この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
UA150.000突破ありがとうございます!
グランウンドβ。
仮免試験を終え、時刻は既に12時を迎えそうになっている時間帯。
そこに爆豪と緑谷がいた。
その理由は、緑谷の"個性"のことでの話。だが緑谷はなぜわざわざここなのかがわからないでいる。
だが爆豪にとっては入学して最初のヒーロー基礎学にて、戦闘訓練をしたときに爆豪が緑谷に負けた場所。爆豪にとっては因縁の場所でもある。
爆豪は緑谷の"個性"のことを語り始める。
雄英入学までは"個性"を持っておらず、発現したのは雄英に入学するための試験の最中。
そこからの緑谷の急成長。
そして初日の帰りに緑谷に言われた、『他人から授かったもの』という発言。
最初こそ爆豪は戯言などと思いそこまで気にしなかったが、よくよく考えれば緑谷の家族にもあれほどの超パワー系の"個性"を持つ者はいない。
だが脳無と呼ばれる"複数個性"所持を繰り出す
「——オールマイトから貰ったんだろ、その"
その言葉が核心を射抜いていたのか、緑谷は喉を一回鳴らしていた。
「
さらに現場にいた爆豪は、AFOとオールマイトの会話から面識があること知った。
「あの女もだ。アイツも実際オールマイトに、恐らく時限式だ。それでも"個性"の能力部分だけを与えてた」
「……ッ!」
爆豪が言っている女とは幻神のことである。
モニター越しとはいえ、幻神の力をオールマイトが使っていたことはわかるだろう。
「俺とアイツを攫った時、アイツだけがボス野郎のとこに連れてかれた。死柄木は俺にしか関心がなかったのも含めてな……だた根っこの部分がちげぇ」
「根っこ…?」
「俺は勧誘目的で拉致された。だけどボス野郎はオールマイトにまた奪うかと言いやがった。だからアイツは……元々はあのボス野郎の所にいたってのが妥当だって話だ」
その言葉を聞き、緑谷の顔を固くさせる。
実際緑谷は『OFA』継承者としてオールマイトに神野区でのことをいろいろと聞かされていたからだ。
「なんで、幻神がそうだって言いきれるの……?」
「"個性"絡みだ。アイツの"個性"も、ただの普通の"個性"ってわけじゃねぇのはハッキリしてるからな。じゃねぇとボス野郎があそこまでアイツを欲する理由がねぇ」
本人は1つの"個性"と言っているが、爆豪からすればそれでも"複数個性"持ちと言ってもおかしくないほどに、幻神の扱う力は異常だと感じていた。
そしてAFOと一時的とはいえ肩を並べてヒーローを蹂躙しようとしていたのも含めて、自分たちと同じただの子供ではないこともハッキリしている。
「つまりだ。アイツはボス野郎に"個性"を与えられたんじゃねぇか? 実際、"個性"の移動っつうのが現実で、脳無のことも含めて信憑性はたけぇ。だからテメェの他人から授かったっつう発言も結び付く。んでそのことをオールマイトに聞いた……けど答えちゃくれなかった。だからテメェに聞く。歌女もテメェの"個性"がオールマイトから授かった"個性"だってことは、知らねェ感じだしな……」
緑谷は「聞いてどうするの?」と聞き出す。
そして爆豪は語る。
お互い同じでオールマイトに憧れたこと、ずっと自分より下だと思ってたやつが憧れに認められたことを。
「だから……——」
「——戦えや、ここで、今」
「——何でぇ!?」
緑谷は思わず声を上げる。
そして必死に止めようと声を上げるも、爆豪は聞く耳を持たないのか、それともわかっている故なのか、小声で「ガチでやったら止められるだろうが」と言っていた。
「テメェの憧れが正しくて、俺の憧れが間違ってたのか、確かめさせろ」
次の瞬間、爆豪は問答無用で『爆破』を使用し、詰め寄っていく。
そして右の大振りをかまそうとしてきたのを見て、緑谷は【フルカウル】を纏い上に飛び上がって避けた。だがその爆破による攻撃によって右足は焦げていた。
「マジでか、かっちゃん……!」
戸惑っている間にも爆豪は詰め、お構いなしに次々に爆破を繰り返していき、緑谷は必死に避け続けていた。
「待ってってかっちゃん! 本当に戦わなくちゃいけないの!? 間違ってるわけないじゃないか! 君の憧れが間違ってるなんて誰も——」
緑谷が必死に説得しようとするも、その言葉を聞かず、爆豪は攻撃をし続ける。
「——待ってってば!!!」
「逃げんな!! 戦えェ!!!」
爆豪が緑谷へ向かい爆破をしようとするも、緑谷はその両手を脚でうまく上に蹴り飛ばし、爆破を上へと向かせた。
その際、爆豪は幼い頃から今に至るまでのことを思い出しながら、ずっと「なんで」と言っていた。
そして転倒し地面に腰を付け、それを見て緑谷は心配しかけよるも爆豪はその手を弾く。
「戦えよ、何なんだよ、何で……何でずっと後ろにいたやつの背中を追うようになっちまった…クソ雑魚のテメェが力を付けて、オールマイトに認められて、強くなってんのに……! なのに何で! なんで俺は…俺は……——」
「——俺はオールマイトを終わらせちまってんだ!?」
その言葉を聞いた緑谷は固まってしまっていた。
「俺が強くて、
攫われてしまったことによる平和の象徴の力の消失と引退。全ては自身の弱さが招いたことだと爆豪は感じ、あの日からずっと、誰にも言えずに悩み、抱え込んでいた。
一度は同じく拉致された幻神に、自分と同じだからどう思っているかを聞こうとしていたが、あの日、幻神は爆豪と違い、戦い、最後にはオールマイト以外のヒーローたちも戦場に立つことを認め、共に戦い勝利を導いていた。
——アイツは、俺よりも強ぇから許された。
——オールマイトも一緒に戦うことを認める程、アイツは強かった。
——結局は、俺が攫われたことが原因なんだ。
だからこそ誰にも言えず、抱え込んでいたのだ。
そして今、幼馴染である緑谷に、感情任せにその深い痛みをぶちまけていた。
「ッ!」
そして攻める爆豪を緑谷は、その顔を蹴った。
「——ちょうどいい、【シュートスタイル】が君に通用するかどうか試したかった…やるからには全力だ」
緑谷はボソボソといいながら爆豪へと向き直り、構える。
「サンドバッグになるつもりはないぞ! かっちゃん!!」
この戦いに、勝ち負けに、意味はないかもしれない。それでも緑谷はやらないといけないと思っていた。それは今の爆豪の気持ちを受け止められるのは、幼馴染であり同じ人に憧れた、自分しかいないのだと強く思ったからだ。
そして彼らの激しい戦闘が行われた。
「(考えさせるな!!)」
自身の爆破の威力を乗せて回転していき、緑谷へと向かって行く。
「(まずい! 着地までに距離を詰められる!!)」
緑谷は脚で反撃しようとするも、爆豪は『爆破』を器用に扱い、瞬時に背後に回る。
そして腹に"個性"なしでぶん殴り飛ばした。
緑谷はフェンスに身体をぶつけるも、すぐに爆豪が迫り、避ける間もなく腕を掴み投げ飛ばした。
「ダメだ、僕の
緑谷はブツブツといいながら、爆豪を見て笑っていた。
「何笑ってんだァ!」
爆豪はまた詰める。緑谷は回避する。
「サンドバッグにゃならねぇんじゃねぇのかよ!!」
「ならない!!」
緑谷はそう言いながら爆豪へと向かって行く。
「どうせまた何か企んでんだろ!?」
「くっ!!」
【
「そういうのが気色悪かったんだ!!」
すかさず爆破で上へと吹き飛ばす。
「何考えてるかわかんねぇ……どんだけぶったたいても張り付いてきやがって! 何もねェ野郎だったくせに、俯瞰したような目で見てきやがって!」
「ッ!」
「まるで、全部見下ろしているような、本気で俺を追い抜いていくつもりのその態度が……——」
「——目障りなんだよォ!!!」
「そんな風に、思ってたのか……」
着地し、爆豪が緑谷へ対して思っていたことを聞いた緑谷は驚愕している。
それもそのはずだ。幼少期からバカにされ、時には、周りも同じだったからこそ何も言われなかったものの、問題が起きて下手すれば警察沙汰になってもおかしくないことを緑谷は爆豪にやられ続けていた。普通の人間なら、その時点で関りを切り、顔も見たくないはずだ。
「前にも言ったように、何もなかったからこそ……」
だが緑谷は違う。彼は普通の人とは違うのだから。
「嫌なところを同じくらい、君の凄さが鮮烈だったんだよ」
緑谷は【フルカウル】を纏う。
だが見た目こそ変わってないものの、どこか妙な感じになっていた。
「僕にないものをたくさん持っていた君は——」
「ッ!」
爆豪もその様子に気づき、汗を一粒流した。
「——オールマイトよりも身近な凄い人だったんだ!!」
そして一気に爆豪へと駆け出す緑谷。
「(さっきよりも数段速ぇ!!)」
その速度に爆豪は驚いている。
「(間に合わねぇ!
反撃、カウンターなどは間に合わないとすぐに悟った爆豪は防御に移る。
そして緑谷の脚が爆豪の腕に命中するも、その威力は先ほどまでよりも上がっていた。
それもそのはず、この時緑谷は感情が高ぶっており、『OFA』のコントロールが少し乱れていたのだから。【フルカウル】の常時%は5%。それが今出せるギリギリの%だと緑谷は意識し続けていた。
だが緑谷の身体は、緑谷が気付いていないだけで成長している。
今緑谷が纏える【フルカウル】は常時5%から8%。
「——君を、追いかけていたんだッ!!」
5%から8%。
決して劇的な変化ではない。
だがその僅かな差が、一瞬が、爆豪を追い越していた。
そして爆豪は『爆破』を。
緑谷は【フルカウル】常時8%を。
「「うァァアアアッ!!!」」
緑の閃光と爆破の閃光が一瞬で距離を詰めて更に激しい戦闘を繰り広げ始めた。
「こんなもんかよォ!!!」
「はぁああッ!!!」
緑谷は上へと跳び上がる。
「(空中なら俺に分がある!)」
爆豪も同じく爆破の勢いで飛び上がるが、左腕は緑谷の【シュートスタイル】を防ぐために防御態勢に入っていた。
「(意味もなく跳んだわけじゃない! かっちゃんの頭には【シュートスタイル】が強く刷り込まれた! 君の発散の喧嘩にただ付き合うほど、僕はお人好しじゃない!!)」
先ほどまで脚を構えていた緑谷は、左腕を握りしめて構え始めた。
「(【シュートスタイル】は腕を酷使しない為の戦い方。5%なら使えないとは、言ってない!!)」
「ッ!?」
その左腕に爆豪も気づいたが、もう既に間に合わない。
「(勝利の権化である君に! 勝ちたいッ!!!)」
「ぐぅ!!」
そして握りしめた左の拳を、爆豪の頬へと強くぶつけた。
「(僕を選んでくれたオールマイトに応えるために!)」
緑谷の脳内には、神野の最後、オールマイトが送った一言のメッセージが浮かんでいる。
「(そして……——)」
同時に、
——今度こそ、陽だまりを守るために!!
「——負けるかァァアア!!!」
だが爆豪は緑谷の袖をワシ掴むと、片足を緑谷の身体に蹴り、上下を逆にさせる。
そして自身が上になった瞬間、空いている手を上に向け、『爆破』で一気に地上へと急降下。
その勢いのまま緑谷を押し、地面に叩きつけた。
煙幕が広がり、やがて消えていく。
そこには互いにボロボロでありながら、緑谷を抑えている爆豪がいた。
「俺の勝ちだ……オールマイトの力…そんな力持ってても、自分のもんにしても……俺に負けてんじゃねぇか」
息を荒くしながら爆豪は緑谷の顔を強く握りしめる。
「なんで、負けてんだ…なぁ——」
「——そこまでにしよう。2人とも」
そこに第三者の声が響き渡る。
2人も良く知る人物の声。
「悪いが、聞かせてもらったよ」
「オール…」
「マイト…」
その正体は2人の憧れ、オールマイトだった。
——◆——
「君のせいじゃない」「どのみち限界は近かった」とオールマイトは事情を話し、爆豪を励ましていた。だが素直じゃない爆豪は、真っすぐ受け取れないでいる。
それでもオールマイトは根気よく爆豪に声をかけた。その言葉は爆豪の心にも響くものがあったかのように、少しばかり様子が変わっていた。
「そんなん、聞きてぇわけじゃねぇんだよ」
爆豪は腰を地に付けて、顔を隠すように俯いた。
「おまえ……一番強え人にレール敷いてもらって、負けてんなよ……」
「……強くなるよ。君に勝てるように」
爆豪は溜め息を吐いて話を続ける。
「デクとあんたの関係知ってんのは?」
「リカバリーガールと校長……生徒では、君だけだ」
「……やっぱ歌女は知らねぇのか」
爆豪も内心意外だと思っていた。
あの事件の後なら、幻神も必然的に知っているのだろうと。
「君の言う通り天堕少女は『ワン・フォー・オール』のことを知らない。彼女自身、私に聞いてくる様子がなかった。なんせ彼女はそれ以上のことがあの事件であったんだ」
『
『OFA』のことなど頭から消えてもおかしくない程に、幻神は幻神でいろいろと濃すぎる夜でもある。
そしてそれを知るのはオールマイトと義母であるギア、事情聴取で聞いていた『OFA』の共有者でもある塚内並びに校長の根津だけだった。
「彼女もいずれ『ワン・フォー・オール』のことを聞いてくるかもしれないが、今のところはないよ」
「……それでもバレたくねぇんだろ? オールマイト。あんたが隠そうとしてたから、どいつにも言わねぇよ……クソデクみてぇにバラしたりしねぇ、ここだけの秘密だ……」
「秘密は……本来私が頭を下げてお願いすること。どこまでも気を遣わせてしまって……すまない」
「遣ってねぇよ。言いふらすリスクとデメリットがデケェだけだ」
「緑谷少年。こうなった以上は爆豪少年にも、納得がいく説明がいる。それが筋だ」
そしてオールマイトは爆豪に話した。
緑谷の受け継いだ"個性"『OFA』は、巨悪に立ち向かうため、代々受け継がれてきた力であること。
オールマイトはその力でNo.1ヒーローに、平和の象徴になったこと。
傷を負い限界を迎えていたこと。
そして、緑谷を後継に選んだことを。
「暴かれりゃ力の所在やらで混乱するってことか……何でバラしてんだクソデク」
「うっ…」
緑谷は返す言葉なく俯くだけだった。
「……オールマイト、歌女の"個性"は知っとるんか」
「あぁ、あの戦いで知ったというべきか……だが私の場合は偶然知ってしまったと言ったほうがいい。だからこそ私からは話せない……天堕少女が言うまでは、私も言わないつもりでいるさ」
継承、代々などはないものの、AFOの手によって生まれた特殊な"個性"。
『OFA』と似て異なる『
故にオールマイトも、誰にも言わないでいた。
「そうかよ……けど結局俺のやることは変わんねぇや」
「…そうだね」
「ただ今までとは違ぇ、デク」
「?」
爆豪は横目で緑谷を見て言った。
「お前が俺や周りを見て、吸収して強くなったように…俺も全部、俺のもんにして上へ行く。選ばれたお前よりもな」
「…じゃ、じゃあ僕は、その上を行く。行かなきゃいけないんだ!」
緑谷も爆豪にそう言えばと、爆豪はキッ!となり声を上げた。
「だからそのテメェを超えてくっつってんだろうが!!」
「いやだからその上を行かないといけない話で!」
「あぁ!!?」
「(以前と違って、真っ当にライバルっぽくなったな)」
後ろで言い争ってる2人を見て、オールマイトは微笑んでいた。
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ここだけの話『ギャラルホルン』は"個性"としてでも……
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ある
-
ない
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何もせず、傍観者として見届ける
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そんなことより早く出幻をくっつけろ