なのか……。

 

「(どっちにしても、きっと不合格の可能性が高い……ここまで来て、か……)」

 

 

 

 

 

♪ ——リンゴは浮かんだ お空に… ♫

 

 

 

 

 

突然歌が聞こえた。しかもこの歌は……。

 

「(……【Apple】…?)」

 

なんで突然、【Apple】が……。

 

 

♪ リンゴは落っこちた 地べたに… ♫

 

 

だけど自然と、口が勝手に動いて、歌い始めてしまう。

 

 

♪ 星が生まれ て ♫

 

 

この時、()()()()()()()()()()()()()()()()

でも歪んでしまっている私の視界には、その触れてきている人物が誰なのかがわからない……。

 

 

ルルアメルは笑った と ♫

 

 

だけど、不思議とその触れている手はとても暖かかった。

 

 

♪ 星がキスし て ♫

 

 

まるで…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……そんな感じがする。

 

 

♪ かえるとこは? ♫

♪ かえるとこは? ♫

 

 

あぁ……もう過去のように、とっても懐かしく感じる。

 

 

『——何度でも言うよ。頑張って…そして諦めないで!!』

 

 

……そっか、いなくなってもなお私のために…いや、私たちのために……。

 

 

♪ リンゴは落っこちた 地べたに… ♫

 

 

行こう……アガートラーム

 

 

♪ リンゴは浮かんだ お空に… ♫

 

 

いや……——

 

 

 

——『アガートラーム』ッ!!!

 

 

 

——◆——

 

 

激しい打撃音が響き、緑谷は地面を抉りながらもがき耐える。

 

「はぁ…! はぁ…! (強い…! オールマイトやギア程じゃなくても…プロとしての実力はやっぱり本物か…!!)」

 

拳主体の公安直属ヒーローを相手している緑谷は、息を荒くしながらも、その身体に強く指示させて構える。対して拳主体の公安直属ヒーローも少しは、緑谷の攻撃痕を身体に残しているが、まだ余裕なのか息も荒げず構えていた。

 

「あの女に構わず、向こうで試験を優先していればいいものを」

 

「なんで……何でそこまで幻神を敵視するんですか!? あなた達はプロヒーローなはず!」

 

「その質問に対して、貴様に答える意味も、貴様が知る資格もない。これは我々の問題だ」

 

「……だからってッ!!!」

 

緑谷は怒りを露にする一方、公安直属ヒーローは鼻で笑ってから駆け出し、拳を突き出す。

それに気づいた緑谷は咄嗟に腕をクロスして防御するも、その一撃による重みは強く、後方に地面を抉りながら押されてしまう。

 

「……あなた達が彼女をどう見て、どう思っているのか、僕にはわからない」

 

「あ…?」

 

「でも、それでもあの日の戦いを見るだけしかできなかった僕は、ずっと悔やんだ……今も悔やんでるさ…!」

 

緑谷は腕を放してから構え、地面を蹴って飛び出す。

 

「なっ!?」

 

そして一瞬で公安直属ヒーローとの距離を詰め、脚を振るった。

 

「【スマッシュッ!!!】」

 

「ぐっ!! (パワーが…上がった!?)」

 

僅かな変化。

だがそれを防御したとはいえ、受けた公安直属ヒーローはその違いに気づき、驚愕していた。

そのまま公安直属ヒーローは吹き飛ばされ、その隙に緑谷は幻神の元へと駆け出す。

 

「ッ! こっちに来たわね」

 

植物を操る女性の直属ヒーローはそれに気づき、根を別で生やして迎え撃とうとしていた。

根はその先が針のように鋭く、緑谷を突き刺そうと伸びていく。緑谷は【フルカウル】を駆使してそれらを避け、時には踏み、そのまま蹴ったりなどして超えていった。

 

「(【シュートスタイル】……)」

 

そして【シュートスタイル】を構える。

 

「(【スマッ——)」

 

「——残念」

 

「がっ!?」

 

だがひときわ大きな根が緑谷を横から叩き飛ばした。

 

「見た目によらずの超パワー……このままあの子も拘束させておきましょうか」

 

女性は片手を構える。

するとグググッと立ち上がろうとしている緑谷の周りに根が生え伸び、緑谷を覆いつくそうとしていた。

 

「あの子を救おうとした結果……恨むなら彼女を恨みなさ——」

 

 

 

 

 

——Seilien coffin airget-lamh tron(望まぬ力と寂しい笑顔)——

 

 

 

 

 

「——ッ!!」

 

瞬間、歌が、『聖詠』が響き渡る。

それに気づいた公安直属ヒーローらは、思わず幻神の方へと振り返り、緑谷もまた驚愕しながら幻神を見た。

 

次の瞬間、拘束されている幻神が纏うアガートラームは、白銀の色を輝かせて、その形を変えていく。

 

白銀の輝きは輝いたまま、自身の拘束する根から抜け出し、目の前にいる女性の身体に一撃、強い斬撃を与えてる。

その斬撃の予想外の攻撃に完全に油断した女性は、致命傷ではないものの、重すぎたのか、そのまま地面に後ろ向きで倒れた。

白銀の輝きは迷うことなく、一直線に緑谷の元へと飛び出す。

そして緑谷の周りにある根を、両手に持つ2本の短剣にて全て断ち切った。

 

「ゆう、か……?」

 

全体を白銀の輝きで包まれながらも、人の形だけはくっきりと見えるその後ろ姿に、緑谷は驚きを隠せずにいる。

何故なら緑谷が知る『アガートラーム』の姿は、今自身の目の前で()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……心配かけてごめんね、出久くん」

 

輝きはゆっくりと散るように、消えていき、幻神の姿が露となって行く。

 

「でも、もう大丈夫」

 

 

肌にピッタリと張り付く白と薄黄色を基調とするバトルスーツを身に纏い、腰には身体と同等の大きさをするレンズ型の鎧、さらに後腰部には5本のピンクの羽根を生やすスラスターを装着。

 

左右対称で腕には手首だけに鎧、胸元と腹部の真ん中には小さな水色の羽根を生やす鎧、両足は膝と臑が肌を露出させ、足先だけを足首までの鎧のようなヒールを装着。

 

頭部のヘッドセットは王冠のようなデザインに、耳元がレンズ型で外側が黒く、内側が白、そして後方に向けて左右それぞれ2本ずつ小さな羽根が生えている。

 

 

そのギアの名は『アガートラーム』

だがそのギアは、『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』としてのアガートラームではない。

幻神は纏ったのは——

 

 

——『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』としての『アガートラーム』だ。

 

 

「貴様……! 何だその姿はァ!?」

 

緑谷に吹き飛ばされ、再度戻って来た公安直属ヒーローは、幻神の姿を見て驚愕を露にしながら問いただす。その問いかけに幻神は答えることはなく、緑谷へと振り返り、片方の短剣をしまって手を伸ばした。

 

「(目が…!?)」

 

緑谷は気づく。

アガートラームだけでなく、幻神の『つつじ色』の瞳。

その左目だけが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「大丈夫って言った後に言うのもなんだけど……()()()に力を貸して? 出久くん」

 

その言葉に、緑谷は口では答えない。

だがその答えと言える行いとして、その手を取り立ち上がる。

 

「………——本当に、大丈夫なんだね?」

 

「うん。もう大丈夫……だって——」

 

幻神はこれまで、あの日以降無理して笑っていること日々が続いていた。

だがこの瞬間、緑谷に見せたその笑顔は——

 

 

「——私には、日陰と太陽が傍にいるからッ!!」

 

 

——純粋な、心の奥底からの、本当の笑顔へと戻っていた。

 

「ふざけるなァ!!!」

 

公安直属ヒーローは怒りを露にし、拳に"個性"を溜めて、その"個性"によるエネルギーで出来た攻撃を2人へと飛ばす。

 

「——準備はいい?」

 

「うん。行こう——……一緒に!!」

 

そしてエネルギーは2人の元に命中して土煙が立ち昇った。それを見た公安直属ヒーローはニヤつく。

 

♪ 命が燃やされ尽きて ♫

 

だがその表情はすぐに驚愕へと戻り始める。

次の瞬間、土煙が渦のように吹かれながら消えていくと、そこからピンク交じりの白銀の輝きと緑の稲妻と言う名の閃光が、『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』の歌声と共に姿が露となった。

 

♪ 灰になるまで 諦めたくない ♫

 

空いている片手に短剣を持ち、アガートラームを纏う幻神。

空いている片手を強く握り、【フルカウル】を纏う緑谷。

 

そんな2人のもう片方の手は強く、そして硬く繋ぎ、握り合っていた。

 

 

♪【此の今を生きて】♫

 

 

2人は一度手を放し、互いに駆け出す。

それを見た公安直属ヒーローは構え、拳を突き出してエネルギーの塊を何発か放つ。

 

♪ 絶えず唱えた願いを込めて ♫

 

それに対し幻神はアガートラームの短剣で全てを断ち切っていき、道を切り開く。

 

♪ 運命の枝道に彷徨った魂 ♫

 

その切り開かれた道を、緑谷が【フルカウル】を駆使して駆け出していき、【シュートスタイル】で攻撃する。

それを公安直属ヒーローは防御するも、地面を抉りながらも押されて行った。

 

♪ 血が通わずも分けた心は ♫

 

幻神はそんな2人を追い越し、背後に回ってアームドギアである短剣を振るう。

公安直属ヒーローは"個性"によるエネルギーでその短剣を防御するも、戸惑っていた。

 

♪ 優しさと温もりの ♫

 

「(情報にない武装!! それに、緑谷出久……こいつも…この女が歌いだした瞬間、()()()()()()()()()()!!)」

 

公安直属ヒーローは戸惑っている。

だがその間にも幻神は一度離れてから、手に握るアームドギアとは別で短剣を複数ビットとして生み出し、そこからエネルギーを放つ。

 

♪ 守りの光と変わる ♫

 

公安直属ヒーローは緑谷を弾き飛ばしてから、その攻撃を避けていった。

 

幻神はアームドギアにエネルギーを溜めて、真っすぐ公安直属ヒーローへと投擲した。

 

- GNOME†TRIAL -

 

「しまっ——」

 

- GNOME†TRIAL -は公安直属ヒーローを貫くことなく、その足音に突き刺さる。

だが次の瞬間、公安直属ヒーローを包むほどの爆発が起こった。

 

♪ (君の傘に) ♫

♪ Ah...愛の盾に ♫

 

「(クッソ……何なんだコイツら、あの女が未知の武装を纏っただけでもやばいが、それ以上にあっちの小僧だ)」

 

煙幕の中、公安直属ヒーローは微かに見える緑谷出久を見る。

 

♪ (捧げ祈る) ♫

 

公安直属ヒーローは思考を動かす。

「なぜあの小僧はあの化け物とアイコンタクトもなしで合わせられる」

「なぜあの小僧はあそこまで、あの化け物の肩を持つ」

いやそれ以上に……。

 

「(何故こいつらは、笑っているんだ!?)」

 

♪ Ah...ずっと ♫

♪ (ずっと) ♫

 

幻神は歌い、戦いながら——

緑谷もまた、戦いながら——

 

——笑っていることに、理解が出来ないでいた。

 

♪ 側にいたい ♫

 

「ゴッ!!」

 

♪ 「諦めない強さにミライは宿る」 ♫

 

だがそんなことお構いなし。

緑谷は【フルカウル】と共に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

彼の【シュートスタイル】による脚が、公安直属ヒーローの腹に命中し、公安直属ヒーローは息を吐く。

 

♪ 絶望の闇でも 絆の陽は煌めく ♫

 

公安直属ヒーローはすぐに緑谷に拳を振るうも、そこに幻神が横から攻撃したことで防がれ、吹き飛ばされた。

 

♪ 此の「今」を生き尽くしたい ♫

 

地面に数回バウンドしながら転がっていき、最後にはギリギリ体勢を直して持ち直す。

 

♪ 儚き一瞬だから ♫

 

そしてすぐに顔を上げるが、すぐにマズいと悟った。

 

♪ 命は可憐に燃えて ♫

 

何故なら目の前に、既に足を構えている緑谷がいたからだ。

 

♪ 聖なる力番う歌へと ♫

 

「【スマァァッシュゥッ!!!!】」

 

「——ガッ!!!」

 

そして【シュートスタイル】は完璧に公安直属ヒーローの顔面に命中され、再度吹き飛ばされた。

流石に対応できなかったのか、今度は地面にそのまま倒れてしまう。

 

「おのれェ……!!!」

 

公安直属ヒーローは身体を必死に動かし、立ち上がろうとする。

 

♪ 「諦めない強さにアシタは宿る」 ♫

 

そんな公安直属ヒーローの耳に、幻神が奏でる歌が入っていき、思わず顔を上げる。

だが思わず息を呑んでしまっていた。

 

♪ 肩を寄せ合い 完全じゃないからこそ ♫

 

何故なら己の目の前、否……太陽を逆光と言う名の背景とし、互いに肩を寄せ合って構えている幻神と緑谷がいたからだ。

 

「行くよ…!」

 

「うんッ!!」

 

互いに片手を強く、()()()()()()()()()()()()

そしてお互い片足を突き出す。

するとアガートラームが2人の想いに応えるように、2人を中心に複数の短剣のビットが囲むように回転していく。

 

♪ 此の「今」を生き尽くしたい ♫

 

ピンク交じりの白銀の輝きと緑の稲妻の閃光が共鳴し合い、その輝きを強くさせる。

 

♪ 儚き一瞬だから ♫

 

その輝きをエネルギーにするかのように、ビットはすべて、持ち手の方からエネルギーを放射してスラスターのごとく、2人を押していく。

 

♪ 命は可憐に燃えて ♫

 

迫りくる輝きに対し、公安直属ヒーローはすぐに立ち上がってから己の片腕に"個性"を溜め、必殺技を繰り出すことで迎え撃つ。

2人の輝きと、公安直属ヒーローの最大の攻撃がぶつかり合う。

 

♪ 聖なる力番う歌へと ♫

 

「「——いっけェェェエエエッ!!!!!」」

 

2人の想いに呼応するように、『紡心(アクシア)』と『OFA』は輝きを強くさせる。

 

「ぅぅううオオオオオオッ!!!?」

 

- FAIRY†SMASH -

 

♪ 輝く夢に ♫

 

2人の輝きはそのまま公安直属ヒーローを押し切り、互いの合わせた技を命中させることに成功した。その輝きがその場で爆散するように散っていきながら、幻神と緑谷は繋いだまま地上に着地する。

一方で公安直属ヒーローは、2人の先の奥にて、岩にもたれるようにして気絶していた。

 

「「はぁ…! はぁ…! はぁ…!」」

 

互いに息を切らしながらも、無事に勝てたことに少しばかりの安心を漏らす。

だがその安心もつかの間、2人の周りに根が生えた。2人は咄嗟に振り返れば、身体の傷を抑えながら片手をかざす女性公安直属ヒーローがいた。

 

「まずい!」

 

「くっ…!」

 

2人はすぐに脱出しようとするが、それより早く根はその針先を全て2人へ向けて伸ばしていった。

 

「ぐっ!?」

 

しかし次の瞬間、声を上げたのは女性公安直属ヒーロー。思わず2人は再度女性の方を見れば、そこには自分たちも良く知る顔が3人いた。

 

「尾白ちゃん!」

 

「ハァ!!!」

 

「ガッ!!!」

 

女性を舌で拘束している蛙吹梅雨。

そしてその女性を尻尾で気絶させる尾白猿夫。

 

「『黒影(ダークシャドウ)』! 周囲に他(ヴィラン)はいたか?」

 

「コイツ等ダケダッタゼ!」

 

そして他2人の男性をすぐに拘束している常闇踏陰とその"個性"『黒影(ダークシャドウ)』がいた。

 

「みんなぁ!!」

 

「無事か2人とも!!」

 

「大丈夫!」

 

2人は今度こそホッと安心してしまう。

だが少し離れたところでまだ炎の渦が天へと燃え上がっているのが見える以上、向こうではまだ戦いが続いていると悟る。

するとその炎の渦は一気に吹き飛ばされた。

 

「まずい…!」

 

緑谷はそれを見て走り出そうと——

 

 

——ブーッ!!!

 

 

——した瞬間、会場全体にブザー音が鳴り響いた。

 

『——えぇただいまをもちまして、配置された全てのHUCが、危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程は終了となります』

 

それは仮免試験が終了した合図。

いきなりのその放送に、試験者たちは戸惑っていた。

 

『誠に勝手ではございますが、これにてヒーロー仮免許取得試験の最終二次試験を終了とさせていただきます。受験者の皆さん、お疲れ様でした』

 

「終わった…?」

 

「(本当に…?)」

 

しかし幻神は公安直属ヒーローらが出向いてきた以上、これも何かしらの罠の可能性があると疑っている。故に、アガートラームを解除せずにいた。

 

『集計の後、この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ。他の方々は着替えて、しばし待機でお願いします』

 

幻神たちは救護所の方を見る。

その近くにいたギャングオルカ並びにそのサイドキックたちが行動を止めているのを見て、本当に終わったんだと彼女たちは理解した。

そう理解した途端、幻神は力が抜けるようにアガートラームを解除すると同時に倒れかける。

 

「幻神!」

 

「ぁ…ありがと……」

 

3回の連続武装に加え、公安直属ヒーローらとの交戦による負傷。

それらのダメージは大きいとまでと言わなくともある。それを見て尾白たちは「2人は負傷してるからすぐに医務室に行ったほうがいい」といい、緑谷もそれに同意し、この場を任せ、緑谷は幻神に肩を貸して、ともに医務室へと歩き出した。

 

 

 

 





——セレナァァ!!!

……っと、言うことでやっと出せました。
『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』としての『アガートラーム』をよォ!!!

ちなみに、【Apple】の際のことも合わせてヒント…と言えるかわからりませんが理由を言います。
『日陰は家族と共に』より「置き土産」です。

あと私自身、書いててめっちゃ顔が熱くなりましたよ、うん。



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