この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
緑谷が『ファウストローブ』を纏った金髪女性によって分岐点を見せられ始めたのと同時刻。
「これって……」
アダムに眠らされていた幻神は既に目を覚ましていた。そんな彼女の目の前に広がっていたのは、あの日、大切な日陰でもある姉との最初で最後の言葉を、歌を重ね合った日——神野の悪夢が広がっている。なぜ自分がここにいるのか、あの日に戻っているのかはわからない。
「——君の世界でも、記憶でもないよ。ここは」
「ッ!?」
そんな幻神の真横にアダムが現れ、幻神はバッと振り向き警戒する。
だがアダムに敵対の意志がないことに気づいた。
「僕たちの世界だ。僕たちの世界の君のだよ。目の前に広がる記憶は」
「『並行世界』の…私の、記憶……?」
瞬間2人の目の前に、あの日と同じ『Sv-303』が損傷した状態で地上に落下し大破する。
そして幻神は気づく。荒地なんかではない。
目の前で、あの日の戦いが繰り広げられているということを。
「止めないと…!」
「不可能なんだよ、干渉は。記憶だからね、あくまで」
アダムを無視して近くに倒れている人物に近づき、手を伸ばす。
だが幻神の手はすり抜けた。アダムのいうことは本当であり、干渉ができないことを悟った。
「……何が、目的なの!?」
「教えるよ、今から。そして知るといいさ、僕たちの目的を」
幻神から見たアダムの顔は、とても真剣な横顔だった。
——◆——
同時刻。
「貴方も知っているはずよ。あの日、神野区で繰り広げられた死闘を」
「……オールマイトの、真実が知らされた日…」
「そう、すべてはここで終わり、ここから始まってしまったの」
緑谷も幻神と同じように、金髪女性によって『並行世界』の神野の悪夢を見せられていた。
緑谷の場合、あの日は液晶からの視聴でしかなかったため、今目の前で直接見るというのは今回が初である。故に、より現状を広く見ることができてしまっていた。
悪夢の戦場の空を滑走する『Sv-303 ヴィヴァスヴァット』に、崩れ落ちたビルを足場や椅子代わりに座る【Yami_Q_ray】。
地にはボロボロに負傷したプロヒーロー多数に、トゥルーフォームのオールマイト。
空中には同じくボロボロなAFO。
そして分裂し衝突する天堕幻神と黒換美音。
だがどこかおかしいと緑谷は思った。
それは
幻神が纏っていたのは【BURNING・EX-DRIVE】
美音が纏っていたのは【シェンショウジン・ファウストローブ】
そのはずであり、当時の新聞記事やニュースでもその姿は載せられていた。
だが緑谷が今見せられている記憶は、目の前で戦っている2人が纏っているのは——
幻神が【EX-DRIVE (GX編版)】
美音が【ダウルダブラ・ファウストローブ】
——この時点で己の世界とは異なる世界であることは決定的となった。
奏でる歌も、戦闘方法も異なる。
「どういう、ことだ…?」
だが幻神が美音へ向ける気持ちも、美音が幻神を拒む気持ちも、異なってはいない。
——◆——
自身は【BURNING・EX-DRIVE】を、美音は【シェンショウジン・ファウストローブ】を纏っていたはずだと、当事者である幻神はわかっており、すぐに『並行世界』は異なるんだと悟った。
『くっ! 【 ヘルメス・トリスメギストス 】!!!』
『【 撃槍・ガングニール 】!!!』
互いに譲れない想いの元、死闘を繰り広げる。
それは、1人1つが当たり前である"個性"にとってはとても異なる戦い。
まさに次元を超えた戦いと言えるだろう。
そして幻神の世界と同じように、戦いは一度決着がついたものの、AFOの目論みによって"個性"増幅装置が出力を上げ、美音は苦しみながら魔王の歌を奏でた。幻神はそんな美音を救おうと、手を伸ばし掴もうと羽ばたく。
胸の歌と共に幻神は美音の手を取った。
そして美音は救われた。
それを見た幻神は拳を握り締める。
それもそのはずだ。
なぜならこの瞬間、AFOの手によって幻神は瀕死にされたのだから。
記憶であろうと、『並行世界』の幻神も同じようになった。
美音は幻神の元へ駆けつけ、胸の歌で救けようとした。
「ここが分岐点さ、君の世界とのね」
「え……?」
——◆——
【Xtreme Vibes】を奏でようとするミネ。
だがユウカは力を振り絞り、"個性"の権限の一部を封じることで止めた。
ミネは困惑し「どうして」と叫ぶ。
『生きて、ほし…い……から、だよ…』
『それはわたしだって同じ! ユウカに生きてほしい! わたしはもう救われた! 十分救われたの!! でもユウカにはまだ未来が……』
『それ、は…ミネ…も、同、じ…だよ……だか、ら——』
——瞬間、2人の直上からAFOの"複数個性"による攻撃が降り注がれる。
その攻撃によってミネは吹き飛ばされ、すぐに地に転がればユウカを見た。
『ぇ…? ユウ、カ……?』
『ユウカ…どこ……どこなの…?』
受け入れられないのか、ミネは立ち上がり、ふらつきながらに既にいないユウカを求める。
それを見た緑谷は悟り、金髪女性を見る。
「……そう、あなたの想像通りよ。この世界での天堕幻神は——」
「——死んだわ」
「……嘘、だろ?」
彼らが連れて来られた、イヴの世界でもある『並行世界』——
——そこは天堕ユウカが死に、黒換ミネが生きた世界線なのだ。
——◆——
「
実際、そういった世界があるかもしれないと、幻神は数える程度であるが考えたことが何度かあった。
そして今、その可能性、あり得たかもしれない世界線が、実在し、自分はその世界に渡ってきた。
「逆なんだろう、君の世界は。陽だまりが生き、日陰が死んだ世界。だが逆なんだよ、僕たちの世界ではね」
美音は己の命、魂を糧とし幻神に全てを託して逝った。逆に『並行世界』のミネはユウカの前世の記憶、知識を全て持った状態で生きた。
そして幻神は気づいた。
「まさ、か……あの
ローブを羽織り、フードを深く被ることで顔を隠した、自身とは異なりながらも似た"個性"を扱う
『あ…あぁ、ぁぁ…ああああ——』
ミネの周りには赤黒い稲妻が発生しだす。
目からは涙が溢れ出し、瞳は絶望に染まり光を失っている。
『―あぁぁああぁぁぁぁぁああぁあぁぁあぁぁああぁぁあぁぁぁああぁああぁあぁッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
絶望という名の悲鳴。
それが合図となりミネを中心に禍々しい輝きが溢れ出し夜空へ解き放たれる。
すればその輝きは、
「あれは…」
「ここからなんだよ、本当の絶望は……——
瞬間、その亀裂は世界を蝕むため侵攻するかの如く一気に広がっていき、、黒く異質な、巨大な亀裂な穴が開かれるようにひび割れた。
次にはその大穴からおどろおどろしい黒い泥が溢れ出し、神野の悪夢である地に落ち広がっていく。
『な、なんだこれは!?』
『気を付けろ! 何かの攻撃の可能性が——』
地についていたヒーローたちは困惑する中、泥の中に既にいたヒーローたちの足元から、その泥が——手の形を作り出し拘束した。
驚き、困惑し、振りほどこうとするも力及ばず、彼らはどういう原理か不明だが、泥の中に引きずり込まれ始める。
『これはどういうことだ…ミネくんに何が起きて——』
空中に浮いていたAFOもまた、予想外すぎる事態に困惑している。
だが次の瞬間——
「何が、起きてるの…!?」
「これは僕たちの世界の力、"個性"であり"異能"……
「これが…"個性"…!?」
飲み込まれるヒーローと未だ救出されていない人々の苦痛や恐怖による悲鳴。
飲み込まれるヒーローたちの中にはエンデヴァーにエッジショット。
そしてグラントリノに……オールマイトもいた。
「これも、この世界の、ミネの……」
「違うんだよ、これは。
「解…放……?」
次の瞬間、地響きが起こり始める。
そして黒く異質な、巨大な亀裂なひび穴から、
——◆——
亀裂をより大きく広げさせ、ひび割れ、
そして空間の奥から何かが姿を現そうとしている。
「なんだよ…これ……」
「
唖然、否、目の前の光景が信じられない緑谷。
そんな緑谷の横を1人の少女が駆け抜け、その姿を見た緑谷は驚愕した。
「イヴさん…!?」
正体はイヴ・ラグナ。
彼女は泥に自ら入り込み、
『ミネさん!!』
泥から手が形取られ、イヴを捉えようとし、イヴは掴まれようと抵抗しながらミネに手を伸ばす。
『放して…! ミネさん! 気をしっかり持って!! ミネさん!!』
イヴはミネに叫ぶも、ミネは絶望一色に染まってしまっている故、応えることなく顔を上に上げたまま、頬に赤い涙を流し続けている。
ついに泥はミネの周りでうごめき、手ではなく布のような触手を出し、取り込むように取り囲んでいく。
『ミネさぁん!!!』
瞬間——
「こっちの世界でも君は、立派なヒーローであるのに変わりはない」
「あれは……!」
『——…ッ! イズクさんッ!!!』
その正体は『並行世界』の緑谷イズク。
友の制止も無視し、対策も何も考えず、ただただ日陰を救うがために、その身単身で駆け付けたのだ。
『…ユウ、カ……』
『……ッ、ごめん、でも、絶対救けるから!』
泥は無数の手を2人へと伸ばす。
だがその泥よりも早く影が数人、ミドリヤたちを取り囲んだ。
『なっ!?』
『死ねェ! 化け物がァ!!!』
影の正体は公安直属ヒーロー。
『並行世界』であろうと、公安はユウカとミネを
それは2人に与する者も同じであるがため、ミドリヤもまた問答無用で刃を、"個性"を差し向けられる。
だが地から伸ばされていた泥は無数の手は、ミドリヤたちを無視し、公安直属ヒーローたちを拘束し、地に溢れ浸食とばかりに汚染し、広がっていく泥へと引き寄せられ、地という名の泥に付けば、そのまま泥の中へと引きずり込まれていく。
その際、公安直属ヒーローたちは抜け出そうとし、それが不可能と分かった瞬間人が変わり、助けを呼び、死にたくないと悲鳴を上げ、最終的には飲み込まれた。
「……この泥って、"個性"…なんだよな? こんな、無差別な……」
その一部始終を見ていた緑谷は青ざめていた。
敵味方関係なく殺し、取り込むそれはまるで、暴食に飢えた野獣のよう。
——◆——
幻神は足を折り、膝を付ける。
自分たちは過去に起きた事態をただ記録として見るだけである故、影響はない。
だが目の前の光景があまりにも残酷でありすぎる。見ることしかできないものですら、絶望するほどに。
「この泥って…どこまで……」
「止まらないよ、地球の反対側まで。飲み込むんだ、この星、その全てを」
それは創造と破壊。
「それって、この世界のみんなは……」
「後で見せるよ、今の世界を。でもわかっているはずだ、イヴから聞かされたのなら」
「…ッ」
イヴは話した。
自身の世界にヒーローはもういないことを、壊滅したことを。
『——プロヒーローと
イヴはそう発言していた。
だからこそ疑問が、違和感が、矛盾が生まれる。
今地に吐き出され、汚染し、侵食していくこの泥がこの世界を絶望へと、終わりへと、破滅へと追いやったのなら、彼女のあの言い方は何なのだ。
『並行世界』のミネのによって解かれ、現れたのなら、この男がヒーローを壊滅したのはどういうことなのだと。
「アダム…あんたは、なんでヒーローを……みんなを……」
「……」
アダムは沈黙する。
それはまるで答える必要はない。
否、幻神が知る必要はないかのように。
幻神は我慢ならず、アダムの胸元を掴み声を上げた。
「答えろ!! イヴちゃんはあんたが壊滅させたって言っていた!! この泥とあんたはどういう関係だ!? あの泥の正体は!? あんたはこの世界で何がしたいんだ!!!!?」
「落ち着けよ、歌姫。台無しだぞ? 美しい顔が」
瞬間——幻神の耳に異様な音が入った。
それは
「あれって……」
「
「——はっ」
核ミサイル。
それは、
そのミサイルが今、泥によって汚染されつくされている神野区へと向けて飛んでいる。
なんでと幻神は思う。
それをアダムはすんなりと答えた。
「ヒーロー委員会だよ、公安の。裏で進めていて即決したのさ、世界を守るために。神野区と近くに住むもの、そしてヒーローと
黒く異質な、巨大な亀裂の大穴から溢れ出し、地を汚染する泥は今も神野区から繋がる大地、海を越えて世界の反対側まで溢れ続ける。
それを止めるため、ヒーロー公安委員会は核ミサイルを使用することを政府と交渉し、使用を許された。故に今、核ミサイルは神野区へ向けて飛来し、降下している。
幻神の視界は光に、身体は煙に包まれた。
——◆——
次に目を覚ました時、緑谷と幻神は目の前の光景に絶望した。
核ミサイルによって神野区を始め、連なる大地、その大地に立つ者たちは全員骨も残さず消滅した。
だが黒く異質な、巨大な亀裂の大穴から溢れ出し、地を汚染する泥は未だ健在。
核ミサイルによってできたクレーターは、その泥を注ぐ器のような役割となった。
アダムは語った。そのクレーターを利用し、複数の封印系の"異能"で作られた大柱を7本全てを使用。
汚染しようとする泥と器となったクレーターを囲うように配置され、泥の汚染は止まり、巨大な亀裂の大穴から溢れ出すこともなくなった。
同時に穴も封じられ、亀裂の発生まで時間を巻き戻した。
だがその封印が解ければ、泥の汚染による浸食が、世界の終わりが再び始まる…否、再開される。
アダムたちはその泥を、穴から出ようとした者が何者なのかを調べ、突き止めた。
"原初の異能者"……現代で言えば、最初に"個性"を発現させた存在。
彼らはその存在を、"原初の異能者"を『
始まりの終わり、絶望の汚染ともいえる惨劇は終わったかのように思われた。
だが終わってはない。むしろ小さく、そして大きな惨劇が始まった。
日本は公安のやり方によって秩序が崩壊し、もはやヒーローも
ヒーローと
それは学生も例外ではない。子供も、幼子でさえ。
一方で限られた者たちのみを、アダムとアダムに仕える者たちは選別し、生かし、殺していった。
そして今に、アダムが創り出した今の組織へとなった。
だがアダムの根本的な目的は違う。
全ては秩序をなくした今、最も権利を、強さを、立場が上である者でなければ人々の信頼は得られない。
故に利用し、目論み、計画の終わりと、始まりは目前となった。
「——全ては、
彼は終わりなき災禍と共にあることを志したのだ。
どこまで行っても、人でなしなのだ。
だが——
ついに明かされました分岐点。
と言っても全てとは言えませんが……まぁでも大体は出せました。
ちなみに泥や大穴とかはFate/zeroの聖杯破壊後のシーンを参考にしています。
穴の部分がガラスとかが割れた穴だと思い、変換して想像すればいい感じです。
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