この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
緑谷は幻神から離れ飛び出す。
治崎は通形と壊理へと棘を差し向けるが、緑谷は2人の傍に瞬時に着地し出力を上げて踏み込むことで地面を盛り上げて壁とした。
「(こいつ、地面を壁に…!?)」
すぐさま緑谷はさらに飛び出し、通形と壊理が逃げれるための通路を切り開く。
「先輩、壊理ちゃんを頼みますッ!!!」
「…! わかった…!!」
通形は負傷している身体を無理やり動かし、壊理を連れていく。
「(身体中が悲鳴を上げている…! でも動ける! 身体中がビキビキと痛いし長くはもたない……けれど、動ける!! 『ワン・フォー・オール』……
「あきらめろ俺の言ったとおりになるだけだ。全員…死ぬ!」
「そんなことにはさせない…! そう決まっていたとしても、その未来を——」
「——捻じ曲げる!!」
緑谷は叫び治崎へ駆け出す。
「小賢しい!!」
治崎は棘を緑谷へ繰り出し、対して緑谷はその攻撃を避けていく。
「(分解でタイミングは計れるけど、避けきれない!)」
治崎は棘の上を渡るため、自身の足元の地を天井へと上げ、緑谷へと飛びだす。
緑谷は出力30%の『OFA』故に
「(それでも耐えろ! 勝つまで!!)」
治崎は緑谷へ触れようとするが、緑谷は上に飛び上がり回避する。
「(時間はかけられない。ダメージを与えても修復される…! なら、一撃で…!!!)」
そのまま天井を足場代わりに足を着かせ、飛びだすと同時に片足を上に掲げた。
「脳天一撃! ——【マンチェスター スマッシュッ!!!】」
そのまま真っすぐと、【マンチェスター スマッシュ】を治崎へと放つ。
だが治崎は間一髪のところでその一撃を、片腕を犠牲に躱した。
「いくら速かろうと、先の3人と比べれば動きの線が素直で見えやすい」
そして片手の2本を地に着かせ、棘を形成させ、緑谷へ攻撃する。
だが地面が細かく砕かれたこともあり、棘も小さく、緑谷の腕や足に突き刺さる程度で済んだ。
緑谷はすぐにそこから離れるも、片膝を着いた。
「ったく、修復と言ってもバラす瞬間はしっかり痛いんだ…!」
「(地面が割れて細かくなってなかったら、でっかい棘で終わってた!)」
自身の負傷した部位を一度分解させ、修復させることで完治させる治崎。
一方で棘が1~2本、腕や足に貫かれている緑谷は息を荒くさせていた。
すれば治崎は「もうやめだ」と言いだした。
「まだ…まだだ…!!」
「あぁ…そうやってルミリオンにも粘られた。諦めない人間の底力は侮れない」
次の瞬間、治崎は片腕を1本突き出し掌をかざす。
するとその掌から口が構築され、自身と融合させている音本の"個性"『
『――お前のせいでまた死ぬぞ!!』
『これが望みなのか!? 壊理!!!』
それを見た緑谷が戸惑っている中、幼女の声が歪な空間に響いた
「私はそんなこと…望んでない!」
「何で…!? 駄目だッ! 先輩と一緒にいるんだ壊理ちゃん!!」
緑谷はすぐに通形の下へ戻るよう叫ぶも、壊理は答えない。
その一方で治崎は立て続けと言わんばかりに『
『壊理…こいつ1人でこの状況何とかなると思うか?』
「……思わない」
壊理は震えながら、『
『なら、お前はどうするべきだ?』
「戻る…その代わり……! 皆を元通りにして…!」
「そうだよな! 自分のせいで他人が傷付くより、自分が傷付く方が楽だもんな。ルミリオンで芽生えかけた淡い期待が砕かれた。気付いてるか? 壊理にとって最も残酷な仕打ちをしてる事に……――お前は求められてない」
己よりも他者を優先し、自ら地獄へ向かおうとする幼女。
とても優しい心を持っての行動とも言える行為の中、治崎は緑谷に忌々しげに吐き捨てる。
「——だとしても…!! 余計なお世話だとしても…! 君は泣いているじゃないか!!」
破片である棘を抜き取り、痛みに耐えながら緑谷は——。
「——誰も死なせない! 君を救ける!」
——そう叫び返した。
その直後、彼らの上の天井が大きく崩落し、そこから巨大な影が地下へと入った。
「ッ!? リューキュウ! 2人とも!」
その正体は『
「ッ! 『ウラビティ』ちゃん!」
「なにっ——…ナイトアイ!」
蛙吹がある方向を見て麗日を呼び麗日がその方向へ振り向く。
そこには左腕を失い、腹部に棘が突き刺さった状態で倒れてるナイトアイがいた。
「ナイトアイの保護、頼むッ!!!」
緑谷は合流した麗日たちに指示を出し、自身は壊理を救けるため駆け出す。
しかし治崎は"個性"を発動させ、緑谷へ再び攻撃すると同時に壊理を柱状の岩にて上に飛ばす。
「治崎ィ!!!」
「めちゃくちゃだ…ゴミ共が!!!」
治崎自身も柱状として己の足元を上に上げ、そのまま壊理を回収する。
「させるかァ!!!」
逃がさない。
今度こそ掴むため、緑谷は飛びだす。
そんな緑谷に向けて攻撃を繰り出そうとした治崎だがその視界に、岩と共に巻き上げられた通形の
「巻き上げられたのか……気色悪い」
吐き捨てる治崎を他所に、壊理は無意識にそのマントを掴んだ。
——同時に、壊理の中に宿る力が発動した。
音本と融合していたはずの治崎の姿は突然元の姿に戻り、音本も治崎と分裂し元の形、姿へと戻っていた。その一方で、壊理の心は揺らいでいた。
たとえ死が待ち受けていようと、それでも己自身を救けようとする人たち。
彼らの行動がその心に新たに『救からなくては』という思いを芽生えさせた。
その思いが、自身に宿っている"個性"を覚醒させたのだ。
「——壊理ちゃんッ!!!!」
降り注ぐ瓦礫を壊し、避け、足場とし、今目の前にいる、自身の手が届く先にいる幼き少女を救わんと駆け出し飛び上がる。
——救けろ! 緑谷出久!!
——あの時、離してしまった手を……
——今度はしっかり、掴み続けるんだッ!!
自身の下へ飛びだした壊理を、緑谷はしっかりと受け止め、優しく抱きしめ、宣言した。
「——もう…離さないよ」
救けるため、安心させ笑顔にさせるために。
「返せェッ!!!!」
それに対し激昂した治崎は柱を分解させ、触手のように棘を2人へ繰り出す。
緑谷は壊理を抱きしめたままその攻撃を避けていく。
「(離さない! もう絶対に離さない! あんな事…もう絶対にさせないッ!!!)」
——それに僕は信じてる!
——陽だまりのような暖かさを感じさせてくれる彼女が必ず…!!
——胸の歌を奏でながら、笑顔で来てくれることをッ!!!
瞬間、日の光を上回る黄金の輝きが彼らの真下から強く現れ——
——どこからともなく、全体に陽だまりの歌声が響き渡った。
そして一瞬にして輝きは凝縮され、人の形を型取り、緑谷たちの傍まで飛び、その名を叫ぶ。
「――ガングニィィィルッ!!!!!」
【神殺し】としてではなく、【他者と手を繋ぎ合うため】の名を。
2人を守るように現れ、その拳を突き出し、迫りくる棘を一撃で全てを粉砕させた。
「黄金錬成!! 展開!!!」
新たに迫りくる棘を回避するため、陽だまりは黄金錬成陣を複数、太陽の足場として展開させる。
わかっているのか、太陽は出力を上げながら躊躇なくその錬成陣を足場にし、棘を避けていき、時に壊していった。
「——アカシアッ!!」
「——デクッ!!」
太陽は片方の手を陽だまりへ伸ばし、陽だまりはその手を掴む。
そのまま2人は互いに足を構え、迎撃をしようとした瞬間——
「ッ!?」
——3人は一瞬にしてその場から姿を消した。
その直後、彼らがいたところを中心に大きな風圧が遅れて発生し、棘も瓦礫がすべて砕かれ、治崎すらも風圧によって地面へと叩きつけた。
——◆——
「(何で空に…? ハッ! もしかして蹴りを入れようとして、オールマイトの【New Hampshire SMASH】のように空中移動したのか!? かっちゃんの時みたいにコントロールがブレた!? 全力の『ワン・フォー・オール』と出したってことか!? 待て待て…!! だとすると足が!!!)」
地下から空中へと高く上がった緑谷は、ここまで吹き飛んだことを慌てながら推測し、焦り始めている。
「着地は任せて!!!」
「ッ! 頼む!!!」
だが幸なのは、気絶から目を覚まし、『ガングニール』を纏い今共にいる幻神がいること。
幻神は2人を抱き寄せ、スラスターを全開で真下に噴射し、落下の勢いを殺していく。
そして地上に着き、パワージャッキを突き刺すことで勢いを更に殺し、無事着地することに成功した。
「ふぅー! ふぅー!」
「ありがとう幻神…というか大丈夫なの!?」
「大丈夫…それより出久くんは!?」
「僕は……あれ?」
幻神はそっと緑谷たちを下ろす。
すると緑谷は自身の身体の違和感に気づいた。
「(身体が熱いどころか冷たい…? 僕は100%を出していた。なのに……骨折してない! それどころか、怪我も治ってる!!)」
緑谷の負傷は
そっと壊理を下ろし、問うた。
「君の、"
「(そういえば、『ガングニール』を纏っているはずなのに、体力が減ってない以前に、回復して……)」
瞬間、2人は苦しみだし始めた。
「――力が制御できてないんだ」
苦しみの正体を知っているかのような、歪な声が彼らの耳に入る。
その声に気づいた緑谷は壊理を抱き上げて攻撃を避け、幻神は拳を地面に突き刺しその衝撃波で全てを相殺させてから、2人の下へ駆け寄る。
「拍子で発動できたものの、止め方が分からないんだろ? 壊理ィ…!」
そして地下から這い出たのは、巨大な肉の塊とも言えるような歪な姿をした治崎だ。
「人間を巻き戻す。それが壊理だ。使いようによっては人を猿にまで戻すことすら可能だろう。そのまま抱えていては消滅するぞ。触れるもの全てが無へと巻き戻される。呪われてるんだよ、そいつの"個性"は。俺に渡せ、分解するしか止める術はない。消滅したくなければ壊理を渡せ!」
ご丁寧にと言わんばかりに治崎は壊理の"個性"の詳細を説明し、それらを知ったうえで渡すよう言い張る。
「絶対、嫌だ!!」
だが緑谷は壊理を背負い、壊理の握っていた通形のマントを使い、自身と巻き付ける。
「……僕の足が折れた瞬間に、痛みすら感じる前に治してくれたんだね……——とっても優しい"個性"じゃないか!」
真逆のことを緑谷は言い、それが心に響いたのか壊理は涙を流し始める。
「幻神」
「分かってる。体感した感じで何となくだけど、それでも」
「うん。身体が戻り続ける
緑谷は『OFA』を。
幻神は『
「だったら、それ以上の
「うまく、行くはず…!!!」
太陽の少年は青緑の膨大な閃光と稲妻を、陽だまりの少女は黄金に煌めく膨大な輝きを纏う。
壊理の"個性"『巻き戻し』の力を上回る程の力にて身体を壊し続ける荒業。
【ワン・フォー・オール・フルカウル】——
【シンフォギアシステム・ガングニール】——
それは暗い深淵の奥底に囚われている1人の幼いを少女を救うため。
だが今だけは——
「——壊理ちゃん、僕たちに力を貸してくれるかい?」
——救うべき少女の手を取り、この刹那にて運命を、決められし未来を捻じ曲げる。
陽だまりと太陽。
2つの温もり、胸の歌、不屈の精神によって幼き少女の心に勇気が芽生える。
その勇気は地より実り天へと伸びていき、咲き誇る花として開花する。
——勇気が咲き誇った花は今この瞬間、互いの形違う正義を手とし、重ね合わせる。
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