この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
急な瞼を貫いてくる光によって、重い瞼を上げる。
光のせいでハッキリと見えないものの、数人のシルエットが伺うように覗き込んでいるのがわかった。
「(ここは……それに、この人たちは……ッ!?)」
少しボーっとする頭を動かしていき、思い出した。
夜の雄英に
「イヴちゃん!!」
バッ!と身体を起こした途端、私を覗いていた数人が驚きながら「起キタ」「起キタ」と呟き、わたわたと慌てだした。
なんだこの子たちは、幼い子供の大きさで、袖が大きすぎるのか余っているし、髪も無駄に長い…そして色が塗られていないかのように肌も含めて真っ白。
「ここって……」
ふと周りを見渡せば、現代でもお嬢様…まぁ八百万さんあたりが住んでいそうな洋風の、それも豪邸のデザインの部屋。
そして今気づけば、雲の上に乗っているかのようにとてもふわふわなバカでかいベッドに私は寝かされていた。
窓だけは夜なのかはわからないけど、カーテンで閉め切られているけど……。
「ね、ねぇあなたたち……」
あらかた嫌な予感がするけど、聞かなければわからない状況。
未だに慌てているアルビノともいえる子供に話しかけた瞬間、その子たちはピタリと私の方を見て止まった。
「バレタ、バレタ」
「逃ゲロ、逃ゲロ」
「えっ、あ……」
そんな同じ言葉を繰り返しながら、アルビノの子供たちは部屋を出ていった。
ていうか鍵かけてないんだ。開いてるんだ……でも、ここにずっと居座る気はない。
ましてや敵の基地の可能性もある場所には。
「あの子たちには感謝だね」
私はドアノブに手をかけてから、音を立てないようにゆっくりとひねり開けて、そっと顔だけを廊下に出して周囲を確認する。
「部屋も豪邸なら廊下もまた然りって感じだね……にしてもここはどこだろう。いや、とりあえず今は脱出を考えながらイヴちゃんを探そう」
廊下に出て歩く。
チラッと窓を見れば外が見えるけど、大雨が降り続けていた。
それだけじゃない、そのまま地上を見てみたら庭…いろいろと施設とかも奥に広がっている。
仮にここから外に出てもバレるだろうから、隠密活動でイヴちゃん救出と脱出を図るしかない。
「ッ!」
だけど前方から微かに数人の足音が聞こえた。
子供の足音じゃない…大人のだ。私はサッと曲がり角の壁に隠れて、先を伺う。
「なぁ、例の特異点の話聞いたか?」
「あぁ、なんでも本来ありえない形で"異能"を宿したとか」
「しかもあの歌姫と共鳴すらできるらしいぜ」
「マジかよ」
2人のフード…ローブを被った男が会話してる。
特異点とか"異能"とか歌姫とかいろいろと気になることを言ってるけど、ここで盗み聞きしてちゃダメ——
「——なァにやってんスか?」
「ピャ——んぅ!!?」
瞬間だった。
真後ろから誰かに声をかけられて、声を上げて驚いてしまった。
いやまぁすぐに後ろにいる人が私の口に手を当てて声を押さえて来たけど、それでも私はその手をどかそうと暴れる。
「ちょ! ストップストップ! ここで暴れちゃあんたにとっても面倒ごとになるだろ!?」
「……」
最もだ……ぐぅの音も、他にここを脱出する策も思いつかない私は仕方なく、おとなしくした。
「おっ、意外とお利口さんみたいっスね」
それは褒められてるの?馬鹿にされてるの?
ていうか……。
「
「おっと、こりゃ失礼」
口を解放された途端、私を押さえていたであろう人物が前に来て、曲がり角の先の様子を伺っていた。
「さっきの人たちは消えてるね。いや~よかったっス」
「……あなた、誰?」
「ん? 自分っスか?」
こっちに振り向いて顔を見せて来た。
改めて私の背後から現れた人物を見る。
上着にパーカーをチャックを閉めずに着て、ズボンも短パンを着ている。
髪は
一見女の子に見えるけど、声のトーン…声質や恰好から見てだけど、もしかして……。
「女の子っぽい男の子の?」
「ピンポーン! あたりっス! 洞察力もすごいっスね、歌姫さんは!」
すればヴヴヴと虫の羽音が聞こえて、私の横を1匹の、腹部がなぜか注射器になっている蜂が通り過ぎ、彼の身体に留まった。
それだけじゃない。
「ちょ! 今蜂が…!!」
「あー大丈夫っス。これ、自分の"異能"……"個性"なんで」
いや体内に虫を内包する"個性"なんて気持ち悪いわ!!!
「それよりもさっさと戻るっスよ? 歌姫さんが脱走したなんてバレたら、自分の命がヤバくなるんスから」
「その言い方…やっぱりあなたも
「——ご明察よ。陽だまりの歌姫」
「ッ!?」
「あ、ありゃりゃ……」
また後ろから第三者の声が…いや、この声は聞き覚えがある。
バッと振り返ればそこには金髪のロングに白いスーツを着込んだ女性が立っていた。
「あなたは…!!」
私は咄嗟に"個性"を発動させようとするけど、なぜか"個性"が発動しなかった。
「なんで…!?」
「無駄よ。ここは私たちの本拠地。外から来た部外者や捕えて連行した者は誰であろうと"異能"を扱えないよう、そういった結界を貼っているの。無論、『並行世界』から来た
それって、あの晩に起きた現象と同じってこと!?
そんなことができるなんて……!!
「『蜂沼』、何逃げ出されそうになっているの」
「す、すいませんっス。幼体ちゃん達に見張りを任せていたんスけど……」
「あの子たちはまだ言葉も覚えたてな赤子当然の子たちよ? あなたの"異能"に関連する形で生まれたとしてもどうかと思うわ」
「も、申し訳ないっス!! だからお仕置きは勘弁してほしいっス!!」
私を挟んで勝手に説教始めるのやめてほしいんだけど……何、このどこか緊張感のない感じは。
てか待って…今聞き逃しそうになってたけど、今、あなたたちって…!
「私以外にもいるの!? 『並行世界』から来た人が!?」
「ん、えぇいるわよ。まぁあなたと一緒に連れて来たってわけよ。彼は別室にいるわ。無論イヴもいる。安心しなさい。あなた含めて全員が受けていた負傷はすべて治しておいたから」
言われて気づいた。
私の身体の所々に包帯が巻かれているのを。
——ジリリリリリリリ──ン……!
次の瞬間、突然鈴の激しい音が聞こえた。
バッと音の方へ向けば——
「——は?」
——窓が勝手に開いており、開かれたその上に1つの古風な受話器が置かれていた。
ありえない。だってあれは……そう思っていると金髪の女性が受話器を取った。
「どうなされましたか局長……はい、今蜂沼と共にいたため確保したところです」
局長って……私の知る限りじゃそれらに関係する人物は1人しかいない…!!
「わかりました。蜂沼と一緒に連れてきます。特異点は他の者に……はい。ではまた後ほど」
ガチャリと電話を終えて、私へ振り向いた。
「蜂沼、歌姫を連れてきなさい。局長がお呼びよ」
「マジっスか!? 了解っス!!」
「そういうことなんで」と言いながら、蜂沼と呼ばれる中性的な男は私の両手を掴んで後ろにした。
「ちょ!?」
「少し我慢していてくださいっス」
「行くわよ」
そう言われ、私は連行されてしまった。
こんなあっけなく脱出が終わるなんて……せめて派手に見つかって失敗って感じの展開が良かったよ…!!
——◆——
同時刻、イヴの部屋。
そこに洋風、否、ファンタジー風な服装に着替えさせられたイヴがおり、彼女は雨が降り続ける外を窓から眺めている。
同時に彼女の部屋の扉付近には、ローブを羽織りフードを深く被る
「あっけなく戻ってきちゃった。結局飛んだ意味もなくなっちゃった……」
最初で最後と言える脱出を成功し、己の"個性"にて幻神のいる『並行世界』へと飛ぶことができたが、それも僅か数日で自身の世界の敵の追手によって連れ戻されてしまった。
「……亀裂も大きくなってる」
イヴは窓越しでも見える遠くの方に見える黒く異質であり、そしてさらに規模が大きく大きく広がっている亀裂を見た。
「■■さん…やっぱりこんなの間違ってるよ。もしこの先の災害が起きたら…!!」
イヴは今にも泣きそうな顔をしながら
「……」
されど
逆にイヴが部屋から出ると勘違いし、扉の前に立ち塞がるように移動した。
「……ッ、やっぱり…覚えて、ないんだね」
「……」
イヴはあきらめたように背を向け、キングサイズのベッドへと埋もれるように倒れて身を捧げる。
そして数秒もたたずに、微かにベットから押し殺すような泣き声が漏れ出していた。
——◆——
基本世界。
昨夜に発生した『並行世界』からの襲撃。
保護対象であるイヴと、雄英生徒である幻神と緑谷を連れ去り元の世界に逃走。
だが『並行世界』の
「もう一度聞く。お前たちの世界に行く方法はあるのか?」
「何度でも答えてやるよ。世界をまたいで別世界に行く術はそう簡単なものじゃない。我々とて同じであり、貴様らが見たであろうあの戦艦でなければ現状不可能だ」
プロヒーロー兼教師であるイレイザーヘッドらに尋問される
だが嘘偽りなく、今『並行世界』に行くことは不可能。この基本世界の技術はどこまでのものなのかは不明だが、
昨夜夜空に浮上していた戦艦も、
「それに、仮に行けたとしても、あんたらにゃ生きていけないさ」
「それはどういう意味だ」
「そのまんまさ。俺らの世界は
否、その嘲笑いはどこか
現実を、死を受け入れているようだと、彼らは感じた。
——◆——
そこはでかい扉だった。
名探偵の作品で出てくるあのテロップとかの扉って感じって言えばいいだろうか?
まぁそんなでかい扉が目の前にあった。
女性は端の方に移動して手をかざした。
それって手を丸ごと認証して開くやつなんだ。
すると扉から大きなカギのロックが開いた音が響き、ゆっくりと開き始めた。
「行くわよ」
「はいっス!」
「ちょ、分かったから押さないで…!」
私たちはでかい扉の中へと入っていく。
「——ッ」
視界いっぱいに広がったのは——大統領執務室とも言えるデザインの部屋。
そして一番奥のザ・お偉いさんの席と机があって背もたれを私たちに向けている。
「お待たせいたしました、局長」
「ご苦労」
金髪女性が声をかければ、椅子が回転しこっちに向い…て……。
「………は?」
「嬉しいよ。君に出会えたこと」
なん、で…ありえない。
この世界が私の世界とは異なるとはいえ、それは本来現実には存在しないはず…!
「——『アダム・ヴァイスハウプト』!?」
人でなしが、あの人でなしの錬金術師が、アダム・ヴァイスハウプトがなんで、実在しているんだ!?
「しようじゃないか、話を。『並行世界』から来た——陽だまりの歌姫」
この『並行世界』はいったい、何がどうなっているんだ…!?
人でなし登場ですが、その人でなしはあなた方の知る原作の彼であるか否か……もうどうないしよぉ!!
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