この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

83 / 108

ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!




救けるため、ワタシハ……

 

 

 

 

幻神が単独になり、治崎のもう1つの目的に気づき始めた頃。

分断された緑谷たちは、鉄砲玉『八斎衆』を天喰が一人で「完封する」と宣言し、踏み留まって足止めをしている。

その間に緑谷たちは壊理救出のため治崎の下へと急ぎ向かっていた。

 

「天喰先輩、大丈夫かな? やっぱ気になっちまう…!」

 

「うん……」

 

「(後輩からの信頼ゼロやな…まぁー口で大丈夫言うても、環はちっさいとこばっか見せとるからしゃあない…) ただ! 背中預けたら信じて任せるのが漢の筋やで!!!」

 

「先輩なら大丈夫だぜ!」

 

「逆に流されやすい人っぽい!」

 

その天喰を切島と緑谷は心配していたが、ファットガムのフォローによりすぐに切島は切り替えた。

 

「『サンイーター』が作ってくれた時間、1秒も無駄にできん!」

 

「しゃあっこらぁ!」

 

「(暑苦し…)」

 

気合を入れ直す切島に対しロックロックは、心の中で暑苦しいと小さく愚痴っていた。

 

「それにしても妙だ。地下を動かす奴がなんの動きも見せてこないのは変だ。何の障害もなく走ってるこのタイミングで邪魔してこないとなると……地下全体を把握し動かせるわけではないのかもな。上に残った警官隊もいる。もしかすると、そちらに意識を向けているのかもな」

 

「把握できる範囲は限定されていると?」

 

「あくまで予測です。奴は地下に入り込んで操っている。同化したわけじゃなく、動き回って見たり聞いたりしてるとしたら、地下を操作するとき本体が近くにいる可能性がある」

 

入中(いりなか)常衣(じょうい)

"個性"『擬態』

無機物に対し、通常は冷蔵庫程の大きさまでなら入り込み擬態することができる。

現在は"個性"をブーストさせる薬物品、通常トリガーを、それも身体への影響が大きいものを使用し、地下通路そのものに擬態することで迷宮を創り出している。

そして擬態した地下通路にも見える範囲は入中本人の視野角でしかないため、その全てを操るのは不可。故に、本体である入中が中で移動し対象を見つけて操作する必要がある。

 

「我々の邪魔をしようと、そこで目なり耳なり本体が覗くなら見ることができま——」

 

次の瞬間、壁の一部が蠢き、イレイザーヘッドを狙い真っすぐ伸び、捉えた。

 

「イレイザー!」

 

「ファット!?」

 

完全に飲み込まれ、分断される直前。

ファットガムがイレイザーヘッドを突き飛ばし身代わりになる形で入れ替わる。

結果イレイザーヘッドは無事なものの、ファットガムともう一人が身代わりとして分断されてしまう。

だがその2人を気にする暇はない。

 

「ッ! また地下が動き始めました!!」

 

緑谷の叫びに全員が周りを見渡す。

天井、壁、地面、全てが再びうごめき始めていた。

 

「ロックロック!」

 

「リーダーぶるない! この窮地、元はと言えばあんたの失態だ! 【デッドボルト!】」

 

ロックロックが壁に手を当て"個性"を発動させる。

すればその周辺ごと地下のうごめきが停止された。

 

「こっちへ! この辺はもう動かねぇ! 狭さは言うなよ! セキュリティマックスの【デッドボルト】だと、そう何ヶ所も締めれねぇ…! これが俺の限界範囲!」

 

警察らが急ぎロックロックの下へ駆け出す。

 

「ッ! 締めてねぇところからまた来るぞ!」

 

それを入中は許さないとばかりに、ロックロックの"個性"の効果範囲から地下を操り、圧縮死させるために壁を伸ばす。

 

「(『ワン・フォー・オール』【フルカウル・シュートスタイル】……! ) 【スマッシュッ!!!】」

 

その壁を緑谷が飛び出し、【シュートスタイル】にて迫りくる壁をすべて破壊していく。

そのまま緑谷は先陣を切りながら破壊をしていき、その後ろを他ヒーローと警察らが進んでいく。

その間にイレイザーヘッドは入中を探すも、見つけることができない。

 

「(埒が明かない…!! それでも、諦めない……みんなが紡いだ道を止めてたまるかァ!!!)」

 

緑谷は迫る壁を破壊し続ける。

だがその直後、壁が引いていき、通路が1つの大きな部屋の広さまで解放された。

 

「開いた!?」

 

「何のつもりだ…?」

 

全員が入中の意図を読めず、困惑している瞬間——

 

「うわっ!?」

 

「デク!」

 

「なっ!」

 

——緑谷たちの地面と天井、その両方から壁が複数生えて、降りて迫る。

それに慌てながらも全員が避ける。

だがその壁は完全に壁として封鎖するかのように閉じ、動かなくなった。

 

「すみません!」

 

「気にするな。しかし何故今さら分断を……」

 

3つに分断。

1つがサー・ナイトアイと警察ら。

1つが緑谷とイレイザーヘッド。

1つがロックロック単体である。

壁は浅くないが、今更の分断に何か意味があるのか、ヒーローと警察らは更に入中の意図が分からなくなり始めていた。

 

「壁は厚くない。動きやすくしてでも我々をあえて分断させるということは、それを補って余りある策があるということだ。気をつけろ、来るぞ。次の一手が!」

 

サー・ナイトアイの言葉に全員が身構える。

その中で、1人単体で分断されているロックロックだけは内心サー・ナイトアイに文句を言っていた。

だがそのロックロック背後に1人の影が現れる。

 

「ッ!」

 

気配に気づき即座に振り向く。

そこには(ヴィラン)連合の1人、トガヒミコがナイフを持ち襲い掛かろうとしており、ロックロックは咄嗟に己の右手でナイフを突き刺されながらも防御する。

 

「『施錠』!!」

 

「あら?」

 

そのまま"個性"を使用。

ナイフが触れていたため、ナイフだけがその場で施錠され止まる。

 

(ヴィラン)連合!!」

 

反撃とし、反対の拳を握り殴る。

だが殴られたトガヒミコは泥となり崩れた。

直後、ロックロックは口を押えられ、そのままナイフを背面からわき腹を突き刺されてしまう。

 

「ロック! どうした!?」

 

「イレイザー、退いてください!」

 

それに気づいた緑谷とイレイザーヘッドは、緑谷が壁を破壊することで合流する。

だがそこには血を流し倒れているロックロックと、もう一人無傷なロックロックだけがいた。

 

「偽物が急に現れて襲ってきやがった! 気をつけろ!」

 

「(ッ! 刀傷……)」

 

イレイザーヘッドは倒れているロックロックを確認するが、負傷した身体の傷は鋭利な物によるものと気づき、疑問を抱く。

その一方、無傷のロックロックは緑谷の心配をし距離を詰めていた。

しかしイレイザーヘッドはロックロックが2人いるという、片方は偽物。

そして刀傷による負傷を見たことと、サー・ナイトアイの報告にあった連合との関係を思い出していた。

 

「わっ!!」

 

その瞬間、無傷のロックロックはナイフを取り出し緑谷へ振り下ろそうとした。

瞬時にイレイザーヘッドが『抹消』を発動させ、襲い掛かろうとしたロックロックが泥のように溶け、その正体であるトガヒミコが現れる。

 

「トガヒミコ…!?」

 

「——トガ! そうだよトガです! 覚えててくれた? また会えるなんて嬉しい! 出久くん嬉しいなぁぁ!!」

 

トガヒミコはイレイザーヘッドに目もくれず、そのまま緑谷にしか目がないかのように、夢中で襲い掛かる。だがイレイザーヘッドが捕縛布でトガヒミコを捕らえた。

 

「ここまでだ! トガヒミコ!」

 

しかしトガヒミコはその捕縛布をそのまま利用し、イレイザーヘッドの背後へ回り背面にナイフを突き刺した。

 

「邪魔です」

 

「先生!」

 

イレイザーヘッドは自身が装備しているナイフで反撃するも、トガヒミコは回避。

捕縛布の拘束を解き、ナイフを捨てて距離を取る。

その直後、追跡させない為か壁が上から落ち分断させた。

 

「(この連携…連合と八斎會は完全に協力体制にある。さっきの分断は、連合を入れるためってわけか……)」

 

「先生!」

 

「大丈夫だ。それよりもロックロックの止血とナイフの回収を。トガは血を使うらしい」

 

「…はい!」

 

緑谷はイレイザーヘッドの指示のもと、トガヒミコが投げ捨てたナイフを回収し、負傷しているロックロックの下へと向かった。

 

 

——◆——

 

 

同時刻。

『黒いガングニール』のアームドギアとマントによるドリル状の高速回転でコンクリートを貫き続けて、1つの大きな空間に飛び出た。

 

「ここは…?」

 

壁や床が歪ながらに大きく広がっている空間。

そんな歪な空間の中央あたりに数人、人がいた。

 

「ッ! 先輩!!」

 

その中の1人が通形先輩で、保護対象である壊理ちゃんもいる。

だけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

スラスターを噴射させて一気に飛び、先輩の傍まで移動し、護るように立つ。

 

「遅れました! 無事ですか!?」

 

チラッと先輩を見るけど、あの先輩は明らかに負傷している。

ある意味では無敵でもある"個性"のはずなのに……。

 

「……お前は、天堕幻神か」

 

「治崎……先輩に何をしたァ!!」

 

アームドギアを構えて問いただせば、治崎は答えた。

 

「その男は"個性"を失ったんだ。積み上げた力を失ったんだよ……」

 

「……は?」

 

失った…?"個性"を…失った!?

 

「まさか…"個性"を壊すクスリ!?」

 

その完成品が出来ていて、それを先輩に撃ったってことなのか!?

私が驚いている中、治崎は喋り続ける。

 

「救おうとした壊理(その子)の力で、全てを無に帰したんだ!!」

 

ッ!コイツ……!!!先輩がここまで力を付けるのに、どれほどの積み重ねをしていったか…!!

 

「………だが、またお前に会えてうれしいよ」

 

すると治崎は私に手を伸ばしてきた。

それも差し伸ばして、手を取ってほしいかのように。

 

「天堕幻神……俺と一緒に来い」

 

「………いやだ。どうせ狙いは【"個性"殺し】の……『神獣鏡(シェンショウジン)』の能力でしょ?」

 

「気づいていたか………いや、それでもだ。お前はそこにいる男や病人どもとは違う! お前はこの世界で唯一の特効薬!! 世界をあるべき形へ戻す力を持った、病に侵された奴らを元の姿に戻すために生まれた存在なんだ!!! お前が本当に立つべき立場を俺は理解している!! その立つべき場所を用意できる!!」

 

反吐が出る。

それに……——

 

——ふざけんじゃねぇ!!!

 

『黒いガングニール』のまま腰部にだけ『イチイバル』の装甲を形成させる。

そして横にスライドすることで展開し、ミサイルを発射させた。

治崎は壁を形成してすべてのミサイルを防ぐ。

 

「…先輩、壊理ちゃんの傍にいてあげてください。ここからはドンパチしまくりますから」

 

「ッ! カッコ悪いけど、頼む……!!」

 

その間に先輩は壊理ちゃんの下へ移動してもらい、私は息を整えた。

 

 

——Killter Ichaival tron(同じ辛き思いをさせない為に)——

 

 

自分のとして『聖詠』を歌う。

瞬間、心臓がドクンッ!!!と高鳴り、『黒いガングニール』が赤い輝きになって、私を包み込むように大きく輝いた。

 

肌にピッタリと張り付く赤を基調とするバトルスーツを身に纏い、両足には赤と白のストッキングとヒール、両腕には装甲が薄いガントレットを装着。

 

SG-r02 Ichaival

 

後腰には尖ったリボン、ウィングののような大きなスラスターを装着し、連動するかのように正面が開いた輪っか型の装甲が展開し装着。

頭部には上面に3枚の装甲、左右中央に楕円型にその上下に六角形の筒に似た装甲を装着。

 

SYSTEM ALL GREEN

NORMAL OPERATION

 

胸もとの『ギアペンダント』の左右だけがそれぞれ2本ずつルビーピンクと変化した。

 

 

シンフォギアシステム・イチイバル・Ver.XV

 

 

イチイバルを纏った私は瞬時にガントレットを変形させてリボルバーとしてのアームドギアを形成させる。

治崎は私を睨みがら叫んだ。

 

「——なぜわからない…! お前は選ばれた救世主そのものなんだぞ!?」

 

「私は救世主なんかじゃないッ!! ヒーローを志して、日陰との約束と歌を胸に込めて、ただただ太陽に恋焦がれるだけの女子高生だ!!!」

 

 

♪【Take this! "All loaded"】♫

 

 

♪ 鼻をくすぐるGunpowder & Smoke ♫

 

「どうして理解しない! お前は選ばれたんだ!! 俺の計画を完遂させられる理想の特効薬なんだァ!!!」

 

声帯を変えて歌い、リボルバーの銃爪(トリガー)を引いて銃撃する。

 

♪ ジャララ飛び交うEmpty gun cartridges ♫

 

対する治崎は手を地に付けて壁で弾丸を防ぎながら、別で棘を形成させて差し向けてくる。

私は上に跳躍して躱しながら、照準を迷わず治崎へ向けて撃ち続ける。

 

♪ 紅いヒールに見惚れて ♫

♪ うっかり風穴欲しいヤツは ♫

♪ 挙手をしな ♫

 

「(【"個性"殺し】は確か紫の武装だったはずだ…! それにあの赤いのは見た感じ遠距離……分はこっちにある!!)」

 

棘が伸びてくる。

身体をうまく回し捻ってその攻撃をかわし、棘の上に乗って、治崎に向かって走る。

 

♪ 血を流したって 傷になったって ♫

 

リボルバーをクロスボウに変形させて他に伸びてくる棘を避けながら治崎へと撃ち続ける。

 

♪ 時と云う名の風と 仲間と云う絆の場所が ♫

 

さらに腰部の装甲を横にスライドすることで展開し、ミサイルを発射させる。

棘とミサイルがぶつかり合い、激しい爆発と煙幕が空間に充満していった。

 

♪ 痛みを消して カサブタにする ♫

♪ …あったけえ ♫

 

互いに見えなくなっている間に、私は『シュルシャガナ』のアームドギアであるヨーヨーを形成させる。

 

♪ 現在(いま)を120パーで生きていきゃいい ♫

 

更に片手のクロスボウを弓に変形させることで、ヨーヨーを矢替わりにセットし上に向けて放ち、天井に食い込ませる。

 

♪ そうすりゃちったぁマシな過去に ♫

 

瞬時にピンクの糸状のエネルギーを伝って引っ張ってもらい、上に高速で私自身を引き上げていく。

そのままヨーヨーを引き抜き、踏み台として利用して治崎の奥に行くように跳ぶ。

 

♪ 未来はいつだってこの手にある ♫

♪ (Fire!)疑問?愚問だッ! ♫

 

そして煙幕が晴れていき、治崎の後姿を捉えることができた。

私は逆さまのまま、背面から巨大ミサイル2つに、腰部をスライドして展開して小型ミサイルも全弾発射させる体勢に入った。

 

♪ (Fire!)挨拶無用 ♫

 

「なッ!? 今の一瞬で後ろに!!?」

 

治崎は気づいたようだけど、こっちのほうが一歩速いッ!!!

 

♪ (Fire!) 全身凶器の ♫

 

もう私たちのような悲劇という人生を味わう子たちを増やさない為に…!!!

 

♪ 鉛玉を…… ♫

 

お前らのような奴らから、この胸の歌で救ける為に……!!!

 

喰らいやがれェッ!!!!♪

 

- MEGA DETH PARTY -

- MEGA DETH FUGA -

 

- MEGA DETH PARTY -- MEGA DETH FUGA -で治崎が防御する前に一直線に全てが向かって行く。

そして着弾し大爆発の連発が起こった。

私は身体の上下を戻して着地し、リボルバーを左手に持ち身構える。

 

「(数攻めのドンパチで行ったけど……これでやられるような奴じゃ——)」

 

瞬間だった。

地面が一瞬で破壊と修復が行われ、私のリボルバーを持つ左腕は……——

 

「——がッ!!

 

 

——巨大な棘に貫かれる形で切断された。

 

 

私の視界に映ってるのは、血飛沫と共に宙を舞うリボルバーを持って私の左腕。

関節部からそれは貫かれており、私は左上腕から下の感覚が、理解した瞬間に一気に失うのと痛みが押し寄せて来た。

 

「ゔあ”ぁ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”あ”あ”あ”……ッ!!!!」

 

反射的に左腕を押さえて、苦痛の悲鳴を上げてしまう。そして煙幕が晴れていき、そこにはミサイルを受けてボロボロなものの、手を地に付けて息を荒げている治崎がいた。

 

「他の病人とは違い、選ばれた存在であったと思ったが…力が相応しくない奴に渡ってしまったということか………お前も結局は病人と同じだな」

 

左上腕の断面から血がボタボタと溢れ出て、足元が血で広がっていきながら息を荒げてしまう。

治崎が再び地面を棘にして私に差し向けてくる。

私はその棘を痛みに耐えながら必死に避けて、クロスボウを形成して迎え撃つ。

だけど右わき腹に左足の膝に突き刺さり、右頬にもかすりって負傷した。

 

「(棘の数が増えて、速度もさっきより上がってる……それ、に…!!)」

 

少しづつ、少しづつ視界がぼやけて、瞬きをすると黒く暗い歪んでいく。

そして全身が沸騰するかのように熱くなり始めて……意識、が……朦朧と…………。

 

「お前はおとなしく捕まって——()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

——ドクンッと心臓が鳴った。

コイツは今なんて言った?

 

 

コイツハ、コノクズハ今……何テ、言ッタ……?

 

 

——◆——

 

 

幻神と治崎の戦闘に巻き込まれまいと、"個性"を失えど壊理を守る通形は、煙幕が晴れたことで2人の現状を確認し叫んだ。

 

「天堕さん!!」

 

治崎の奥にて、左上腕から下の前腕を失った幻神。

すれば壊理は通形の戦闘服(コスチューム)であるマントを強く握りしめた。

 

「駄目…やっぱりみんな、死んじゃう……!」

 

「…ッ」

 

力を失えど、人体、肉体的にはまだ動ける通形は幻神の加勢に行こうと考える。

だがその行動はすぐに止まった。

 

「――ヴゥ”ゥ”……グゥ”ゥ”…!!」

 

小さく、それでもその場にいる全員の耳に入り聞こえるうめき声。

そのうめき声は少女のものでありながら、獣とも言い当てれる鳴き声。

 

「ッ! なんだ…!?」

 

「天堕さん…!?」

 

後ろ姿でありながら治崎が戸惑っているのを通形は理解し、その奥にいる幻神を見た途端、通形も息を呑んだ。

そして全身に伝わり始める猛烈な殺意と憎悪。

それはまるで、身体を硬直させ動けなくさせるほどのもの。

 

獣のように喉を鳴らす幻神。

彼女は次第に己の身体を、イチイバルを纏っているその身体を、指先から毛先までギアも含め全てが黒く、黒く塗り潰されていく。

 

 

「ァ”ァ”ア”ア”ァ”………――ア”ア”ァ”ァ”ァ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

獣の咆哮。

そうとしか言い合わせられない鳴き声。

そして幻神はイチイバルのままその身を全て黒く染め上げ、獣へとなり果ててしまった。

その姿を見た治崎は一歩足を引いてしまう。

それほどまでに獣の咆哮は、殺意と憎悪は凄まじいものであるのだ。

 

「ヴゥ”ゥ”……ァ”ァ”ア”ア”ッ!!!!!」

 

前腕から手まで失った左上腕を獣は掲げる。

すれば禍々しい黒きエネルギーが集束していきやがて、()()()()()()()()()()()()

否、腕だけにあらず、その身に受けた傷すべてを再構築して直して見せたのだ。

それを見た治崎は絶句した。

 

「バカな…俺みたいに腕を再構築して直したというのか…!?」

 

腕を失えど、医学に関する知識、身体の構造などを理解していれば元に戻せる。

上手くすれば蘇生さえもできる"個性"『オーバーホール』

幻神の暴走による腕の再生は、ある意味では治崎の"個性"に近しいのだろう。

だがそんなもの知るかと言わんばかりに獣はその赤一色に染まった眼球にて治崎を睨み、獣のごとく四つん這いになり戦闘態勢に入る。

それはまるで、目の前の獲物の命を刈り取るかのごとく。

 

「ヴゥ”ゥ”ア”ァ”ァ”ア”ア”ッ!!!!!」

 

己自身と美音、さらにはメドゥーゴルとマグニールと言った多くの幼き頃から残酷な悲劇を味わった子らを救うため。

そして今、壊理という幼き少女を救うため、胸の歌と共に参った歌姫は獣へとなり果て暴れ出す。

 

 

 

 




ファンブック買ったからこれでいろいろとできる幅が広がる…YES!!!!


もしよければお気に入り登録と評価、感想の方よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。