この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!




協議

 

 

 

 

インターン初日を終え、ナイトアイの指示により今日からしばらくは通常通り、インターンには行かずに学校での学業をメインにされている。

だけど、私は壊理ちゃんのことばかりでずっとモヤモヤしている。きっとそれは出久くんも同じなはずだ。授業も実技も真剣に取り組んでいるのに、授業中は上の空、実技もペースを乱してミスを起こしまくっているのだから。

そんなことが数日続いていたある日のこと、久々に私と出久くんはインターンに呼ばれた。

 

しかも偶然なのか、同じインターンが決まっていた切島くんに、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんまでもインターンに呼ばれている。

駅までは同じでも、本来ならそこで別々の行先になるはずにもかかわらず私たちは降りる駅も、行く方向も全く同じで、全員が良く分からないままただ呼ばれた場所へと向かうべく歩くしかなかった。

結局たどり着いた先は私たちのインターン先であるナイトアイ事務所。

でも他のみんなも同じくここに呼ばれたらしく、何故と思いながら入れば、そこには多くのヒーローたちがいた。

 

「ッ! 相澤先生!?」

 

「先生が何故ここに?」

 

その中にまさかの相澤先生もいる。

 

「急に声をかけられてな、ざっくりだが事情も聞いてる」

 

そんな中、お茶子ちゃんたちのインターン先である『リューキュウ』が、ナイトアイに声をかけ、ナイトアイは話し始めた。

 

「あなた方に提供して頂いた情報のおかげで、調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます」

 

何故協議…でも、あのことなのだろうか

 

 

——◆——

 

 

「我々ナイトアイ事務所は約2週間程前から、死穢八斎會という指定(ヴィラン)団体について、独自調査を進めてぇ…います!!」

 

バブルガールの司会で協議が始まる。

喋りが少したどたどしいあたり、大勢の前で話をするのは緊張するタイプだとわかる。

 

「きっかけは?」

 

「『レザボアドッグス』と名乗る強盗団の事故からです」

 

「そんな事故ありましたね」

 

「警察は事故として処理しましたが、腑に落ちない点が多く、追跡を始めました」

 

そんな事件があったのか……あ、いや…初日の時にさりげなくナイトアイが言ってたっけ?

治崎たちが巻き込まれた事件だとか…。

 

「私『センチピーダー』がナイトアイの指示の下、追跡調査を進めておりました。調べたところ、死穢八斎會はここ1年間に全国の組織外の人間や同じ裏稼業団体との接触が急増しており、組織拡大と資金集めに動いていると見ています」

 

ムカデの顔にキッチリとした正装……何だろう。

刺さる人には刺さる姿ですね。と思わずにはいられなかった。

 

「そして調査開始してからすぐに(ヴィラン)連合の1人、分倍河原仁…(ヴィラン)名、トゥワイスと接触しました。尾行を警戒され、追跡はかないませんでしたが、警察の協力で組織間に何らかの抗争があったことを確認」

 

「連合に関わる話ならということで、俺や塚内にも声がかかったんだ」

 

黄色いマントを羽織る小さなおじいさん……確か神野区でオールマイトやお義母さんと一緒にいた、グラントリノってヒーローだったはず。

 

「え~このような過程があり、『HN』で皆さんに協力を求めたわけで——」

 

「——そこ、飛ばしていいよ」

 

「——うん!」

 

バブルガールが話を続けるが、緊張のあまりもたついてしまっている。

その中で飛び出した『HN』、『ヒーローネットワーク』について波動先輩がお茶子ちゃんたちに説明する。それが癇に障ったのか、私の隣に座っている褐色肌のヒーローがついに口を開いた。

 

「雄英生とはいえガキがこの場にいるのはどうなんだ? 話が進まねぇや、本題の企みにたどり着く頃にゃ、日が暮れてるぜ」

 

「——抜かせ! ここにいる2人はスーパー重要参考人やぞ!」

 

「俺…たち?」

 

「ノリがキツイ……」

 

切島くんのインターン先であるヒーロー『ファットガム』が立ち上がり反論するが、切島くんはよく分かっておらず、天喰先輩は縮こまっている。

 

「八斎會は認可されていない薬物の捌きを、シノギの1つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました」

 

「昔はゴリゴリにそう言うんぶっ潰しとりました。そんで先日の烈怒頼雄斗(レッドライオット)デビュー戦、今までに見たことない種類のもんが環に撃ち込まれた……——」

 

 

「——"()()"()()()()()()

 

 

それを聞いた瞬間、私の心臓は悲鳴を上げるかのように大きく高鳴った。

同時に私の頭も真っ白になった。

"個性"を壊す……それって、『神獣鏡(シェンショウジン)』と同じ効果ってことになる。

 

"個性"を破壊してしまう薬物という、誰も想像し得なかった物の登場に会議室がザワつく。

"個性"そのものに干渉する手段は非常に少なく、そういう"個性"を持っている人は希少だと聞いているから、余計なのだろう。

そしてプロヒーローの数人は、私に視線を向けており、私も思わず俯いてしまっている。

 

「どうやら俺の『抹消』とはちょっと違うみたいですね。俺は"個性"を攻撃してる訳じゃないので。『抹消』は"個性因子"を停止させるだけで、因子そのものには攻撃出来ません」

 

「環が撃たれた直後、病院で診てもらったんやが、その"個性因子"が傷ついとったんや。幸い今は自然治癒で元通りやけど」

 

「その撃ち込まれた物の解析は?」

 

「それが環の体は他に異常なし。ただただ"個性"だけが攻撃された。撃った連中もだんまり、銃はバラバラ、弾も撃ったっきりしか所持してなかった! ただ切島君が弾いてくれたおかげで、中身の入った1発が手に入ったっちゅうわけや!」

 

それでスーパー重要参考人ってわけか。

切島くんの『硬化』なら確かに撃たれた弾丸も固めた状態なら弾いてダメージを無効にできる。

当の本人はよくわかっていないようだけど。

 

「そしてその中身を調べた結果、むっちゃ気色悪いもんが出てきた。——人の血ぃや細胞が入っとった……!

 

再び頭が真っ白になった。

その弾は人の血肉を元に作られている……それはつまり、その弾となった人を兵器として利用しているということになる。

 

「つまりその効果は人由来、"個性"ってこと? "個性"による"個性"破壊……」

 

「話が全然見えてこないんだが、それがどうやって八斎會と繋がる?」

 

「今回切島君が捕らえた男、そいつが使用した違法薬物な。そういうブツの流通経路は複雑でな。今でこそかなり縮小されたが、色んな人間や組織が何段階にも卸売りを重ねて、やっと末端に行き着くんや」

 

ファットガムが言うには、そのいくつもの流通経路の中に死穢八斎會と繋がりがある組織があったと。

しかしそれだけでは死穢八斎會を黒と断定するには力不足であり、むしろ無理やり黒としてこじつけようとしていると見ているヒーローも一部いた。

 

「若頭、治崎の個性は『オーバーホール』。【対象を分解し修復が可能】という力です。分解、一度壊し直す"個性"、そして"個性"を破壊する弾……治崎には壊理という娘がいる。出生届はなく詳細は不明ですが、ミリオと緑谷、天堕が遭遇した時は手足に夥しく包帯が巻かれていた」

 

「まさかそんなおぞましいこと……」

 

「超人社会だ、行動次第で誰もがなんだってできちまう」

 

プロたちはすぐに理解した。

隣にいる出久くんと通形先輩もまた同じで、私も同じだ。

 

「何、何の話っすか…?」

 

「やっぱガキは要らねぇんじゃねぇの? 分かれよな…つまり治崎って野郎は、娘の体を銃弾にして捌いてんじゃね? ってことだ」

 

やり方は違くても……美音や、メドゥーゴルとマグニール……あの記憶で見た子供たちと同じように……駒として、いい様に……!!!

 

「実際に銃弾を売買してるのかは分かりません。現段階としては性能があまりに半端です。ただ仮にそれが試作段階にあるとして、プレゼンのためのサンプルを仲間集めに使っていたとしたら……確たる証拠はありません。しかし全国に渡る活動の拡大、もし弾の完成形が完全に"個性"を破壊するものだとするなら、いくらでも悪事のアイデアが湧いてくる」

 

「ケッ、こいつらが子供保護してりゃ一発解決だったんだじゃねぇの?」

 

胸の奥から…憎悪がこれでもかというほどに、噴水のように湧き上がる。

その場におらず、結果だけを見た言い方にものすごい殺意が沸いた。

今すぐに『イグナイト』を乗せた【神殺し】の拳をコイツの顔面に放ってやりたい。

 

「全ては私の責任だ、3人を責めないでいただきたい。知らなかったこととは言え、3人ともその子を救けようと行動したのです。緑谷と天堕はリスクを背負いその場で保護しようとし、ミリオは先を考えより確実に保護できるように動いた。今、この場で一番悔しいのは…この3人です」

 

「「——今度こそ必ず壊理ちゃんを保護する!!!」」

 

「そう、それが私たちの目的となります」

 

壊理ちゃんの保護が最大目的。

ならその作戦に乗らないわけにはいかない。

 

「……ガキが粋がるのもいいけどよ。推測通りだとして、若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった核なんだろ? それが何らかのトラブルで外に出ちまってんだ。あまつさえガキんちょヒーローに見られちまった。素直に本拠地に置いとくか? 俺なら置かない。攻めるにしてもその子が居ませんでしたじゃ話にならねぇぞ。どこにいるのか特定出来てんのか?」

 

「確かに…どうなの? ナイトアイ」

 

「問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不透明な以上、一度で確実に叩かねばならない」

 

すると後方の巨大モニターに日本のマップが映し出されて、八斎會のマークが各地にランダムに配置されている。

 

「そこで八斎會と接点のある組織、グループ及び八斎會の持つ土地を、可能な限り洗い出しリストアップしました。皆さんには各自その箇所を探っていただき、拠点となり得るポイントを絞ってもらいたい」

 

「……オールマイトの元サイドキックの割にずいぶん慎重やな。回りくどいわ! こうしてる間にも壊理ちゃん泣いとるかもしれへんのやぞ!」

 

ナイトアイの立てたやり方にあまり納得できていないのか、ファットガムはそう叫ぶ。

 

「我々はオールマイトになれない。だから分析と予測を重ね、救けられる可能性を100%に近づけなければ。」

 

「焦っちゃいけねぇ。下手に大きく出て捕らえ損ねた場合、火種が大きくなりかねん。ステインの逮捕劇が連合のPRになっちまったようにな。むしろチンピラに"個性"破壊なんつう武器を流したのもそういう意図があってのものかもしらん」

 

「考えすぎやろ! そないなこと言うとったら身動き取れへんようなるで!」

 

「——あの、1ついいですか?」

 

そんな中、相澤先生が挙手し喋り始めた。

 

「どういう性能かは存じ上げませんが、サー・ナイトアイ、未来を予知できるなら、俺たちの行く末を見ればいいじゃないですか。このままでは少々、合理性に欠ける」

 

あ、確かに。

ナイトアイの"個性"は『予知』だ。

それで見ればどう対策すればいいのかもわかるはず。

 

「それは出来ない………私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり1日1時間、1人しか見ることが出来ない。フラッシュバックのように、他人の生涯を記録したフィルムを見られると考えていただきたい。ただしそのフィルムは全編、人物の近くからの視点。見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ」

 

「いや、それだけでも十分過ぎるほど分かるでしょう。出来ないとはどういうことなんですか?」

 

「例えば、その人物に近い将来、死……ただ無慈悲な死が待っていたらどうします?」

 

……つまり、場合によってはその人の死を先に知ってしまう…ということなのだろうか。

 

「私の"個性"は行動の成功率を最大まで引き上げた後に、勝利の駄目押しとして使うものです。不確定要素の多い間は無闇に見るべきじゃない」

 

そんなナイトアイにロックロックはいきり立ち、「回避してやるから俺を見てみろ」と言うが、ナイトアイはそれも一蹴した。

 

「……はぁ、とりあえずやりましょう。困っている子がいる、これが最も重要よ」

 

「娘の居場所の特定、保護。可能な限り確度を高め、早期解決を目指します。ご協力…よろしくお願いします」

 

気持ちを切り替えたナイトアイの言葉を最後に、会議は終わった。

 

 

——◆——

 

 

 

休憩スペース。

私たち学生はそこに集まっている。

 

「強引にでも保護しておけば、今頃壊理ちゃんは……」

 

「そんなことが……悔しいな」

 

重い空気の中、あの日起きたことをみんなに話していた。

その最中に、エレベーターから相澤先生が降りて来た。

 

「通夜でもしてんのか」

 

「ケロ、先生……」

 

「あぁ、学外ではイレイザーヘッドで通せ……いやしかし、今日は君たちのインターン中止を提言しに来たんだがな

 

「えぇ!? 今更なんで!?」

 

インターン中止。

つまりは今回の作戦にも加われないという意味でもある。

それを知って驚かずにはいられなかったが、先生は「(ヴィラン)連合が関わってくる可能性がある」と、「その場合話は変わってくる」と言った。

何度も雄英は(ヴィラン)連合にしてやられている……それに、あの会議にいたプロヒーローの数名は、連合との関りが出てきた瞬間に疑いの眼差しを向けてきていた。

 

「ただなぁ緑谷、お前はまだ俺の信頼を取り戻せてないんだよ」

 

「……ッ」

 

「残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと…俺は確信してしまった。俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう、緑谷」

 

出久くんの目の前でしゃがんだ相澤先生は、右手をコツンッと彼の胸に当てた。

 

「わかったか? 問題児」

 

そんな相澤先生は私にも視線を向けた。

 

「お前はどうする、天堕。世間ではお前の立場は半々……いわばまだ疑われ、どっちに転がってもおかしくない状況にある。まぁお前も緑谷同様に、止めたところで飛び出すってのがわかっちまうんだ」

 

「……答えはとっくに決まっていますよ、イレイザーヘッド」

 

「……そうか、なら俺はそんなお前を、いや、お前らをできる限り見て、時にはフォローしてやる」

 

相澤先生に言われ、大きく返事しながら頷く。

先輩たちも先輩たちで励み合い、気持ちを切り替えていた。

 

「気休めを言う。掴み損ねたその手は、必ずしも壊理ちゃんにとって絶望だったとは限らない。前向いて行こう」

 

皆に火が点いていった。

 

 

 

 






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