この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
夜空の上空。
一見何もないそこには、その夜空に溶け込むように、巨大な何かが滞在している。
『隊長、先行した■■が『並行世界』の歌姫と接触し戦闘を開始。そしてイレイザーヘッドによって"個性"を封じられた模様です』
「おそらく…いいえ、十中八九雄英内に角笛はいる。一部戦闘員を投下し■■へ加勢を。角笛は私が直接お迎えに上がるわ。20分後、帰投するために準備しておいて」
『了解』
その巨大な何かの上に1人、夜風に吹かれている人物がおり、通信を終えた途端、下の雄英へと飛び降りていった。
——◆——
同時刻、森。
「2人とも無事か? それとこいつは……まぁ状況からして
されど
「("個性"は消したはずだが…素の身体能力が高いってことか) 無駄な抵抗はしないことだ。どっちにしてもここは雄英の敷地内。既に騒動に気づいて俺以外のヒーローも動いている」
賢明、合理的と言える。
特に戦闘が繰り広げられていた現場には"個性"を封じることのできるイレイザーヘッドが出向くのは最もだ。
「お前ら、こいつの"個性"はなんだ?」
「ぼ、僕も今来たばかりで……」
「……私と似た力です。武器や武装を具現化させて纏い戦います」
「なるほど。なら常時発動型ってわけじゃなそ——」
——瞬間、彼らの直上から1つの球体が地に落ちた。その球体に気づいた3人は咄嗟に警戒するが、そのつかの間に球体は大きく弾ける。
直後、落下した地点から地に描かれるように、
「なんだこれは——ッ! この感覚は!?」
困惑の中、突如として
「"
「な、なんで!?」
イレイザーヘッドだけではない。
幻神の傍で守るように立ち【フルカウル】を纏っていた緑谷も、『イガリマ』の『シンフォギア』を纏っていた幻神もなぜか解除されていた。
だがしかし——
「なっ!?」
——
「【
「ッ! (今、投影って…!?)」
そして自身を縛り上げている捕縛布を粉みじんに切り刻んだ。
同時に
「手こずっているようだな、■■」
「止せ。今はやるべきことがある。それに対ヒーロー用に開発したサポートアイテム『範囲"個性"封じ』は十分発揮しているんだ。このまま奴らを無力化するぞ」
「「おう!」」
「了…解……」
新手の
物音、気配すら出さずいきなり現れたその
「なぜ雄英バリアは、警報が発令されない!?」
「無駄だ。お前らが先ほど相手しており、我々より先に先行していたこいつは、貴様らの防衛に引っかからないんだ。そして気づかれないようその装置を起動させないよう、機能を内側から停止。よってすんなりと侵入できたのさ」
「なんだと!?」
「外側からの防御は固いが……入ってしまえばあとは砂崩しのように脆いのさ、貴様らの防衛システムは」
1人の
そしてこいつらは只者ではないと悟った。
「"個性"を封じるヒーローが逆に封じられてどう思う?」
「おい、あまりベラベラと喋るな。隊長に叱られるのはお前だけじゃないんだぞ」
「わかってるよ。行け、■■」
それを見たイレイザーヘッドは捕縛布を伸ばすも、捕縛布は
「クソ…!」
「
「くっ!!」
「わっ!?」
そして自身たちの元へ向かい、蒼き双刃刀を振るう
「(さっきの男、『範囲"個性"封じ』って言ってた。きっと一定の範囲にいる人たちの"個性"を相澤先生のように封じるもの。そして特定の人物、もしくは事前に登録とかされている者に限りその効果は効かない。でも範囲があるのなら、その範囲外に出れば!!!)」
緑谷は森の中を走りながらチラッと背後を確認する。背後には自身と抱えている陽だまりを追跡してくる
——◆——
同時刻、1-A寮、共有スペース。
先の戦いによる振動が寮にまで伝わった影響により、大半の生徒が集まっていた。
「緑谷の奴いなかったんだよ! それどころか窓が開いていて…」
「幻神ちゃんも部屋にいなかったわ。もしかしたら、何か揉め事を起こしちゃってるのかも」
「爆豪の時みたいに喧嘩してるとか?」
「んだとゴラァ! どういう意味だクソ髪!!」
「前科があるから否定できねぇよお前は」
そんな中、手配された部屋にいたイヴも、共有スペースに現れる。
「皆、さっきの揺れは……」
「イヴちゃん! それがわからんくて、デクくんも幻神ちゃんもおらんしで……」
「(もしかして……)」
イヴは胸に隠されているギアペンダントを取り出す。すればギアペンダントは微妙だに赤い輝きを漏らしており、それを見たイヴは察した。
「(やっぱり、もうここに…!?)」
「ッ! 皆、外から何かが音が——」
障子が何かの音を聞き取り、その場にいる全員に伝えようとする瞬間——パリィンッ!!!と寮の外から窓を割って一人の影が突入した。
その瞬間が起こったのかわからず、全員が固まってしまっている。
「——……お迎えに上がりましたよ。角笛」
「……ッ!! あなたは!!!」
金髪のロングストレートの髪に白い男性用のスーツを正装に身に纏い、上着だけは羽織るように肩に固定させている女性。
その女性は迷うことなくイヴをその眼で見つめ、イヴは一気に警戒態勢に入った。
「だ、誰だあの人…」
「(美人! それでいて…ビッグだ!!!)」
生徒らが困惑している中、それでも瞬時に状況を判断し動くものもいた。
故に、金髪女性との間合いを詰める者がいる。
「死ねェ!!!」
その正体は爆豪勝己。
まだ仮免補修の段階であるが故、仮免許すら所持していない。
だがここは雄英校内であり、状況もあり正当防衛として成り立つ。
そして爆発が起こり、煙幕が寮内を包み込む。
「バッ! 何考え無しにやってんだ!?」
「状況を分かれやクソ髪!! さっきの振動に見覚えのねェ女がガラス割ってきたんだぞ! そんなの答えは1つだけだわ…!!」
切島にあらかた説明する爆豪。
それを聞いた一部はようやく理解し、警戒する。
同時に煙幕が晴れる。
「なるほど。この世界でもあなたたちは依然として候補生というわけね」
「ッチ!」
煙幕が晴れればそこには、
「角笛ということは、貴様らはイヴの言っていた異界の
「あら、もう聞いていたの。なら話は早いわ……先の攻撃やあなたたちのその雰囲気からして話し合いは無理なようだし……」
金髪女性は錬成陣を複数展開する。
「少しばかり実力を行使させてもらうわよ。正義を夢見る哀れな子供たち」
瞬間、錬成陣は橙色に変わり、ライトブルーのエネルギーを連続放射する。
「させるか!!」
その攻撃を轟が氷結を出すことで防ぐ。
同時に氷結から
「オラァ!!」
「ふんっ」
対し金髪女性は錬成陣から閃光を発生させることで
「そらよ!!」
「くらえ!!」
だがその閃光を逆に利用し、瀬呂がテープを、峰田がもぎもぎを投擲する。
「……はぁ」
金髪女性はため息を吐きながら足元に風の錬成陣を展開させ、その拘束をやられる前に吹き飛ばす。
「無駄よ。あなたたちの"個性"、戦闘スタイルは把握しているわ。弱点もね」
足を動かし、イヴへと歩み寄ろうとする金髪女性。
「ケロォ!!」
蛙吹は舌を伸ばすも、金髪女性は避けてその舌を掴む。そして錬金術にて氷を発生させ、舌から凍らせ始める。
「そんな!?」
「あなたは"個性"故に冬眠する。そうでしょう?」
「させない!! 【アシッド・ショット】!!」
芦戸が止めようと酸を放射するも、金髪女性は黄金錬成陣にて防御する。
「……これ以上は時間の無駄ね」
「雑魚どもに構けて——」
「ッ!」
「——俺を、忘れてんじゃねェ!!!」
咄嗟に振り返る金髪女性の視線の先には、既に両手を構えている爆豪がいた。
「惜しいわね!」
だが金髪女性は焦っておらず、未だ掴んでいる舌を引き、蛙吹をそのまま爆豪へと叩きつけた。
「ケロォ…!!」
「な、蛙テメェ!!」
そして中庭へと、窓を突き破り放り出されてしまう。
「爆豪君! 梅雨ちゃん君!!」
飯田が叫ぶのもつかの間、金髪女性は錬金術による衝撃波を寮内に響き渡らせ、生徒全員を吹き飛ばす。そして器用に調整し、イヴだけが無傷で立っていた。
「みんな…!」
「もう終わり。さぁ、一緒に元の世界に戻りましょう」
金髪女性は歩み寄る。
だがすぐにその足を止め瞬間、銃声が響き渡る。
金髪女性は黄金錬成を展開し自身に迫る弾丸、その全てを防いだ。
「……『スナイプ』か」
金髪女性が睨むその先、寮の入り口には教師にしてプロヒーローの1人、スナイプが専用の拳銃を向けて立っていた。
「深夜の騒ぎに気付き駆け付けたが、まさか
すればスナイプの背後からエクトプラズムが分身を作りながら飛びだす。
「コレ以上好キニハサセン!」
「はぁ…事が起きる前に済ませたかったけど……まっ、今更か」
金髪女性は
その間にも分身は金髪女性へと義足を振るう。
——『
次の瞬間、金髪女性はその手に持つフリントロック……否『スペルキャスター』の銃爪を引く。
すれば撃鉄がルビー色のハートの形をしたジュエルを叩き、金髪女性が黄金の輝きに包まれた。
その輝きによる衝撃波で分身は吹き飛ばされ消滅し、本体であるエクトプラズムも吹き飛ばされるが、その勢いで生徒たちの前に立つように移動し着地した。
そして輝きが消え、その姿を露にする。
「それが貴様の"個性"か」
「——ふっ、"個性"にあらず、この力は我らが
全身の一部が露出しながらも白銀をメインに黄金、赤や青の差し色が入った騎士を思わせる装甲。
金髪のロングもポニーテールへと結ばれており、フリントロックはデザイン、形状が変わり黄金の拳銃となっている。
「この身を纏う鎧は我々の知恵と技術、そしてこの身に刻んだ錬金術にて創り出した結晶体。名を『賢者の石』。故にその名を彼女の記憶通りの名を——」
「——『ラピス・フィロソフィカス・ファウストローブ』」
それは本来転生者である天堕幻神と黒換美音しか知り得ない知識、記憶による
だが今、『並行世界』から侵攻してきた
それも正義を貫いた錬金術師『サンジェルマン』の『ファウストローブ』を。
「"個性"がなければ
拳銃は一部を変形させ、赤き刃を抜き露にし角笛へと駆け出す。
それをさせまいとスナイプは『ファウストローブ』を纏う金髪女性へと銃弾を放ち、エクトプラズムも分身を再び創り出す。
金髪女性は迫る弾丸を黄金錬成にて防ぎながら、赤き刃を振るい分身を一撃一撃で切り倒していく。
「あれが"個性"でなくサポートアイテムに当たる物だと!?」
「天堕の"個性"と似た力って言ったほうがまだ説得力あるぜ!?」
生徒らが驚いている中、金髪女性は銃へと戻し銃爪を引いて弾丸を連射。
だがその弾丸はその先に現れたルビー色の錬成陣に取り込まれる。
プロヒーローが困惑している中、その錬成陣はスナイプの背後に現れ、そこから先の弾丸が放たれスナイプの身体を貫いた。
「後ろから、だと…!?」
「スナイプ!! ッ!」
エクトプラズムが一瞬スナイプへ意識が向けられた一瞬、その僅かな一瞬に金髪女性は間合いに入っており、手に握る拳銃は既に刃へと変わっている。
そしてその刃にて本体の身体を的確に断ち切った。
「ガァ…!!」
「すべての戦いを"個性"で認識し、全てを、メインを"個性"として置き換えることは愚かなこと。古の人類は刻み磨き、紡ぎ与えそして現代まで受け継がれた力は、知恵を持つ者が創り上げた物体だ。故に貴様らは——弱い」
エクトプラズムは血を流し倒れる。
プロヒーロー2人をたった1人で、それも簡単に倒したその力に、生徒たちは絶句していた。
「さて、もう時間もないから……有象無象は無視ね」
そして金髪女性はイヴへと接近した。
——◆——
"個性"を封じられ、抵抗することもできない緑谷は幻神を抱き上げながら、効果範囲外があると見込みそこまで向かい走っている。
その背後には
「(クソ…! "個性"を封じる"個性"じゃなくて、サポートアイテムだなんて……そんなの…!!)」
最近インターンを終えたばかりの彼は、"個性"を封じる武具がある事を知っている。
何故ならインターンで行った救助活動はそれらにも関するものであるからだ。
「ッ! "個性"が…!」
だが森から出た瞬間、常に"個性"の発動範囲を確かめるべく発動していた緑谷の身体が、突然稲妻を出し纏い始めた。
「森の外が効果範囲外! (さっきの地面に広がった魔法陣みたいなのが効果範囲内で、それをうまく森や茂みで隠していたってわけか!!)」
すれば緑谷は止まり身体を回しながら片足を構える。追いついた
「幻神!!」
「大、丈夫……やれる…!」
幻神を心配する緑谷。
幻神は身体への物理的ダメージもだが、精神的な謎の苦痛もあり表情を歪めていた。
だがそれでもと、幻神は地に足を着いて歌を奏でる。
『
奏でればドクンッ!!と心臓が高鳴る。
肌にピッタリと張り付く青と白を基調とするバトルスーツを身に纏い、下部に刃があるヘッドセット。
左右の二の腕に青い鎧、前腕には白い鎧を武装。後腰部にはスラスター、脚部には膝横に青い鎧。
青い脛に水色が入ったヒールと左右外側に青と白のブレードが武装された。
「……」
『
「——えっ」
——幻神と
激しい斬撃、刃が衝突する金属音、複数箇所で立ち昇る土煙、地に散る火花。
先までの戦いが準備運動とでも言うように、2人は異常なまでの戦いを繰り広げていた。
「(目で…追えない…!!?)」
なぜそこまで引き上がったのか、先までの戦いとは比べ物にならなくなったのか。
それを疑問に思ったのは緑谷だけではない。
「(不思議だ。この
互いの蒼き刃が衝突し、金属音が鳴り響く。
同時に押し合う形となりその場にとどまるが、2人を中心に衝撃波が発生し、地も抉られる。
「(刃に水色の亀裂…!?)」
やっと2人の姿を捉えた緑谷は気づく。
幻神の蒼き剣と
次第にその回路は2人の柄を持つ手へ、そしてやがて腕まで伝播した。
「ぐぅ…!!」
「……ッ」
同時に幻神のつつじ色の瞳が輝き始め、
そして互いの刃が弾き、そのまま互いに高速に振るい斬りつけ合う。
「「ッ!」」
だがその直後、
気付いた2人は蒼炎の狼を躱し、飛んできた方向へと視線を向ければ——
「ッ! 嘘……なんで!?」
——『ラピス・フィロソフィカス・ファウストローブ』を纏い、イヴを脇に抱える金髪女性が立っていた。同時に『ファウストローブ』を見た幻神は信じられないとばかりに表情が困惑と混乱に染まっていく。
「まさか歌姫だけでなく、特異点までもいるとは思わなかったね……■■、もうこれ以上の戦闘は無謀よ。角笛も無事に取り返したし、もう帰投するわよ」
「なっ!? イヴさん!! あなたも
緑谷は幻神の傍に駆け寄り、金髪女性に問いかける。すれば金髪女性は拳銃を消し、ヘッドセットが装備されている耳に手を当て何かを呟いた。
それを終えれば手を放し、周りを確認後、錬金術にて1つのルビー色の液体が入ったジェムがその手に置かれた。
「行くわよ。本艦は既にゲートの準備を整えて待っている。それと、そっちの2人も連れてね」
「「ッ!?」」
そしてジェムを地に叩きつける。
次の瞬間、地に規模の大きなルビー色の錬成陣が展開された。
「あっ、みんなは…みんなはどうしたんだ!?」
「なに、死んではいない。最も……ただでは済んでいないと思うがな」
「ッ! お前…!!」
聞いた緑谷は怒りを露にし足を動かそうとする。
「——ぁ」
しかし彼の隣で幻神の微かな声が聞こえ、緑谷は思わず振り向く。
そこには
「幻神——!?」
緑谷は手を伸ばすも、そんな彼も気づかぬうちに首筋に蜂が止まっており、その液体を注入した。
すれば彼は急激な睡眠状態に襲われ、身体に力が入らなくなり幻神の傍で倒れてしまう。
「昔ある事件で回収したデータと副産物で再現した"人工個性"……まさかこの世界でも役に立つとはね、助かったわ。『女王蜂』」
ヴヴヴという羽根の音と共に、金髪女性の肩に一匹の一回り大きな蜂が止まる。
「緑谷! 天堕!!」
そこに第三者の声が響き渡り、金髪女性と
その先にはイレイザーヘッドが走って向かってきていた。
「あの三人は負けたようね……まぁしょうがない。彼らの回収は諦めましょう」
「待て!!!」
イレイザーヘッドは捕縛布を伸ばすも、捕縛布は届くことなく、金髪女性と
同時に錬成陣も消え、その場にいるのはイレイザーヘッドただ1人。
「ッ! なんだ!?」
次の瞬間、月明かりに照らされていた地上は完全に暗くなり、同時に強力な突風が発生する。
イレイザーヘッドは反射的に夜空を見上げるが、その顔は驚愕に染まった。
それは彼の視界には巨大な影が浮いていたからだ。
「船…だと…!?」
その正体は船——空中を浮く戦艦。
この超常世界には存在することも、今の人類が再現することも難しい未知の巨大戦艦が、雄英の直上に浮いており、高度を上げていた。
艦の更に直上に先よりも規模がより大きな黄金の錬成陣が展開され、艦はその錬成陣に吸い込まれるように輝きに包み込まれる。
そして次の瞬間——
——艦はこの世界から姿を完全に消した。
一定範囲の"個性"を封じるサポートアイテム。
『サンジェルマン』の『ラフィス・ファウストローブ(サンジェルマンVer)』。
『注射器』と『蜂』が合わさった"個性"。
空を飛ぶ戦艦。
情報量いっぱいだけど、これらの理由は頑張って回収します。
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