この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
お久しぶりです。久々の更新です。
2XXX年.10月XX日。
雨雲にして、雨が永遠とばかりに降り続ける。
そんな空、空中には禍々が形を成し、世界を蝕むため侵攻するかの如く、黒く異質な、巨大な亀裂が存在している。
その亀裂はそれ以上広がっておらず、閉じる気配もない。
黒き異質な亀裂を中心に、真下の地上は巨大なクレーターが出来ていた。
クレーターの外周には、計7本の巨大柱が円状に、囲うように並べられている。
だがその柱の特徴は、如何なる異界の、どの文明にも見られないもので作られていた。
否、正確にはその世界に用いる技術、術によって最も近しい状態で再現されているのだ。
そして7本の柱から伸びた巨大な鎖が封印し、封じるかのように柱同士で繋げられ、囲い吊るされている。その封じられたクレーターの上にして、黒き異質な亀裂を近くで見上げる形で立っている男性が1人いた。
「凄まじいな。相変わらず」
白いスーツに白いフェルトハットを被っている、青く長い髪。
瞬間、白スーツの男性の背後に
「局長、
「なら用意しておこう。出迎えの。そして話そうじゃないか。あちら側の彼女と」
次の瞬間、地響きと共に稲妻が数回、降り注ぐ。
「それにないからね、時間が」
「ハッ!」
再び1人となった男性は黒き異質な亀裂を見つめ、呟く。その顔はまるで、好奇心に駆られるよう。
されど同時に、恐怖も微かに混ざっている。
「………——必要なんだ、それでも。終わりなき災禍を止めるために、生贄が、力が、器が、神が、神殺しが——」
「——陽だまりの歌姫と日陰の歌姫が」
白いフェルトハットを深く被ることで顔を隠し、雨に打たれ続けるその身体を、背を黒き異質な亀裂に向け、歩き出す。
その背はどこか大きく、小さかった。
——◆——
幻神とイヴの接触。
"個性"『ギャラルホルン』の力で己の世界から、イヴにとっては『並行世界』である幻神の世界へ現れたこと。
だが敵が一人、同じように飛んできてしまったことも含め、イヴは包み隠さず、全てを幻神に打ち明かした。
そして現在、夕方、1-A寮。
生徒たちは一日の授業を終え、寮に戻り、共有スペースに集まっていた。
その理由はなぜか、答えは寮へやってきた相澤が知っている。
「飯田、全員いるな?」
「はい! 揃っております!」
寮へと来た相澤は委員長である飯田に生徒全員がちゃんと集まっているか確認を取る。
その理由は今日のホームルームにて、相澤が生徒たちに「大事な話、というよりかは報告がある」と言い、授業後の放課後、寮にて話すと発言したからだ。
「先生、わざわざ寮で話すってことは授業とかではあんまり話せない内容なの?」
誰もがなぜわざわざ放課後の寮で話すのか疑問を抱いている中、代表という形で蛙吹が問うた。
「まぁそれでもよかったんだが、それ以上にこれから話す内容は他言無用…簡単に言えば極秘に当たる」
「なぜ我々には話すのですか!?」
「今から話すから落ち着け………簡単に言えば、本人からの要望だ。お前らには話しておきたいってな」
なぜ自分たちは聞いていい、否、聞いてほしいのだろう。その中で八百万が挙手した。
「先ほど「本人からの要望」とおっしゃいましたが、それは極秘になるのでしょうか? 極秘というのであれば知る人も少ないほうがいい気がしますが……」
「言いたいことは分かる。だがそれでもその情報源である人物がそう望んだ……そしてその人物は雄英で保護という形で預かることになり、お前らと過ごすことになった」
「「「……えぇ!?」」」
生徒たちは思わずとばかりに叫ぶ。
「極秘があるなら、なおさらこことかじゃなくて警察とかの方がいいんじゃ……」
「それは俺も思ったよ。ただ校長がうちで保護すると言い出してな。何よりその人物はこの中の一名と既に接触し、その極秘を知っているんだ」
相澤はチラッとある1人の生徒を見る。
見られた生徒は思わず「うっ」とばかりに目をそらした。
「極秘はどうでもいい!! 女ですか!? 女なんですかせんせぇ!!!?」
「食いつくとこそこかよ……」
「転校生じゃなかろうとこういう誰かが一緒にってイベントは気になるだろ!!?」
確かにそうだ。と、一部の生徒は頷いた。
「……まぁ詳細はそいつがきてから順を追って話す。まずは紹介だ。入っていいぞ」
玄関に向かって呼びかければ、扉が開かれ、1人の人物が足を動かし入ってくる。
その姿を見た生徒(主に男子)たちが声を上げる。
そしてその人物は相澤の横に並び、生徒たちへと向いた。
「じゃ、自己紹介して」
「初めまして、イヴ・ラグナと申します。よろしくお願いします」
翡翠交じりのパーマがかかった白髪の長髪に大きめのアホ毛が特徴な少女、イヴ・ラグナ。
数日前幻神と病院で接触し、並行世界からやってきたと告げた、未だ謎の多い少女である。
「低身長巨乳の白髪美少女だァァァアアアッ!!!」
「めっちゃ可愛い! ちょ、後でLI○E交換しない!?」
その中で峰田と上鳴はより一層興奮していた。
峰田に関しては眼に映し、記憶にしっかりと形を映そうとばかりに。
その後瞬時に相澤が捕縛布で2人を、特に峰田を強く縛り上げた。
「「(どうして、こうなったんだろ……)」」
そんな中、幻神とイヴは遠い目をしながらこうなった経緯を思い返していた。
——◆——
数日前、病院。
窓際に立つイヴと、衝撃的すぎる内容で驚愕している幻神。
『並行世界に『ギャラルホルン』って…そんな……』
『本当だよ。私たちにはない未知で異様な知識を、記憶を持つあなたなら分かるはず……最も、その反応から知っているってのは分かったけど』
幻神は思わず喉を鳴らす。
元々ギアペンダントを持っていた故に多少なりとも警戒をしていたが、今目の前にいるイヴという少女は、自身が思っていた以上にとてつもない何かを背負っている者のような風格に、幻神は警戒心を増した。
『私たちの力だけじゃどうしようもできない。何より、彼女を救えない……だから私はあなたに、あなた達に会いに来たの。こんな形で出会うことになったのは予想外だったけどね…………ともかく! 私たちの世界は圧倒的に戦力が足りない。それに奴らに対抗するには少なくとも、あなたの力がいるの…!』
振り返り、幻神へと歩み寄って訴えるように叫ぶイヴ。それに対し幻神は思わず狼狽え、一歩足を引いてしまう。
それほどまでにイヴの覚悟という名の覇気は本物だということだ。
すれば2人のいる病室の扉からノックが響き、耳にした2人は内容が内容であるがために身構える。
『やぁ、話は聞かせてもらったよ!』
次の瞬間、扉が開かれた。
『——こ、校長先生!?』
『…『根津』さん……』
『YES! ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は……校長さ!!』
扉の先に現れたのは雄英高の校長である根津。
『な、なんで校長先生がここに…!?』
『それに、話は聞かせてもらったとも言った…つまりは……』
『あぁ、もちろんさ。俄かには信じがたいが、この世は超常で満ち溢れている』
根津は病室に入れば扉を閉め、ゆっくりと先の2人が話したことを振り返るように語り始める。
『故に昔から可能性や説として考えられていたのさ。我々とは全く異なる世界や、並行世界といった別時空に干渉し、自由に行き来したりする"個性"があることを』
『……あなたはどの世界でも変わりありませんね。根津さん』
『君とは初対面だけど、どうやら君の世界での僕は君と知り合いみたいだね』
『はい。と言ってもそこまで接点があったわけではありませんが……』
イヴは目を逸らす。
それを見た根津は「なるほど」と頷き、イヴの傍まで歩み寄る。
『イヴ・ラグナ君。先も言ったが君の話は聞かせてもらった。その情報は世間にあまり知られると、いい意味でも、悪い意味でも広がっていくだろう。特に公安の目に入ったらなおさらさ』
『それは知ってます。あいつらは、どの世界でも人でなしの集まりですから』
『だからこそ、私は君に1つ提案を持ちかけたい』
『提案…?』
『そう、君はこの世界では籍もない。だから、我々が
『『……——はぁ!?』』
——◆——
結果として根津校長を始め、教師たちにもイヴちゃんの情報を共有。
同時にこの世界では身分がない為、雄英が保護する形にもなったのだ。
"個性"に関しては、内容もあれなのと、イヴちゃん自身が「最初から打ち明けたほうがいい」と隠す気がなくそう言ってきた。
そもそもこの世界に来た目的は、自分の世界を救うために並行世界のヒーローたちを連れてくることだったから。
「その人が極秘に関わる人なんですか?」
「あぁ、俺も前日にある程度話は聞いたが未だに信じられないよ。それよりも「そっちの事情で勝手に巻き込みに来るな」って気持ちの方が大きい」
「どういう意味?」
「さぁ?」
相澤先生の言い方にみんなどういう意味かいまいち理解していない。
対してイヴちゃんは一歩踏み出し、私たちを見た。
「改めて、私はイヴ・ラグナ。これから話すことは他言無用、あまり公に広めないで欲しい。その理由は私の"個性"と正体に関係するから」
「ケロ、なんで私たちに話すのかしら?」
「それも含めて話します」
イヴちゃんはさっきまでの表情と打って変わり、とても真剣な表情へと変わった。
「まず最初に、皆さんは『並行世界』、『異世界』があると信じてる、もしくはあるかもしれないと思ったことはある?」
「『並行世界』…?」
「SFとか、いろんな作品でも使われてる単語…まぁネタだよな」
「オイラは信じてるぜ!」
話…に入りやすくするためなんだろう。
『並行世界』や『異世界』に関してどう思っているのかを聞いてから話したほうが、まぁどっちにしても驚くだろうけど入りやすくはなる。
「……簡単には信じられないと思う。でも、この超常、超人社会…誰もが力を持ち、その力は世代を超え進化し、制御も不可能になる日がいずれ来る。私はそう思ってる」
「『"個性"終末論』のことか? なんでまた…それに話があんまり見えねぇんだけど」
「……私の"個性"は『ギャラルホルン』」
「ギャラ…何?」
「『ギャラルホルン』ですわ耳郎さん。【北欧神話においてアースガルズの門番である神『ヘイムダル』が持つ角笛】と言われた代物」
「そして【ラグナロクの到来を告げる角笛】でもある」
八百万さんと常闇くんが『ギャラルホルン』が元々何なのかを説明し、初めて知った人は反応を示す。
確かに、本来であればそれであってる。
でも私とイヴちゃんが知り、そしてこれからイヴちゃんが話す内容は少し違う。
「本来はそれであってるよ。でも、私の『ギャラルホルン』はそれとは少し異なるの」
「どういう意味ですの?」
「……さっきの話と繋げれば簡単。私の"個性"『ギャラルホルン』の力は——自分の『基本世界』から『並行世界』や『異世界』を繋いで、行き来できるの」
告白。
迷うことなく自分の"個性"を打ち明かしたけど、私以外のみんなはポカンとなってた。
「………えっ…と…つま、り?」
「そのまんま、【異世界や並行世界に飛べる】"個性"なの」
そしてやっと理解したのか、みんな驚愕しだした。
「それってよくある『異世界召喚』とかそういうラノベ物のようなことができるってことか!?」
「……まぁ、それで理解できるなら、それでいいよ」
「マジかエルフとか人魚とか、"個性"じゃなくてガチもんのが見れるのかァ!!!」
「——おい」
男子のほうがいろんな意味でも驚いたり、一部は興奮していたりしていたが、相澤先生の一言で全員がシンッとなった。
「感謝します、イレイザーヘッド。それで、あなた方が思う疑問は、なんでそんな"個性"を持つ人、捉え方によっては確かに極秘に当たる人物が今ここに、それもあなたたちに包み隠さず、"個性"の詳細を教えたかだね。その理由も今から話すよ。でも立ち話もあれだし、座りませんか? イレイザーヘッド。長い内容ですし」
「……そうだな。それでもわからないやつもいるだろう。天堕、確か共有用で置いてあったホワイトボードがあったはずだ。取ってきてくれ」
「あっ、はい!」
相澤先生に指名され、私は場所を教えてもらってからホワイトボードを取りに向かう。
多分このA組で唯一私だけが先に聞いてるからっていうのもあるんだろう。
とりあえず確かに大人数用のホワイトボードがあったから、それを掴み引いてみんなの元へと戻る。
「私もある程度話に加わった方がいい?」
「ううん、一度私が全部話した後にしようかなって思ってる。余計に混乱するかもしれないし」
イヴちゃんの傍までホワイトボードを持っていくと同時に軽く話すも、1回全部話してから、私も会話に入った方がいいらしい。
「さて……改めて、私の"個性"『ギャラルホルン』と、『並行世界』などの異界について説明するね」
イヴちゃんは話しながらホワイトボードにペンを走らせていく。
「『並行世界』は実在してる。なにより、この超常、超人社会では当たり前に想像する力から、誰も想像できない、理不尽や世界の理すら捻じ曲げ、無視する力も存在してるの。特に世代を超えて交じり進化する"個性"はそれにあたる。2世代から3世代で行われ、問題視された"個性婚"なんかは、それらを意図的に行ったような物。より最強で、自分たちの望む力を手にするためとも言えるからね」
その言い方はちょっとって思ったけど、確かにお義母さんもそういうのを聞いたし、実行した奴を見たこともあるって言ってたのを覚えてる。
「でもそれ以上前、約100年前に、最初に"個性"を、異能を発現させた人物がいるの」
「発光する赤子のことですね」
「そう。でもそれはあくまで世間的、一般的に印象が強く、異形型よりの常時発動型ともいえる方」
その言い方はまるで、発光する赤子よりも前に発現者がいるってことになるけど……。
「実際、発光する赤子よりも前からいくつかの子供や大人は異能を発現してるの。でもそのどれもが人々にとっては、『人の形をした化け物』もしくは『新種のウイルス感染者』と捉え、遠ざけてきた。つまり超常、超人社会は異能を持たない人類…現代で言う"無個性"が当たり前の世界がかつての世界とも言えるの」
「歴史でもそういった内容が書いてありましたわ。特異体質から生まれたのが"個性"で、人口の約八割が発現者であると」
「うん。でもその残りの二割は持たないもの。いわば大昔から異能に侵されなかった人類……言い方を変えれば太古の血を引く。もしくは先祖返りで異能を拒絶し、純粋な人類として生きることを選んだ者。あくまで私個人だけど、そう捉えてる。なにより異能、"個性"という異物を内包する人間ではなく、空っぽの純粋な人間は、この超常世界の希望でもあると、私は思う」
"無個性"が…希望…?
ちょっと私も初耳な部分が多いんですがイヴさん…。
「"無個性"が希望だァ…? なんも持ってねぇ雑魚が希望なわけねェだろうが!!」
すると爆豪くんがなんかいつも以上に怒鳴った。
なぜ?
「……力を持つものからすれば、持たない人は自分より格下と捉えることができる。けどそれによっていじめや虐待、差別などが発生してしまいそれ故に、自殺志願者が後を絶たない」
「なっ……ッ」
「だけどそんな世界に【他者の"個性"を奪い、他者に"個性"を与える】という"個性"を持つ存在がいた」
「……オール・フォー・ワン」
出久くんが真剣な顔でその名を口にする。
イヴちゃんは出久くんを見て頷いた。
「何でもありな力。人によっては神に近しい力ともいえる。だけど異能、"個性"は人が望んだものではない。発現するまでは、どんな力が己の力になるかは未知数。なにより突然変異で、血族…血縁とは異なる力が発現したりする人もいる。それが私たちの知る異能…"個性"の詳細。でもまだ未知数で、解明は完全ではない」
「それと『並行世界』に何の関係があるんですか!?」
「今から話すよ。さっきまでのはこれから話すことに置いての前置き。私の"個性"を話すためにも必要なことだったから」
ホワイトボードを改めて書き始め、そしてついに話し始めた。
「私の"個性"『ギャラルホルン』は、先も言った通り、本来なら干渉すらできない異なる世界…『並行世界』や『異世界』に干渉することができるの。そして一度行き来すれば、その後は自由に飛べる。そしてこの世界は私からしたら『並行世界』なの」
「てことは、イヴの世界にも俺たちがいるのか?」
「いるよ。全く同じ人物で変わりない人もいれば、性別や性格、"個性"といった一部が異なる人もいるよ。例えるなら、イレイザーヘッドが男性じゃなく女性として生きている。って感じかな」
なるほどわかりやすい。
みんなもなるほどと頷いていた。
「こっちでは生きていて、『並行世界』では死んでいる場合もある。オールマイトがオール・フォー・ワンとの戦いで勝利し生きたってのがあるのなら、逆に敗北し命を落としたってのもね」
瞬間、空気が一気に凍り付いた。
あのオールマイトが…?って思うだろうけど、そういうのは確かにある。
私も前世でそういう展開を、ゲームでだけど見て来たから。
「じゃあなんで俺たちの世界に来たんだ? 意味もなく世界を移動するなんて正直意味ねぇ気がするけど……」
「その理由は……簡単に言えば、私の世界が大変な状態だから。そのためには増援が必要で、だから…」
「でも向こうにもプロヒーローはいるんだよね? だったら大丈夫じゃ……」
「……ッ」
イヴちゃんは思わず俯き、目を逸らす。
先に聞いていた私からすれば、言いずらいし、言いたくないのはわかる。
だってイヴちゃんの世界は——
「………もう、いないの」
「え?」
「プロヒーロー、ヒーロー候補生……
「——私の世界にヒーローはいないの」
——敵の手によって、壊滅しているのだから。
お話回って難しいですね。
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